真・恋姫✝無双~とある男のそれなりに不幸な人生~   作:世紀末敗者寸前

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曹操や孫堅らと真名を交換し、同盟は結ばなかったものの友好な関係を築き上げ互いの領土に攻め入らないという約束を交わすことが出来た咲夜
だが、咲夜にはまだまだ多くの試練が待ち受けていた
それは腐敗し、すでに崩壊しつつある後漢王朝であった
そんな乱れ往く世の中、咲夜は信頼すべき仲間たちと共に樊城と新たに手に入れた襄陽城で日々を過ごすのだが…
日に日に増える文官の仕事に限界を感じつつあった咲夜は新たに文官を雇うことにした


第二話

曹操、孫堅が樊城に訪れて来てから暫く経った後、劉封こと、咲夜は今は襄陽城に居た

劉表軍からとった新たな領地である

元々、正当防衛で取った土地であり、加えて少し人口が限界を越えつつあったのでこの新たな領地は渡りに船であった

 

「劉泌叔父さん、どうですか?」

「ああ、どうやら領民は皆、咲夜がこの土地を治めることに賛成しているよ」

「そうですか、それは良かったです。では早速新しい政策に取り掛かることにしましょう」

 

 

 

咲夜は樊城のことを焔耶、劉延、孫礼などに任せ、自身は麻理と秋葉と紫苑を引き連れ、襄陽城で仕事に取り掛かることにした

元々、襄陽の土地はかなり肥えているため、以前とは比べ物にならないほどの利が得られる

だが、そのためにはまず咲夜達が変えるべき所を変えなくては話にならないのである

 

 

 

そして仕事に取り掛かるのだが…

 

 

 

こなしてもこなしても終わらない竹簡の山…

 

 

 

「…やっぱり文官が足りないなぁ」

「しょ、しょうですね」

 

 

普段から殆どの文官の仕事を受け持っている咲夜と麻理…このままだとどちらかが倒れれば国が崩壊する可能性も…

 

 

「やっぱり文官になりえる人材探した方がいいかもね」

「あ、そういえば今度、文官の試験があるそうです。そこで探してみるというのはいかがですか?」

「それってこの襄陽で行うんだよね?」

「はい、その予定です」

「…ならそれに頼るしかないね」

 

 

 

 

それから少しして…

咲夜は秋葉を護衛にその試験会場にやってきていた

本当なら一人でも大丈夫なのだが、麻理が…

 

 

「太守が一人で出回るなんて非常識でしゅ!! あ、か、かんじゃいましゅた…」

 

なんて言うから…半強制的に秋葉と共に見に行くことに…

 

 

 

 

「…さてと…名前の一覧はあるかな?」

「あ、劉封様!? ど、どうしてこちらに…」

「情けないことに今こちらには文官が不足していてね、だからちょっと有能な子がいれば登用したいと思っててね。で、一覧を貰えるかな?」

「は、は!! こちらになります」

 

 

 

渡された竹簡にはかなり数の名前が書かれていた

 

 

「凄いなこれは…こんなにたくさんの人たちが」

「それだけ皆さん、劉封様に仕えたいと思っていらっしゃるのですよ」

 

 

その言葉を聞いて嬉しく思いつつ、名前を確認し続けた

 

すると…その中にいくつか気になる名前があった

 

 

 

―――荀攸公達

―――鳳統士元

―――程昱仲徳

―――劉曄子揚

―――諸葛瑾子瑜

―――董允休昭

―――姜維伯約

―――王平子均

―――馬良季常

 

 

などなど…有名所盛り沢山である

 

 

 

(○△○)

 

暫くこんな顔をしていた咲夜だった

 

 

 

暫くして、目が覚めると咲夜は受け付けをしていた文官に自分の知っている有名な人物達の名前の所に印を書き、この人物達は後で咲夜の屋敷の応接間に通すようにするように指示した

 

 

 

そんな冷静な支持の中…

 

 

咲夜の頭の中ではかなりぐっちゃになった脳内討論が行われていた

 

 

 

→咲夜の脳内→

 

咲夜A「おいいいいぃ!!! どういうことだよ!!! どうして伏龍鳳雛として例えられた一人の鳳統がここに来るの!?」

B「あ、た、多分…麻理がいるから?」

C「加えて何で程昱が来るのよ!? この人は華琳さんの部下になる人でしょうが!!」

D「不明不明、我理解不能」

E「それに荀攸って…軍師としてはかなり有能な人だよね? 本当にどうしてここに…」

F「情報が足りません、もう少しまともな情報を得てから動くのがよいかと」

G「(カサカサ)…」

H「チョッ!? 何でゴキブリがここに居るんだよ!!!」

I「落ち着け、そいつはゴキブリじゃなくGだ」

J「…まあそれで結論は?」

K「決まってるだろう!! 有能=即登用だぁ!!」

L「それは早計ではないのか?後、この王平さん…確か忠志なら武官だったと思うんだけど」

M「でも王平さんって以前受けた武官の試験で落ちてたと思う」

N「あ、だから今度は文官として来てくれたってわけ?」

O「……どうする?」

P「とりあえず試験が終わるまで待つというのは?」

 

一同「異議なし!!」

 

 

 

→Side Out→

 

という結論に至った

 

 

 

それから数刻の間、試験が終わるまで咲夜は劉泌と秋葉と一緒に軽く何かを食べることにした

因みに麻理は試験官の一人を担っている

 

 

「…そういえば叔父さん、詳しい事情とかは聞きませんでしたけどどうして俺に太守を譲ったんですか? 俺は叔父さんの下で働ければいいと思ったのに」

「…実はな、私はお前に太守を任せる少し前に夢を見たんじゃよ」

「夢? どんな夢なんですか?」

「うむ…なんだかよく覚えていないのだが…劉封に太守を任せれば樊城は更なる繁栄を遂げ、天下になお残す龍となるであろうと言われたのじゃ」

「誰に?」

「よく覚えとらん。だが…褌を穿いた筋肉質の漢だったような気がする…その後は思い出すと何故か気分が……うぷっ」

「お、叔父さん!? 大丈夫!!?」

「あ、ああ…大丈夫だ……まあそんなわけでその助言に従ってみたんだ」

「そ、そんな単純な理由だったんですか…」

「まあそれもあるが…何よりも時期が良いと思ってな」

「はい?」

「私はもう歳だ。これよりさらに混乱の増す世を治めていくだけの気力と才を持ち合せていない私が太守を続けていても結局苦しむのは民だけだ」

「……」

「だからこそ、今は力強い新しい波が必要だと思ってね。だが私には子がいないし、知り合いの若い子は咲夜しかいなかったからね」

「…そう、か」

「…やっぱり嫌だったかい?」

「…いや、それを聞いてもうちょっと頑張ろうと思ったよ」

「そうか…」

 

 

 

それからまた暫くして、咲夜は劉泌と秋葉と共に麻理のいる試験会場に向かって行った

もうこの時間だと試験も終わり、残っているのは麻理と試験を担当した文官のみだからだ

 

 

「お疲れ、麻理」

「あ、咲夜様」

「どうだった、試験の方は」

「実は咲夜様が目を付けていた方々を優先的に採点したのですが…皆、凄いです。合格点を軽く越えて、私では思いつかないような案を出した方もいらっしゃいました」

「そう…そういえば麻理は鳳士元とは同じ私塾出身だったんだよね?」

「はい、ですがだからと言って採点を甘くしたりはしていません」

「それは最初から分かっているよ。麻理は仕事に関して凄くまじめだからいつも助かっているしね」

「とりあえずこれで一次試験は終わりです」

「合格者の番号を書いてそれを張りだしてあげて。ああ、それから明日は俺が二次試験の審査をやるから」

「はい、明日は面接ですから。でも念のため私が付きますね」

「頼むよ」

 

 

 

 

 

そして翌日…

 

 

二次試験会場には多くの一次試験合格者がいた

どうやら今回は有能な人材が多くいるようだ

 

 

 

二次試験は面接でどうして咲夜の元で働きたいか、その動機を聞いたり、戦う覚悟を問うたりするのが目的だ

順番はくじで引いた順番で行い、呼ばれた者から別室に居る咲夜達の元に案内され、そこで試験が始まる

 

 

 

「では次は…鳳士元ですね」

「(いよいよか…どんな人物なのか、楽しみだな)」

 

 

 

コンコン…

 

 

「どうぞ、お入り下さい」

 

 

ガチャッ

 

 

 

部屋に入ってきたのは何やら魔女っ子が被っていそうな帽子を被った麻理と同じ位に小さな女の子だった

 

 

「ほ、鳳士元でしゅ」

「ふふ、ゆっくりでいいから。落ち着いて」

「は、はい…」

「俺は劉封、一応この土地の主をしているよ」

「あわわ///よ、よろしくお願いしましゅ///」

 

 

 

麻理といい、この鳳統といい…水鏡塾の生徒って舌噛んだり、あわわとかふわわって言うのが癖なのかなぁ…

 

 

なんてことを思いながらも質問を続けていった咲夜

 

時折どもりながらもそれを的確に答えていく鳳統

 

 

 

「(ふむ…やはり当たりか)」

 

 

話していく度に、鳳統が有能な人材であることがはっきりしていく

 

時折甘さの見える回答もあるのだが、許容範囲内故にこの時点で合格であった

 

 

 

「ふむ…じゃあ合否は後で伝えるよ。御苦労さま」

「は、はひ…あ、あの……最後に一つだけ聞いても良いですか?」

「ん、何かな?」

「そ、その…劉封様はこの乱れ始めている世の中で何を望みますか?」

「……俺が望むのは俺が守りたいものを守れるだけの智と力」

「それは劉封様の覇道のためですか?」

「いや、俺自身の我儘の為」

「ふえ?」

「俺は自分の手の届くところに居る人たちを、俺の大切なものを守り抜く。例えどんなことをしてもな。その為に力が欲しい、ただそれだけ」

「で、でも劉封様の国は自分から攻めることは殆どないって」

「守るためにも力はいるだろう? それにこの襄陽のように俺から攻めることもある。それは今後の憂いをなくすためでもあるんだ。俺は俺の守りたいものを守るためなら悪にでも魔王にでもなってやる。それが俺の覚悟だ。まあ基本的には非戦闘主義でいるつもりだけどね」

「……」

「失望したかな? 結局のところ、俺は何かを失うことを恐れてる臆病者だよ。だから亀みたいに普段は甲羅に籠っている」

「いえ…だからこそ、領民の皆さんは安心して暮らしているんだと思います。私はこの襄陽に来る前に徐州や徐南を訪れていましたが…どちらも領民の皆さんは貧しい人たちの方が多かったです。でも、この襄陽や樊城付近に住んでいる人たちは皆笑顔の人たちばかりでした。それは全部、劉封様が」

「それは違う、ここまでこれたのは俺についてきてくれた人たちと領民の人たちが俺を信じて、自身で努力を怠らなかったからだ。俺は大したことはしてないよ」

「……」

「さて、君は合格だけどよく考えてね。俺を主として良いのか悪いのか。その判断は君に任せるよ、鳳士元」

 

 

 

 

咲夜はそのまま、鳳統を部屋から出した。

次に会う人たちを待たせていたからである。

 

 

次に部屋に入ってきたのは程昱である。

 

なのだが…

 

 

 

 

「くーーー…くーーー…ヒュルル…」

 

 

…何この子、寝てるんですけど。

 

 

 

「……なあ、程昱さん?」

「おおっ! すいません、寝ていました」

「いや、見れば分かるけど…疲れているの? それなら二次試験は後日に延期することも出来るけど?」

「…普通、一人の人間にそのような事はしないと思うのですが…」

「今は一人でも多くの人材が欲しいからね。その為なら少しくらい時間がかかっても構わないよ」

「ほうほう…流石は噂に名高い名君ですね」

「そんなつもりはないよ。でも少し嬉しいかな」

「風はこの試験を受ける前日、不思議な夢を見ました。風は大きな日輪を沢山の人たちと共に支え、その日輪を一匹の大きな龍が呑み込み、風たちを乗せて高々と天へと昇っていく夢です」

「へぇ、確かに不思議な夢だね、それで?」

「風はその昇り龍が劉封様ではないかと思ったのですよ」

「ふむ…それで、その夢に他に特徴的な事はなかったかな?」

「…そうですね…………ぐぅ」

「いや、何でそこで寝るのかな!?」

「Σ おおっ、これは失礼しました。えっとですね…そういえば、沢山の花が咲き乱れていましたね…日輪が良く輝いて見えたので…多分時間帯は夜なのだと思うのですよ」

「……(それって思いっきり俺の真名指してないか? 咲夜だし、俺)」

「ほほう、その顔は何か心当たりがあるようですね」

「…まあ俺の真名が咲夜だからな。こじ付けかもしれないが、その程昱さんの夢は確かに俺を示してるのかも知れないが…それを知って程昱さんはどうするの?」

「是非とも劉封様に仕えたいのですが」

「……秋葉、麻理。どう思う?」

「それはもう咲夜様はご決断なさっているのでは?」

「俺達は咲夜様の判断に従います」

「…そうか、ではこれから我が軍の軍師の一人として働いてくれるかな? 程昱さん」

「はい~、お任せ下さい~。風は性を程、名を昱、字を仲徳、真名を風と申します~」

「俺は性を劉、名を封、字はない。真名は咲夜だ、これからよろしく頼むよ、風」

「………ぐぅ~~…」

「……また寝てるよ、まあ良いか。とりあえず風を文官用の宿舎に案内してあげて」

「御意」

 

 

 

少しして、起きた風を文官の一人が先導して宿舎に連れていった。

 

 

 

「…何だか結構癖があるんだな、軍師って」

「ふわわ!! そ、それって私にも癖があるっていいたいんですか!?」

「…そのふわわって言う口調と時折舌をかむ癖を治したら修正するよ」

「…ふわわ、そ、それは難しいかもです…」

 

 

 

根付いた癖って治しにくいよねぇ。

 

 

次に部屋に入ってきたのは荀攸。

 

 

「君が荀攸さんだね。初めまして、劉封です」

「……」

「? どうかしたんですか?」

「…いえ、想像とは少し異なっていたので」

「因みに聞きますけど……どんな印象を俺に持っていたんですか?」

「綺麗な女性と聞くと、すぐに手を出して侍らせるとか」

「…………」

「冗談ですよ、これは私の従姉の桂花、荀彧が口にしていたことです」

「え、えっと…君の従姉さん、もしかして…」

「ええ、大の男嫌いよ。まあそれは昔、盗賊に攫われて大事なものを奪われかけたからなんだけどね」

「………それは普通、俺みたいな他人に話すことではないと思うのだが…」

「ああ、いいのよ。貴方はそういうことを口外するような人間じゃないでしょ?」

「…まあそうだね、それで色々聞きたいんだけど…どうしてここの試験を受けに来たの?」

「…最初は袁紹の所で働いていたんだけどね…あいつ、ただうざったい笑いを響かせながら偉そうにしてるだけだし、これは付いていっても長くはないと思ったの。次に曹操だけど……確かにあの人は英雄たる器を持ち、そして世の流れに乗りつつある。付いていくのならかなり期待できる人…なのだけど、あの百合百合しい空気は嫌なのよ!!!」

「ゆ、百合百合しい? それってつまり…そういうこと?」

「…ええ、私は荀彧と違って普通の恋愛がしたいの。だからちょっとあそこは息が詰まりそうになってね」

「…それでうちを選んだってわけ?」

「ええ、もしここが期待外れだったら次は孫堅のいる長沙にでも行こうかと思っていたのだけど…その必要はないみたいね」

「それは俺が君の眼鏡に適ったってことなのかな?」

「まだはっきりとは言えないけどね…でも、治めたばかりのはずのこの襄陽の治安と領民たちの顔を見たら貴方はこの世で生き残る力を持っていると思うわ。だからこそ、私は貴方に仕えたい。理由はそれだけじゃ駄目かしら?」

「…いや、十分だ」

「そう、なら改めて自己紹介をさせてもらうわね。私は性を荀、名を攸、字を公達、真名を燐花よ」

 

 

 

それから咲夜は燐花に真名を渡し、文官を呼び出して宿舎に案内させた。

 

 

それから順番に一次試験合格者たちと面接をしていき、それらが終わると既に日も暮れかけていた。

 

 

 

「ふぅ~~、これで終わりかな」

「お疲れ様です、咲夜様。どうですか?」

「とりあえず決まったのは燐花と風の二人だね。後は合格者たちの名前を張りだしてそれでもこちらに仕えるのを望む者は講堂に集めさせるように手配して」

「御意です」

「あ、そうそう。麻理、今日はもう仕事を終えても良いよ」

「え…」

「鳳統さんとゆっくり話したいこともあるでしょ?」

「あ…ありがとうございましゅ!!! あぅ///」

「あはは、ほら早く行ってきなよ」

「はい♪」

 

 

嬉しそうに部屋から出ていく麻理

残った咲夜は竹簡と書類を纏め、自室に持っていき残った仕事に取り掛かることにした

 

 

 

 

とりあえず合格者は自分が印を付けた者達を含めて、28名。

これだけの人数をどの部署につかせるか、その草案を作るのも咲夜の大事な仕事である

その為、咲夜はその晩寝ずにずっと仕事をこなし続けた。

 

 

 

 

 

朝日が出て、小鳥の囀りが聞こえ始めた頃、咲夜はようやく筆を下すことが出来た。

一次試験で得た合格者たちの最も優れていて部署に入って直ぐにでもその能力が使えるように適度な場所に分散できるようにし、二次試験で分かった合格者たちの性格や癖などで問題が起こらない様に相性の悪そうな者同士は組むことのない様に慎重に草案を書きつらぬった。

 

 

試行錯誤しながらも何とか出来あがったのだが…もう咲夜の腕はプルプル痙攣していて目の下には真っ黒な隈が出来ていた。

徹夜明けなので少しテンションもおかしいことになっているのだが…。

前世の頃のように珈琲やレッド○ルーなんかもない為、とりあえず自分で淹れたお茶を飲んで一休みすることにした。

 

 

 

 

幾刻か経った後、麻理と紫苑が咲夜の仕事部屋にやってきた

あの食事を終えた後直ぐに劉泌と秋葉には樊城に戻って貰い、紫苑には襄陽に残って貰ったのだ

 

 

二人は最初は咲夜の自室に向かったのだが、誰もいなかったためここにやってきたそうだ

 

部屋に入ってくる前は何やら楽しそうな顔をしていた二人だったのだが…咲夜の顔を見てからその顔が一変した。

 

 

「さ、咲夜様!? ど、どうしたんですか、しょの顔?!」

「え…ああ、これから入ってくる人たちの部署分けの草案考えてて…気付いたら朝だった」

「さ、咲夜様…とりあえず顔を洗ってきた方がよろしいかと」

「ふああああ~~…そうするよ。紫苑、それに麻理。悪いけど、この草案ちょっと確認してみて。一応、合格してもうちに所属しない人がいたりしたらその分、穴埋めも出来るようにして有るんだけど…問題あるかもしれないから」

 

 

 

そう言い残し、咲夜は部屋を出て顔を洗いに行った

 

 

 

「ふわわ…咲夜様、相変わらず無理をして」

「そうね…でも新しい人たちが仕官してくれるようになったからこれで咲夜様も少し休めるようになるでしょうね」

「…寧ろ皆さんの見本となろうとして更に無理をしそうな気がするんですが…」

「そうさせない為に私達が咲夜様を支えないといけないわね」

「はい!」

 

 

 

 

咲夜が部屋に戻ると、紫苑と麻理が少しでもいいから時間まで寝る様に懇願し、咲夜はまだやることがあると言ってそれを断ったのだが…

 

その後に来た璃々に泣かれそうになって渋々その忠告に従った

従ったのだが…

 

 

 

「あ…あの~」

「はい? 何ですか、咲夜様」

「…何で俺は紫苑に膝枕して貰ってるの?」

「ふふふ、良いじゃありませんか」

「…それに何で麻理も俺に抱きついてるの?」

「き、気にしないでくだひゃい!!///」

「…璃々ちゃんもどうして俺の頭を撫でてるの?」

「えっとね、おかーさんがしゃくやしゃまがつかれてたらこうしてあげなさいって」

「……紫苑さん、何を教えてるんですか」

「あらあら♪」

「いや、あらあらじゃないですよ」

 

 

 

これだけやられても女心に疎い上にどうとも思わないある意味達観している咲夜だった

前世では並はずれた身体能力や頭脳のせいで煙たがられていた為。

だが当の本人は向こう吹く風で全く気付いていなかったのだが…

 

 

 

 

それから少しして…

約束通り少しだけ休んだ咲夜は今日から仕官することになった人たちに会うため、侍女に璃々を任せ、紫苑と麻理を連れてその場所に向かった

 

咲夜がそこに入ると既に古参の文官や武官は勿論のこと、新たに仕官する燐花や風の姿もあった

そして、鳳統の姿もあった

どうやら咲夜を主として行きたいということなのだろう

 

 

 

その場に居た人たちを一瞥し、咲夜はまず簡単な挨拶から済ませ、その後それぞれの部署を皆に告げ、少し休んだ後に仕事を始めて欲しいと連絡した

 

それから時間を作り、新規の仕官者達を一人一人皆の前に出して、自己紹介をして貰った

これから共に働く者同士、仲良くしてもらいたいと思った為である

 

 

 

それが終わった後、咲夜は姜維、王平、劉曄、諸葛瑾、董允、馬良を中心に新しく入った文官の約半分を樊城に向かってもらうよう指示した

正直、この襄陽も仕事が多いが樊城も同じ位多いのだ

加えて、現在樊城には文官が少なすぎるためこうしてちゃんと仕事の出来る人たちを送ったのだ

 

 

残った文官は雛里(真名は交換した)、風、燐花らを含めた十名に襄陽で仕事をして貰うことにした

 

 

新たに獲得した土地では戦後処理はもちろんだが、様々な改革に取り掛からなくてはならない

特に衣食住は何よりも大事な事だ

 

 

他にも色々と処理すべきことがあるため…

 

 

 

 

「…何これ?」

「いや…竹簡と木簡の山」

「……これを処理するの?」

「気にしたら駄目だ、それに俺と麻理はいつもこれだけの仕事をこなしている」

「…は? この量を今まで二人だけでこなしてたの?」

「まあ時折他の人にも手伝って貰ったけど…基本的には二人だけだね」

「……咲夜、貴方何時か過労死するわよ?」

「あ、あはは…それは否定できませんね」

「いや、麻理も俺と同じ位仕事してるじゃん!?」

「だって咲夜様って…文官のお仕事以外にも武官の仕事や町の人たちの手伝い、それから町の中に設立した孤児院に行って子供たちと一緒に遊んでるじゃないですか」

「……訂正するわ、貴方は絶対近い未来倒れるわ」

「確定なの!?」

「あわわ…咲夜様、わ、私達が今後はお力になりますから…もうそんな無理はしないでくださいね?」

「……その優しさが何だか辛いよ、雛里」

 

 

 

それから総出で積まれていた仕事を片付けることにした。

 

 

 

 

「…へぇ、人口を細かに知るために戸籍っていうものを作ったのね。これはすごく便利だわね、税の支払いの有無も確かめやすくなるみたい」

「あわわ、この算盤も凄く使いやすいです。それに纏め方が凄く綺麗で過去の資料と比べ易いです」

「ふ~む…お兄さん、こちらはどういう物なのですか?」

「えっと…それは………ってお兄さんって何?」

「いけませんか? 風はそうお呼びしたいのですが」

「……まあいいか。っと、それは今度行う町内会の日程だよ」

「町内会? なんですかそれは?」

「うん、簡単に説明すると俺が直接、領民の皆に何を改善して欲しいか、何か不満はあるか、それを聞くために開く会議みたいなものだよ。最も、樊城ではこういったことはしないんだけどね」

「どうしてですか?」

「樊城では主に【目安箱】をいうものを設置して、領民の人たちの意見を聞いているんだ。でもそのためには皆が字が書けないといけない」

「あ~、確かに字が書けない人は多いですからね~」

「うん、でも樊城の領内に住んでいる人は大半の人が計算と読み書きが出来るんだ」

「なッ!? それは本当なの!?」

「燐花落ち着いて。本当だよ、うちは自主性で読み書きと計算を学べる場所を提供しているんだ。小さい子供はもちろん、大人もそこで学んでもらっているよ」

 

 

風、燐花、雛里の三人は驚いたようだった

 

確かに一般の人が読み書き算盤が出来るようになれば色々と便利にはなる

だがその半面で、知を得たことで反旗を翻す輩も出てくるはずなのだ

しかし、今まで咲夜が治めた土地でそういったことが起こっているという報告は全くない

それは咲夜の治め方がかなりうまいことを示している

そればかりでなく、三人は竹簡を見ていくうちに他の地域との違いに驚くしかなかった

圧倒的に多い収入と歳出、だが安定感がありそれが一定に保たれている

加えてこの地域のみの特産物が他とは比べ物にならないほどに利益を出している

 

 

 

「…お兄さんは太守でなくても商人としてやっていけますね。どこでこんな知識を?」

「旅の中、色々と見て回ってきたし…昔から色々と応用したり組み合わせたりして新しいことを生み出そうとしてたからかな?(本当は未来の知識だけど…こういっておいた方がいいよね)」

「…そうなのですか~」

「それで…どうかな、ここの状態は少しだけ分かってもらえたかな?」

「……くぅ~…」

「寝ないの」

「Σ おおっ!」

「…風は突然寝るのが癖なの?」

「そうですね~。昔からこうなのですよ~」

「…まあ良いか、雛里と燐花はどうかな?」

「まだ完全に把握したわけじゃないからどうともいえないけど…凄く働きがいはあるわね」

「はい、これは楽しみです」

「そう、そういって貰えるのならうれしいよ」

 

 

 

それから5人で積まれた仕事を片付け始めた。

最初こそ、ここの仕事のやり方に慣れていなかった風、燐花、雛里の三人だったが咲夜と麻理がサポートしつつ、仕事をこなした為、一時間もしないうちに三人は慣れていった

流石は稀代の名軍師として称えられた三人である。

 

 

 

そして、いつも咲夜と麻理が掛る半分の時間も使わずに5人は大体の仕事を終えた

 

 

 

「ふぅ~、これで一段落ね」

「まだ明日、今日よりは少なくなるだろうけど仕事はあるけどね。それにしても助かったよ、君達みたいな優秀な人たちが入ってきてくれて」

「そ、そうでしゅか?」

「うん、本当にありがとうね(ナデナデ)」

「は、はひっ!? ///」

「ひ、雛里ちゃん、落ち着いて。咲夜様は褒めてくださる時、いつも頭を撫でるのが癖なの」

「ほうほう、それは興味深いですね。ぜひとも風の頭も撫でて欲しいのですが」

「良いよ、ほらこっちに来て」

「あ、じゃあ私も良いかしら? 母様には幼い頃に良く撫でてもらったことはあるけど、異性にされたことはないから、少し試してみたいわ」

「良いよ、じゃあ順番ね。麻理はどうする?」

「そ、その…お、お願いしましゅ///」

 

 

 

それから紫苑がとあることの連絡に来るまで咲夜は4人の頭を撫で続けた

 

 

 

一人一人撫で終えると咲夜は紫苑に向き合って話を聞くことにした

どうやら幾人か使者がやってきたようだ

 

 

「で、紫苑。誰からの使者?」

「一人は袁紹。二人目は劉表。三人目は帝殿下です」

「…とりあえず袁紹には『だが断る』って返事を」

「み、見ていないのにそんなことしても良いんですか!?」

 

雛里が驚いたように大声を上げた

まあ知らない人ならそう思うよね?

でも、慣れたような顔をしてる麻理と紫苑をよく見た後、風と燐花は何となく察したようだ

加えて、燐花は袁紹のことをよく知っているようなので苦笑どころか苦虫を潰したような顔をしていた

 

 

 

「…まああんまり説明したくないけど……あの駄名家の馬鹿袁紹は何時も何時もしつこく俺に下に付けって文とか使者を送ってくるんだよ。俺はその度に無駄な時間を使わされるってわけ。だから、袁紹関係=無視っていう法則が成り立ったわけ」

「あ、あはは…」

「そういえば以前、それなりに本気で袁紹を挑発したことがありましたね」

「ほう、お兄さんはそんなことを…」

「いやだってなぁ…あの馬鹿の無駄な笑い声聞くと無茶苦茶苛々するんだよ」

「あ、それ分かるわ。何度暗殺してもらおうかと思う位ムカつくのね、あの馬鹿」

「だな」

「い、いい過ぎですよ二人とも」

「じゃあさ、紫苑や麻理はあの駄名族、一緒に居て疲れないの?」

「「………」」

 

二人とも反論できないどころか、明後日の方を向いて誤魔化した

 

 

 

「そ、そんなに酷いんですか…」

「過去の遺産にいつまでも囚われているある意味では宦官と大して変わらない奴って言えば分かる?」

「あ~~…」

 

 

それを聞いて雛里も納得してくれた。

 

 

 

「それにしても…雛里がこんなことを知らないなんて思ってもみなかったな」

「そ、それは…少しの間、私は朱里ちゃんと一緒に旅をしてて…別れたのは袁紹さんの治めている冀州とは離れた村だったので…」

「? 誰だいそれは?」

「諸葛亮孔明、私と雛里ちゃんの同級生です」

「ブッ!? (こ、孔明って!?)」

「??? 咲夜様、どうかしたんですか?」

「い、いや…何でもないよ。それで…その子はどこに?」

「あ、はい。何でも朱里ちゃんは公孫賛さんの所に行くって言ってました」

「…その子は軍師なんだよね? 一人で大丈夫なの?」

「あ、はい。私と別れる前に丁度護衛さんを雇ってた商隊の人たちがいたので。その人たちと一緒に」

「そう、なら大丈夫だね(よ、、良かった…孔明がこっちに来なくて…本当に良かった…神様は……ああ、駄目。神はいない。だって俺はあんな変態を神として認めてないからな!! 運命は俺をまだ見捨ててなかったな!!!)」

 

 

外面は普通にしているが内心では盆踊りを始めそうな咲夜だった。

 

 

 

「二人目は劉表か…風、どう思う?」

「……ぐぅ~~……」

「だから寝るな」

「Σ おお、すいません。そうですねぇ…多分、この襄陽を取られて更には蔡瑁さんを捕縛されていることを理由に宣戦布告じゃないですかねぇ。もしくはその蔡瑁さんを返して欲しいというものではないかと」

「…ふむ、燐花は?」

「蔡瑁の返還でしょ? だって、劉表は優柔不断で有名な奴だもの。あいつが荊州を収められているのは有能な蔡瑁、張允、黄祖辺りが上手く補佐しているからよ。そのうちの一人が居なくなったのだから上手く機能しなくなってきたんでしょうね」

「成程ね…そのことを踏まえて皆はどう思う?」

「…あの、蔡瑁さんは今どうしてるんですか?」

「とりあえず刑務所という俺の設立した犯罪者や捕虜の人たちを捕える場所で軟禁してるよ。と言っても、他の場所の牢屋よりも待遇は良いし、食事もちゃんと与えられるから、問題はないと思うよ」

「そ、そうですか…なら、もし蔡瑁さんの返還を望む使者なら交換条件を見てから決めるというのはどうですか?」

「…ふむ、じゃあその使者に後で会おう。だけど念のため、忍び部隊を控えさせて紫苑にも一緒に居てもらう。その使者の目的が俺の暗殺だという可能性もあるからな」

「承知しましたわ」

 

 

 

 

「さて、最後の使者は帝様の使者だから直ぐにでも会わないとな…まあ帝様の名を語った十常侍の連中の使者の可能性大だがな」

「…あの咲夜様、そういうことはあまり公言しない方がいいのでは?」

「良いんだよ、俺は一応裏では帝様と劉弁様、劉協様の陰の相談役として雇われたんだから」

「「「………へ?」」」

「…それにしても今回の使者は【表】か…それとも【裏】か。どの道面倒な事になりそうだな」

 

 

 

今聞き捨てならないことがあったような気がする…

 

 

 

「あ、あの~…咲夜様?」

「ん、どうかしたの燐花?」

「今とんでもないことを言ったような気がするんですが?」

「お兄さん…皇帝様の相談役だったんですか?」

「陰のだけどな。表立ってそういう役職にはしないでくれって頼んだら、秘密で受け持って欲しいって頼まれたんだよ。だから時折、洛陽を訪れて相談に乗ってたんだ」

「…お兄さんって器が大きいのかそれとも天然なのか…判断しかねますねぇ」

 

 

 

 

結果的に言うと

1. 袁紹→面倒だから【断】、【否】、【拒】の三文字だけ送った

2. 劉表→風と燐花の読み通り、蔡瑁を返して欲しいという要求。とりあえずタダでは返さないという返礼。正直、劉表のことはあまり好きではない為。というか勝手に攻めてきて、自業自得なのに何で上から目線? なんて思っている咲夜

3. 帝→洛陽に来て欲しいという連絡。董卓や賈駆が会いたいと言っているようだ。ついでに帝自身も会いたいようだ。咲夜はそれを承諾して、後日向かうことを使者に告げた

 

 

 

という感じで処理した

 

 

仕事がすべて終わったので、皆で今日から入った人たちの歓迎会をすることにした

因みに樊城ではもう宴会騒ぎであろうと咲夜と麻理と紫苑は悟っていた

何故なら、一人祭りごと大好きな奴がいるからである

 

 

 

―――秋葉である

 

 

 

 

彼女は新しい人が入るたびに宴会を開くのだ

しかも可能なら自費で…

あり得ないほどに宴会や祭が好きなのだった

それが分かっているので咲夜達も大して止めはしない

まあしっかりと仕事をこなしてからやるので、特に咎めたりはしないのだ

…たまに飲み過ぎて翌日遅刻したりするが…

その際には、咲夜と紫苑のダブルの説教が待っている

しかも正座で…

 

最長記録は3時間である

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