Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第四十六話 スクラップヤード、老婦人

 

 

 

 

 

 宗教とは人の心の弱さを補う為にある。

小さい頃、お兄ちゃんがそういった自論を語っていたのを覚えている。

もちろんそれだけじゃなく、社会や人生の充実の為にも宗教は必要不可欠であったとも言っていた。

 

幼かった私はこんな質問をした。

お兄ちゃんは心が弱いの、と。

今考えて見れば酷く無神経な質問であることは間違いないが、お兄ちゃんは困ったように笑うだけで許してくれた。

 

結局、返事はくれなかった。

今でもあの質問に対する回答は気になるところではある。

 

 

 

さて、そんな事を考えつつも、私とED-Eは一旦レプコンを離れ、ノバック北にあるスクラップヤードへと向かっていた。

どうしてそんな場所へと赴くことになったかというと、単純にロケットに必要なパーツがそこにあるから、だそうだ。

 

そんな理由なら自分たちで行けばいいんじゃないかしら……という疑問をジェイソンの横で呟くと、彼は露骨に顔をそらしてシュガーボムを食べた。

 

 

今は夜の10時、出歩くには肌寒く、またろくに休みも取っていないために疲労が溜まっている。

よく考えたら一日中歩き回っているのだから、疲れるのは当たり前だ。

 

 

「Beep、Beep!」

 

 

ノバックを経由して北を目指していると、ED-Eが何かを見つけた。

敵や野生動物ではないらしく、遠くに見えるストリップ地区のきらびやかなネオンに反応しているらしい。

遥遠くからでも見えるあの光は、戦前のラスベガスを象徴するものだ。

今でもその光は、西海岸の人間を惹きつけ、成功と失敗を学ぶ場と化しているのは言うまでもない。

 

運がない私からすれば、あんなのは金の無駄である。

 

 

「ほら、行きましょう?ダメよED-E、あんなのに興味持っちゃ」

 

 

まるで幼い子供を諭す母親のようにそう言うと、ED-Eは頷くように上下して移動を再開する。

まぁ、いつかはあの光の中にも行かなくてはならない。

プラチナチップの届け先はストリップ地区だし……

ネオンを楽しむのはその時でいいだろう。

 

 

しばらく道路沿いを歩くとぽつんと建物が建っているのが見えてきた。

あれがスクラップヤードだろう。

 

 

スクラップヤードは見た目はその名の通りであるが、実際は機械の廃部品を売っている商売店だ。

おばあさんが店主をしており、多くのスカベンジャーがノバックを通るとついでに寄っていくそうだ。

 

 

「ごめんくださ~い」

 

 

倉庫の玄関を3回ノックする。

すると中から犬の鳴き声と、それをなだめる女性の声が聞こえてきた。

 

しばらく待っていると、扉が開き、おばあさんと沢山の犬が姿を見せた。

 

 

「あら、こんな時間に可愛いお客さんだこと」

 

 

「夜分遅くに失礼します、ご婦人。運び屋をしているものです」

 

 

丁寧に頭を下げ、挨拶する。

夜も遅いし、それぐらいやらなければ失礼だろう。

老婦人もまず初めに私の態度を観察していたらしく、何やら私の動作をしばらく眺めていた。

 

 

「ほーう?若いのにモハビ・エクスプレスの社員なのかい?まぁいいさ、とりあえず中にお入り」

 

 

そう言うと、老婦人は扉を開けっ放しにして家を兼ねた倉庫の中へと姿を消す。

正直、こんな時間だから煙たがられるか突き返されるかのどちらかだと思っていたが、そんな事はなかったようだ。

 

私は感謝の言葉を述べ、ED-Eと家の中に入る。

 

 

「ワン、ワン」

 

 

入るや否や、老婦人が飼っている犬が私を取り囲み、すりすりと体を擦りつけてくる。

グッドスプリングスにいたシャイアンを思い出させるその光景は、私の心を温めていく。

 

 

「こらこら、やめなさいな」

 

 

老婦人が困ったように犬たちを引き離す。

私としては久しぶりの野生の癒しなので、是非とも戯れていたいのだが……

 

 

「Beep!Beeeeeeeeep!!!!!!」

 

 

怒ったようにED-Eが犬たちを追い払おうとするが、一枚上手な犬たちはED-Eにのしかかり動きを封じるどころか、ベロベロとなめてボディを唾液でコーティングした。

 

 

「Beep!Beep!」

 

 

助けを求めるED-Eを笑顔で老婦人と眺める。

 

 

「面白いロボットだねぇ」

 

 

「ED-Eって言うんです。壊れていたところを私が直して……」

 

 

しばらく老婦人と談笑する。

30分ほど話し、いい関係が築けた私たちは、改めて商談に入ることにした。

 

老婦人と向き合いながら椅子に座り、差し出されたハーブティーを一口飲む。

 

 

「あの……ここにロケット用のスラストコントロール・モジュールは置いてますでしょうか?」

 

 

そう尋ねると、老婦人はしばらく思い出すように目を瞑る。

 

 

「……あぁ、あれかしら。ちょっと待ってなさいな」

 

 

老婦人は思い出したようで、大きなロッカーをゴソゴソと探る。

しばらく待っていると、夫人が手のひら大の機械のパーツを持ってきた。

あれがスラストコントロール・モジュールというヤツなのだろうか。

 

 

「これよこれ」

 

 

「ありがとうございます……あの、おいくらでしょうか?」

 

 

恐る恐る聞いてみる。

上目遣いで、子供が大人に甘える時と同じような仕草をした。《Child at heart》

 

老婦人はさっきのようにしばらく考えに深けて、

 

 

「250キャップでどうかしら?」

 

 

と提案してきた。

思ったよりも安い値段に少し驚いたが、喜んでその値段を受け入れ、懐からキャップを取り出す。

ちなみに、代金はジェイソンから500キャップほど受け取っているから負担にならない。

 

250キャップちょうどそろえると、老婦人に渡す。

 

 

「若いのにご苦労だねぇ」

 

 

「もう慣れっこですから」

 

 

苦笑いしてそう返す。

それから日をまたぐまで、私と老婦人はハーブティーを堪能していた。

 

 




遅くなってすみません
割と生活がハードでした……
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