side:明久
――7年前(当時:明久9歳)――
「よーし、今日もデュエルだ!!」
吉井明久はどこにでもいる普通の小学生であった、デュエルモンスターズが大好きな彼は
週に1度は近くの広場にやってきては、デュエルの相手を探している。
ただし勝率は……ご想像に任せます
「あれ? あの子は」
ふとベンチの方を見ると見覚えのない子供がいることに気づく。その子の手には
デッキケースがあることに気づいた明久は、いつものように対戦を申し込みに行った
「ねぇ君、いま1人? もし暇なら僕とデュエルしてよ」
「デュエル? うんいいよ!」
「僕、吉井明久って言うの。君は?」
「如月……キサラギ ユウキ」
これが2人の最初の出会いであった
「――――で、だいれくとあたっく!」
「うわああぁ!」
吉井明久 LP:573 → 0
「やったー! 勝った! これであーちゃんに193勝目だね」
「くそー、またゆうくんに勝てなかった。あとちょっとだったのに」
「そのセリフはせめて50ポイントでもライフを減らしてから言ってほしいね」
「ぐぬぬ、最初とその次のドローカードさえ良ければ勝てていた……はず!」
「それ全部悪かったってことだよね……」
その日から明久は毎週のように広場にやってきては、ユウキと一緒に日が暮れるまで
デュエルや、たわいない話なんかして遊ぶようになり、2人が友達になるのにそう時間は
かからなかった
明久は話すうちにユウキのことを知った、父親の仕事の都合で各地を転々としていること
つい最近この辺りに転校してきたこと、明久と同じデュエルモンスターズが大好きで
デュエルの話になると、いつも楽しそうな顔をする、そして何よりデュエルが強かった
さらに数ヵ月後がたち
「――――で、だいれくとあたっく!」
「うわああぁ!」
吉井明久 LP:5550 → 0
「ハーハッハッ! これで315勝目だ!」
「ぐぬぬ、初期手札と、最初と、その次と、そのまた次のドローカードさえ
良ければ勝てていた……はず!」
「それ全部悪かったってことだよね……ていうか前より言い訳がひどくなっているし」
「おかしいな調整に調整を重ねたのに、何がいけなかったんだろう?」
「それにしてもあーちゃんって負けず嫌いというか、よく頑張るよね。
自分で言うのもなんだけど、学校じゃあ強すぎて挑んでくる人だっていなくなったのに」
「うん、だって強くなるには自分より強い人とデュエルする方がいいからね」
「ふーん、まぁ負けを恐れて戦おうとしないうちのクラスの連中より、
負けても前に進もうとしている君の方が好きだな……うん」
「? うん、ありがとう?」
「でもそんな腕じゃあ、あーちゃんの夢が叶うのはまだまだ先だね。
確かプロデュエリストになることだっけ?」
「ううん、それも目標の一つだけど僕の夢は世界一のデュエリスト、
デュエルキングになること! その為にはまずプロデュエリストにならなくちゃ」
「そっか、ならもっと強くならないとね」
「もちろん、ゆうくんもう1回デュエルしよ」
明久はユウキとデュエルするのが好きだった、この時間がずっと続いてほしいとさえ思った
しかし、そんな日々も長くは続かなかった
「……えっ? ゆうくん転校するの」
「うん……パパのお仕事の都合でね。だからあーちゃんに会うのは今日で最後になるの」
「どうして、どうして早く教えてくれなかったの!」
「だってあーちゃん、知ったら絶対に気にしちゃうでしょ? 君はすぐ顔に出るからね。
できるだけ不安にさせたくなかったんだ」
「だったら約束しよう。こんど会う時は僕、もっと強くなるからそしたら
お互い本気のデュエルをしよ」
「なっ、ならこっちも次に会ったら君に言いたいことが、あっ、あるんだ。
ずっと前から伝えたかったことが」
「うん? 今じゃダメなの」
「……今はダメ、今はこの気持ちに整理をつけたいから――」
「? そっか、ならわかったよ約束」
頬を赤く染め、照れくさそうにするユウキの様子に一瞬、違和感を感じたが明久は
特に気にせず約束の証として小指を差し出す、ユウキも自分の小指を出し指切りをする
「うん、約束」
この時のユウキの少女のような笑顔が明久の記憶には印象的に残っていた
これが明久が覚えているユウキとの最後の思い出である
――――――◇――――――◇――――――◇――――――◇――――――◇――――――
第18話「過去とナンバーズと涙の再会」
「ひさしぶりね、あーちゃん」
「君は……っ!!」
小さい頃に呼ばれていたあだ名を聞いた瞬間、脳裏に幼い頃の記憶が過ぎった
「まさか君は如月 ユウキ……ゆうくんなの!?」
「またその名で呼んでくてるのね。なんだか懐かしいわ、いつ以来かしら
7ヶ月……じゃない7年ぶりね」
「……? ……?」
彼女からの肯定の言葉、明久がいだく疑念はより一層深まった……それは
(子供の頃のゆうくんは男の子で、けど目の前にいるのは女の子?
昔は男の子で、今は女の子。どういう事だ!? まさか僕のあふれる性への探究心が
視力を凌駕し幻覚でも見せているとでもいうのか!)
「(ここは試しに)ふん……いたっ!」
「……なにしてるの?」
夢か幻か確かめるため、明久は試しに自分の頬を思いっきり殴ってみる。
だがバチンという心地よい音と、頬に鈍い痛みが走るだけで現実は何も変化しない
そんな明久の突然の行動に彼女は首をかしげる
(落ち着くんだ吉井明久。まずはCOOLになるんだ、そして状況を整理しよう
まずこれは夢でも幻覚でもイマジネーションでもない、まぎれもない現実だ
そして僕の記憶にも問題ない……と思う。まさか! ゆうくんって実は――)
明久が結論を出そうとした瞬間、それに待ったをかけるものが現れる
《待つんだ明久。結論を出すには、まだ……早い!》
(お前は僕の中の悪魔!? どういうことだ!?)
《考えても見ろ、お前みたいなバカでブサイクでスケベで甲斐性なしなやつの友人が
こんなに可愛い女の子のわけがないじゃないか!!》
(くっ、悪魔のくせに痛いところをつく……いやいや、騙されないぞ!
ならこの状況はどう説明するんだ)
悪魔の正論(?)に明久の心は揺らぐ、そこに救いの神が現れる
《明久、悪魔の言葉に惑わされないで!》
(君は、僕の中の天使!)
《相手をよく観察して、そして思い出すんだ! そうすれば答えは出てくるはずだよ
……だって真実はいつも1つだから!》
(さすが天使、的確なアドバイスをありがとう。僕、やってみるよ)
「…………」
「ん? どうしたのあーちゃん、そんなに見つめて」
「っ!!」
天使の言葉通り明久はまずは少女(?)を観察する、そして探し出す「たった一つの真実を」
しばらくの間考え込む。すると明久の脳に電流が走った
《明久よ、答えはでたようだな》
(僕の中の天使、導いてくれてありがとう。なんだ、わかれば簡単なことじゃないか)
「どうしたのあーちゃん? さっきから人のの顔をジロジロと。はは~ん、
さては綺麗になった、あたしを見て照れてるんでしょ」
「……うん、驚いてはいるよ。まさか君が――――」
明久は平均以下の脳みそで考え抜き、そして見出した「たった一つの真実」を告げる
「まさか君に……女装の趣味があったなんて」
「…………へっ?」
明久が導き出した答え。それは「女装」である
なぜ彼がこのような答えにたどりついたか本人しか把握できない、
無論、そんな奇想天外な回答がくるとは思っていなかった彼女は戸惑いながら反論する
「ちょ、ちょっと待ってあーちゃん! まさか君、あたしのこと……男だと思っていたの?」
「え、違うの?」
「違うわよ! この格好みればわかるでしょう! だいたい、どうして女装って
突拍子な発想が出てくるのよ!? まさか君の知り合いにそんな変態でもいるの!?」
少女はスカートの裾をつまみ上げ自分が女であることを強調し明久に抗議する
「いや~さすがにそれはいないけど、でも女の子なのに男だと言い張る人なら
……いるかな」
「なにそれ、ちょっと見てみたい!」
「そりゃあ小さい頃のあたしは少し男勝りな感じだったし、服装も男の子ぽくしてたけど、
今まで気づかなかったの?」
「う~ん、そういわれるとそんな場面もあったような~でも、なかったような気も」
「気づきなさいよお馬鹿ッ!! 誰がどう見ても一目瞭然でしょ」
そう言って、彼女は自分の胸部を強調させる。だが悲しいか、
その膨らみは女子高校生の平均バストサイズ(ムッツリーニ談)と比べ……あまりに乏しい
「と言われても。昔と全然変わってないような――」
(ムカッ)
明久の口からでた何気ないその一言で、彼女の中で何かが切れた
「なら、さわって確かめて見なさいよ!!」
「なっ!!」
激怒した彼女は、抵抗する暇もなく明久の手を掴み、それを自分の胸に押し当てる。
手から服越しに伝わる温もりと感触み明久は驚愕する
ペタッ ペタリンコ ペッタンコ
「(えっ、ええ!) ……これが、胸!?」
明久の口から思わず漏れた言葉で我に返る彼女。同時に、自分が何をしているのかを
思い出した彼女の顔はみるみる赤くなっていく
「なっ……なにするのよ。この変態!!」
ユウキは明久にビンタを繰り出した
ユウキは明久に右ストレートを繰り出した
ユウキは明久に目潰しを繰り出した
「グガッ!! イッ!! ムゥ!! 目が、目がぁっ!」
「ええ、そうよ。あたしは数年ぶりに会えた男の子に当時から男と間違われて、
錯乱したうえに、女とハッキリさせる為に胸を揉ませた挙句、最後には暴力を振るう
みっともないよ女よ、笑えばいいでしょ! 笑えばいいわ! あーっはははって!!」
彼女の切ない叫びが公園中に響く。うっすら涙が見えるのはきっと光の加減のせいであろう
今この公園に高笑いをしながら自虐する少女と、目を押え転げまわる少年に、気絶している少年、
さらにその様子を唖然と見ていたもう1人の少女という奇妙な光景となっていた
「お、お姉ちゃん。落ち着いて」
と、ここでもう1人の少女がユウキに呼びかける。その声にユウキの方も
我に返り、仕切り直しとばかりに再度明久に笑みをみせる
「まぁ何はともあれ、あーちゃん。また会えてうれしいわ」
(それは僕も同じだ、だってさっきから嬉しくて涙が止まらないよ、あと激痛も!
僕はいったいどこで選択を間違えたって言うんだ! 誰か教えてくれ!!)
《ふっ、なら明久。いいことを教えてあげるよ、誰かが言った言葉だが
『悪魔の囁きは時として天使の声に聞こえる』とね。よかったじゃないか
これで1つ利巧になった》
「天使いいいぃいいいいいぃ!!」
「ど、どうしたのあーちゃん!? 涙を流したかと思ったら急に大声をあげて」
「それはお姉ちゃんが、この人に目潰しをしたことが元凶だと思うけど」
「それはそうだけど、ええい!! このままじゃあ埒があかないわ、ほらあーちゃん、
いつまでも泣いてないで早く案内しなさい。それに何時までも、
その子をそのままにしておいたら風邪ひいちゃうよ」
「わかったよ、もう」
理不尽な怒りを向けられるも、彼女の言う通り6月をすぎたとはいえ
夜はまだ多少冷え込む時期である
「よいしょっと、ん……あれ? あれれ?」
ヒロを担ぎ上げようとする明久だが、いくら力をいれても
彼の身体は持ち上がるどころか、まるで地面に固定されているみたいに
微動だにしないことに明久は不信に思う
「ゴメン……あーちゃん、やっぱり少し休みましょう。
だから…………ベンチを運ぼうとしないで」
15分の休憩で明久の視力も回復し、途中ではぐれたツユリとは携帯で連絡をとる
どうやら道に迷っていたので、なんとか場所を聞き出してから合流し、
ツユリにはある程度の事情を説明してから移動をし明久の家に着く頃には、
すでに夜の10時を過ぎていた
リビングに集まった明久達は、明久を中心として時計回りに、ユウキ、その妹、
ヒロにツユリという配置になって精霊たちも実体化している
『小僧、体調はもういいのか』
「……ドロロどうしたの何か怒ってるみたいだけど」
「それは気にしないで、ドロロったら約束の限定プリンが買えなかったから
気が立っているだけだから。明日買いに行くって言ってるのに聞き分けが悪いのよ」
『ちっ、ちげーかんな! そんなこと気にしてなんか……ちょっとしかねぇよ!』
「そうなんだ。うん、まだ本調子じゃないけど大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
『そそそ、そんなんじゃあねぇ!! そもそも俺は全然、全く! これっぽっちも!
心配なんかしてなかったつーの!! なっ、ツユリ』
「(本当は目が覚めるまで片時も離れようとしなかったけど)ウン、ソウダネー」
ユウキが言った通り、しばらくするとヒロ達は目を覚ました
まだ本調子ではないにしても会話や歩くくらいには回復したらしい
……ただ、明久はときどきヒロがお腹を抑えているのを見るたびに
それが未だに姫路さんの必殺料理のダメージが残っているのか、
それとも闇のデュエルとやらの副作用的なのか不安になる
……できれば明久としては後者であってほしい
「そういえば自己紹介がまだだったわね。あたしの名は如月 優希(キサラギ ユウキ)、
あーちゃ……吉井明久とは、まぁ昔の友達ってところ
で、こっちは妹の如月 比奈(キサラギ ヒナ)よ」
「よ、よろしくお願いします」
「殆どが知っていると思うけど、僕は吉井明久。こっちは精霊のスターダスト」
『ワタシはアキヒサとは出会ってからまだ日は浅いが、まぁよろしく頼む』
「……遊佐 弘人です」
『僕はマジスです』
「私は雨宮露理、こっちは相棒のドロロよろしくね!」
『よっ、俺の名はドゥローレンだ。ドロロなんてセンスの無い名前は……気にすんな』
「えっとあなたは……見かけないモンスターですけど、犬? の精霊さんですか?」
『違うトラだ! トラ! 間違えんじゃねぇ!!』
「ヒッ! ご、ごめんなさいっ!」
『あっ、いやそんな謝らなくても』
自分がトラであることを強く主張するドロロ。
明久の時もそうだが彼にとって犬や猫に間違われることをかなり気にしているらしい
だが怖がらせるつもりはなかったが、予想外に驚くヒナに
彼は内心ショックを受け、つい反射的に謝ってしまう
「ゴメンね、ウチのドロロが驚かせちゃって、でも安心して、顔は怖いし口は悪いし
デリカシーなくて、食い意地ばかりはってるけど本当はあれで優しいところもあるから」
「そうそう、ドロロはあんな顔しているけど意外と傷つきやすい一面もあるからね」
『そうだよ! ドロにーちゃんは、怖いのは顔だけで意外と優しくて
面倒見がよくて、案外寂しがり屋なんだよ』
『お、お前らァ。……グスン(な、泣いちゃあいねぇぞ!! これはただ、
目に汗がたまっているだけだんだ!!)』
『こちらの者が騒がせて申し訳ない。ではユウキそろそろ話してはもらえないだろうか』
「巻き込んでしまった以上、何も話さないわけにはいかないよね。
いいわ、あたしが知っていることなら、何でも答えるけど何か聞きたいことはあるかしら」
「じゃあまず、僕から」
最初に切り出すヒロ
「影山……僕とデュエルしてた男なんですが、あれからどうなったんですか?
それに彼が言ってた『闇のゲーム』っていったい? なぜ如月さん……妹さんが持ってた――」
「まった、あたし達のことは名前で呼んでちょうだい。苗字だとややこしいし、
それと敬語もなし、あたし達は君らと同い年なんだから」
「……わかった。そのヒナさんが持ってた『ナンバーズ』ってカード、
どうしてそれが狙われているの?」
「まずは順番に説明するね。まずあなたが言う男のことだけど、
残念ながら問い詰めようと思っていたのだけれど、君が気を失っている間
少々アクシデントがあってね、あたし達が気づいた時にはすでに姿はなかったわ、
知っていることを色々吐き出させようと思ったのに」
「そ、そうなんだ」
「次にナンバーズについてだけど、その話をする前にあーちゃん、覚えてる?
あたし達のパパのこと、昔話したことあると思うのだけど」
「えーと確か、人気がない場所や民家なんかに押し入って色々調べてる人だったかな?」
明久の的はずれな回答に優希は、額に手を当て軽く嘆息した
「……はぁ、あーちゃんに少しでも期待したあたしがバカだったわ、
それじゃあ物取りみたいじゃない。あたしのパパはデュエル考古学なの」
聞きなれない言葉に首をかしげる明久とツユリ、そこにヒロが簡単な補足をする
「いろんな国の伝承や、おとぎ話なんかを調べて、それをモンスターのモデルに
したりする、簡単言うとデュエルモンスターズの資料を集めている人なんだよ」
「「そーなのかー」」
「これくらい授業を聞いていれば誰でも知っていることなんだけど
明久くん、ツユリちゃん真面目に授業聞いてる?」
「「うっ……」」
「紐解けば、デュエルモンスターズの起源と言われているのは
三千年前の古代エジプトから発見された石版を参考にして作られているの、
それを調べるのもパパの仕事だったの」
「だった……」
「ある日、いつものように仕事に出かけたパパはそれっきり帰ってくることは無かったわ」
捜索願いは出したけど、1年たっても手がかりは一つもなく、捜査は打ち切りになってしまった」
「「「……」」」
「でもある日ある物が届いてきてね。ヒナ、見せてあげて」
「はい、約1ヶ月前に家のポスターの中に入っていたんです」
姉にいわれヒナがポケットから取り出したものは、黒い封筒であった、
ただ本来なら差出人の名前、切手などの身元を証明するものはついていない
優希は封筒の中身を取り出すと中身は封筒と同じ黒い紙状のものだった
「……手紙? 何が書かれていたの」
「『ワタシハ如月博士失踪ノ真相ヲ全テを知ッテイル、真実ガ知リタイノデアレバ
ナンバーズノカードヲ集メヨ。ソレガ博士ニ近ヅク、ユイイツノ方法ダ』って、
それとカードが1枚入ってたわ」
優希が取り出したのはエクシーズモンスターの証である黒枠のカードそこには
『No.39 希望皇ホープ』と書かれていた
「差出人不明、出処不明、怪しさ全開な内容だし信用していいのかも解らない。
……それでも、やっとパパを見つけ出す手がかりが手に入った」
「これが全ての始まりだったんです」
「それから1週間経った頃かな、ある男の子があたしにデュエルを挑んできてね
普段はおとなしくて印象が薄かったのに、デュエルになると急に好戦的になったの
でもあたしが驚いたのはそんなことじゃなく、その子がデュエル中にナンバーズを
使ったことなの」
「えっ!」
「最初は驚いたわよ、いきなりデュエルを仕掛けてきたと思ったらダメージは実体化するし
手掛かりであるナンバーズは出てくるし、顔芸なんかしてくるし大変だったわよ
……まぁ勝てたんだけどね、余裕で」
「か、勝てたんだ」
「あたしはその子から情報を吐き出させ……じゃなくて、教えてもらったの。
で、これがその原因」
トントンと指先でテーブルに置いてあるナンバーズカードを指す
「それが……ナンバーズなんだね、ゆうくん」
「そう。ただ情報を引き出せたのはここまで、ナンバーズが、誰がどこで作ったとか
どこから広まったのかとか、詳細は一切わからなかったわ」
「そうなんだ」
「けどこれだけは言える、ナンバーズは不思議な力があって、持ち主も
その力を使えることができるのよ。遊佐君が相手した時に闇に飲まれたのも
その力の影響ね、例えるなら『闇を操る程度の能力』かしら」
((((なぜ程度をつけるの?))))
一瞬思った明久たちの疑問など気にせず優希は話を続ける
「それだけじゃないこのカードの中には憎悪や、欲望といった人間の負の感情を
増幅させる力があるの、それにデュエル中のダメージを実体化する力もある。
といっても見た目ほど外傷はなく、極度に疲労するくらいなんだけど
『闇のゲーム』っていうのは、いわばナンバーズを持つ者のみが行える
特権みたいなものかな」
「そんな!? たかがカードにそんな力があるはずがない、そんな――」
「『非常識な』と言いたいんでしょうけど、あーちゃん、でも君はその目で見たはずよ。
それに遊佐君なんか実際に体験だっていている。君が言う『非常識』ってやつをね」
「っ!!」
「この闇のデュエルではダメージが本物になるのは、そういう未知な力が働いているの
あたしはそれをデュエリストの力を感じる力『フィール』って呼んでいるわ」
「……フィール、確かそんなことを相手も言ってた」
「このフィールが弱いとデュエルでのダメージも大したことがない、けど逆に言えば
フィールが強ければ、与えるダメージも大きくなる」
ヒロはここでずっと気になっていた部分が理解できた。
デュエル中自分の攻撃が全く効いていないように見えたのは、そのフィールが弱かったから。
なら、最後だけダメージが与えれたのは
「そのフィールって、どうやって引出すことができるの?」
「さぁ?」
「「「えええええっ!?」」」
優希のあっさりとした答えに想わず大声をあげる明久たち、
その反応をあらかじめ予想していたのか少々頬を膨らませて優希は話を続ける
「そんなこと言ったって、あたしだってよくわかってないんだもの。名前だって
ただ便宜上勝手にそう名づけただけだし、……それになんかかっこいいし」
彼女の意外な一面に呆れるような視線を向ける中、
優希はその視線に気づかないふりをしつつ、コホンと咳払いをし話を戻す
「あたし達がこの町に来たのは、ナンバーズを流通している者がいるって噂を聞いてね。
今度こそ手掛かりをつかんで見せる! ……って意気込んで来たのはいいんだけど、
これが一筋縄では行かなくて」
「ときどき、私達のナンバーズを狙う人達が現れてきたんです。
どうやら私達の行動はあちらにも知られているみたいで」
「それじゃあ、僕達を襲ったあの男は」
「そっ、ナンバーズの力を欲している者の1人ってわけ。
敵を撒くために二手にわかれてみたんだけど……考えが甘かった、
どういう形であれ、あなた達を巻き込んでしまったのだから
……本当ごめんなさいっ」
優希とヒナは頭を下げヒロとマジスに謝罪する
「……それと、ありがとう。妹を救ってくれて」
「2人とも頭を上げて、僕は気にしてないよ……それにお礼なら僕じゃなくて
マジスに言って、ヒナさんの声を聞いて駆けつけたのはこの子だからさ」
「ふふっ、そうですね。ありがとうございます」
『べっ、べつにお礼なんていいよっ。確かにあのデュエルは怖かったけど、
ヒロが一緒だったし、ボッ、ボクは大したことなんてしてないよ』
照れくさそうにあたふたとするマジスを皆が微笑ましくみている中
はっ、と何かを思い出したように明久が言った
「そういえばどうしてゆうくんが、僕の家の住所を知っていたの?」
「これも風の噂で聞いた話だけど『文月学園にとんでもないバカが入ってきた』って、
これを聞いた時あたしは確信したわ。これは絶対、吉井明久―――あーちゃんのことだって!!」
「……それで断定される僕って一体……!?」
「そうしてこの町を探索するにあたって、思わぬ形だけど君の力を借りようと思った
あたしは子供のころの記憶を頼りにこうしてやってきたってわけだよ!
……まぁ道中、追手に見つかったのは計算外だったけど」
「…………」
「これであたし達が知っていることは大体こんなものかな」
話し終えた優希は一息つける、明久が用意した水を口に含み喉の渇きを潤す
その間は誰も誰も一言も喋らず、時計の秒針が動く音がやけに大きく聞こえる
しばしの沈黙、最初に口を開いたのは優希だった
「ねぇ、あーちゃん。突然なんだけどお願いがあるの」
「なに?」
「少しの間だけでいいの。妹を……ヒナの面倒を見て欲しいの」
「えっ!?」
「お姉ちゃん!? 急になに言い出すのよ!?」
「ヒナ、急にじゃないよ、やはりあなたを連れて行動をするのはそろそろ限界だと
前から思っていたことなのよ。現にあなたは危険にさらされ、関係ない人まで
危害が及んでしまった。あなただって本当はわかっているはずでしょ?」
「……それは、そうだけど……でもっ!」
「別にあなたを攻めているわけでもないし、邪魔だと思っているわけじゃないの。
ただ可愛い妹をこれ以上危険な目に合わせたくないっていう、姉としてのわがままなの」
「お姉ちゃん……」
「いい子ね。というわけで、あーちゃん突然来て何を言っているんだと思うけど
それでもお願いしたい。しばらくの間だけでいい……ヒナを守ってほしい。
こんなことは君にしか頼めないんだ」
「(……ゆうくん、こんな僕を頼ってくれたのは嬉しい。だけど)
ごめん、ゆうくん。君のお願いはきけない」
明久の返答を聞いた優希の表情が曇る。でもそれも一瞬のこと
彼女はすぐに持ち直し、気にした様子もなくただ寂しげにつぶやく
「……そっか、急にこんなお願いされても困るもんね。友達に怪我までさせて
厚かましいにも程があるよね……ごめんなさい今のは全部忘れて、もう邪魔だよね
そろそろ帰るよ」
「待って!!」
帰ろうと立ち上がる優希、明久は咄嗟に優希の手をつかんでそれを止める
「何か勘違いしてない? 僕はゆうくんの手伝いをするつもりだよ」
「……はぁ?」
明久が言った意味が一瞬理解できず、思わず間の抜けた声が漏れる
「何言ってるのよ、あーちゃん!! あたしの話を聞いてなかったの。危険なのよ!!」
「うん、それはさっき聞いた」
「ならどうしてよ!?」
「聞いたからこそ引き下がれない、それが危険だってなら尚更だよ。
女の子の君にそんな危険な真似はさせられないよ」
「そ、そんな、かっ、可愛らしい女の子だなんて!?」
明久の発言に急に頬を赤くし視線を右へ左へと向けだす優希
「と、唐突に変なこと言わないでよ。どうして、そんなに構うのよ!? あたしが女だから」
「それもあるけど……君のことが大事だからに決まってるじゃないか!」
「ッ!!」
(あたしのことが大事って、まさか告白!? あわわっ、どどどどど、どうしよう
こういうのはお互いの気持ちが大事だし……いやいやあたしは昔からあーちゃんのことがす――
ワーワーッ!! おおお、落ち着くのよ如月優希! これはあーちゃんの気持ちを
聞くまたとないチャンスだわ!)
「あーちゃんにとって……あたしってなに?」
「……言わなきゃだめ?」
「……言ってくれなきゃ、言葉にしないと伝わらないよ」
優希はそっぽを向いて答えた。時々ちらちらと明久を見ては何かを期待しているようだ
因みにツユリとヒナは、顔を真っ赤し、手で顔を隠しているが指の間からしっかりと
見ており、ヒロは状況がわからず首を傾げていた
「………」
明久としては口にするのは恥ずかしいが、優希の真剣な眼差しを向けられ、
答えないわけには行かない意を決した明久は難しいことなど考えず正直に答えることにした
――自分の気持ちを
「僕にとって君は大事な―――」
「……大事な?」
「(たとえ、今まで性別を間違えていたとしても。この気持ちに嘘はない)
―――大事な友達だからだよ」
「そ、そんな困るわ! まだ心の準備だって出来てないしまずは友達から…………うん?
とも、だち?」
「うん、僕たちの間でどんなことがあろうと、僕とゆうくんは変わることのない
永遠の友達だ。友達を助けるのに理由なんかいらないでしょ?
……だから手伝わせてよ」
「……………はぁ」
(あれ、急にため息なんかつかれたんだけど!?)
「……期待してたのに、あーちゃんのばぁか」
何か呟いてるようだけど、その声は小さすぎて明久にはよく聞こえなかった
「そういうわけだから、ヒロ達は気にしなくていいから――」
「その事なんだけどさ明久くん、僕も協力させてほしいんだ」
「何考えてるのさヒロ!! 話を聞いてなかったの、これは危険なことなんだよ!?」
「あーちゃん、いま君が言ったことをよーく思い出してみて。
ゼェ~タイ、聞き覚えがあるはずだから」
「それは、そうだけど……ヒロどうしてだい?」
「あたしも理由を聞かせてもらえないかしら、あなたは偶然に巻き込まれただけよ。
今ならまだ間に合う、どうして危険を承知で首を突っ込むのかしら?」
ヒロは少しだけ考える素振りを見せ、そして応える
「うん、僕はナンバーズと戦ったからこそ少しだけわかった。あれが危険な存在であることを
いまも思い出すだけでも体の震えが止まらないよ……あの恐怖と痛みは」
「ならこれ以上関わらなければいいじゃない」
優希はさらに質問を投げかける
「でも、僕が戦った相手……影山っていうんだけどその人……デュエル中に笑っていたんだ、
まるで相手を傷つけること、そのものを楽しんでいるみたいに」
「…………」
「僕はデュエルモンスターズが大好きだ、それを悪用するなんて絶対許せなんだ。
また闇のデュエルをする自信なんてないけど。それでも僕にできることをやりたいんだ!」
「もちろん私も協力するから! 皆で協力すればきっとお父さんのことだってわかるはずだし
ドロロはどうする?」
『へっ、聞かれるまでもねぇ。ようやく面白くなってきたじゃねぇか、
俺はこういうのを待っていたんだ。暴れられるならなんだっていいぜ!』
「で、本音は」
『そいつらは俺のダチ達を痛めつけたんだ、落とし前は付けねぇと俺の気がすまない……って!
何言わせるんだ!! バッキャロウ! ……え~とその、そうだプリン!!
あくまでプリンの敵のついでだつ・い・で!! そこんとこ勘違いすんじゃねぇぞ!!』
おもわぬ誘導尋問? により本音が漏れたことを必死に否定するドゥローレン、
しかしいくら彼が否定しようと顔を真っ赤にした状態では、何を言っても説得力など
欠片もない
ちなみに彼がいう期間限定プリンは販売は今日までであり、
プリンのことで怒っているのも本当のことである
「ドロロォ~、顔が真っ赤だよ。まったく素直じゃないんだから」
『バッキャロウ!! これは……その~え~と……そう、そうだ!
日差しのせいでそう見えんだよ!! あとニヤつくんじゃねぇ!!』
「いや、今は夜だから。その言い訳は無理があるよ」
『~~~~~っ!! うるせぇ! うるせぇ!! うるせぇ!!!』
「……でもいいの。あなた達だって危険な目にあうかもしれないんだよ?」
『あん? んなもん関係ねぇ、その……南蛮漬け、だっけか?
そいつを狙っているやつがいるんなら好都合ってもんだ、向こうから
来るってんなら返り討ちにすりゃいい ……小難しいことは
その後考えりゃあいいんだよ!!』
「それ言うならナンバーズだよドロロ、それに戦うことが全てってわけじゃないしね
私達に出来ることは他にもあるよ」
「お姉ちゃん、私に出来ることがあるなら何でも言ってよ! もうお姉ちゃんにだけ
無理はさせないから」
「だからゆうくん、君が全部背負う必要はないんだよ」
「……まったく、バカなのはあーちゃんだけかと思ってたのに。
みんな……本当にバカなんだから」
口では馬鹿だと言うが、その言葉に呆れの色はなく。思わず、微笑みが浮かんでいた
「3人の気持ちは嬉しいわ。だから皆にこのカードを渡しておくわ」
「「「……?……っ!!」」」
優希はそう言うと、明久たちにカードを1枚ずつ差し出す。首をかしげる明久は
渡されたカードを見て目を丸くする、それはさっきまで話していたナンバーズだったからだ。
ヒロとツユリの様子を見ると彼らの表情を見る限り、2人にもナンバーズが
渡されたのだろう
「これから戦うにしてもナンバーズの力はある程度知っておいて欲しいからね。
そのカードはあたしが手に入れたものよ、変な力とかはないから安心していいわ」
「そっか、なら遠慮なく使わしてもらうよ」
「ありがとう、あなたのこと優希だからこれからはゆきちゃんって呼ぶね!
あたしの事もツユリって呼んでいいから」
「…………」
「? どうしたのかな、あーちゃん?」
「いや……気のせいかな? 僕のナンバーズ、2人のと比べるとなんだか効果が使いにくいような」
渡されたカードは、一応明久のデッキで召喚出来ないという訳ではない、
ただ他の2人に比べ召喚条件の難しさに比べて効果及びステータスが低い
――いやむしろ貧相といっていい疑問を持った明久に対し、
優希は『とても爽やかな笑顔』でそれにこたえる
「ははは、あーちゃん。まさか君は、あたしが『未だに』男の子と間違えられていたことを
根に持っていてその仕返しに、『ワザと』使いどころが難しいナンバーズを渡したなんて
……思ってないでしょうねぇ」
顔は笑っているが優希だが、その眼だけは欠片ほども笑っていなかった、
それを見た明久は滝のように汗を流す。そして彼の防衛本能が警報を鳴らしている
「これ以上その話は触れるなっと」
「そ・そ・そ・そ、それは……」
その後、明久の説得と謝罪の熱意が伝わり「今度、買い物に付き合う」という
約束をすることで事態を収集したのだった
お・ま・け
「明久くん、シャワー借りてもいい?」
今後をどうするかある程度決め、ひと段落ついた明久のもとにヒロが尋ねる
すっかり忘れていたがヒロも前回の闇のデュエルの影響で、顔も服も汚れていたのである
顔は話し合いの前に洗い流したが、それでも服までは洗うことができずシャツの下は
いまだ汗や砂がはりついているのだ
「うん、いいよ。バスタオルはあるのを使っていいし。着替えも僕のでよければ後で
持っていくよ」
「ありがとう、じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
明久の了解を得たヒロは脱衣所の方へ向かう、そんな彼と入れ替わるように今度は優希が
やってきた
「あーちゃん、ちょっとお願いがあるんだけどいい?」
なにやら深刻な様子でゆうくんが尋ねてきた。お願いってなんだろう
「あーちゃん、あのね……今晩泊めてもらいたいんだけど」
少しのあいだ間を空け、少し顔を赤らめ恥ずかしそうにしながら
口を開くゆうくん――――って!!
「いやいやいや! まずいでしょ女の子が男の家に泊まるのは。
それならホテルとかに泊まった方がいいでしょ!」
「あいにく荷物は財布と着替え、それにデッキくらいしか用意してないのよ
それにいくら追手の可能性が低いとはいえ、こんな時間に年頃の女の子が外をうろつくのは
危険でしょ」
それはそうだけど。いやそれ以前に何でそんなに荷物が少ないのさ、
もっと色々必要なものあったでしょ!!
「おじいちゃんが言ってたわ『ちょっとのお金と、明日のパンツがあれば人は生活できる』って、
ほらお金も明日のパンツもある全然問題ないわ!」
「いやいやいやいや!! その理屈はおかしいでしょ! 胸張って言うことじゃないからね
(まぁその胸はないんだけど)」
「まぁ最悪、妹だけはホテルに泊めるとしても、予算的にはそんなに余裕もないのよ
……あと今失礼なこと考えてたでしょ」
なんてするどいんだ!
「だからって。えーっと、その、そう! 僕の家散らかってて参考書(エロ本)とか」
「泊めてもらうんだから、掃除くらいするわ。……(胸の)大きいのは特に念入りに徹底的、ね」
美波と同じくらいの殺気っ!! 他に理由はないのか
「僕の食生活偏ってて―――」
「塩と砂糖でしょ、それくらいなら付き合うわ。ダイエットにもなるし」
「それ無茶でしょ! (僕が言うのもなんだが。くそっ、もう思いつかない!!)」
僕がたじろいでいる間、脱衣所からはバサバサっと衣服を脱ぎ捨てる音が聞こえる
……あれ? なにか重要なことを見逃している気が
「――――あっ! まずい!」
「っ、どうしたの! あーちゃん」
ようやく思い出した明久は走りだす。優希は明久の突然の反応に驚いているが、
今は事情を説明している時間などはない。明久は簡潔に要点だけ伝える
「このままじゃ……ヒロが危険なんだ!!」
それだけを言い残し、明久はそれ以上振り向かずにバスルームへと向う
「ヒロ、待って――」
「えっ? どうしたの明久く――」
だが時すでに遅そかった。バスルームから聞こえるドア越しの声。
その少し後に蛇口をひねる音が鳴った――そして
「ひゃああああぁあああああぁっ!?」
「ガス止められているから水しか出ない……って遅かったか」
部屋中にヒロの悲鳴が響きわたる
「ヒロくん! いったいさっきの悲鳴はなんなの!?」
「危険って、言ってたけど……まさか敵襲!?」
「大丈夫ですか!?」
だが悲劇はさらに続いてしまう。今のヒロの悲鳴を聞きつけ優希にヒナにツユリ
女性陣全員がバスルームに来てしまった
「「「えっ?」」」
「「あっ」」
そこで彼女たちが目にしたのは、
――艶やかに濡れた髪、ほんのり紅潮した頬に雫が滴る白い肌、
ヒロの……一糸まとわぬ生まれたままの姿であった!
そんな誰得だよ! っと言いたくなる光景を目撃した彼女たちの反応は
……3! ……2! ……1! ……0
「「「きっ、きゃあああああああああああああああっ!!!!」」」
「いやあああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
声帯が破れんばかりと叫ぶ彼女たちと、それに迫る声量で少女のごとく叫ぶ
ヒロの悲鳴がマンションに響き渡ったのである
その後、ガスが止められていることを知った如月姉妹とツユリは顔を真っ赤にしたまま
ツユリの家にと飛び出していったのである。……追ってが来る? ……こんなに夜遅くじゃ危険?
明久は心配して説得するも、「お風呂には入れない苦痛に比べたらどうってことない」という
逞しい発言とともに行ってしまった
あとに残ったのは部屋の住人である明久と
「しくしくしく……僕もうお婿にいけない」
なにか大事なものを色々なくした悲しき少年がいた
おわり
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