バカと精霊とデュエルモンスターズ   作:鯖Enter

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 遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今回、年末の投稿に間に合わなかったため、あのカードが登場します。
ご了承ください


第24話「バカと意地と踏み出す勇気」

 

 

side:音無マコ

 

 

 私、音無マコは自分で言うのもなんだかなと思うけど、積極的な性格ではない

クラスに1人は目立たない地味な子がいるだろう。それが私だった

 

 

 デュエルで親睦を深めようと思ったこともあったが断念した。なぜなら

私の戦術はトラップを仕掛けて相手を貶め、じわじわと追い詰めるもの

 

 

 そんな戦術をしていて、対戦相手が快く思うはずわけもない。

誰も私の相手をしてくれる人はいなかった。……ただ1人を除いて。

 

 

 布袋行人(ほてい いくと)君、彼はそんな私ともよく話をしてくれる、数少ない人だ。

きっかけは席が隣だったからだけど、彼との会話は学園内での密かな楽しみだった

 

 

「デュエル大会?」

 

「ああ、マコも出てみようよ、後の2人は俺の方で何とかするからさ。ねっ」

 

 

 ある日の放課後にいきなり話を持ち掛けてくる布袋君。けど私は人と話すのは苦手、

ましてや知らない人となんて。でも楽しそうに大会のことを話す布袋君の顔を

見ていたら、とても嫌だとは言う気にはなれなかった

 

 

「よ、よろしく」

 

 

 初めはどこかぎこちなかったが、何度か会ううちに話が出来るまでには他メンバーの人と

打ち解けられた。そして大会当日になり、私たちのチームは予選を勝ち抜き、

残すところあと1戦までのとこまでやってきた

 

 

 その1戦を私が勝てば決勝にまで行ける、これまで頑張ってきた皆のためにも

このデュエルは負けられない。決死の激闘の末、あと一歩のところまで追い詰めた

 

 

「……」

 

 

 相手の場にモンスターはなく、あるのは伏せカード1枚のみ。この攻撃が通れば

勝てるかもしれない……でもその思いとは裏腹に私は攻撃することをためらっていた

 

 

(もしあの伏せカードがトラップだとしたら。どうしよう)

 

 

 そう思ったら私の頭の中は、あっと言う間にトラップへの恐怖で一杯になってしまった

 

 

「……私はターンを終了します」

 

 

 結局その後、相手が立て直し始め、そのまま負けてしまった。結果論で言えば、

あの時攻撃すれば勝てていた。いつもそうだ、ここぞという場面で踏みとどまってしまう。

私はそんな自分の性格が嫌いだった

 

 

「気にするなってマコ、ここまで来れただけでも俺は楽しかったさ」

 

 

 明るく振る舞ってくれたが、その表情には少し悔しさが滲み出ていた

その顔を見ていたら、胸がチクリと痛む。その時私は気づいた

 

 

(そっか、私いつの間にか布袋君を好きになっていたんだ)

 

 

 自分の気持ちに気づいたのはいいが、彼にこんな悲しい思いをさせた弱い私が

彼に振り向いてもらえるだろうか

 

 

(もっとデュエルが強くなれば……少なくとも今よりは気に掛けてくれるかな)

 

 

そんな自分が情けなかった、もう二度とこんな思いをしない為にも少しでも、力をつけたかった。

その為なら今あるデッキを投げ出す覚悟だってできてた。でもそれも結局ダメだった、

私はまた何も出来ずにいた

 

 

「はい、あなたのデッキよ。今度はデッキを売るようなことしちゃダメよ」

 

 

 そんな時、颯爽と現れて助けてくれたのは転校生の如月優希さん。彼女はデュエルが

強いだけでなく、何というか自信に満ちていて。私にないものを持っていた。

この人のようになれば布袋君も振り向いてくれるだろうか

 

 

「……私もあの人みたいに強くなれたらなぁ」

 

 

 そう思った時だ、あの人に出会ったのは

 

 

「強くなりたいというその純粋な『欲望』実に素晴らしいぃ!! だから―――」

 

 

 黒いフードとマントを着た人は、楽しそうにそう言うと私に歩み寄ってくる

でも私は怖くて逃げることさえできなかった

 

 

「その『欲望』開放しなさい」

 

 

 その後のことはよく覚えていない、目が覚めた時にはフードの人は何処にもいなかった

ふと、デッキを見てみるとそこには見慣れないカードがあった

 

 

「ナンバーズ」

 

 

 このカードを手にしてからは、不思議と力が湧いてくるような感覚になる。

その後はデュエルの授業ではナンバーズこそ使わなかったが連戦連勝と、負けなしだった

 

 

 もっとこのカードの力を試してみたい、そんな風に考えていくと

気が付けば私はデュエリスト狩りのような真似事をしていた

 

 

「ちょいっと待ちな」

 

「……なんですか」

 

「あんた、最近この辺りを荒らし回っているデュエリストだろ」

 

「……そうですけど、それが何か?」

 

「俺らの縄張りで勝手な真似されちゃあ、俺らのメンツにかかわるんだよ」

 

 

 そんな事を言われても私には興味がなかった

 

 

「それで、私にどうして欲しいと」

 

「なぁに、デュエルで売られた喧嘩はデュエルで返す。相手は俺達3人だ

断ればどうなるかわかるよな」

 

「分かりました、ここでは人目に付きますしそこの廃工場で行いましょう」

 

 

 いい加減鬱陶しくなってきたので、私は大人しくついていくことにします。

怖くはなかった、ただデュエルに勝てばいいのだから

 

 

「3対1が卑怯だと思うなよ」

 

「勘違いするなよ、俺達は1つの力を3分割してやるだけだ!」

 

「決して、3人で一人前だとか言うなよ!」

 

「構いません、始めてください」

 

「「デュエル!」」

 

 

 その場に立っていたのは私だけ。口ほどにもない私の圧勝だ。

やっぱり、この力はすごい。でもまだ足りない、私はもっと力が欲しい

あの人、布袋君のそばにいる為にはこの程度で満足してはいけない

 

 

第24話「バカと意地と踏み出す勇気」

 

 

吉井 明久

LP/ 7000  手札:2枚 

場:スクラップ・サーチャー DEF:500

 

「魔法・罠」:伏せ2枚

 

 

音無 マコ

LP/ 8000  手札:2枚

場:アトラの蠱惑魔 ATK:1800

No.50 ブラック・コーン号 ATK:2100

 

「魔法・罠」:伏せなし

   永続魔法:王家の神殿

   永続トラップ:ナチュルの神星樹

永続トラップ:ナンバーズ・ウォール

 

 

 フィールド魔法:スクラップ・ファクトリー

 

 

side:明久

 

 

「さぁ、あなたはこの罠に飛び込む勇気……ありますか?」

 

 

 僕の目の前にアトラの蠱惑魔が立ちふさぐ。あのモンスターがいると手札からも、

落とし穴系のトラップが発動されてしまう。これまで僕は何度もトラップに

引っ掛かっている、何としても通したい!

 

 

「……」

 

 

 まずは相手を観察して可能性を考慮するんだ

 

 

 1.1枚は落とし穴がある、トラップに掛からないように可能性にかけて展開する

 2.2枚とも落とし穴である、次のターンまで様子を見る

 3.手札にトラップはない、ただのブラフ。一気に攻める

 4.考えるのもうやめた!

 

 

 確か最初のターンにモンスターを回収していた、まず2の可能性はない

残りは1か3……どれだ、どれが正解なんだ

 

 

(ふふふっ、悩んでいますね。たとえ可能性が低いと思っていても人間、

どうしても一歩踏み込むことが出来ずに安易な道に走ってしまう。

それに吉井君は既に何回も私のトラップにはまっている。

嫌でもトラップが頭にチラついているはずです)

 

 

「…………」

 

 

(今まで相手したデュエリストの殆どがこの状況で、攻めずに様子を見に来るはず。

一度トラップの恐怖に足を踏み入れてしまえば、例えブラフであっても攻撃に

躊躇してしまう。そうなってしまえば、後は私のものです!)

 

 

「よし!」

 

「覚悟を決めましたか、では――」

 

「もう考えるのやめた!」

 

「……えっ?」

 

「クレーンクレーンを召喚! 墓地からゴブリンを特殊召喚だ」

 

 

 スクラップ・ゴブリン DEF:500 → 700

 

 

「そして次はシンクロだ、僕はレベル3と1のクレーンクレーンとサーチャーに、

レベル3のゴブリンをチューニング!」

 

 

 ☆3 + ☆1 + ☆3 = ☆7

 

 

「積み重ねし瓦礫の憎悪が、鋼鉄の悪魔を作り出す、嘆きの咆哮を上げよ

シンクロ召喚! 誕生せよ スクラップ・デスデーモン!」

 

 

 スクラップ・デスデーモン ATK:2700

 

 

(まずいです、私のデッキにあるトラップの殆どは召喚・特殊召喚したモンスターに

対して発動するカードばかり、一体でもモンスターの召喚を許せば、対処する術は

限られてくる!)

 

 

 トラップの受ける覚悟でシンクロ召喚してはみたが、なぜか音無さんは驚いた顔をしている。

あの手札のカードはトラップじゃなかったのか

 

 

(そして手札にあるトラップではあのモンスターを倒すことが出来ない。ですが――)

 

「何もないなら、このままバトルにいくよ! スクラップ・デスデーモンで――」

 

「待ってください! 私は手札から『粘着落とし穴』を発動させます」

 

 

『粘着落とし穴』

通常罠

相手がモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。

そのモンスターはフィールド上に表側表示で存在する限り、元々の攻撃力が半分になる。

 

 

 僕が召喚したデスデーモンは、地面に着地しすると同時に足元が崩れ、

落とし穴に落ちてしまう。足元はトリモチのようにネバネバして、身動きが

取れずにいた

 

 

「この落とし穴は、特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力を半分にします!」

 

 

 スクラップ・デスデーモン ATK:2700 → 1350 → 1550

 

 

「しまった! 攻撃力が下がったことで、ナンバーズの効果対象内に入ってしまった」

 

「その通り、次のターンでもう一度ナンバーズの力を、その身に味わせてあげます」

 

 

 あの衝撃をもう一度。でも、攻撃力が下がってしまっては僕にできることは……ない

 

 

「メインフェイズ2、おろかな埋葬で2体目のスクラップ・サーチャーを

墓地に送ってターンエンド」

 

「私のターン、ナチュルの神星樹の効果でアトラの蠱惑魔をリリース。デッキから

トリオンの蠱惑魔を特殊召喚!」

 

 

 トリオンの蠱惑魔 ATK:1600

 

 

「トリオンは特殊召喚時に相手の魔法トラップを破壊できます。私はフィールド魔法を

破壊します」

 

「くっ、展開の要を破壊されてしまった」

 

「次はモンスターとライフを減らします。ブラック・コーン号の効果で

スクラップ・デスデーモンを墓地に送り、もう一度1000ポイントのダメージを

受けてみなさい!」

 

 

 吉井明久 LP:7000 → 6000

 

 

「ぬわあっ!」

 

 

 再び体を貫かれるような衝撃が僕の全身を駆け巡る

 

 

「ぐっ!」

 

「まだ立ち上がりますか、ナンバーズの攻撃の攻撃を2度も受けたのに、タフですね」

 

「こんな痛み。似たようなことで骨身に染みているんだ! 倒れるまでに至るには、

まだまだ程遠いよ!」

 

 

 美波やゆうくんの関節技や打撃の痛み、鉄人が行う補修という名の精神的、肉体的苦行。

そしてなによりも、姫路さんが作る料理と遭遇した時の恐怖に比べたら! 

この程度のことで根を上げていては、今日までこの学園で生き延びてはいない

 

 

「このダメージが骨身にって……あなた普段どんな日常を過ごしているのですか!?」

 

「どんなって…………うっ」

 

「どうしてそこで泣きそうになるのですか!」

 

「目にゴミが……入って」

 

「は、話がそれました、デュエルを続けます。私は2枚目のマジック・プランターを

発動させ、2枚ドロー。コストにしたナチュルの神星樹の最後の効果で、デッキから

『ナチュル・コスモビート』を手札に加え、そのまま召喚」

 

 

 ナチュル・コスモビート ATK:1000(チューナー)

 

 

 ここだ! このカードを使うとしたらこのタイミングしかない

 

 

「僕はその召喚時に伏せカード、『裁きの天秤』を発動する」

 

 

『裁きの天秤』

通常罠

「裁きの天秤」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):相手フィールドのカードの数が

自分の手札・フィールドのカードの合計数より多い場合に発動できる。

自分はその差の数だけデッキからドローする。

 

 

「僕の手札は0、フィールド上にあるカードの差は3枚、

その差分ドロー!」

 

「手札を増やしましたか、でもこれならどうですか。私はレベル4のトリオンに、

レベル2のナチュル・コスモビートをチューニング!」

 

 

 ☆4 + ☆2 = ☆6

 

 

「深緑に眠りし龍よ、戦略打ち砕く息吹となれ。シンクロ召喚!

今こそ目覚めよ『ナチュル・パルキオン』!」

 

 

『ナチュル・パルキオン』

シンクロ・効果モンスター

星6/地属性/ドラゴン族/攻2500/守1800

地属性チューナー+チューナー以外の地属性モンスター1体以上

(1):罠カードが発動した時、

自分の墓地のカード2枚を除外して発動できる。

このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、

その発動を無効にし破壊する。

 

 

「このモンスターはトラップの発動を、墓地のカードを2枚除外することで、無効にできます」

 

「なっ!?」

 

 

 確か墓地にあるカードは全部で、ええと……たくさんあるはず

トラップカードは封じられてしまったも同じか

 

 

「これでトラップを恐れる必要はありません。ナチュル・パルキオンで、

ダイレクトアタック!」

 

 

 吉井明久 LP:6000 → 3500

 

 

「がああっ」

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンドします」

 

 

吉井 明久

LP/ 3500  手札:3枚 

場:なし

 

「魔法・罠」:伏せ1枚

 

 

音無 マコ

LP/ 8000  手札:1枚

場:ナチュル・パルキオン ATK:2500

No.50 ブラック・コーン号 ATK:2100 (ORU:0)

 

「魔法・罠」:伏せ2枚

   永続魔法:王家の神殿

永続トラップ:ナンバーズ・ウォール

 

 

 ライフを大きく削られはしたが、さっきので手札は潤ったんだ。

それにこの手札なら。反撃開始だ!

 

 

「僕のターン、墓地の『ギャラクシーサイクロン』を発動、このカードを除外することで

表側表示の魔法かトラップを破壊できる」

 

「墓地から魔法ですって!? 随分インチキ効果をもつカードを使うじゃないですか」

 

「手札からトラップを使った君に言われたくないよ! 破壊するのは、

ナンバーズ・ウォール。さっきのお返し!」

 

 

(ナンバーズの守りは崩されましたか。前のターンは予想がはずれましたが、

今度はそうはいきません。伏せカードは2枚ともトラップカード。

この布陣を前にしては、今後こそ手出しはできないはず――)

 

 

「よしっ、スクラップ・キマイラ召喚。効果で墓地からビーストを特殊召喚!」

 

「なっ!?」

 

「これで墓地には地属性が5体そろった、来い! 地霊神グランソイル!」

 

 

 地霊神グランソイル ATK:2800

 

 

「グランソイルの効果、墓地からスクラップ・デスデーモンを特殊しょ――」

 

「ま、待ってください、私はその召喚に『蠱惑の落とし穴』を発動! 特殊召喚した

モンスターの効果を無効にして破壊します!」

 

 

『蠱惑の落とし穴』

通常罠

(1):このターンに特殊召喚された相手フィールドのモンスターが効果を発動した時に発動できる。

その効果を無効にし破壊する。

 

 

「なら次! レベル4のキマイラに、レベル4のビーストをチューニング!」

 

 

 ☆4 + ☆4 = ☆8

 

 

「瓦礫に眠りし屑鉄の竜が目覚める時、鋼の鼓動が木霊する。その雄叫びで全てを破壊せよ

シンクロ召喚! 起動せよ スクラップ・ドラゴン!」

 

 

 スクラップ・ドラゴン ATK:2800

 

 

「それも通しません! シンクロモンスターの召喚時に『深黒の落とし穴』を発動! 

そのモンスターをゲームから除外します!」

 

 

『深黒の落とし穴』

通常罠

レベル5以上の効果モンスターが特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。

そのレベル5以上の効果モンスターをゲームから除外する。

 

 

 せっかく召喚したスクラップ・ドラゴンも、フィールドに足を踏み入れることなく

落とし穴にはまって落ちていく。これもダメだったか。

でもこれで、モンスターの召喚を妨げるトラップカードはなくなった!

 

 

「ここからは僕のステージだ! マジック発動、『ダーク・コーリング』!

墓地にいるスクラップ・デスデーモンと、手札のスクラップ・ゴーレムを除外!」

 

 

 

「鉄くずの悪魔よ、強固な岩の鎧を身に纏い、闇の力と1つになりて姿を現せ!

融合召喚! 現れよ E-HERO ダーク・ガイア!」

 

 

 E-HERO ダーク・ガイア ATK:5000

 

 

「攻撃力5000!?」

 

「ダーク・ガイアでナンバーズを、ブラックコーン号を攻撃! ダーク・カタストロフィ!」

 

 

 音無 マコ LP:8000 → 5100

 

 

「キャアっ!」

 

 

 手札を使い切ってしまったが、ようやくライフを減らした上にナンバーズを

倒すことができた。このまま押し切る!

 

 

「僕はこれでターンエンド」

 

「ど、ドロー。……むっ」

 

(このカードは発動条件の厳しいトラップ、こんな時に!?)

 

「ナチュル・マロン召喚、召喚したときの効果でデッキからナチュルモンスターを

墓地に送ります」

 

 

墓地に送ったカード

『ナチュル・チェリー』

 

 

「そしてナチュル・マロンのもう1つの効果で、墓地のナチュル2体をデッキに戻して

1枚ドローします」

 

 

デッキに戻したナチュル

『ナチュル・チェリー』

『ナチュル・コスモビート』」

 

 

「一時休戦を発動、お互いに1枚ドローして次のターンまで、互いに受けるダメージを0に

します。カードをセット……ターンエンドです」

 

 

吉井 明久

LP/ 3500  手札:1枚 

場: E-HERO ダーク・ガイア ATK:5000

 

 

「魔法・罠」:伏せ1枚

 

 

音無 マコ

LP/ 5100  手札:1枚

場:ナチュル・パルキオン DEF:1800

ナチュル・マロン ATK:1200

 

「魔法・罠」:伏せ1枚

   永続魔法:王家の神殿

 

 

「僕のターン、よし! カードガンナー召喚、効果でデッキトップ3枚を墓地に」

 

 

墓地に送ったカード

『スクラップ・ソルジャー』

『死者蘇生』

『スクラップ・サーチャー』

 

 

 カードガンナー ATK:400 → 1900

 

 

「バトルだ。まずはカードガンナーで、ナチュル・マロンに、ダーク・ガイアで

ナチュル・パルキオンに攻撃」

 

「モンスターは破壊されましたが、このターンまでは私にダメージはありません」

 

「なら1枚セットして、ターンエンド」

 

「…………」

 

 

 ターンが移ったというのに、音無さんは呆然とこっちを見るだけで動こうとしない

 

 

「……どうして」

 

 

 不思議に思ったところで、掠れるよう小さな声で掛けられた

 

 

「どうしてですか。普通、あれだけトラップに掛かったら躊躇してしまうのに

吉井君はさっきのターンも、その前も、どうして飛び込むことが出来るのですか!?

……なんで」

 

 

 なんだ、そんなことか

 

 

「別に、まったく躊躇いがなかったわけじゃないよ。さっきも伏せカードが

トラップなんじゃないかって考えたけど、結局わからなかった。

でも、そのとき思ったんだ。それは違うんじゃないかって」

 

「違ってた? 何がですか」

 

「うだうだ考えてからデュエルするのは、僕らしくない。なら、僕らしさって

何かなって色々考えたんだけど。これしかないって気づいたんだ」

 

「それは……いったい」

 

「トラップを伏せたからとか、強大なモンスターを相手にするとか、そんなの関係ない。

自分が今持てる全力を振りしぼって、ぶつかっていく。ただそれだけだよ」

 

「なんですかそれ、結局は考えなしじゃないですか。その行為があなたを

追い詰めることになっても、同じことが言えるんですか」

 

「怖がって縮こまっていたら何もできないよ。勝ちたいなら、前に出て

こうと決めた意地を貫くだけだ」

 

「そうですか。それで……。まぁ両方の伏せがトラップの確率は1/4、

けっして高いというわけではないですから――」

 

「え? 確率なら、魔法かトラップの2択だから、1/2じゃないの。

ならそこまで悪い賭けじゃないと思うけど」

 

「……あなたバカですか」

 

「よく言われるよ」

 

 

 彼女の問いかけに、思ったままに応えていくと音無さんは段々と怒りを露わにする

 

 

(……意地ですって、そんな理由で私のトラップ戦術が利かないなんて。

ふざけるな、私はナンバーズを手にして力を得たんだ。それがこんな所で――)

 

 

「こんな所で負けてたまるもんですか! 私のターン……来た!

『ソウル・チャージ』を発動します」

 

 

『ソウル・チャージ』

通常魔法(制限カード)

「ソウル・チャージ」は1ターンに1枚しか発動できず、

このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

(1):自分の墓地のモンスターを任意の数だけ対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚し、

自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの数×1000LPを失う。

 

 

「このターンのバトルを放棄することで、墓地のモンスターを任意の数だけ特殊召喚できます。

ただし、1体につき1000のライフを失いますが。関係ありません。私が選ぶのはこの5体!」

 

 

 アトラの蠱惑魔 DEF:1000

 ティオの蠱惑魔 DEF:1100

 トリオンの蠱惑魔 DEF:1200

トリオンの蠱惑魔 DEF:1200

 カズーラの蠱惑魔 DEF:2000

 

 

 音無 マコ LP:5100 → 100

 

 

 無人だった音無さんのフィールドが、たった1枚のカードで埋め尽くされていく

 

 

「これでこのカードを発動できます。同時に2体以上のモンスターが特殊召喚された時に

『大落とし穴』を発動! このカード効果ではフィールドのモンスターをすべて破壊します」

 

「な!? それだと君のモンスターも道ずれに」

 

「そんなわけないじゃないですか。蠱惑魔は、落とし穴の効果を受けないという

共通の能力を持っています。つまり破壊されるのは吉井君のモンスターだけです!」

 

「ぐっ、カードガンナーが破壊されたことで1枚ドロー」

 

「これで終わりじゃありません。特殊召喚に成功したトリオンとティオにはまだ効果が

残っています。まずは2体のトリオンで、その伏せカード2枚を破壊します!」

 

「させない! チェーンして、禁じられた聖杯を発動! トリオン1体の効果を無効にする」

 

「1枚守ったところでなんだというのですか。私はティオの効果で墓地から奈落の落とし穴を

セット、カズーラで、デッキから『姑息な落とし穴』を手札に加えます。

そしてこれで仕上げです。2体のトリオンでオーバーレイ! 2体のモンスターで

オーバーレイ・ネットワークを構築」

 

 

 ☆4 × ☆4 = ★4

 

 

「蠱惑の花に魅了された者を捕食せよ

エクシーズ召喚! 『フレシアの蠱惑魔』」

 

 

『フレシアの蠱惑魔』

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/地属性/植物族/攻 300/守2500

レベル4モンスター×2

(1):X素材を持ったこのカードは罠カードの効果を受けない。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

「フレシアの蟲惑魔」以外の自分フィールドの「蟲惑魔」モンスターは戦闘・効果で破壊されず、

相手の効果の対象にならない。

(3):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

発動条件を満たしている「ホール」通常罠カードまたは

「落とし穴」通常罠カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。

この効果は、その罠カード発動時の効果と同じになる。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

 フレシアの蠱惑魔 DEF:2500

 

 

「驚くのはこれからです。私は残ったアトラ、カズーラ、ティオの3体でオーバーレイ!」

 

 

 ☆4 × ☆4 × ☆4 = ★4

 

 

「現れいでよ、フィールドを支配する法の番人

『No.16 色の支配者ショック・ルーラー』!」

 

 

『No.16 色の支配者ショック・ルーラー』

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/天使族/攻2300/守1600

レベル4モンスター×3

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

カードの種類(モンスター・魔法・罠)を宣言して発動できる。

次の相手ターン終了時まで、宣言した種類のカードをお互いに発動できない。

 

 

 にっ、2枚目のナンバーズだって!?

 

 

「ショック・ルーラーの効果、ORUを1つ使って、次の私のターンまで私が指定する

カードの発動を禁止させます。私が宣言するのは『魔法カード』! これでさっきの

ようには行きません」

 

 

 魔法を封じられたのは厄介だけど、その攻撃力は2300。決して届かない数値じゃない

キマイラを引ければまだ逆転チャンスはある

 

 

「ちなみにフレシアの蠱惑魔はトラップの効果を受けず、さらに1ターンに1度、

発動条件を満たす落とし穴カードを墓地に送ることで、その効果を使うことが出来ます」

 

「なっ!?」

 

「落とし穴に掛からないよう、召喚するモンスターにはご注意を。カードを1枚セットして、

ターンエンドです」

 

「そのエンドフェイズに、最後の伏せカード砂塵の大竜巻は発動! セットされている

奈落の落とし穴を破壊して、カードを1枚セットする」

 

「残ったカードはそれでしたか。ですが破壊したところで私のデッキに、

奈落はあと1枚残っていますのですから変わりありません」

 

 

吉井 明久

LP/ 3500  手札:0枚 

場:なし

 

 

「魔法・罠」:伏せ1枚

 

 

音無 マコ

LP/ 100  手札:0枚

場:フレシアの蠱惑魔 DEF:2500

No.16 色の支配者ショック・ルーラー ATK:2300(ORU:2)

 

「魔法・罠」:伏せ1枚

   永続魔法:王家の神殿

 

 

 前のターンまでは優勢だったのに、1枚のカードで劣勢に追い込まれてしまった。

なんとか体制を立て直さないと

 

 

「僕のターン! ……なっ!?」

 

 

 ドローカードを見て思わず絶句する。この状況で引いたカードは、

スクラップ・コングだった

 

 

(この手札じゃ攻めるにしろ、守るにしても、次のターンを凌ぐことはできない。

……もう、どうにもできないのか)

 

 

 敗北の文字が脳裏を過った。その時――

 

 

『まだ諦めるのには、少しばかり早いのではないか。アキヒサ』

 

 

 今この場には僕らしか居合わせていない。いや、もう一人いた

 

 

「……スターダスト」

 

『私と君が出会ってまだ日は短いが、その中で君の事を色々知った。

なんというか君は多少頭が残念だ。考えなしに行動しては無茶をするくせに

悪知恵だけは頭がよく回る。家事スキルは高いのに食生活は壊滅的だ

そのうえ他人への好意に対して酷く鈍い』

 

 

 こいつ、普段は喋らないのにそんなこと思っていたのか!

 

 

『だが、デュエルに関してだけ言えば、君はどんな困難でも勝利しようと思考しあがき続ける

私は君のそんなデュエルに対する諦めの悪さに惹かれたのだよ』

 

「スターダスト、けどこの手札じゃ――うわっ!?」

 

 

 スターダストに何か言おうとしたその時、急にエクストラデッキが輝きだした

 

 

 

 ――どんなカードにも不必要なものなどない。1枚1枚の力は小さくても、力を合わせれば

 大きな力にも抗える無限の可能性を秘めているんだ――

 

 

 

 あまりの眩しさに両手を覆うと、知らない男の声が耳に響いた。

けど、不思議と懐かしく思えた。

 

 

(っ!? 今のはいったい……!)

 

 

 瞬間、僕の脳裏にあるヴィジョンが浮かぶ。

それは1枚1枚のカードが線を描くように軌跡を描き、鮮明に見えてきた。

勝利のイマジネーションが!

 

 

(そうだ……このカードがあったんだ。なら諦めるにはまだ早い)

 

『その目、どうやら何か光明が見えたようだな』

 

(見ててくれスターダスト……僕はこのカードに、このデュエルの勝敗を託す!)

 

「随分と考えていましたが、決心はつきましたか?」

 

「ああ。僕はスクラップ・コングを召喚!」

 

「諦めが悪いのはいいですが。私の伏せカードが何かもう忘れたのですか?

フレシアのORUを取り除き、デッキから奈落の落とし穴を発動します! 

これでそのモンスターを破壊し除外します」

 

「やらせはしない! トラップ発動。安全地帯! これでコングをカード効果から守る」

 

「ぐぬっ、無効にするカードを間違えましたか」

 

「だけど、コングは召喚時に破壊する効果がある。安全地帯で守れるのは相手のだけ、

自壊までは防げない」

 

 

 フィールドに着地した瞬間。コングの体は自分の重さに耐え切れず、

バラバラとパーツを落としながら崩壊した

 

 

「でも無駄死になんかじゃない! コングの効果で、墓地からキマイラを手札に戻して。

さらに! 効果で破壊されたから、墓地からサーチャーを特殊召喚する!」

 

 

 スクラップ・サーチャー×3 ATKF:100

 

 

「そんな壁モンスターを増やしたところで無意味です!」

 

「いいやこれでいいんだ。これでレベル1が3体そろったんだから」 

 

「まさかエクシーズ召喚!? ……ということはあなたもナンバーズを!」

 

「これが僕の初エクシーズだ、レベル1のスクラップ・サーチャー3体でオーバーレイ!

3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築」

 

 

 ☆1 × ☆1 × ☆1 = ★1

 

 

「勝利を引き寄せる金色の鼠、その輝きを目に焼き付けろ エクシーズ召喚!

ランク1 『No.56 ゴールドラット』!」

 

 

『No.56 ゴールドラット』

エクシーズ・効果モンスター

ランク1/光属性/獣族/攻 500/守 600

レベル1モンスター×3

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

自分のデッキからカードを1枚ドローし、

その後手札を1枚デッキに戻す。

 

 

 No.56 ゴールドラット ATK:500

 

 

「何を出すかと思えばレベル1を3体も使って、攻撃力がたったの500、

それも攻撃表示でだすなんて」

 

 

 笑いたくなるのもわかる。出しにくい上、ステータスは低く、効果も微妙。

同じナンバーズなのに、向こうのブラック・コーン号やショックルーラーに比べたら

その差は歴然だ。

 でも、そんなカードであっても。今、この場で、この時だけは、唯一逆転の可能性を

秘めているんだ!

 

 

「ゴールドラットの効果! ORUを1つ使うことで1枚ドローして、

そのあとカードを1枚デッキに戻す」

 

「効果も大したことないですね。結局はただの手札交換。たった1枚で何ができますか!」

 

「いいや、君だってその1枚から逆転したんだ。なら、試す理由としては十分だ!

このドローに掛ける」

 

 

 デッキに手を当て、気合と共にカードを引き抜く。ドローカードを確認した僕は、

無言のまま、残った方のカードをデッキに戻した

 

 

「……カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

「いろいろ動きましたが、結局はカードを伏せただけですか。そんなもの私のターンに

ショックルーラーの効果でもう一度伏せカードを封じさえすれば怖くありません!」

 

「そう思うのなら、やればいいさ」

 

「なんですって」

 

「僕のライフを0にしたければ、攻撃してくるんだ。もっとも僕の伏せカードを前にして、

飛び込む勇気はあればの話だけど」

 

「っ!」

 

(焦ってはダメ! これはワナ。ワザと挑発をして、罠にはめようとしているに違いありません)

 

「私をワナに嵌めようったってその手には乗りません。私のターン! 

ショックルーラーの効果を使い、トラップカードの発動を無効にします!」

 

「……」

 

「お望み通りこれで終わらせます。ショック・ルーラーでゴールドラットを攻撃!」

 

「……繋がった」

 

「何を言っているのですか?」

 

「ゴールドラットがいたからこそ僕は可能性を信じていられた。

そして勝利に繋げることができたんだ! 速攻魔法、イージーチューニング!」

 

「魔法カード!? トラップじゃないですって!?」

 

「墓地のチューナーを除外し、その攻撃力分ゴールドラットの攻撃力を上げる

僕が除外するのはスクラップ・ソルジャー。攻撃力2100だ!」

 

 

 No.56 ゴールドラット ATK:500 → 2600

 

 

「攻撃力2600!? そんな!! 私は強くなったはずのに、なのに!」

 

 

「本当はトラップを誰よりも恐れていたんだ。だからこそ、君は最後に判断を誤った。

ゴールドラットで反撃! 『ゴールド・ラッシュ』!」

 

 

  LP:100 → 0

 

 吉井明久 WIN!

 

 

 

 ――――――◇――――――◇――――――◇――――――◇――――――◇――――――

 

 

 

 デュエルが終了した瞬間、音無さんのデュエルディスクから何かが僕目掛けて飛び出した。

咄嗟にそれを掴んで見てみると、それは『No.50』と『No.16』のカードだった

 

 

「終わったみたいね」

 

 

 振り向くと、いつの間にか戻ってきたゆうくんがそこに立っていた

 

 

「戻ってたんだね」

 

「ええ、少し前にね。デュエルも終わっているみたいだし、事情聴取といきますか」

 

 

 ゆうくんは座り込んでいる音無さんの方へと歩み寄っていく、傍まで近づくとひざを折って

目線を彼女の高さに合わせた

 

 

「あなたに訊きたいことがあるの。あなたはナンバーズのカードを、

いったいどこで手に入れたの」

 

「これは……渡されたもので」

 

「それは誰に?」

 

「それは……あれ?」

 

「どうしたの」

 

「……そ、それが、さっきまでは覚えていたはずなのに。

どうしてか今はそこだけ、もやがかかったように思い出せないんです」

 

 

 ゆうくんの質問にどう答えていいかわからなくて、困惑する音無さん。

秀吉がこの場にいればそれが演技か見分けれるのだろうけど、

僕にはその慌てようは演技にはとても見えなかった

 

 

「……やっぱり、ダメだったみたいね」

 

「すみません。私なにも思い出せなくて」

 

「それがわかっただけでも十分よ。ごめんなさい無理に聞くようなことをして」

 

 

 てっきり手掛かりを得ようと、問い詰めるのだと僕は思っていた。

だけど、ゆうくんに落胆した様子はなかった

 

 

「やっぱりって、どういうことなのさ」

 

「同じなのよ」

 

「同じ?」

 

「あたしがこれまで倒したナンバーズを持つデュエリストも敗れると、

ナンバーズの記憶のところだけが抜け落ちていたの」

 

 

 そんなやっと手掛かりを掴んだというのに。これで、振り出しに戻ってしまった

 

 

「これからどうするの」

 

「どうするって、訊くことも終わったことだし。帰るわよ」

 

「へっ?」

 

 

 ナンバーズに強い執着があったゆうくんが、まるで何事もないかのように、

僕の手を引いて帰ろうとするのだから。今度はこっちが困惑する番だった

 

 

「あ、あの!」

 

 

 帰ろうとする後ろから、音無さんから声を掛けられる

 

 

「……吉井さん最後に1つ、教えてください。最後のターンでサーチャーを呼び出すのに、

なんで守備表示ではなく、攻撃表示だったのですか」

 

「えっ?」

 

 

 話を詳しく聞いたところ、彼女の最後の伏せカード『姑息な落とし穴』の効果を。

それは、守備表示で特殊召喚したモンスターを破壊する。つまり――

 

 

「……もし、その時に守備で出していればエクシーズ召喚さえ出来ず、私の勝ちでした」

 

 

 もしもの出来事に肝を冷やす。あの時の選択を間違えていたら僕は負けていたのだから。

けど、その理由は何故と聞かれた僕は少しの間、考えを巡らせてみるが――

 

 

「わからない」

 

 

 と、こう答えるしかなかった。音無さんは首を傾げていた

 

 

「……」

 

「上手くは説明できないけど。ただ、あの時は勝たなきゃって無我夢中だったから。

多分、その気持ちがカードに伝わったんだと思う」

 

 

(そうか、この人の強さはさっき言ってた意地だけじゃない。何度トラップに掛かろうと

それに立ち向い結果を恐れない勇気。私に足りないのは、これなのかもしれない)

 

 

「ありがとうございます。私頑張ってみます!」

 

 

 彼女はぺこりとお辞儀して、その場を去っていった。最後の頑張るってのは

わからなかったけど。それより今、気になるのはこっちだ

 

 

「……どうしたの? あたしの顔に何かついてた」

 

「いや、その、ゆうくんは何とも思わないの。せっかくナンバーズの手掛かりを掴んだのに。

結局、なにもわからずに終わってしまって」

 

「そりゃあ残念ではあるけど。そう悲観することじゃないわ。こうしてナンバーズは

手に入ったわけだし、元々そう簡単になにかを掴めるとも思ってなかったわ」

 

「それはそうだけど」

 

「それに……手伝ってくれるんでしょ?」

 

「えっ」

 

「君が言ったことだよ。巻き込んでもいいって」

 

「あ、あれはその場の勢いというか、ゆうくんが皆に気を使って、1人で抱え込もうと

するのが嫌というか。もっと僕らを頼って欲しかったから」

 

 

 って! なに口走っているんだ僕は!

 

 

「正直言って、悩んでたの」

 

「何に」

 

「遊佐君と雨宮さんとの接し方よ。ほら一年くらいまであちこちの国を移動してたからさ、

同年代の友達って、君くらいしかいなかったのよ」

 

 

 なるほど。接し方に壁を感じてたのは、そういう理由だったのか

 

 

「でもあーちゃんのデュエルをみてて、あたしも少しだけ踏み出してみようと思うの。

だから――」

 

 

 彼女は僕に手を差し伸べた

 

 

「改めてお願いする。君たちの力が必要なんだ、協力してくれないか」

 

 

 その言葉に僕は迷いなく頷く。そして――

 

 

「ああ、もちろんさ!」

 

 

 彼女の手を掴んだ。彼女との距離が縮まった気がした

 

 

 P:S

 その後異端審問会の情報網に、とある男女にカップルの疑いがありという

報告が入ったのはまた別の話

 

 

 おわり

 

 

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