突然だが、俺はダニガン・ロック。ジオン公国軍の中尉・・だった。
一年戦争終結後、地下で息をひそめて連邦への反抗機会をうかがい続けたのは一か月前のことだ。
今は、俺用にチェーンナップされたザクⅡで戦場にいる。
連邦軍に一泡吹かせるために実行された計画「星の屑」作戦。俺も、一兵士としてこの戦いに参加した。
コロニーを地球に落下させる最終局面になって、シーマが裏切り作戦指揮をとっていたデラーズ閣下が亡くなられたのは衝撃であったが、作戦そのものはガトー少佐がすべて完了させた。
コロニーの最終軌道修正を行い、落下を見守った時にはすべてがうまくいったと安堵したが、直後に連邦軍のソーラ・システムⅡが敵味方両軍を包み込んだ。
「なんてことを、味方ごと打つとは?!」
連邦軍も同様だったようで、多くの敵兵も巻き込まれていた。
俺はかろうじて射線上ギリギリだったのか光に飲まれることはなかったが、多くの友軍も消えたことがシグナルから確認できた。
でも、この世を去るのが遅いか早いかの違いぐらいだったことはそのすぐ後に理解した。
気づいたころには連邦軍の艦艇とモビルスーツに包囲されていた。
近くにガトー少佐のノイエジールの姿もあるが、損傷が激しいことが伺えた。そんな中でも、敵陣を突破してアクシズ艦隊と合流しようと檄を飛ばしていた姿はまさに武人の鏡と思えた。
最後の突撃であった。残存していた友軍も次々と撃墜されていく。
ドラッツエ、リックドム、ザクⅡが敵の放火を浴びて火球となっていくのが見える。
そして、俺のザクにもビームが直撃した。厳密には頭に直撃したのだが、その反動で機体がはねたところを複数のビームに貫かれた。俺は意識を失う瞬間、この後祖国がどうなるのかを知りたいと思った。
そう考えたところで、俺は意識を失った。
次に目覚めることはないだろうと想像しながら。
そして、気づかなかった。
これが終わりではなく始まりになることを。
ふと目を開けるとそこはベッドの上だった。ただ、異様に体が重く思うように動かない。
だが、それ以上に意味が分からなかった。
自分はモビルスーツに乗り、敵の攻撃を複数浴びたのをしっかりと感じていたのだ。
だが、今の自分は倦怠感こそあるが怪我などをしているようには見えない。
だが、それ以上に気がかりなのは今の自分の体。
「・・若返ってる?」
俺は星の屑作戦参加時、既に30歳だった。
しかし、今の自分はどう見ても10代の後半ぐらいである。わけがわからなかった。
混乱していたところに突然声がかけられた。
「起きたかリーガン・ロック伍長。気分はどうだ?」
声の主は尉官クラスとわかる軍服を纏って知らない名前を自分に向けてきている。
俺は余計にわからなくなっていたが、相手はそれを違う意味にとらえたようで、話をつづけ始めた。
「元気が有り余るのはいいが、試作されたばかりの実験機でデブリ避けをしようなど貴様正気か?危うく、命と機体両方を失うかも知れなかったんだぞ。・・とりあえず、無事で何よりだった。しかも、かすり傷程度とは奇跡としか思えんぞ。」
その後、事故による記憶の欠落を訴えて現状を確認したところ、現在はUC0070年であり、ここはジオニック社が保有している医務室であるとのこと。そして、俺とさらに2人の軍人がテストパイロットとして呼ばれたようである。何でも、サクとかいう軍用モビルスーツの実験機初テストをするために。
サク?何だそれは?
!ザクか?ザクのことなのか!?そうなのだろうか?
だが、やはり解せない。
確かザク(旧ザク)はUC0074年に試作機が完成するはずなのだ。
まだ、4年近く間があるはずなのである。にも拘わらず実験段階とはいえ試作機がある。
俺はさらに混乱するだけであった。
その後、医務室から病院に直行し検査したが特に異常なしとのことなので家に帰ることになった。だが、困ったことに家はどこという状態に置かれた。さらに、俺自身の名前も微妙に違うので余計に困る。これらはとりあえず、先程のように記憶喪失を理由にして上司である例の尉官から住所を教えてもらうことで解決した。・・もっとも軍の宿舎であったから本人の帰りついでに送ってもらったような形となってしまったが。
俺の部屋?に到着後、自身の経歴を確認した。
リーガン・ロック
サイド3の郊外第4区出身
経歴:UC0069 ジオン士官学校を3席で卒業
UC0070 リシリア・ザビ揮下 『戦術機動大隊』に入隊
同年9月 ジオニック社の新兵器テスト機のパイロットに志願
・・まとめると実に短い情報であるが突っ込みどころはいろいろある。
リシリア?あれか、これもキシリアのことなのか?
後、『戦術機動大隊』?何だそれは?
俺が知ってるキシリア揮下の大隊名は確か『教導機動大隊』であったと記憶しているぞ。
後、俺はいつテストパイロットに志願した!
その後も、いろいろ調べていると叫びだしたい衝動を誘発する名前・名称や歴史事件があるが少しだけわかったことがある。
俺は生きている。しかも、俺が死んだ時よりも過去の世界らしき場所に。
前世とか後世とかいうものがあるかをUC以前に議論していた時期があることを思い出す。
だとすると、俺が今いるのは。
「後世というやつなのかねー。」
俺は頭をかきながら備え付けのベッドに倒れこんだ。
とりあえず寝た。現実逃避である。
でも、誰も責めないはずだとこの時、俺は思った。
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