機動戦士ガンダム~UC(宇宙世紀)変革史~   作:光帝

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前話投稿後、『シャアとかは登場するのか』や『アムロ・レイ』はどうなるの。
などの感想をいただきました。今後、流れを見て登場させる予定です。
楽しみにお待ちください。


第十七話 ルウム戦役②

シーサンは必至に艦隊をまとめて前進を開始した。

どうやら、両翼を囮にして中央の艦隊で各個撃破を考えているようだ。

両翼艦隊はMSを艦船周囲に密集させて防御姿勢を貫いている。

だが、そう時間がたたない内に各所から悲鳴が上がることになる。

 

「両翼艦隊から十分離れました。」

「よし!ただちに回頭。左翼を攻撃している敵を砲撃する。各艦に徹底させろ。宇宙人共に目に物を見せてくれる。」

「提督!前方に複数の熱源反応探知!戦艦とMSです!!」

「何?!」

 

オペレータのいう通り、艦隊正面には戦艦群が列をなして待機していた。

そこから複数の光の筋が味方艦艇を包み込んでいく。

メガ粒子砲による一斉砲撃だ。

付従ってきていた僚艦が真っ二つに折れて光輝いて爆散する様が艦橋やスクリーンの映像で繰り返し投影されている。

 

「戦艦『ファルコン』轟沈。巡洋艦『ウーロン』大破!」

「こ、後退だ。後退しろ!何をしている撃ち返せ。反撃するんだ!」

「提督、敵の攻撃に対してこちらの攻撃が効果的に機能していません。完全に混乱しています。」

「敵は正面だぞ!混乱する余地がどこにある」

「提督自身が回頭を指示したではありませんか!その直後に攻撃を受けたためにどちらを優先するべきか判断ができないのです。」

 

さらに続報がこの後、艦橋全体を支配した。

後方からも複数の艦隊反応が出現。左翼艦隊が組織的に機能しなくなったことが報告されたのだ。

 

「なんだと。いったいどこからそんな戦力をかき集めてきたんだ!」

 

それは当然の疑問であっただろう。

シーサンが『星の夜』作戦開始前、ジオン軍が動かしている護衛戦力は正面で攻撃している艦隊程の数だと参謀部から情報が入っていたためだ。ではどこから出したのか。

答えは至極簡単なものだ。まず、護衛用に集められたデラーズ指揮の『マスラオ実行艦隊』。

それに、本来はソロモン護衛にあたる予定になっていた『ロズル旗下の艦隊』が合流しているためである。デラーズの考えた計画にのっとり、ソロモン宙域から全艦隊を動員して敵後方に回りこませたのである。

 

 

前世を振り返ると、『ブリティッシュ作戦』を含めて初戦でジオンが犯してしまった問題点が2点明らかになる。

1点目。連邦軍の残存艦艇を追撃せずに見逃したこと。

外交上、レビル将軍を捕虜に成功していたこともあって殲滅は必要なしと考えたからかもしれないが、これはどうだったのだろうか?

追撃から逃げられたなら仕方ないかもしれないが、物量的に劣勢であるジオン側なら勝てるときに勝っておくことは重要であり、徹底しておくべきだったという見方もある。

2点目。MSの重要性を戦果で連邦に教えてしまったことだ。

当時、連邦軍は大艦巨砲主義が主流であったために『ルウム戦役』後半にMSを用いたジオン軍に逆転されて敗北を喫した。

だが、1年戦争後期に入るとその時の戦果がまずかったことが解ってくる。これは連邦に、MSの重要性を認識させる結果となり、わざわざ連邦をMS量産とガンダム開発計画へと至らせてしまったといえる。

この2点から、『ルウム戦役』は作戦としては完成していても戦略という点では失敗していたという結論となるわけである。

 

以上の2点を解決するために『黒鉄会』はいろいろ思案することになった。

まず、1点目に関しては完全な総力戦を実施することで対処した。

本国防衛戦力まで動員し、ルウムに集結した連邦軍艦隊を殲滅する『マスラオ作戦』を実施したのである。

本国防衛用の戦力まで持ち出すのは確かにリスクが高い。だが、ルウムの艦隊は連邦軍現存の艦隊をかき集めたものだ。つまり、これを殲滅できれば宇宙にいる連邦軍機動戦力の大半を奪える。ここで動員しなくていつするのか。

二点目に関してはこの戦い終了によって解決できる算段が既に立っている。

 

「このままでは前後から挟み撃ちにされます!」

「そんなはずはない。こんなバカなことが」

 

もはやどうすればいいのか訳の分からない状態に陥りつつあった。

だが、オペレータの一言がギリギリのところで精神を踏みとどまらせた。

 

「提督。左翼宙域外延部より巡洋艦『パーメルン』より打電。『我、これより退路確保のためMSを発進セリ。残存艦艇を集結させて離脱されたし。』以上です。」

「左翼にいた艦隊は壊滅状態ではなかったのか?」

「提督。あれは『ルナⅡ』に居たはずの艦艇です。集合不可の場合は周辺偵察を優先するよう通達していた部隊の一つでしょう。」

 

それがなぜ、ルウムにいるのか。それを気にする暇は既になかった。シーサンは混乱仕かけている思考を必死に立て直し、艦隊をまとめるよう指示を飛ばし始めた。

連邦軍に将兵から後に『ルウム決死の撤退戦』と呼ばれることになる撤退の開始であった。

 

 

敵右翼の艦艇、MSを無力化した奇襲隊は補給後に左翼攻撃に打って出た。この戦場においても圧倒的有利にジオン将兵は立ち回ったが、今、一時的にせよ一変していた。

急に現れたサラミスから出てきたMSによって各隊から初めて被害らしい報告が上がり始めていた。その敵はザニーとは明らかに違うらしい。小型の傾向火器を持ち、接近戦においてもヒートサーベルとは違った兵器で応戦してくる。機動力もザニーより明らかに上を言っているという内容だ。

だが、それと前後して別の目撃情報がある。それが問題であった。

それによれば敵はビーム兵器と実弾兵器を両方所持しているらしく距離に合わせて絶妙に使い分けてこちらのMSを撃破しているというものだ。

既に5機、食われている。たった1機に見過ごせない被害だ。

 

(連邦軍は既にビーム兵器の開発を成功させているのかもしれない。)

 

この後世は前世とは技術的進歩の速度が軽く見積もっても5、6年以上早まっている。

ジオンですらそうなのだから連邦でそうなっても何ら不思議はない。

そして、それを証明するような機体がリーガンの目の前にいる。

形状は前世『ジム』をベーシックにしていることが容易に伺いしれた。さらにビームライフルを持ち、左肩には固定武器らしきものを背負っている。

俺はその敵に向かって、360mmバズーカを打とうと狙いをつけるが、その途端に敵がこちらを向いた。そう感じた途端、敵はジグザグ回避を始めたのだ。しかも、すぐにライフルでこちらに攻撃してきたのだ。

アドバンテージがあったにも関わらず一瞬でそれをチャラにされた瞬間であった。

俺はスラスターを吹かして右に避ける。そこをビームの閃光が走っていった。

 

(おいおい。あいつ、俺が照準を向けた瞬間に気づいた素振りだぞ。エスパーか?!・・いや、もしやニュータイプとかいうやつか?)

 

ニュータイプ。前世ではシャア・アズナブルやアムロ・レイ、ララァ・スンなどがいたが数は少ない。人の革新などと言われていたが、どんな時代・世界でも戦争の道具に成り果てるのは同じようだ。ただ、敵に回す側はあまりに理不尽な思いをする敵だとも感じているが。

 

俺は再び、バズーカを構える。

ただし、先程のように狙い撃ちはしない。速射・連続打ち。

この試作バズーカだからできる三連打ちだ。

俺はトリガーを引きつつ、設定を連射モードで相手の回避範囲に流し打った。

だが、敵はそれを見越すように機体を制動してバズーカの射線から外れていく。一発、二発。だが、三発目で敵のライフルが吹き飛んだ。だが、それと同時にこちらの左足が爆発した。よく見ると奴の機体のライフル下部から煙が上がっている。

 

(補助のグレネードまで装備していたのか。ジムとは思えないくらい武装豊富だな。しかも、パイロットの腕も良い。)

 

結果的に双方共に致命傷には至らなかった。敵は即座にライフルをパージしたため、余波による機体損傷を受けなかったことも大きい。

俺は、舌打ちとともにバズーカを腰背面に回す。先程からの戦闘でバズーカの弾倉はもうない。せいぜい盾替わりになるかならないかである。

 

(せめてもの救いは敵のライフルを破壊できたことだな。)

 

だが、相手からライフルを奪ったからといって安心できない。

死闘は幕を上げたばかりである。

 

リーガンがマフティーと死闘を演じている時も状況は絶えず変化する。

マフティーの戦線介入も、戦術的撃墜数も、大勢に劇的な変化は与えるには至っていなかった。

 

 


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