機動戦士ガンダム~UC(宇宙世紀)変革史~   作:光帝

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MSの開発や地球侵攻への理由が微妙に違うかもしれません。
一応、継続して調べて修正しますが気づいたかたなどは感想をお願いします。
誠意修正いたします。


第四話 困惑の入り口

『黒鉄会』の会合場所。

かなり堅苦しい会議室や軍御用達の酒場などで開いているかと思えば予想は大きく裏切られ、そこはジオン士官学校であった。

今の時間になると、さすがに宿舎に帰る候補生や各設備の点検を行っているらしい教官などの姿が目立つ。

デラーズはそのまま、校舎内に足を進めていく。途中、幾人かの教官とすれ違ったが皆それほど気にしている風もない。どうやら、既に了承されている風景らしかった。

そして、たどり着いた場所は・・『食堂』?

 

ジオン士官学校の食堂は『安い・美味い・早い』を信条に運営されているために好評で、俺も何度かお世話になった(*前世談)。ここの食堂のおばちゃんは、恰幅のいい風体で何より一般区画で多くみられる『人見のいいおばちゃん』で知られている。どうやらこの後世でも同様らしくよく見知ったおばちゃんが出てきた。

 

「こりゃ~、デラーズ中佐。ようこそお越しで。」

「いや、ここのメニューは個人的にも気に入っていて楽しみだからついよってしまった。本当はゆっくり話したいんだが、時間も少ない。例の『セット』はまだ残っているかね?」

「デラーズ中佐お気に入りの『あれ』だね。オーダー入ります!かつ丼、2人前!!」

 

(え、かつ丼?あの、デラーズ閣下がかつ丼!?いや、俺も食べるの?そもそも、会合は?)

 

デラーズはさも当たり前という感じで食堂の椅子の一つに腰を下ろしてくつろぎ始めている。

優雅に紅茶用のティーカップで食堂備え付けの水を飲む光景を見て俺は思った。

 

(・・あのカップ、マイカップだったのか。)

 

と考え始めた時にかつ丼が机の上に二人分おかれた。湯気を上げて実においしそうだ。

だが。デラーズは食事に手を付けずにうなずくと調理室の方へと歩き出す。

俺はあわてて彼についていく。調理室の扉を開いたすぐ足元に地下へ向かっているのがわかる階段があり、デラーズはそこを当たり前のように下り始めていた。

例のおばちゃんが出入り口で手を振っているのはいささか場違いだ。

するとデラーズが説明するように口を開き始めた。

 

「ここの教員と関係者に頼んで地下に会合用の部屋を借りている。もとは備蓄倉庫にする予定だったのだが、無理を押しとおす形でな。」

「先ほどのあの会話とメニューは割符の代わりですか?」

「ああ、私が人質を取られたり、気になる事が起きたと判断した場合は別の会話をすることになっている。それに、ここはロズル閣下が校長をしていたからリシリア派も正攻法以外では足を踏み込みがたい。」

 

前世と同様、ロズルは士官学校の校長に在籍していたことがあった。だが、今はやめていると記憶している。噂では行き過ぎた教育が原因らしいが、真偽は定かではない。

その前後事情を考えても、会合と称して一同が食堂に向かってメニューを頼む光景はいささか奇異のような気もするのだが、これもデラーズのアイデアだろうか?

 

「・・正直苦労した。私としてはもっと落ち着いた場所でと考えていたのだが、メンバーの幾人かがここを強く希望するし、根回しもかなりできているはでいまさら変更できなくてな。しかも、会合が長引くと食堂でさきほど頼んだかつ丼が夜食として出てくることも多い。」

 

(おいおい!あんたが選んだ場所ではないのかよ。誰だこんな場所選んだのは。それに、先程のかつ丼が後で夜食に出てくる?冷めたかつ丼を?!Noー!!)

 

俺は心の叫びとともに階段を下り続けた。

 

 

階段を降り切ったそこは、確かに倉庫だったとわかるドアがあった。

ただし、中身は別ものになっていたというのが俺の感想である。中に入ると皆がそれぞれに意見を交わしあっている。ただし、所属はさまざまなようだ。現役の士官学校生もいるし、『襲撃専門部』の者、そして、俺と同じように『戦機隊』の者もいる。それが顔を突き合わせて話し合う光景は他ではなかなか見れない。

そうこうしているうちに、俺たちのそばに歳の頃10代後半の青年が話しかけてきていた。

 

「閣下、お待ちしておりました。いつもよりご到着が遅いので一同、心配しておりました。」

「うむ、実はこの前話した男を連れてくるために少し寄り道をしてしまってな。だが、快く来てくれた。」

「本当ですか。それはありがたい。同志は一人でも多い方がいい。」

「期待させて悪いが、俺は見学に来ただけだ。入るとは言ってない。」

「それでも、きてくれたのはうれしいです。とりあえず見て行ってください。きっと理解を示してもらえると信じています。」

 

そういうと青年は用意していた椅子を俺とデラーズに勧めたのでそこに座らせてもらうことにした。

するとデラーズが先ほどからとはうって変って真面目な顔で話始める。

 

「諸君、事態は確実に悪化の一途をたどりつつあることが先ほどわかった。実は先日、『リシリア機関』にいる同志からの情報で連邦内でもMS開発計画が進行していることが判明したのだ。」

 

室内の者たち全員がざわめきだす。俺も思わずためらいの言葉を出してしまった。

連邦軍がMSの有用性に気づき本格的な実用計画を考えだしたのがUC0078年以降であり、実践で高い戦果を出したのは『RX計画』と連邦が言っているガンダムが最初であるはずだ。

そもそも、MSはミノフスキー粒子下での効果的な戦闘も想定して開発され始めたものだ。

故にこの時期ではまだ連邦では本格的開発はないはずである。

もちろん、UC0078初頭に少数ではあるが実験機的なものはあった。だが、大半はザクのレストアで実用には向いていない。だが、この後世では違うようだ。何らかの方法で実用性に気づき、開発を進めているようである。

 

「連邦はやはり前世と同様に『V作戦』を?」

「いや、どうやら完全量産型に視野を置いたものらしい。新造の戦艦は計画に含まれていないようだ。だが、予想では2年以内に実験機が完成し、最悪5年後以降は量産ラインに乗るとみている。こちらも対応を急がなくてはならない。こちらのMS開発の動向はどうだ?目途は付きそうか?」

「ジオニック社にいる同志の話では『サク』は改めて改名され『ザク』となることが決まり量産へ向けて問題点の改善化に着手したと聞きました。それと、他の競合会社との技術提携も進めるべきだと現場から意見しているそうです。」

 

それを聞いて、俺は別の意味で安堵した。

 

(ああ、一応前世と同じくザクと名称が決まったのか。確かにサクはあんまりだよな。ただ、性能は旧ザク以下なのが厳しいけど。)

 

リーガンが乗っていた実験機は、前世のヅダとザクを足して二で割ったような機体である。

見た目はザク系なのだが、背面部の設計がヅダというものでかなりバランスが悪かった。

武装に100mmマシンガンとヒートホークを備えていたことから、前世のザクシリーズの初期型実験機に近いとも言えなくはない。

なんでも、宇宙空間での通常運用は問題なかったのだが戦闘を想定した試験運用(障害物回避)時に背面のスラスターを全開にしながらデブリを避けた途端、コックピット以外の部品が耐えられずに分解してしまったようである。俺がその犠牲者であったのはいうまでもない。

奇しくも前世ヅダと同じような欠陥があったらしい。笑えない話である。

 

「しかし、連邦のMS量産計画は信用性の高い情報なのでしょうか?」

「情報を見る限りでは十分あり得るとみている。仮に連邦がMSを量産可能となると間違いなく向こうは物量作戦をとってくるだろう。質では我々が勝っても、数で押し切られる。前世のソロモンやア・バオア・クーのように。」

「それに、国内の問題も深刻です。サイド3だけではいずれ資源が枯渇し、追い込まれるのは自明の理。そのために、前世では地球への降下・占領作戦をとりましたが。」

 

一年戦争前期、連邦拠点への直接攻撃と地上資源確保を目的に、ジオン軍は地球降下作戦を行い占領政策を実施した。だが、今考えるとあれは愚策であったといえる。

恐らく、もともと急増の計画であったからだろう。

前世では、ギレン・ザビは短期決戦で連邦を屈服あるいは講和に持ち込めると考えていたからこれは間違いない。だが、計画が破綻したために地球への直接侵攻という方法をとったのだと思う。

しかし、これは戦略的に見ても戦力の分散であるし、地上は連邦の庭であるから地の理が得られない側面があった。さらに、もともと宇宙空間での運用と物量さを埋めるために考え出された兵器であるMSを地上で運用するための調整が必要になるからその分、時間・資源をとられてしまう。

結局、根本の問題が解決できない。しかも、戦争後期になると優秀な兵士が地上で次々と戦死したのは紛れもなく誤算であり失敗であっただろう。

その代表例として『ランバ・ラル』や『黒い三連星』がいる。

 

「それは愚策だ。ここは各サイドとの交易を中心にして食糧・資源を循環させていく方針をとっていく。鉱山資源に関しては資源衛星やグラナダから産出されるものを利用していく。」

「となると前世の『ブリティッシュ作戦』前後の作戦・政策は行わないということですか?」

「さっきいった戦略・政策を進めるためには各サイドとの信頼を失くすようなことはするべきではない。」

「仕方ないでしょうね。」

 

今考えると、『ブリティッシュ作戦』は連邦との物量差を埋めるために考えた苦肉の策であったことがわかる。だが、それ故にズサンさが目立つのも確かだ。

用いたコロニーを自分たちのサイドからではなくサイド2の物を用いたり、作戦利用のために8バンチコロニーに毒ガスを流し込んで民間人大量虐殺を行うなど他のサイドとの協力を完全に考えていない残忍な手法を実行したりと問題点が多かった。しかも、この事件がきっかけで人格が破綻する兵士や民間人もいたのはあまり知られていないが事実である。

連邦ではシロー・アマダ、ジオンではシーマ・ガラハウがそれである。

そんな討論をしている時に、俺もつい口を開いていた。

 

「そうなると、『ブリティッシュ作戦』に代わる案を考えておく必要がありますね。物量差は決定的ですからそれを埋めるための何かを。」

「『策』はすでに考えてある。権限があれば実行の手筈は万全だよ。まあ、代案というよりは少し順序と運用方法を変える形になるというのが正しいがね。」

 

様子を見るに自信はありそうである。他のメンバーにもそれなりの考えがあるようだった。

この日から、俺は『黒鉄会』に通うようになっていくことになるのは自然な流れだったのかもしれない。ただ一つ、修正していこうと考えていることがこの時あった。

 

(夜食を作れる人間をリストアップしておこう!)

 

 

 




誤字・脱字を以降20話まで修正しました。
さらに、ご指摘いただいた下記を修正しました。
ツダ ⇒ ヅダ

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