機動戦士ガンダム~UC(宇宙世紀)変革史~   作:光帝

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第四十話 早朝カフェ②

 

『ビグロ』。

前世においても少数が量産配備された機体であるが、評価は高い機体であった。

MSでは不可能だった加速性能を実現し、火力も高い。さらにクローも持っていたので一定の近接戦も可能だったので好評価だった。

そんなことを考えながら、俺は手元の紅茶を飲んでいた。ロズルは先ほど届いたサンドウィッチを口に入れて図面を見る。最初に俺が口を開いた。

 

「MAですか?」

「ゲニアス卿から回された技術を元手に考え出したそうです。現在は二種類が考案されていて、細部の設計を考えてもらっています。」

「だが、これほど大型の機体では鈍重になってしまう。実戦では的だろう。」

「中将のいうことももっともです。ですが、それについての解決案も既に出ております。」

 

モビーユの補足によると、グラナダで開発中であった『ドラッツェ』が糸口になったらしい。

ドラッツェは下半身部分はプロペラントタンクと一体となっていることも含めて、小回りが利きづらい設計となっている。それを補うべく推進力増強を推し進めた機体となった。

そして、この考え方が先のMAにも使えるというものだ。

機体が大型化するから小回りが利かなくなり、鈍重になる。ならばその分、バーニアの出力を増大させ、推進力そのものを上げればいい。

そして、機体が大きいということはその分、大型の火器を搭載できるという利点も生まれる。まさに、過程こそ違うが前世のMA『ビグロ』や『ヴァルヴァロ』の開発思想に至ったというわけだ。

 

「理屈はその通りだが、連邦のMSは最近になってビーム兵器を常備する傾向にある。貫通力のある兵器だ。対策はあるのか?」

「それについては、デラーズ閣下が早期に中止した『ビグザム開発計画』の際に発見されたフィールド技術の応用で一定の解決ができるという目途がついています。」

 

俺もそれを聞いて納得した。

『ビグザム開発計画』は、前世で戦果を挙げた例の巨大MAである。

だが、前世においては時を逸した巨人機であり、試作用の1機のみという状態でドズルのもとに送り付けられた。ただ、確信的な技術を用いた初めての機体でもあった。

それが、Iフィールドである。これによってMSのビームライフルどころか戦艦の主砲すらも遮断して、敵を恐怖させたのだ。

 

「そのフィールド技術については、俺も聞いているがあれはまだ大きすぎるために搭載にかなりの制限があると聞いている。アプサラス計画でもそのために機体が必要以上に大型化したと聞いた。その問題は解決したのか?」

「確かに、それが問題でした。そこで、フィールドそのものではなく、その過程で発見されたコーティング技術を用いる予定です。」

「それは、『耐ビームコーティング』というやつですか?」

「ええ、お詳しいようで助かります。」

 

俺は、それに対して後輩に詳しいやつがいると言ってごまかしたが、後世の技術進歩はやはり早くなっているのだなと改めて思った。

耐ビームコーティングは『ビグロ』の後継機である『ヴァルヴァロ』から用いられたと聞いている技術なのだ。このことからまとめると、現在考えられているMAは2種類、下記が特に有力の2種のようである。

 

 

ビグロ基本仕様 ビグロ支援仕様

主武装 クロー×2 主武装 クロービーム砲×2

ミサイルランチャー(左右3門) 大型メガ粒子砲

メガ粒子砲 三連装中型ミサイル(左右3門)

補助 耐ビームコーティング 補助 耐ビームコーティング

 

 

見たところ、基本仕様は前世のビグロに限りなく近い。だが、火器のランクが少し落ちている。

おそらく、量産を容易にするための処置であろう。

支援仕様は基本仕様と異なり、クローを機体に内臓する方式らしい。大きさも基本仕様より一回り大きくなっている。その一方で、全体的にシャープな形になっていて大型の火器でまとめられている。前世の『ビグロ・マイヤー』に位置づけられる機体だ。前世では、ビグロとヴァルヴァロの間に位置する機体で実在も疑わしい幻の機体であると言われている。

 

 

「基本仕様の方は対MS用の機体だとわかります。支援仕様の方は、対艦・対大型機向けを想定している感じですね。」

「うむ。俺もそう思う。2機が共同で動くことを想定した装備だ。・・これなら、哨戒ライン警備に配備するのに向いているかもしれんな。」

 

ロズルはそう呟きながら、あれこれと考えている。

確かに、艦1隻に3機ほど搭載していれば一定の敵にも対処できるほどだろう。

もっとも、現状では量産もしていないペーパープランなのだからどうなるかは不明だ。

だが、このように次々と新しい発想を実現できることは後世ジオンでは重要となってくると思う。

 

「他にも意見はありますが、今のところ実現可能なのは先の2種類だと儂などは考えていますな。」

「ひとまず、ロズル中将がこの内容を上に報告して量産の目途を立てる準備をしておくしかないでしょうね。」

「そうだな。だが、今の軍ならば採用される可能性が高いプランだ。設計を進めておいてくれ。ソロモン守備司令官権限で許可できることは少ないだろうが頼む。」

 

ロズルはそういって頭を下げながら頼んでいる。一方で、モビーユなどは頭をあげて下さいとしきりに説得することになってしまった。

根回しの面では俺にもかなりの手助けが可能だろう。

 

(主に、デラーズ経由でだが。また、あの人の苦労が増えるわけだな。)

 

そう思うと少し、忍びないきもするが俺は気にしない。

これも軍のため、国のため、そして戦後世界のためである。俺は鬼になろう。

・・前にも似たようなことを思った気もするが。

そのようなことを考えていたところに、落ち着いたロズルが再び話始めたのが耳に入る。

 

「どうも、最近は不穏なことが多くて困る。そこで、ものは相談だが明るい話題を作る気はないかね?」

「中将?それは私に言っているのですか?それとも、モビーユ殿に?」

「中佐。おそらく儂ではなく君だろう。その件に関しては儂も一杯かませてもらっておるからな。」

 

フォフォフォ、と怪しげな笑いを俺に向けている。そして、俺の直感が告げ始めていた。

そう、後輩の迷惑事や面倒が起きるときにたびたびくる第六感のようなものが。

 

「中将。私はグラナダに行く気はありませんよ。」

「誰が、君をモルモット置き場に送るといったのだ。その気はない。」

 

どうやら、中将も俺と後輩のことは知っていてくれたようだ。しかし、それで通じる我々は既に後輩にたびたび迷惑をかけられているとわかるのが悲しいところだ。

 

「では、何事ですか?」

「うむ。実は、モビーユ殿の養女が、現在MSのパイロットをしている。だが、話を聞くとかなり破天荒な女性らしいのでいろいろ問題があるようだ。」

「それと明るい話題がどのように関連が?それに私とのかかわりは?」

「まあ、最後まで聞け。実はその令嬢の最大の憂慮は相手だ。つまり、婿のなり手がいないということだ。しかも、彼女は軍学校でも優秀なパイロット。日頃から『私の相手は私以上の腕を持つ殿方であるべきです』と公言している。」

 

どうやら、その公言のせいで相手がことごとくフラレ続けているらしい。

そこまで聞いて、俺は何を言わんとしているかを悟りつつあった。

だが、確認はしなくてはならないだろう。外れていてほしいと内心思っているが。

 

「・・私に見合いでもしろと言いたいのですか?中将閣下」

「察しがよくて助かる。君が一番適任なのだ。」

「ガトー少佐やマ・グベ少将などがいるでしょう!彼らなど将来有望ですよ。私などより」

「ガトー少佐は真面目でいい男ではあるが、いささか若すぎる。マ・グベ少将などはモビーユ殿から却下された。」

「しかし、顔も知らない。あったことすらない相手といきなり」

「中佐。儂の娘では不服だと言いたいのか!!」

「モビーユ殿?!落ち着かれよ!」

 

その後は、修羅場だった。

どこから持ってきたのか、ハンマーとスクリュードライバーを俺に振り回そうとするモビーユ殿を必死に説得するロズル。そして、顔を青くしながら断ろうとする俺。

はたから見ていたら笑えるが当人たちは笑えない。結局、俺は半ば強制的に見合いをすることになってしまった。そして、俺は朝から疲れた精神状態で仕事をしなくてはならなくなったのだ。

 

(勘弁してくれ。俺は普通の恋愛がしたいんだ。なのにお見合いって。しかも、相手はハンマー片手に俺を襲いかけた人の娘。・・不安しかない。)

 

女性との出会いを考えていたほんの一時間前までの自分のことなど、既に記憶から吹き飛んでしまっていたリーガンであった。

 

 


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