機動戦士ガンダム~UC(宇宙世紀)変革史~   作:光帝

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第四十六話 シミュレータ戦闘(リーガン編)

そして、最後は俺の番となった。

正直言って、俺は他の二人ほど積極性に欠けるし、帰りたいのだが引くに引けない。

そして、シミュレータに入り。自身の機体データを入れる。それを読み終えたシミュレータが戦闘開始の合図を告げた。

ちなみに、俺の機体データは後輩改良のリックドムモドキにしている。

今の乗機であるゲルググも捨てがたかった。だが、試験終了後に返却する可能性が出てきているので、しぶしぶ『モドキ』の方にしたのだ。

それに、前向きに見れば武器の豊富さではこちらのほうが多角的な戦闘が可能でもある。

 

最初は、ラカランの戦闘に近い形になった。

距離を保ちつつ、俺は110mm機関砲を牽制として撃つ。

そもそも、俺などは、MS戦において中・遠距離で敵を仕留めることが最もリスクが少ないと考えている。その点から言ってもラカランの戦法は俺に近いものだった。

もっとも、少し前のこの機体ではこの戦法が難しかったのも事実だ。

 

(暴発が解消しただけで、戦法の幅が一気に広がったな。今後もいろいろ試さないと。)

 

俺はつい、そう呟いてしまった。

『ルウム戦役後』、各種の技術改良に伴ってようやく暴発問題を解消した110mm機関砲。それによって可能となった戦法は多い。リーガンにとってはうれしい誤算である。

だが、敵機はそれを避けながら突進してくる。ラカランもかなり速かったが、その比ではない。

 

「そう、易々と距離を詰めさせない!」

 

俺は、機関砲をさらに乱射するがやはり当たらない。もっとも、俺の腕では仕方ない側面はある。

そうなると、ラカランが先ほど見せた戦闘を見習うべきだろう。

後々、シュターゲンなどはうるさいだろうし、ラカランもいい気分ではないだろうが。

 

「評価は落ちるかもしれんが、やはり戦法は理に適う。」

 

そう言って、俺は機体を後方に向ける。そう、先程のデブリ帯だ。

もっとも、ラカランのような自決か特攻覚悟の『バンザイアタック』にならないよう、いろいろ考えはあるが。

俺は、機体を無理やり最高速度にしてデブリへ突入する。

リミット解除前と比べると体にかかるGが凄まじい。だが、速度は飛躍的に上昇したのが解る。

 

(我が後輩による機体改良、やはり優秀なんだよな。分解しないし。)

 

俺はそう独白した。覚えている者はいるだろうか?

この『リックドムもどき』に積まれたバーニアは俺が後世に来る直接要因になった事故機の物をそのまま用いている。

一応、リミッターがついているのだが先の『ルウム戦役』では怖くてリミット解除ができなかった。その異常なまでの加速力を用いて敵機との距離を無理やり稼ぎ出すことにしたのだ。

そして予想通り、俺はデブリ帯への突入に成功した。

その直後、俺はマウントさせていたバズーカを構えながら敵機を待ち構える。

しかし、敵機は正面からではなくこちらの機体下方から急速に接近してくる進路をとったようだ。

警報がそれを知らせる。だがその瞬間、俺はニヤリと笑った。

俺にはうすうす分かっていたのだ。多分、こう来るのではないかと。

 

(生身の人間ならば攻め方が急激に変わったりすることもあるし、これが前世のシャア自身ならば先ほど見せた方法と全く同じ戦法はとらなかっただろうな。だが、『データ』は所詮『データ』でしかない。特定条件を無理やり作ってやれば予想通りに動いてくれる!)

 

俺はそう心で考えながら即座にバズーカを連射モードで撃ち込む。

狙いから左右一メートル間隔で1発ずつ、計3発が敵機を狙う。

普通ならこれで撃墜だろう。だが、敵機はそれを躱してのけた。それも速度を緩めずに機体をバレルロールさせながらだ。この動きにも俺は覚えがあった。

 

(しまった!初戦のガンダム戦で見せた動きの一つに似たようなものがあると聞いていたが、まさかここで使ってくるか!!)

 

俺の焦りを見透かすように敵機が俺の機体正面に躍り出る。この態勢ならばヒートホークを使用するには近すぎる。ならばあり得るのはやはり。

 

「キックか。みすみす食らうか!」

 

俺はコックピット部分をカバーするように両腕をクロスさせてガード姿勢をとる。

しかし、敵機の行動は予想と少し違っていた。

確かにキックには類似しているのだが、コックピットではなくこちらの頭部を蹴り上げてきたのだ。

 

(おい!そんな動きは見たこともないぞ。あ、この後世でのブリューナクがしたことでもあるんだろうか?だとしたら納得だが。ただ、現時点で前世シャアと同等がそれ以上の腕に達してる?!)

 

俺は弾かれた機体を立て直したが、敵機の攻撃は終わっていなかった。

既に120mmマシンガンをこちらに向けていたのだ。非常にまずい。

敵のマシンガンが火を噴く直前、俺は無理やり機体を動かしデブリを足場に急速移動した。

前にブリューナクがしていた動きだ。また、前世のシャアやフロンタルも用いていた動作でもある。おかげで何とか回避できた。だが、俺はこの時失念していたのだ。

目の前にはデータとはいえ『本家本元』がいることを。

俺はお返しとばかりに機関砲とバズーカを撃つ。だが、敵機は急激に進路を変えながらこちらに接近してきた。デブリを足場にしながらの機動である。

 

「うお。やはり本家は速い。」

 

接近した敵機への射撃は無理と判断して俺は、ヒートサーベルを抜きざまに振る。

どうやら敵機もヒートホークを構えていたようで双方の武器がぶつかった。

双方の武器がぶつかるノイズと機体同士がそれを支えあう機械音が響く中、俺は切り札を切った。

 

「トライブレード射出!」

 

胸部に内臓されていた『ヒート式投射ノコ』、俺は『トライブレード』と呼ぶ武器だ。

我が後輩が前世兵器に似せて作成するも、射程距離と命中精度の問題から使い勝手は難しい。だが、先の戦いでそれにさえ注意すれば高い破壊力を持つことが立証された。しかも、この距離ならば外す可能性は少ない。

ツンザクような音を振りまきながら刃を回転させて敵機に向かうヒートノコは敵機へと食い込んでいく。だが、その途端に画面が真っ暗になった。正確にはその前に衝撃が機体を襲ったように感じたが何が起きたかは理解できなかった。ただし、負けたということは辛うじて感じることはできたが。

 

 

その時、何が起きたかを正確に理解できたのはラカランやシュターゲンなど『第三者』として戦闘を見ていたパイロット達であった。

近接武器同士でせめぎ合っていたところに、ゼロ距離でマシンガンの銃口を押し付けてマシンガンを斉射されたのだ。それは、ヒートノコ射出とほぼ同時であったが武器の特性上、マシンガンの方が先に直撃し、コックピットがつぶれた。

結果、敗北判定を食らったというわけである。もっとも、ヒートノコが当たっても『勝敗は動かなかったかもしれない』とリーガンならば言っただろうが。

 

「実質は相討ちか?」

「いや、中佐殿の完敗であろうな。本来はデブリに入ってきた直後の攻撃で仕留めるつもりだったのだろう。それでもたいした人だがな。」

「ふん。俺は認めんぞ!ユーリー嬢は俺がもらうのだ!!」

「・・限りなく不可能だと思うぞ。」

 

二人は戦闘についての考察を行いながら、審査員が自分達をどう評価するのかを思案するのであった。

 

 




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