機動戦士ガンダム~UC(宇宙世紀)変革史~   作:光帝

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『ジェイド』もとい、前世のジェリド登場についての質問がありました。
それについての説明は次話に一部掲載予定です。ぜひ、そちらを確認ください。



第五十六話 地上での戦い~トリントンの嵐②~

ガトー達が乗る機体は次世代機の雛形として開発調整が進んでいるが、そのテストを受け持つ僚機にも少なからず高い技術が注がれた。

もっとも、ジオン関係者からすればお粗末と言われるだろうが、旧型底辺であるザニーよりは性能の底上げ処理がされている。とはいえ、なぜ本格的に改修をしなかったのか?

それは、その僚機がジオン系MSの意匠を纏っているからに他ならない。

 

MS06J‐RGP『ジク』。地上専用に調整をし直したザクといったところである。

前世では『ザクⅡJ型』とも呼ばれていた機体だ。だが、ところどころに前世とは違ったパーツが使われているのが見てとれる。

肩はジム系の角ばったものが使われているし、頭部はモノアイではなくジムに近いフェイスメット型となっている。

その理由の一つには、前世と違い地上へのジオン軍侵攻が本格的に行われていないためである。

その結果、連邦は宇宙で鹵獲したザクを一度分解解析し、その上で地上に卸してまた修理・組み立てしている結果だった。

さらに、足りない部分やジオン色を排除するためにジム系のパーツを流用しているのは連邦軍らしい措置と言えるだろう。前世連邦でも見られた傾向である。

 

その一方で、試作機はルナ・チタニュウム合金を採用した画期的な機体として各種技術を採用し試験が進んでいた。そして、ガトーが搭乗するのはその中で02号機と呼ばれる機体だ。

RBM-00P02『ドゥバンセ』と呼ばれる機体である。

型式番号『00』から続く機体として周囲からは『ガンダム・ドゥバンセ』と呼称されている。

なぜ、試作機二番目なのに先駆者の意味を持つ名前が付いたか。

理由は試作機である3機の詳細を知れば一目瞭然となる。

 

『P01』は『アンセスター』と呼ばれ、ルナ・チタニュウム導入のテストベッドとして完成した。

テストベッドと呼ばれる事とその番号から見てもわかるように最初期の試作機である。

故に基本装備は、初期型ジムと同様で装甲を除けば先行量産機であるジム・キュレルと同等程度の性能だと言われている。

また、各種の武器・装甲テストを行えるものとして今も重宝されるが、後の2機に基本性能で劣るのは容易に想像できた。

 

一方の『P03』は『ディッフィーチレ』と呼ばれている。対外的にはドゥバンセの強化発展系となっているが、実際は『強化人間専用』として開発が進んでいる機体である。

各種センサーやスラスターの位置が通常機と決定的に異なっている。

さらに、異常なまでに敏感である一方、操作が困難であり非常に癖が強いことから問題児と呼ばれるようになっていた。

ジェイドは知らずに乗ったが故に醜態を晒す結果となったのだが、開発者・調整者以外はこの事実を知らないことがジェイドの不運だったともいえるだろう。

 

ガトーはあらかじめテストデータを見て『ドゥバンセ』を選択して調整を急がせる。

OSの適合化処置を急ぐ一方で、各機との通信用周波数を確認して機体に乗り込む。

 

「連邦のものだからそれほど期待していなかったが、以外に使えそうだ。」

「少佐の機体だけですよ。我々のは落第点です。」

「グラナダや軍御用達の会社から見れば欠陥機です。機体が重い!」

 

ガトーの方は連邦製と思えないほどできがいいようだが、他の機体は最悪なようだ。

装備とスペックがあっていないのか、基本性能が低すぎる故なのかいずれゆっくり考える機会を持つのもいいかも知れないとガトーは思った。

なお、ガトーとその残ったメンバーが乗った機体は以下の2機である。

 

RBM-00P02『ガンダム・ドゥバンセ』

主武装 ビームサーベル×2

60mmバルカン

ビームライフル

補助 自動射出機型投擲用ビーム・ダガー×3

対艦用吸着クラッカー×1

 

MS06J‐RGP『ジク』

主武装 ヒートホーク

    105mmダウングレード・マシンガン

補助  240mmバズーカ

 

これをみればわかるが、ジクは試作機のやられ役として調整されていた可能性が高い。

今の連邦なら正規軍でも開戦最初期のザクや開戦前のザクならば再現できるはずなのだ。

それをしないとなるとそう考えるのが自然である。ガトーとしては呆れるしかない。

 

(この試作機の性能であれば、恐らく最初期とは言えザクを3機相手取っても十分に勝てると思う。なのにそんな小細工をしている。それほど自分たちの機体に自信がないのか?それとも、単に我々ジオンの機体を貶めたいのか。どちらにせよ、これは機体に対する冒涜だ。)

 

ガトーは憤りを持ちながらも、機体を機動させる。ようやく、自分用にOSを書き換え終わったようだ。これでさらに動きやすくなる。

ジクとは異なり、ドゥバンセはかなり高スペックであるようだ。

装甲もそうだが、装備も汎用性が高い。しかも、対艦・拠点用とも思えるクラッカーまである事を見ても多方面向けの機体として調整が順調に進んでいたことが見て取れた。

 

「それでは基地からの脱出作戦を開始する。各機、遅れずに行動せよ!」

 

ガトーはそう指示を出しながら、機体のライフルを天井に向けて放つ。

同時に、ドック周辺が円を描くように爆発した。

 

 

 

ジェイドは先行配備されたジム・キュレルに搭乗してドックに到着した。だが、周りは炎と黒い煙が立ちこめる地獄と化していた。

 

「おい、これはどうなっている!包囲していたはずだろう?!」

『いきなりドック周辺を囲むように爆発が起きて周りを吹き飛ばしました。』

『連中。ドックそのものを破壊するために爆薬を仕掛けてやがった!!』

 

それを聞いてジェイドは納得した。

元々、破壊工作を目的にしていたのならば爆薬を仕掛けている可能性は高かった。

包囲前にそれくらい考えるべきなのだが、こいつらはそれを失念していたようだ。

 

「バカかお前らは!それくらい容易に想像できるだろう。・・ええい、それより敵は?」

 

そうジェイドが通信機に叫んだ時だった。

炎が立ち込める前方。正確には先ほどまでドックがあった場所から瓦礫を吹き飛ばして突っ込んでくる機体がある。

それは、見間違うはずもない試作機『ドゥバンセ』だ。

 

「敵に奪取されたか?!小賢しいヤツ。そんな、慣れない機体でこの機体に勝てるか!!」

 

ジェイドはジム・キュレルの搭乗経験は試作機より豊富だ。

試作機搭乗前は、この機体で何度も事前訓練をしていたのだ。次期リターンズの特権をフル活用したのだが、使える者を使っただけと彼は思っている。

だからこそ、慣れない機体の操縦は難しい。そう思ったからこその言葉だった。

ジェイドはバーニアを吹かせて敵機正面に突っ込む。互いが突っ込む形になりながら、ジェイドはキュレルのビームサーベルを抜き、敵機を突き刺そうとする。

だが、そこで信じられないことが起きた。敵機は、無造作ともいえる動作で同じようにサーベルを抜きジェイドが突きだしたサーベルを弾き逸らしてしまった。

 

(な、なんだと。読んでいたとでもいうのか?!・・だが、このまま機体を衝突させればとりあえず敵の足を止められる。その上で、友軍機と共に囲めばいい!!)

 

ジェイドはそう気持ちを立て直し、バーニア出力を上げる。だが、それさえも無意味となった。ドゥバンセと衝突すると思った瞬間、衝撃が加わった。

だが、予期していた衝突によるものではなかった。ドゥバンセに足蹴にされ、ジャンプ台のようにされたて地面に突っ伏したのだ。

 

「な、なに!?」

「機体に頼り過ぎている。だからこそ、そんな醜態を晒すのだ。・・未熟!!」

 

ガトーはそのジェイドの様を酷評して機体を走らせた。

既に、ジェイドのことなど眼中にすらなかった。

 


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