機動戦士ガンダム~UC(宇宙世紀)変革史~   作:光帝

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第七話 バカと天才

その日のうちに、マ・グベのことをデラーズに報告すると少し、ぶぜんとした顔になりながらも俺を評価してくれた。

ただしその後、叱られた。なぜだ。

最初はそのように思ったが、デラーズをはじめメンバーの言をまとめると。

 

そんなに私は信用できないか。事前に相談ぐらいはしてほしかったのだよ。

秘密主義を全否定する気はありませんが、リシリア派に評価されてきている相手なのだから危険だったかもしれないんですよ。身を案じるべきです。

先輩は慎重に見えて実際は、大胆な人ですからね。ま、正直に説教を聞いていください。

 

などなど、会の仲間たちから一晩中言われ続けた。

途中、後輩まで参加してきたので、『レポート』の件を糾弾して地面に沈めておいた。

後、ついでにいろいろ問題のある報告をしに来たらしい。

ムサイ級への改修を開始しているという報告とチベの大幅改造の進捗状況についてである。ただ、チベの改造に関しては内容があまりに極端なので全面的には承認が下りずに試験的に一隻だけ行うこととなったらしい。

 

(ああ、まあわかるよその意見。良識で見ればあの改造はすでに別物を作ると同義だし。)

 

「先輩、上層部に掛け合ってもらえませんか?」

「無理、不可、却下する。」

「デラーズ閣下。掛け合ってもらえないでしょうか?」

「却下だ。・・今はあきらめたまえ。」

 

少し、含みのある言い方だ。

今は?今後はする可能性があると?正気なのかデラーズ?!

叫びだしたい衝動を抑えるのには苦労した。

この後輩を暴走させるととんでもないことになるのはすでに判明していることなのだ。

それを立証した事件が『ザク超兵器化事件』というものだ。

 

 

半年前のある日、俺が後輩に呼び出されてきた格納庫でのことだ。

俺は見た。ザクであってザクでない別の何かを。

どう見ても、リック・ドムだった。頭部形状はザクⅡだ。しかし、それ以外は別物だった。

よりズングリとしたボディ、かなりの重量にも耐えられるだろう脚部、それと同程度の腕部が即座に目に入った。しかも、その傍らにはその機体の装備とわかるものがおいてある。要約すると以下のようなものだ。

 

1.ヒート式投射ノコ(なんかブーメランぽい)

2.ヒートナギナタ(ゲルググが持っていた装備のヒート版?)

3.110mm固定型機関砲(前世の死直前に見たような形状)

4.試作型360mmバズーカ‐リボルバー弾倉方式‐(なんか危険物のにおいが)

 

とりあえず、殴り倒した。

2番はギリギリ認めよう。量産機搭載もことによってはOKされるかもしれない。

だが、問題は1番・3番・4番だ。

1番は会のメンバーに聞いた。前世のある機体が使っていた武器の劣化型だ。

間違いなく再現しようとしたとわかる。だが、いろいろ欠陥がありそう。これで味方にあたったりしたら目も当てられない。自分の装備にゆっくり引き裂かれていく友軍機なんぞ見たくない。

 

3番は前世でシーマが乗機にしていた機体の武器にかなり酷似していたものがあった。

後輩によると機体内部に埋め込むタイプらしく両肩か胸部に装備する案があるらしい。ただ、欠点として弾詰まりの確立が50%以下にできないとか。

・・却下だ。いざ撃ちたいときに詰まって撃てないは洒落にならん。下手すると引き金を引いた途端、暴発もあり得る。自分の武器で機体が爆散。絶対御免だ。

 

4番は本人自信の一品と言っていた。

前世で360mmバズーカは普通にリック・ドムが装備していたので名称だけなら違和感がない。

ただ、リボルバーにした意味を聞くと、『いちいち弾倉を替えると連射できない』という問題を解決するために一発毎に回転補充されるリボルバーを採用し、火力と簡易的な連射を追及したということだった。

もっとも、重量と利用度の問題から3発が限度だったと悔しそうに語っていたが。・・一応、実用性はありそうなので保留としたが、『誰が使うんだ?』と思っていたら後輩が使ってほしそうな目でこちらを見ていた。俺はモルモットじゃない!!

 

もちろんこれ以降は改造させないために機体・兵器は没収した。

『黒鉄会』最大の危険物となっている。

ただ、ジオニック社やその他多数のライバル会社の職員がたびたび見学に来ているらしい。

優秀だが、バカなのがたまに傷な我が後輩であった。

 

「ところで、先輩専用MSについてなんですが」

「待て。いつ俺専用機ができたんだ?」

「先輩、照れ隠しとはいえひどいです。ほら、半年前に見せた例の」

「あれには乗らないといっただろう!もうじきザクが回ってくるからそれに乗る。」

「先輩の上司に頼んで、例の専用機調整をお願いしましたから先輩の機体はありませんよ。」

「勝手なことをするなー!!」

 

冗談じゃない。あんな問題機に誰が乗るものか。

何とか実地演習前に機体を撤去しなくては。とりあえず先輩に連絡を。

 

「あ、それと先輩の上司はすごく気が合いますよね。例の機体を持っていったら『調度ザクが明日くるからさっそく使わせるよ。俺もこれで同期連中に鼻が高くできるな』と笑いながら承諾してくれました。」

「嘘だ~!!」

 

どうやら退路も事前に絶たれた挙句、先輩によってお膳立てすら終わっていたようだ。

つまり、俺は普通の機体に乗ることはしばらくない。あの異常スペックの異様に目立つ機体で演習や実戦に出なくてはならないのか。

俺は後輩を再び地面に沈めたのちに、自室に戻って泣いた。

 

演習の結果、俺はベスト3に入る成績を出すことになる。

その後、一部兵士が俺の使っていた機体を試し乗りしたがった。

ただ、皆一様に青い顔で戻ってきては吐くものが続出しただけだったが。

 

(うん、わかるよ。武器もそうだが機体性能がリック・ドムより間違いなく上だし。ザクのつもりで運用すると機体Gに耐え切れない。・・我が後輩よ、いったい君は何を作ったのかね。)

 

その後、俺は特例で少佐にまで引き上げられてしまった。あの機体を試し乗りした者の中にかなりの実力者が混じっていたようでその推薦があったとか。

最初は固辞していたのだが、マ・グベからも受けとっておくべきだと言われたので仕方なくであった。

一応、他の同期に階級が並んでいたので結果オーライと俺は開き直った。

だが、そのうれしさはたった二週間しか続かなかった。

国内で、のちに歴史事件として残る『ジレン爆殺未遂事件』によって。

 


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