東方 覚物語   作:雪兎 銀杏

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*これは東方projectの二次創作です。


二、人という夢

二、人という夢

 

 

夢を見る。私より後に産まれて、先に死んでいった人たちの夢。

 

*****

 

何百年も生きていると、そのうち脳がいろんなことを忘れ始める。

脳の容量は人間の何倍も上だけれど、それでも限界があるということだ。

 

しかし、私は、思い出せないはずの記憶を、夢に見る。

 

最初のうちは良かった。

 

けれど、段々それを重ねているうち、人という存在が愛おしくなっていった。

 

お姉ちゃんに、聞いたことがある。

 

「お姉ちゃんは、人をどう思う?」

「…そうね。人間の発想力は凄いと思うわ。憶えてるかしら?ローマの水道橋。あれをつくったのは、妖怪でも神でもなく人間なの」

 

お姉ちゃんは、人間に執着していない。

私の思いを言っても、きっと入れ込みすぎだというだろう。

 

人の思いを、見て読んで、頭に流れ込んでくるイメージに、共感し、共有する。

心を読むっていうのは、そういうことなのだ。

 

*****

 

『化け物めっ』

『近づくなっ』

『殺せっ』

 

違う。

私たち化け物なんかじゃないの。

 

人と姿がちょっと違って、長生きで、心が見えるだけなの。

 

『殺せっ』

 

痛い視線。

怖い瞳。

 

読める憎悪。

恐怖。

 

人は、人じゃないものにあんなに残酷になれるんだ…。

 

いつもお姉ちゃんと一緒に、暗いところで震えていた。

その日誰にも会わなくても、怖くて怖くて仕方ない。

 

それでも、私は人が恨めない。

 

時間が経てば経つほど愛おしい。

 

人は、飴細工のように弱い。

あんなに美しく醜い生物はいない。

 

*****

 

「戦争が始まるそうよ」

「そうか」

「大丈夫かしら?こいしとさとりを連れて、田舎に戻らない?」

「私もそうしようと思っていたんだ。ここは都会だし、狙われやすいだろう」

「でもあの子達、不思議ね。何年も経ったのに、全然大きくならない」

「成長期が終わってるんだろう?」

「そうだけど…」

「こいしが最近、ずっと不安そうなんだ。私は可哀想で…」

「分かってますよ。たとえどんな子供でも、私はあの子達を愛しています」

「ああ、私もだ」

 

ドアの隙間から漏れる会話に、ため息をつく。

 

なにがどんな子供でもだ。

なにが愛しているだ。

 

どうせ私たちの本当の姿を知れば、怖がり、逃げ出すくせに。

 

自分の部屋に入る前に、こいしの部屋のドアに目が止まった。

 

「…入るわよ、こいし」

 

返事がない。

寝ているのだろうか。

 

ドアを開くと、ベッドが膨らんでいて、寝息が響いてきた。

 

「…恐怖?」

 

寝息とともに、かすかな恐怖が伝わってくる。

近づいても、こいしは眠っていた。

だが、これはこいしの感情だ。

 

よく見ると、こいしの額に、流したあとがあった。

 

「こいし、こいし、なんで泣いてるの?」

 

思わず、そう声をかけていた。

 

「……お姉ちゃん?」

 

疑問

 

「…大丈夫。ありがとう」

「本当?」

 

こいしは、私を安心させたい。

 

「大丈夫だよ」

 

本当

 

「よかった。嘘はついてないみたいね」

 

こいしは、わたしのこころを読んだようだ。

 

怖い夢。

私もよく見る。

 

「大丈夫なら、早く寝なさい」

「わかってるよ。おやすみ」

 

心にもないことを口走る。

 

「おやすみ」

 

そのまま自分の部屋に戻り、私は読みかけの本を見た。

 

開いたままになっている。

栞を挟み、本を閉じる。

 

 

「…おやすみこいし」

 

*****

 

屋敷から離れるのに、そう時間はかからなかった。

 

使用人の何人かの帰省を許し、両親は私達と共に古い館についた。

肌寒い森の中に建っている、古い洋館だ。

 

お父さんが最近購入したものだが、整備はうまくいってないようで、荒れ放題だ。

 

「数日後には住めるようになるそうだ。よかったなっ!二人とも」

「うんっ!」

「大きな館ですね…」

 

 

数日後…

 

森の奥だったから、都会のような賑やかさはなく、静かだった。

お姉ちゃんにとっても私にとっても、心の声が少ない場所は、好都合だったし、食べ物が、森の中で採れたものだったりして、新鮮だった。

 

私は暇だったので、裏でよく畑を作ったりしていた。

時々それを食べに来るのは、熊とかウサギとか、純粋な心を持ったものたちだった。

 

お父さんは、月に一回近くの村に配給を行っていた。

その村は貧しかったのだ。

戦争のせいで大きな館に住んでいても贅沢はできなかったが、それでも前の家よりこっちの方が好きだった。

 

 

 

…To Be Cont'nued

 




さとりが少し暗いキャラクターです。
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