岩塩風呂の世界かと思ったら惑星Ziだった件   作:瞬く陰と陽

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岩塩で勝てなさすぎてむしゃくしゃしてやった
後悔はしてない


基地と英雄と時々サソリ

「周囲に敵影無し。平和で何よりだ。」

 

広大な砂漠を見渡せる高台の上で噛み締めるように呟く。

手にしたボトルに口をつけると中のドリンクを喉をならして飲む。

名家出身のお嬢様が作ってくれた特製だからか厳しい鍛練で渇いた身体に染み渡っていく。

 

「休憩は済んだか、司令官?」

 

背後からの声に振り向くと真っ赤なマントを纏った青年がこちらを睨んでいる。

彼に悪気はないのだが如何せん無愛想にすぎる。

正直子供は泣くぞ。あと俺も。

 

「待たせてすまないな、ドモン君。そろそろ基地へ帰ろう。」

 

彼の名はドモン・カッシュ、おそらく世界最強の武闘家にしてキング・オブ・ハートの称号を受け継ぐ男だ。

 

「なんだ、もう限界か。これでは鍛練にならん‼」

 

声がでかいし、俺はぱんぴーなんだ。人外の君と同じトレーニングメニューができるわけないだろうが。

 

「まあまあ。そろそろ偵察班が帰って来るはずだ。ミーティングはきちんとする約束だろう?」

 

甚だ不満そうではあるが納得したらしいキング・オブ・ハートと共に基地へと走り出す。流派東方不敗を教えて欲しいとはいったがこっちは四捨五入で三十路なんだよ。

多少は労ってくれてもいいだろうよ。

彼と鍛練を始めて3ヶ月。ある程度体はできてきたと思うが格闘経験は殆ど無いインドア派の俺には毎日が試練の道だ。

 

…そうか…あの日からもう3ヶ月も経つのか。

 

 

 

~3ヶ月前~

 

「お、明日で30日ログインボーナスか。まぁおっさん三人もらってもなぁ。」

 

29日前に始めたこのブラウザゲームの-ガンダムジオラマフロント-の画面を眺めながらジオンの英雄に対して失礼すぎる事を吐くがこの家ではガンダムを知ってるのは俺か弟だけ。

弟はEXVS派だからこういう地味なゲームはやらんだろう。

 

「運営はとっととマイエンジェル、ガラハウたんを出すべきだろ‼」

 

ガラハウたんと本人を前にしたら言えるわけもない愛称を叫びつつ制圧戦へと赴く。

ちなみに嫁がシーマ様、彼女がナタル、姉にしたいのがカレンだ。

 

隠した方がいい性癖の暴露だってしたくなる。

 

「~ッ!くそッ!全然勝てねぇ‼」

 

ここ最近は制圧戦での負けが続いていたからだ。

苛立ち混じりに吐き捨てると自分のジオラマへと戻る。

 

「あ~、やっぱりちゃんとwiki見とくべきだったな。」

 

考えなしに自分のジオラマを発展させた結果、強すぎる相手とばかりマッチングされていた。

それでも自分のジオラマが発展していくのを見るのは楽しい。

分かっていてもやめられなかった。

課金も多少はしたがこの程度はシンデレラに注ぎ込んだ額に比べれば屁でもない。

諦めてブラウザを閉じるとベッドに寝っ転がる。

しばらく天井を見上げた後、目を閉じた。

 

 

 

「…れい…きてく…」

 

ん…寝てたのか…お袋…今日は仕事休みって言っといたのに。

 

「…きてください…しれ…」

 

あん?敬語?……何か声が若い気が済んだけど…

 

「緊急事態ですわ!司令官、どうか起きてください!」

 

……お袋じゃねぇ……

 

恐る恐る目を開けた俺の目の前がピンクに染まった。

とんでもない美少女がそこにいた。

 

「ら、ラクス・クライン……」

 

「はい。ラクス・クラインですわ、司令官。」

 

ふんわりと微笑みを向けられて思わず顔が熱くなる。

こんな美少女に笑顔を向けられて興奮しない訳が、いやいや俺にはシーマ様という心に決めた人が…ん?

 

「シレイカン?…まさかそれって…」

 

ふとコスプレ?美少女の言葉が気になり尋ねると両手を打ち合わせてラクスの大きな水色の目がこぼれんばかりに開かれる。

 

「そうですわ!私達の基地が知らない間にお引越ししましたの!!」

 

「…え?」

 

訳のわからない言葉に目が点になっているとプシューッとエアーの抜ける音と共に扉が開く。

癖のある茶髪の、余りにも見覚えのある少年が部屋に入ってきた。

 

「良かった。目が覚めたんですね、司令官。」

 

「ア、アムロ…だと…」

 

ラクスとアムロが同じ部屋に!?

どんな世界観だ。まさかGジェネかスパロボか?

俺を不思議そうな顔で見るアムロはまだ少年だ。つまり初代。

しかもアムロも俺を司令官と呼んだ。…いやな予感がする。

 

「オペレーションセンターにみんな集まっています。ご指示をお願いします。」

 

「オペ、みんな…いったい何が!?」

 

呆然とする俺を連れだしたアムロとラクスは治療室のある建物を出てオペレーションセンターに向かう道すがら、幾つもの建物やミサイル発射台等の巨大な基地防衛施設を目にした。高い防壁とに囲まれているそこはまさに軍事施設だ。

 

「さぁ着きましたよ。」

 

少し距離があったためエレカで移動した俺達(運転はアムロ君だが)は巨大なパラボラアンテナの設置された建物についた。

 

「これがオペレーションセンター…」

 

そこで見た物に既視感を覚えた俺の中で予感が確信に変わりだす。

二人に先導されて到着した部屋の扉には大きく『作戦室』と書かれている。

開かれたドアの先には少しの驚きと抑えきれない興奮の光景が広がっていた。

 

「お待ちしていました司令官。…こんな事態に巻き込まれるとは私もよくよく運の無い男ですね。」

 

薄く笑うマスクの男、こんなにインパクトのある容姿とキレのある声。

あぁ認めよう…俺の大好きで大嫌いなキャラナンバーワン。

 

「私は貴方がいてくれてほっとしていますよ、シャア・アズナブル。」

 

鼻息が荒くならないように細心の注意を払いながら言葉を返す。

やべぇ…俺死んでもいい…

 

「さて、新たな舞台の幕開け…といったところでしょうがなにぶん何も聞かされていないもので…」

 

「やめろよラウ・ル・クルーゼ。今が緊急事態なのは貴様だってわかっているだろう。」

 

「ほう?私は事態の説明を司令官殿に求めているだけだが、ムウ・ラ・フラガ?」

 

「やめてください二人とも!!」

 

険悪な空気を醸し出したムウとクルーゼの間に茶髪の少年、キラ・ヤマトが割って入る。

…リア充め…ってそうじゃないな。

見れば我関せずと椅子に腰を下ろしているものや心配そうにこちらを見るもの、…ニヤニヤするなデュオ・マックスウェル。隣のニコル・アマルフィを見習えお下げ。

その他名だたる面々はみんなガンダムの登場人物、そしてこの組み合わせは。

 

 

「ガンダムジオラマフロントか…」

 

 

そう…先程まで俺がしていたゲームの、俺が集めた面子だ。

 

パンパン

 

手を打ち鳴らし注意を集めたのはラクス・クラインだ。

…この人ホント注目を集めんの上手いな。

 

「みなさん…こうして司令官もお戻りいただけましたわ。これからの事を話し合いましょう。」

 

ニッコリと笑ったラクスに促され各々が席に座る。

U字型のテーブルの一番上座以外に全員が座るとすべての視線が俺に集まる。

…俺待ちですね分かります。

 

空いた席に座ると正面に幾つかの立体映像が映し出された。

この基地の全景や周りの風景などがいくつかみられる。

 

「…!?すまないこの映像を大きくしてくれ!!」

 

思わず腰を浮かせた俺が一つの映像を指差すとそれが大きく拡大された。

それは基地から見上げた空の映像だった。

 

 

「…あれは月?でもなんで二つあるんだ?」

 

不思議そうに首を傾げる活発そうな少年、ガロード・ランの言葉に何人かが反応する。

 

 

「月が二つ?つまりここは地球ではないという事か?」

 

ピンクの髪をした気の強そうな女性、ハマーン・カーンが苦々しく呟く。

 

「しかし外は自由に歩けたということは、大気成分などはほとんど地球と同じという事じゃないかな。そう思うだろうカトル君」

 

「そうですね。バルトフェルドさんの言うとおり地球の砂漠地帯と環境が良く似ています。」

 

砂漠の虎と砂漠の皇子は何か通じるものがあるのだろう、随分と打ち解けているような気がする。

…いや、あの二人の周りが異常に社交性の低い奴ばっかなせいかもしれんが。

 

「コロニーの映像なんじゃないの?」

 

「いや、ここは地上の感覚だよ。両方に住んだことのある俺が言うんだ間違いない。」

 

「私もシローの言ううとおりだと思います。風や空や雲も作り物ではない自然を感じます。」

 

赤髪の少女、ルナマリア・ホークが呟くと半袖の軍人シロー・アマダと彼の隣に座るアイナ・サハリンが重力下での経験をもとに話している。

…リア充め…

 

あっちでは隣のキラとラクスがいちゃいちゃ(偏見有)しててアムロ君が肩身を狭そうにしてるし、こっちではコウ・ウラキとバーナード・ワイズマンの苦労人コンビが意気投合している。お前ら敵陣営だろうが…いや仲悪くても困るけども。

おいデュオ、ニコルを挟んでドモン・カッシュにちょっかいを出すな。そいつは面倒だ。

 

だめだ…いまいち頭がついてこない。

何なんだこの状況は。

ゲームをしてたらいつの間にかそのゲームの世界に入り込んでて、気付いたら画面の向こうの奴らと同じ卓を囲んでる。それもおそらく地球じゃないどこかで。

思わず頭を抱えたくなったがすぐにそんな余裕は消し飛んだ。

 

 

「…これは?!何か来るぞ!!」

 

立ち上がったのはすぐに切れる若者の代表、カミーユ・ビダン。

続いてアムロやハマーン、シャアやついでにマシュマーも何かを感じ取ったらしい。

全員がメインモニターに目をやると映し出されていた砂漠の中から何かが這い出してきた。

 

それは巨大な一対の鋏と尾を持った大型のサソリロボット。それが3、4、…5体出てきた。

 

 

「…なんだあれは?連邦の新型モビルアーマーか?」

 

「あんな機体は見たことがない。アムロ君にシロー…君達は如何かな。」

 

驚いたシャアと連邦では見たことがないと首を振るコウにアムロ、シロー達。同様に他の面々も見たことがないと口々に言っているが…俺は知っている。

 

あれは…

 

 

「…あれは…モビルスーツでもモビルアーマーでもない。」

 

「司令官は奴らをご存じで?」

 

探る様な気配でこちらに顔を向けたクルーゼを気にする余裕は俺にはなかった。

なぜなら…

 

 

「あれはガイサック…

 

 中央大陸戦争初期にヘリック共和国軍が開発したサソリ型奇襲戦用ゾイド。

 

 そう…機械生命体ゾイド…」

 

 

どうやら…此処はガンダムの世界ですらない。

 

 

此処は…

 

 

 

「此処は…惑星Ziなのか?!」

 

 

 

この時から俺の生き残りをかけた戦いが始まった。




当分原作キャラは出てきません

続くかどうかもわかりません

原作突入まで応援していただければ幸いです
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