ラブライブ! ―目覚める魂―   作:ボドボド

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読者の皆様一ヶ月近く随分お待たせしました。

相も変わらずの内容でありますが、是非最後まで読んで頂けると幸いです。


第4話 動き出す予感

ある日の夜。

真姫の母は旧友である人物に電話を掛けていた。数回のコール音がしてから相手が電話に出る。

 

『はい、南です』

 

相手はμ’sのメンバーである南ことりの母親であり音ノ木坂学院の理事長だった。

 

『もしもし、久しぶり。元気にしてるかしら?』

 

『あら久しぶり。一体どうしたの?』

 

『ちょっとね。あなたの事が気になったから電話をしたのよ』

 

『私のことが?』

 

『そうよ。あなたが問題を抱え込み過ぎていないか心配になったの』

 

音乃木坂学院が廃校になるかもしれないという懸念が明るみに出てからそれほど日は経っていないが、学院では廃校とは別の問題が発生していたのだ。

 

『音ノ木坂で家庭科教師の松本先生が家庭の都合で休職したって患者さんから聞いたのよ。それでもしかしたら相当ストレスを溜め込んでいるんじゃないかと思って電話したの』

 

『…そうだったの』

 

真姫の母親が何故内部事情を知っているのかと言えば、音ノ木坂学院に勤める患者から話しを聴いたからだった。

廃校問題は別にしても元はと言えば音ノ木坂学院は由緒ある女子高である為、一般の公立校や私立校に比べて家庭科に重点を置いているのだが、件の松本先生が家庭の都合で休職してしまったのだ。しかもタイミングが最悪だった。これが仮に新年度が始まる前であればまだ対処は簡単だった。この場合、学院側としては代わりの教師を探せばまだ間に合ったかもしれないが新年度が始まってから探そうとしても今からでは間に合わない。

 

 

『心配してくれてありがとう。…色々と手は尽くしているんだけど、なかなか後任の先生が見つからないのが現状ね』

 

『確かに代わりの人を探すのも大変よね。ただ必要な免許を持っていれば良いってわけでもないんでしょう?』

 

『えぇ…。松本先生は音ノ木坂で三十年以上勤めて下さった功労者だし、他の人なら誰でも良いというわけにはいかないの。やっぱり一定の基準は求めたいわね』

 

『あなたが考えている一定の基準ってどこまでのことかしら?』

 

『そうね…最低でも料理の腕が立つ人が理想かしら。調理実習で生徒の見本になってもらう為には、料理をそつなく熟せる程の腕前が必要なの』

 

 

職業の違いこそはあれ組織の長として抱える悩みは共感できるものだった。教員免許と医師免許。難易度に差はあっても国家資格に変わりはないが、両方とも年々志望者が減少傾向にあり若手の人材の確保が急務となっている。この状況が長引けば職場の世代交代が出来ず、今回の音ノ木坂のように不測の事態に対処するのが難しくなってしまう。更に家庭科教師に限って言えば他の科目の教員に比べると採用枠が少ない為、相対的に人材が少ないのだ。

 

松本先生は音ノ木坂一筋三十年以上の大ベテランの女性教師だったが、四月に入ってから遠方に暮らす親の容体が急変して介護が必要になり、やむなく家庭の都合という理由で休職することになったのだ。そのため音ノ木坂には後任の家庭科教師がおらず各学年とも家庭科の授業が自習の時間となっている。このまま後任の教師が見つからなければ生徒の内申点に影響を及ぼすことになるが、思うようにいっていないのが現状だった。そもそも松本先生は家庭科の専門家的存在だった。教師としての実力の高さはもちろん料理の腕前はプロに劣らず、栄養学や裁縫についても博識で家庭科を必修とする音ノ木坂では生徒や教師を問わず人気もあった。

 

学院としては何としてでも後任を見つけなければならないが、やはり一定の基準を求めてしまうのは無理もないことなのだ。しかし真姫の母親には心当たりがあった。教員免許は持っていないが、身近に料理の腕が立つ人間がいることに。

 

 

『だったら昇一君なんてどう?』

 

『え? 昇一君ってあなたが半年前から居候させてる記憶喪失の?』

 

『そうよ。彼、料理の腕はプロ並だし、洗濯や裁縫、DIYだって出来るんだから。彼のおかげで楽をさせてもらっちゃってるわ。教員免許はないけどかなり専門的な技術と知識を持ってるから松本先生と遜色ないくらいにやれるんじゃないかしら?』

 

『本当に? でもこの話は今初めてしたのに引き受けてくれるかしら?』

 

『大丈夫よ。昇一君、音ノ木坂が気に入ってるみたいだし』

 

『音ノ木坂を?』

 

『真姫の入学式に昇一君が参加したんだけど、一度行って気に入ったそうよ。だから音ノ木坂で料理を教えるってことになれば喜んで引き受けてくれると思うの』

 

『そう。あなたがそこまで言うなら私の方でも特別講師として迎え入れる準備をしておくわ』

 

 

何やら昇一の知らないところで事態が進行しているが、人選的にはこれ以上ない程だろう。真姫の母親は仕事の立場上、様々な業界の関係者と高級料理店で食事することが多々あるため舌が肥えている。だからこそ提供される料理の良し悪しが一口食べただけで判断できる。そんな彼女が身内であることを差し引いても昇一の料理をプロ並と言うのだから間違いない。あとは彼に今回の話を伝えて如何にその気にさせるかである。

 

 

ΩΩΩΩΩ

 

昇一が家出をして帰って来た翌日。昇一と真姫は、真姫の母親に呼び出されてリビングのテーブルを囲んで椅子に座っていた。

 

「先生、話しって何ですか?」

 

「実は昇一君のこれからに関して提案があるの」

 

「昇一のこれから?」

 

「ほら、昇一君が家に来て半年が経つでしょ? だからそろそろ新しいことを始めても良いと思うの」

 

「新しいこと、ですか?」

 

「えぇ。私なりに色々考えてみたんだけど…。昇一君も何時までも家でブラブラしてても仕方ないと思うの」

 

「家で、ブラブラ…」

 

「誤解しないでね。昇一君は今まで本当によく家のことをやってくれているし感謝もしているわ。でも、それだけじゃつまらないでしょう?」

 

「いえ充分楽しいですけど!」

 

 

昇一が言ったことは偽らざる本音だった。毎日料理を作って食べたときの反応を想像するのが楽しいし、毎日掃除することで家が綺麗になっていくのも楽しいし、菜園の手入れをして野菜を育てることだって楽しいと思える。

 

 

「それでね、昇一君。ここからが本題なんだけど、昇一君さえよければ音ノ木坂で家庭科の教師をやってみない?」

 

「えっ! 俺が、ですか?」

 

「そうよ。実は私、音ノ木坂の理事長と長い付き合いで今でも連絡を取り合ったりしてるんだけど、家庭科の先生が突然休職しちゃってね。後任の教師を探しているそうなの。そこで私が理事長に昇一君のことを話したら是非ともお願いしたいってことになって」

 

「ママ、ちょっと待って。話が急すぎるわよ。第一、ママと理事長が知り合いだったなんて聞いてないし、昇一が教師になったとしても記憶が戻ったときに違う事がしたいって思うかもしれないでしょ? それに昇一は教員免許を持ってないんだから教師なんて出来るわけがないじゃない」

 

「理事長とは確かに長い付き合いだけど、この話は今初めてしたんだから真姫が知らないのも当然よ。昇一君が記憶を取り戻して違うことがしたいと思ったらそれでも良と思う。今までと違う環境の中に身を置くことで少しでも記憶を取り戻すきっかけになれば、今回の件に意義があったということなんだし、昇一君の持っている技術と才能を存分に発揮できるでしょう? 昇一君、貴方はいつまでも狭い世界に埋もれていてはいけない人間よ」

 

「先生…」

 

「ママ…」

 

「昇一君に『昇』の字をあてたのも、どこまでも高い所へ昇っていって欲しい意味合いで付けたんだから」

 

真姫の母親がここまで昇一の面倒をみるのは、彼を預かった者としての責任感からでもあるが、昇一の『家族』として何とかしてあげたいという気持ちの方が強かった。生来、彼女は困っている人がいたら放っておけない優しい性格の持ち主なのだ。だから昇一が記憶喪失だと診断したときは真っ先に家に居候させようと思い付き、夫に直談判して面倒をみようということになった。だから彼の記憶を取り戻す為ならばどんな協力も惜しまないつもりでいる。

最も今では家族として以上の感情を抱いており、例え記憶を取り戻しても取り戻さなくてもずっと家にいて欲しいと思う反面、本来の家族の下へ帰さなければならない思いで板挟みになっているのはまた別の話。

 

 

「もう一つ言うとね、教師をするにしても常勤教師としてじゃなくて、あくまでも家庭科の特別講師として勤務することになるの。だから教員免許がなくても問題ないわ。…それで、どうかしら家庭科教師として働いてみない? もちろん強制じゃないから断っても大丈夫よ」

 

「う~~~~~~~~ん。ちょっと待って下さい」

 

 

昇一は体の前で腕組をし、目を瞑って考える。今のままでも充分すぎる程に毎日が充実しているから何か新しいことをしてみたいと思う欲求はない。しかし特別講師と言っても音ノ木坂で働けることになるのは違いないし、家庭科――家事や洗濯、特に料理には自信がある。きっと自分の好きなことを仕事にすることが出来るのはまたとない機会だろう。もしかしたら授業の中で家庭菜園のことやお手軽に作れる料理を教えることもできるかもしれない。考えただけで意欲が沸々と湧いてくる。

既に答えは決まっていた。

 

 

「先生、俺、やってみます!」

 

「昇一!?」

 

「本当、昇一君?」

 

「はい。俺、音ノ木坂好きだし、みんなに料理とか菜園とか色々教えることができたら良いなぁって」

 

「うふふ。やっぱり昇一君は変わってるわねぇ、本当に」

 

「昇一、本気なの? どうなっても知らないわよ!」

 

「大丈夫だって。それに真姫ちゃんと一緒に通うことだってできるだろ?」

 

「ゔぇええ!? な、何言い出すのよ! 意味わかんない!」

 

「昇一君が決意をしたところで、私、理事長に電話をしてくるから少し待っててね」

 

狼狽している真姫をよそに、真姫の母親は理事長に電話をかけるべく一度自室に向かう。

数分後に戻ってきた彼女はこう切り出した。

 

 

「そうと決まればお買い物に行く必要があるわね」

 

「先生、何か買う物があるんですか? 俺、買って来ますけど」

 

「ふふふ。昇一君が考えてるお買い物じゃなくて、昇一君の為のお買い物よ」

 

 

真姫の母親の意味がわからず思わず真姫と顔を見合わせる。

 

 

「買いに行くのは昇一君のスーツよ。昇一君、スーツ持ってなかったでしょう?」

 

「持ってないですけど…スーツかぁ。調理実習のときとか料理し辛そうだなぁ」

 

「べつに無理してスーツを着用する必要はないのよ。先生の中にはラフな格好をしている人だっているし。ただ初出勤するときは理事長に挨拶するんだからスーツじゃないとね。初対面の第一印象は肝心よ。人は見た目が六割なんだから」

 

 

メラビアンの法則というものがある。これはアメリカの心理学者メラビアンが提唱したもので、人物の第一印象は初めて会った時の三秒~五秒で決まり、その情報のほとんどを視覚情報から得ているという概念である。この概念において、初対面の人物を認識する割合は、見た目、表情、しぐさ、視線等の視覚情報が六割、声質、話す速さ、声の大きさ、口調等の聴覚情報が三割、言葉の意味や話の内容等が一割となっている。

 

少し脱線してしまったが、とにかく第一印象は重要だ。考えてもみてほしい。働く初日からラフな格好で学校にきた男と、スーツをばっちり着込んできた男、果たしてどちらが好印象なのかは考える間でもないだろう。

 

 

「それでどうするのよ、昇一? 行くの、行かないの?」

 

「うん、行こう」

 

「じゃあ出掛ける準備をしないとね」

 

 

それから各々身支度を済ませてから出かけて行った。

 

 

 

 

 

ΩΩΩΩΩ

 

まず最初に一行が向かった場所は、百貨店の紳士服売り場だった。百貨店に出店しているだけあって扱っている商品も巷に溢れるチェーン店の物よりも良質な物を扱っている。

今は真姫の母親が選んだものを鏡の前で袖に通していた。

 

 

「昇一君、これなんてどうかしら?」

 

「う~~~ん。ちょっと違うかなぁ」

 

真姫の母親が横に立ち感想を聞いてくる。昇一が着ているのは紺色でストライプ柄のスーツなのだが、どうにもピンとこない。既にいくつかのスーツを宛がっているが、なかなかこれだと思うものがない。真姫の母親が次の物を渡してくる。

 

「じゃあこれは?」

 

渡されたのはベーシックタイプの黒色のスーツだった。

 

 

「良いじゃないですか! これにします」

 

「よかったわ。じゃあこれにしましょう」

 

 

 

昇一もようやく納得がいったらしく満足気な表情だった。スーツを仕立てるにあたり暫く時間がかかるらしくその間に昼食を済ませることになった。

入っていったのは百貨店のグルメ階にある回らない寿司屋だった。回らない寿司を食べるのは、退院祝いのときに連れて行ってもらったきりだったがその時とは違う店だった。店内にはカウンター席とテーブル席があり、どちらにもカップルや家族連れが座っている。どこに座ろうか考えていると女性店員に声を掛けられ三人は奥側のカウンター席に通された。さて、店内の壁に設置されているお品書きを真姫の母親と昇一は興味津々に見つめてた。二人だけわかってないで私にも教えて欲しいと思っていると、板前がどういう魚なのか教えてくれた。

 

真姫がどれを食べようか真剣に悩んでいると、昇一がネタについて詳しいことを聞きながら板前と会話をし始めた。そんな姿が真姫の目には大人に映った。普段は同い年くらいの感覚で接していたが、実際には年上であること実感させられた。もちろんスーツを見繕っている最中にも同じことを実感させられた。

昇一と真姫の母親は白身⇒光り物⇒赤身⇒貝⇒軍艦の順番に満遍なく注文していた。真姫も見様見真似で注文した。もっともこの順番は寿司を食べるときの原則ではあるが絶対ではない。基本を踏まえつつ、食べたいものをまとめていくのが寿司本来の楽しみ方である。

 

食後だいぶお腹がもたれたが、味は充分満足のいくものだった。お代は真姫の母親がクレジットで払い三人は外に出た。

 

 

「「ご馳走様でした」」

 

 

真姫と昇一は丁寧にお辞儀してお礼を言った。

 

 

「どういたしまして」

 

 

真姫の母親は笑顔で言い、徐にスーツの事を言い出した。

 

 

「そろそろスーツが仕上がってる頃だから一度お店に戻りましょう」

 

「すいません、先生。高いものを買って貰っちゃって」

 

「気にしないで昇一君。私が好きでやってるんだから。昇一君が頑張ってくれるなら安いものよ」

 

「しっかりやりなさいよ、昇一」

 

 

昇一は母娘の励ましを受けてニッコリ笑った。

 

 

「さ、行きましょう」

 

「はい」

 

「そうね」

 

 

三人はお互いに微笑みあいながら再び洋服屋へ向かって行った。スーツを受け取った後、三人は映画館に立ち寄り、上映が終われば食品館で買い物をして一日を過ごしていった。

 




突然ですが、今回からMOCO'sキッチンならぬSYO'sキッチンを初めていきたいとおもいます。



今日、作りたくなる簡単レシピをご紹介!

SYO'sキッチン

「今日は少し太めのパスタを使ってペペロンチーノを作っていきます」

材料は一人前

パスタ 100g

オリーブオイル 大さじ1.5

にんにく 1片分

唐辛子 1つまみ

茹で汁(塩含む) お玉2杯

粗びき黒コショウ 適量

パセリ 適量

「まずニンニクの芽を取って薄くスライスしていきます。唐辛子はスライスタイプなら1摘みで鷹の爪本体なら種を捨てて一本使います」


「じゃあ作っていきます」

「パスタをいつも通りの塩加減で茹で始めて、フライパンにオリーブ油、にんにくを入れ、弱火で火にかけます」

「フライパンを傾けて、端でにんにくを素揚げするようにじっくり風味を出して、ある程度火が通ったら唐辛子を入れます。間違えて焦がさないように火加減に注意して下さい」

「唐辛子が黒くなる前に、茹で汁を投入して中火~強火でグツグツ沸騰させて、フライパンを止めないで上下左右に揺すり回します」

「必要以上に水分を飛ばさないよう火加減に注意して、水気を切ったパスタを投入します。さっとフライパンを振りながら絡めるのがポイントです」

「フライパンを傾けたときにパスタから汁気が落ちるぐらいで火を止めて、お好みで胡椒とパセリをふりかけたら、完成です!!」




挑戦してみたは良いけど全然MOCO'sキッチンらしくなかったですね…。
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