ラブライブ! ―目覚める魂―   作:ボドボド

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読者の皆様大変長らくお待たせしました。一か月振りの更新になります。

それでは、どうぞ!


第5話 ことほのうみ

花村ベーカリー。最近オープンしたクラシックな外観が特徴のイートイン式のパン屋に高坂穂乃果、南ことり、園田海未はいた。今日、学院の講堂で行ったファーストライブの打ち上げをこのお店でやろうと穂乃果が提案したことがきっかけだった。落ち着いた店内の天井には備え付けられたシーリングファンがゆっくり回転しており、夕方時ということもあって学校帰りの学生や主婦達が好みのパンを味わいながら友達との会話に興じていたり、陳列されたトレーのパンを吟味している姿が見受けられる。穂乃果は一番人気のピクルスサンドとオレンジジュース、ことりはパイ生地のコルネとウバの紅茶、海未はあんパンとミルクをそれぞれ購入した。

 

「それでは! 今日のライブを祝して、お疲れさまー!」

 

「お疲れさま。穂乃果ちゃん、海未ちゃん」

 

「お疲れ様です。穂乃果、ことり」

 

お互いに労いの言葉を交わしながら飲み物が入ったグラスを掲げ合いパンに手を付ける。穂乃果が食べているピクルスサンドはパンにマスタードを塗り、ハム、ピクルス、ツナマヨをサンドしたものだった。

 

ことりが食べているコルネはパイ生地の中にカスタードクリームが端から端まで詰まっており、一口食べるとサクサクした食感と口どけの良い濃厚なカスタードの甘味が口の中で広がっていく。また紅茶の中で一番渋みが強いウバを飲むことで濃厚なカスタードの甘味に対応できるようになっている。こうすることで最後まで飽きることなくコルネを食べることができるのだ。

 

海未が食べているあんパンは、ふんわりとしたパンの中に粒あんがたっぷり入っており、パンの中心の窪みには桜の花の塩漬けが飾られている。中身の餡子は甘すぎずしっとりとした舌触りを感じさせる。

 

「いや~。やり切った後のパンは美味い!」

 

「ほんとだよね~」

 

「気を抜いてはいけませんよ、二人とも。私たちはようやくスクールアイドルとしての第一歩を踏み出せたというだけなのですから」

 

「わかってるよー海未ちゃん」

 

「本当にわかっているのでしょうか…?」

 

舌鼓を打っている二人に対して気を抜き過ぎないように注意する海未だったが、穂乃果から返って来た返事は力のないものだった。果たしてこれで良いのだろうかと思ってしまう。

「先が思いやられます」と呟くとことりがフォローを入れてきた。

 

「仕方がないよ、海未ちゃん。初めての事だったんだし気が抜けちゃうのも無理ないよ」

 

「それは…そうですが…」

 

ことりの言うことも一理ある。満を持して臨んだファーストライブだったが、幕が上がってみれば結果は惨敗。実際問題、今日の講堂で行った彼女達のファーストライブには実質的に一年生の小泉花陽と星空凛しか観客がおらず、会場に駆け付けた花陽さえ伽藍洞になっていた講堂を見て困惑していた程だ。穂乃果も舞台から客席を見た瞬間に泣きそうになり唇を震わせていた。寸でのところで花陽が駆け付けてくれなければ人目も憚らずに泣き崩れていただろう。しかし、結成から今日まで自分たちがやってきたことを水の泡にしない為にもライブを続行。

 

ファーストライブを開くことができたのは、偏に(ひとえ)自分達を支えてくれたみんなのおかげだった。率先してμ’sの活動を手伝ってくれたヒデコ、フミコ、ミカ。ヒデコはステージの音響を、フミコとミカは宣伝を。渋々ながらも作曲をしてくれた真姫、行き詰りそうになったときにフォローしてくれた副会長の東條希、少ないながらもライブを観に行きますと言ってくれた人達の言葉。これらの想いにどれだけ支えられ、救われてきたかわかったものではない。だからこそ観客が少なくてもステージで全力を出すことができたし、やってきてよかったと本気で思えることができたのだ。

 

その後、生徒会長の絢瀬絵里からこのままスクールアイドルとして活動を続けていく意味があるのかと問われ、穂乃果が啖呵を切り覚悟と目標を宣言した。必ずこの講堂を満員にしてみせる――と。

 

ここまでの一連の出来事を振り返り、海未は小さく溜め息をつくと諦めたように「仕方がないですね…」とひとりごちた。穂乃果に厳しく接しているように見えてその実、何だかんだ言って甘いのだ。

ファーストライブに関する話題は一度棚上げし飲食を再開しようとする。すると穂乃果達が座っている席の傍を通り過ぎながら店の出口に向かう男子学生達の会話が聞こえてきた。

 

「そんなのいるわけないだろー」

 

「本当にいたんだって! 変な化物みたいなやつがさー!」

 

「夢でも見てたんじゃねーの?」

 

「夢じゃねーよ! だから本当だって! 本当に変な化物に殺されそうになったんだって!」

 

「じゃあお前どうして生きてるんだよ」

 

「だ~か~ら~! 金色の生命体が助けてくれたんだって!」

 

「はいはい、嘘乙。自演、自演。寝言は寝て言おうな」

 

詳細な内容はわからなかったが、話しから察するに謎の化物に襲われていたところを金色の生命体に助けられたということらしかった。しかし隣を歩いていた友達は非現実的な作り話としか聴いておらず冷たくあしらっていた。もっとも非現実的な話を聞かされた身としては馬鹿々々しい話としか感じていなかったようだが。気が付けば穂乃果達は視線を学生達に向け、聞き耳を立てていた。視線を戻し、海未が口を開く。

 

「しかし物騒な話ですね。化物だとか殺すだとか。最近は不可能犯罪も頻発していると言うのに」

 

「そうだよねー。ニュースでも専門家の人達が説明できないって言ってるし」

 

「一体どうなっているんでしょうか…」

 

海未や穂乃果が不安がるのも無理はない。なぜならこの間、文京区の大場中学で男子生徒が不可能犯罪の犠牲者になった事件があったのだが、文京区は秋葉原からそれほど離れておらず近い位置にある。これが別の都道府県で起こったことならいざ知らず自分たちが住んでいる都内、それも近い場所で起こったとあっては不安になるのも無理はない。ふと、海未が先程から言葉を発していないことりに視線を向ける。見るとことりは元気なく不安気に俯いて口を閉ざしていた。

 

「ことり、どうかしましたか?」

 

「ことりちゃん、もしかして体調悪いの?」

 

「……」

 

海未と穂乃果が心配そうにことりへ声を掛けるが返事はない。一体どうしてしまったと言うのだろうか? 海未と穂乃果は顔を見合わせる。昔からの幼馴染みである二人だが、こんなことりの様子は初めてだった。暫くしてことりが顔を上げ、口を開いた。

 

「海未ちゃん、穂乃果ちゃん。私、二人に話さなきゃいけないことがあるの」

 

「どうしたのですか、ことり? いつもの貴女らしくありませんよ?」

 

「そうだよ、ことりちゃん。何かあったの? 悩みがあるなら私達が話し聴くよ?」

 

「二人は……、私が何を言っても信じてくれる?」

 

やはり何時ものことりらしくない。普段のことりならここまで落ち込むことはないし、悩みや困ったことがあれば素直に相談してくれる筈だ。だと言うのにここまで言いよどむということは、かなり深刻な話なのだろうか。穂乃果の胸中に嫌な予感が渦巻いている。

 

「もしかしてスクールアイドルを辞めたくなったとか!?」

 

「落ち着いて下さい、穂乃果。ことりはまだ何も言ってませんよ。それにスクールアイドルを辞めるという話であれば、信じてほしいなんて言わないはずです」

 

嫌な予感を抑え込むことができず穂乃果は直感したことを口に出すが、冷静さと客観性を保っている海未に落ち着くように促される。何かと暴走しがちな穂乃果とことりのストッパーとして活躍してきた海未の冷静さは伊達ではない。

 

「それで、ことり。言いたいこととは一体何なのですか? 黙っていてはわかりませんよ」

 

「そうだよ、ことりちゃん」

 

「海未ちゃん、穂乃果ちゃん…。心配させてごめんね。実は私――――変な生物に襲われたの」

 

「「え?」」

 

穂乃果と海未は、ことりの言葉に一瞬困惑し素っ頓狂な声が重なった。無理もない。ことりが何か思い詰めて悩んでいると思ったら予想の斜め上を行く発言だったのだから。しかもさっき店を出て行った男子学生と同じようなことを言ってきた。

 

「変な生物? もしかして宇宙人とか?」

 

「穂乃果、冗談はよしなさい」

 

「え~。だって変な生物って言ったら宇宙人しかいないじゃん」

 

穂乃果にとって変な生物=宇宙人であるらしい。最も海未は何をふざけたことをといったような感じでピシャリと否定した。

 

「ことり、貴女は本当に変な生物に襲われたのですか?」

 

「…うん」

 

「海未ちゃん、ことりちゃんのこと信じてないの?」

 

「そうは言ってません。ただ話を聴いてみないと何も判断できないのは事実です。ことり、襲われたときの状況を詳しく話して貰えますか?」

 

海未は突拍子のない話にも関わらず落ち着いて反応し、穂乃果に至っては既にことりの話を信じているようだが、海未はあくまでも情報を聴いた上で客観的に判断しようと努めことりに詳しい話をするように促す。

 

「襲われたのはμ’sを結成して少し経った頃。その日は、用事があって秋葉原に行ってたら帰りが遅くなって…。夜の帰り道を歩いてたらいきなり周りに人がいなくなったと思ったら豹みたいな生物に襲われそうになったの」

 

「豹みたいな生物?」

 

「それで、その後どうしたのですか? 襲われそうになったということは、助けてくれた人がいるということですよね?」

 

「うん。腰が引けて逃げれそうになかったんだけどあともう少しで、ってところで金色の生命体が助けてくれたの」

 

「ことりちゃん、それって…」

 

「待って下さい、ことり。それだとさっきの男子生徒と同じ話になりませんか?」

 

詳しい話というよりも掻い摘んだ話だったが、ことりの身に起こったことは正しくこの通りだった。ジャガーロード=パンテラス・ルテウスに襲われそうになったところをアギトに助けられた。そして話の内容は先程の男子学生と重なる。ことりは徐に(おもむろ)学校指定の鞄の中を開け、いつも使っているスケッチブックを取り出して二人の前に差し出した。ページを捲ると見開きに描かれていたのは、ことりを襲おうとしたルテウスと助けてくれたアギトの姿だった。

 

「この左のページに描かれてる黄色い豹みたいなのが変な生物?」

 

「うん」

 

「右側に描かれているのが、ことりを助けてくれた金色の生命体ですか?」

 

「うん」

 

「「……」」

 

ことりの証言に言葉を失う穂乃果と海未。決してことりの言葉が信じられない訳ではないが、あまりにも非現実的な話であるため全面的に信じて良いのかどうか判断しかねている。ただ絵に表していることで、言葉で説明されるよりも説得力があるのは確かだし、二人はことりが冗談でも襲われたなどと口にしないことくらい知っている。

 

「……仮にことりの言うことが真実だったとしても、いくつか聴きたいことがあります。ことり、この二体の生命体について何か知っていることはありませんか? 些細なことでも構いません」

 

「そういえば…襲ってきた生物は、金色の生命体のことを『アギト』って呼んでたよ」

 

「アギト、ですか…」

 

どうやら金色の生命体はアギトというらしい。であれば、先程の男子学生の会話に出てきた金色の生命体というのもアギトである可能性が非常に高く、人間を襲ってきた謎の生命体と戦っている以上両者は敵対関係にあるという構図が成り立つわけなのだが、だからと言って簡単にアギトを信じて良いわけではない。アギトと謎の生命体の正体や目的がわかっていないからだ。アギトが人間の味方であるならまだ良いが、もしも味方ではなかった場合、アギトは自分にとっての邪魔者を排除したかっただけなのかもしれないのだ。何れにしても両者の正体や目的が判明しない間は迂闊な判断を避けるべきだろう―――と思ったのも束の間。穂乃果が突然言い出した。

 

「アギトは絶対良い人だよ!」

 

「いきなり何を言うんですか、穂乃果」

 

「だって襲われそうになった人を助けてくれたんだよ? それも二回も。悪い人だったら襲われてる人がいても助けないと思うんだけどなぁ」

 

深く考えて発言したわけではないのだろうが、穂乃果の言うことも一理ある。仮に両者が仲間割れを起こしていたとしても襲われている人間をわざわざ助けたりする必要があるだろうか。そのまま見殺しにすることだって出来たはずだ。

 

「ことりちゃんは、どう思う?」

 

「私も良い人だと思うな」

 

「あなたたち…少しは警戒心を持って下さい。助けてくれたことに感謝はしても信じる、信じないは別の問題です。もしまた同じようなことが起きたとしても今度も助けてくれるとは限らないんですよ?」

 

「でもさー、そんなこと言ってたらキリがないよ? もしかしたら他にも助けられた人だっているかもしれないのに」

 

「確かにそうですが…」

 

「海未ちゃんもアギトを信じようよ。助けてくれた人を疑うのは良くないよ?」

 

「……穂乃果にそこまで言われては仕方がありません。私もことりの話とアギトを信じましょう」

 

海未としてはまだ言いたいこともあったが、結局は全て推測でしかなく話は平行線にしか進まないのは目に見えていたし、穂乃果に言われてことりを助けてくれた恩人のことをあれこれと勘ぐってしまうのは無粋なことでしかない。

 

「ただ…もう一つ聴きたいことがあります。ことり、襲われた後で警察には行きましたか?」

 

「うん、行ったんだけど…」

 

「だけど?」

 

「相手にして貰えなくて」

 

実はアギトに助けられた翌日にことりは近くの警察署へ行き襲われたことを話したのだが、荒唐無稽な話として信じてもらえず相手にされなかった経緯がある。無論、警察が全て悪いというわけでもなく当然の結果といえば当然だった。警察は確実な証拠がなければ動けないし、謎の生物に襲われたと非現実的な話をしても信じてもらえる筈もない。だが、この話にはまだ続きがあった。

 

「でも警察の人が言うには、同じような相談をしにきた人が何人もいるって」

 

「! …ことり、それは本当ですか?」

 

「うん。相談しにきたほぼ全員が、化物に襲われてるところを金色の生命体に助けられたって」

 

「ほらね、ほらね! 海未ちゃん! やっぱりアギトは良い人だったんだよ!」

 

「えぇ、どうやらそのようですね。しかし‘ほぼ’ということは一部の人達は違ったと言うことですか?」

 

どうやらアギトは、ことりを助ける以前にも化物に襲われていた人を助けていたようだ。

穂乃果の言葉でなし崩し的にアギトを信じることにしていた海未だったが、今度こそアギトが善なる存在であると確信する。だが、ことりの話で気になったのは一部の人だけが異なっている点だ。

 

「実は一人だけ‘緑色の生命体’に助けられた人がいたらしいの」

 

「緑色の生命体?」

 

「アギトではない存在ですか?」

 

「襲われた人が言うには、真っ赤な目と短い緑色の角を二本持ってた、って」

 

「その緑色の生命体について他に情報はないのですか?」

 

「うぅん。目撃証言はその一件だけで、他に情報はないみたいなの」

 

「そうですか…なら仕方がありませんね」

 

どうやら謎の生命体と敵対しているのはアギトだけではないらしい。緑色の生命体に関する情報が他にないということは、人の目につかない場所に身を隠しているのだろうか。それとも既に謎の生命体、もしくはアギトに倒されてしまったのだろうか。何れにしろ目撃情報が一件しかなかったとしても謎が深まることに違いなかった。

海未は最後の質問をした。

 

「最後に聴きたいことがあります。ことり、どうしてもっと早く私たちに打ち明けてくれなかったのですか?」

 

「海未ちゃん」

 

「ごめんね。穂乃果ちゃん、海未ちゃん。二人に心配かけたくなくて…。早く打ち明けようって何度も思ったんだけど、ライブに向けて一生懸命練習してる時に打ち明けたらきっと余計な心配させちゃうんじゃないかと思って…だからせめてファーストライブが終わるまでは秘密にしようって決めてたの」

 

重要なことを何故今まで黙っていたのか訊ねる海未の言い分は最も。穂乃果、海未、ことりの三人は幼少の頃からの幼馴染みでいつも一緒だった。どんな時でも迷い、悩んだりしてもお互いに助け合ってきた仲なのだ。なのに、今回の一件においてはすぐに打ち明けてくれなかった。海未からしてみればまるで信頼されていなかったように感じてしまったのだ。

しかし一方でことりの言い分も理解できない訳ではない。

確かに今まではどんなことでも打ち明けることができた。だが今回は今までの悩みとはわけが違う。何せ命の危険に晒されたのだから。物事を冷静に判断しようとする海未のことだから、言えばきっとスクールアイドルの活動を中止しようとしただろう。

もしも活動を開始して間もない時期に打ち明けていたら、出鼻を挫く形となり普段の日常生活に支障をきたすことはおろか、もしかしたら二人まで身の危険に晒してしまうことになってしまうのではないか、そう考えた。

 

「そうだったのですね。申し訳ありません、ことり。追究するような形になってしまって」

 

「うぅん。そんなことないよ。今まで黙ってた私が悪いだけだから。海未ちゃんは何も悪くないよ」

 

「でも良かったぁ。ことりちゃんが打ち明けてくれて」

 

ことりが今まで打ち明けてくれなかったことに理解を示す海未と、打ち明けてくれたことに安堵する穂乃果。重要な秘密や悩みというのは、日が経てば経つほど打ち明ける敷居が高くなり言い出せずに終わってしまうということがよくある。その点で見れば、襲われてから日数が経っている状況でよく言い出せたと評価できるだろう。だが、結局のところこれからスクールアイドルとしてどうやって活動をしていくかという結論には達していない。

 

「でも、これからどうしよう」

 

「ごめんね、穂乃果ちゃん」

 

穂乃果が気にしているのは、今後の活動をどのようにして行っていくかという点だ。本来であるならば当面の間は問題が解決するまで活動を休止すべきなのだろうが、今のµ’sに残された時間的猶予はない。生徒会長に宣言した件だってある。ここで海未が一つの提案を出して来た。

 

「……でしたらこういうのはどうでしょう。µ’sの活動を行いつつ謎の生命体に関する情報を集めるんです」

 

「おおー! 何だか探偵みたい!」

 

「でも、どうやって情報を集めるの?」

 

「手段としてはインターネットや新聞、ニュースを駆使するんです。そうすれば空いている時間を上手く使えるはずです。本来なら警察に動いて貰うのが理想的なのですが……どうしますか?」

 

海未の言うように本来であればこういう事は警察に任せておくのが筋だろう。しかし警察が頼りにならない以上、自分達でなんとかするしかない。そう判断しての提案だった。

 

「私は海未ちゃんに賛成。ことりちゃんは?」

 

「私も賛成」

 

「ならこれで決まりですね」

 

穂乃果とことりも賛成し、一つの結論が出た。得られる情報は多くないだろうが、動き出さなければ何も始まらないし、得られないのもまた事実。こうして三人は謎の生命体に関する情報を集めることになるのだが…。

 

この時はまだ知る由もなかった。この日を境にして自分達が大きな流れの中に巻き込まれていくことを―――

 

謎の生命体に関する話を終えた三人は中断していた飲食を今度こそ再開させた。今までのシリアスな雰囲気が嘘のようになくなり、話題は明るい方向へと進み会話が弾む。すると今度は、穂乃果が話題を切り出した。

 

「来週から来る家庭科の先生ってどんな感じの人なのかな! ことりちゃん、何か知ってる?」

 

「お母さんの話だと、二十歳そこそこの人だって言ってたよ」

 

今朝のHR(ホームルーム)において全クラスに各担任から伝えられたことがある。それは長らく不在だった家庭科教師の後釜が決まったというもので、早速来週から調理実習を行うらしく、担任からプリントが配られたのだ。

生徒には来週から新しい家庭科の先生が来るということのみが伝えられているが、ことりが母親である理事長から聞かされた話だと若い男性らしい。

 

「二十歳そこそこですか…。そう考えると音ノ木坂学院に若手の先生が一人増えるというわけですね」

 

「えぇっと、若手の先生って言ったら……氷川先生、小沢先生、尾室先生、北条先生、だよね」

 

穂乃果が指折りしながら挙げた四人の教師は何れも二十代前半の面子である。一般の公立校や私立校からすれば少ないように思うかもしれないが、全クラス合わせて六組しかない音ノ木坂学院の内情を鑑みればむしろ多い方だろう。

 

「どんな人なんだろう? ことりちゃん、何か知ってる?」

 

「そこまでは知らないけど、優しい人だといいよね」

 

「そうですね」

 

三人はまだ見ぬ教師の姿を想像しながら思いを馳せる。既にアギトである男、賀上昇一とµ’sの邂逅は近い。

 




いかがでしたでしょうか?

今回は昇一が一度も登場しない回となりました。昇一が授業すんじゃないのかよ!と思っていた方はすみません。ですが、穂乃果と海未の登場を待っていた方も少なからずいたのではないでしょうか?ことりに至っては1話以来の再登場となりました。

それでは今回のSYO'sキッチンにいってみましょう!

今日のリクエスト


『昇一さん、こんにちは。
俺は前までアメリカに住んでいて最近日本に帰ってきた一人暮らしの高校生です。アメリカに居た時はパンが主食だったので料理をしたことがほとんどありません。これを機に好物のポテトサラダだけでも作れるようになりたいので、作り方を教えてください。
                                  天城羽鐘』


「へぇ~、帰国子女なんだ。凄いなぁ。じゃあ早速作っていきたいと思います」


材料
じゃがいも
きゅうり
ハム
たまご

調味料

コショウ
マヨネーズ
砂糖

「まずはじゃがいもの皮を剥いて一口大の大きさに揃えて切っていきます。切ったら耐熱皿に入れてレンジで温めていきます。本当だったら切ったじゃがいもを鍋で蒸かすんだけど、羽鐘くんが一人暮らしなのでガス代を節約する意味でも今回は電子レンジを使います」

「温まったらボールに移してマッシャーで潰していきます。マッシャーがなければマグカップを使って潰してください。潰したら塩とコショウを加えて混ぜ合わせていきます」

「じゃがいもを冷ましてる間にゆで卵を作ってハムを一センチの大きさに切っておきます。きゅうりも薄く輪切りにして塩を少々ふり馴染ませておきます。しんなりしてきたら水で軽く濯いで水気を絞りましょう」

「冷めたじゃがいもに殻を剥いて軽く刻んだたまご、ハム、きゅうり、マヨネーズ、砂糖を加えて混ぜたら完成です!」

「もしもポテトサラダが余ったら、パンに挟んでポテサラサンドにしてみると良いかも!」

「羽鐘くん、これでポテトサラダ作れるようになったかな?」





今回のリクエストを送ってきたのは、リベリオンさんが書いている『ラブライブ! A Return Hero A Return Legend』の主人公、天城羽鐘でした。ご存知の方もいるかもしれませんが、この作品も面白いので是非読んでみて下さい。リベリオンさん、ご協力ありがとうございました!同じラブライダーの作者同士、お互いにこれからも頑張りましょう!
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