転生神類は平穏がお好き! 作:はらだけーいち
『駒王学園』
元女子校の進学校である。
元女子校であるためか女子の比率が高く、男子は少し肩身が狭いとのこと。
結構な進学校であるため、入試のレベルはまーまー高く、僕が神類でなければ確実に落ちていたであろうことが伺える。…………神類のスペック高過ぎんだろ。なんでサラッと参考書の内容を流すだけで書かれていない応用まで理解できちゃうんだろ。チート万歳。
そんなこんなで駒王学園高等部を受験し余裕で合格。色々と問題はあったけど晴れて僕『神城 イズモ』もピッカピカの高校1年生!
学校近くのアパートを借り、最低限の家具家電仕事道具を持ち出して新生活への準備も万全!
パリパリの制服に身を包み、正体がバレない様に隠蔽術式を起動し、いざ入学式へ!
「…………おっととっ、いけねーいけねー。こいつを忘れちゃ話になんねーな」
僕単体でも危機に対して応じることはできるが、それは僕が宗教組織『オラクル教団』の教祖兼信仰対象であることがバレることと同義である。故に対策である武器と仲間ぐらいは持っていかないと。それでもうまく立ち回らないとバレるけどね。
ということで、宝石2個に水晶1個、さらにカードを何枚かをホルダーに入れて制服の内側ポケットに。
戦闘力、という観点からいけば、これらはヨミ君に次ぐ頼もしさ。いや、ヨミ君が僕に匹敵するぐらい強いってことに違和感はあるんだけど。まあ僕が彼にやらかしたことを考えたら妥当なんだけどね。
「滅相もありません。私如きがイズモ様に匹敵するなぞ、イズモ様が信者達を害された時にお怒りにならないぐらいあり得ません」
「え、いつの間に居たのヨミ君。てか僕そんなに身内贔屓の気があるってこと?」
「引っ越しとのことで、荷解きの手伝いに参ったのです。まあ、すでに終えられていたようですが。それと、悪魔を十字架に磔て送り返したことを忘れる私ではございません」
「え、いやそれはですね…………」
「誤解の無いように言っておきますが、別にイズモ様を責めているわけではありません。ああ、そう言えば天使の羽をむしり取って近くの教会にほっぽり出したこともありましたね」
「や、止めてぇえ!? 黒歴史をほじくり返すのホント心にくるから!?」
流石にやり過ぎた自覚はあるから! でもね、目の前にちっちゃい子を虐めてる悪魔がいたらぶっ飛ばしたくなるし、ウチの悪魔さんを殺そうとしてる天使なんか逆に死んでまえって思ったって不思議じゃないでしょ!?
「おっしゃる通りです。イズモ様が常々口にする通り、我らは全てに手を差し伸べられる程清らかでも、全てを虐げる程邪悪でもないのですから」
「…………だね」
伊達に『聖邪の神』だなんて呼ばれてない…………ということ。
「にしてもヨミ君心配し過ぎ。一応コレでも君と同い年の15歳なんだぜ? この程度のことなら自分でできるさ」
「…………そこは全く疑ってはいないのですが」
ここで、ヨミ君がこれでもか! と言うくらい顔を顰めた。
「現在のイズモ様は、知ってる者が見てもそのお姿以外ではイズモ様だと分からないでしょう。あそこまでの神格をここまで隠蔽できることに、驚嘆を覚えます。…………しかし、完全には隠せておりません」
「んん?」
え、完璧だったと思うんだけど…………。
「そうですね…………現在のイズモ様は、その辺りにいる下っ端土地神程度でしょうか」
「…………うげ」
言わんとしてることが、分かった。
確か隠蔽は成功してるけど、見る奴が見れば、正体は分からないにせよ『神』だということがばれてしまう。
「そんなことを見破れる存在がホイホイいるとは思いませんが…………」
「分かった。とりあえず気をつける」
ま、ダーツで決めた行き先に天使や悪魔なんているわきゃねーけどな! あっはっは!
♪♪♪♪♪
とか思ってた2時間前の自分を殴りたい。
無事着いた駒王学園。
その新入生の中に混じりながら、僕は心の中で冷や汗をかきまくっていた。
いた、いたよ!!? 悪魔さんがいた!!! あろうことか、同級生に!!! 白髪マスコット系ロリの同級生に!!! しかもアレ、妖怪っぽい気配もする!!! アレか、妖怪と悪魔のハイブリッドってか!!? 笑えねーわ!!!
更に頭の痛いことに、生徒会役員が全員悪魔だった!!! ヒャッハー!!! 絶望的ィ!!!
幸い、クラスは別なのでマシっちゃあマシだけど、生徒会が悪魔なのは勘弁してほしい。近い内にバレそうである。
思いっきり気配すらも押し殺して、入学式と諸々を済ませて帰宅。
「ハァ…………ハァ…………マジか」
とりあえず、牛乳飲もう牛乳。カルシウム大事。ということで、冷蔵庫を開け、昨日買ってきた1リットルパック牛乳を一気飲みし、なんとか心を落ち着けた。
「…………ふぅ」
とりあえず、まずい。何がまずいって、僕の高校生活的にまずい。なんで楽しいはずの高校生活がこんなコソコソしなくちゃいけないのかって点がまずい。
「…………ヨミ君」
「こちらに」
僕が呼ぶと、ニンジャの様にシュバッと僕の後ろに現れた。最初は怖くて仕方がなかったけれど、もう慣れた。
「えっとね、『別に行き先について深く調べなくてもいいよ…………というか、調べないで』って言っといてアレなんだけど」
「ええ、そう仰られると思いまして、先程急ぎで調べて参りました」
こちらがそれらを纏めたものです…………と、ヨミ君が紙束を差し出してくれた。
「どれどれ…………ブッ!!!?」
思わず噴き出した。
「こ、この駒王全体が悪魔の管理する土地ィ!?」
「付け加えて言うならば、管理している悪魔は名門中の名門『グレモリー家』の後継です。さらに、駒王学園生徒会は同様に『シトリー家』の後継が運営している様で、学園の管理はシトリーが、夜と土地の管理はグレモリーが担う体制となっています」
「うそん!?」
いや、そういうのがあるのは知ってましたけど!?
「しかもよりにもよって現魔王を輩出したとこが二家がいるってことじゃん!!?」
「ええ、厄介なことに」
う、迂闊に動けねぇ…………ルーティーンワークさえ出来そうもないこの状況はまずかねーっすか?
「ですが、普通に高校生活を送る分には問題はありませんね」
「…………え?」
「『オラクル教団教祖:イズモ』様ならともかく、土地神か弱い現人神程度の力しか持たない『神城イズモ』様なら、敵対しない限りは一生徒としての扱いに落ち着くはずです。彼奴らは悪魔にしてはまぁまぁ人間に善良と言える存在だと、調査した結果判明しております」
「お、おぉ!」
よー分からんが、不幸中の幸いが起こったと判断していいってことだよねっ!?
「…………ちなみに、僕が教祖イズモだとばれた場合は?」
「かなりのはぐれ悪魔を抱えている以上、敵対は免れません。付け加えて言うならば、仮にばれなくても彼女らの身内を害した場合、それなりの報復が待っているはずです。特にグレモリー家はそうなってしまった場合、大変なことになるでしょう」
えっと、結構な身内贔屓さんな家の性質なんだっけ。わー、悪魔じゃなかったら仲良くなれそうなのにー。
「別に我々の教義に反した存在ではありませんので、ごく普通に接していれば何事かが起こってもある程度はスルーしてもよろしいかと。むしろ、場合によっては恩を売ってもいいかもしれません…………が、それらを決めるのはイズモ様です」
目で、『どうなされますか?』とヨミ君が問う。
…………うん、決まってるよね。
「折角の学校だからね。そういったのも含めて楽しむことにするよ」
「は、仰せのままに」
そう言うと思っていた、と言わんばかりに、ヨミ君の口の端は釣りあがっていた。
「でもちょっと待ってヨミ君。僕、教義なんて定めてなかったと思うんだけどそこのところおせーて?」
「………………………………」