今日ぼくは悲しいことに三十歳になった。
「
相変わらず母さんがネチネチと口煩いことを言ってくる。
何が悲しくて誕生日にこんなこと言われなきゃならないんだよ。いやまあ、悲しいのは悲しいんだけど、色々。
「うるさいなー、もう! 嫁なら何人もいるよ! リアルにいい女いないんだから仕方ないだろ!」
ぼくは結婚するなら、優しくてぼくの帰りをいつも黙って待っててくれてでも強い意志をもっててぼくが迷った時には静かに道を指し示してくれて落ち込んだ時には慰めてくれてぼくにだけ見せてくれる笑顔があってぼくだけを見ててでもぼくが浮気しても黙って許してくれて愛人の存在も許してくれてでもたまには妬いてけれたりして小柄で絶世の美少女で長いツインテールで金髪で小ぶりだけど服を着てもきちんと凹凸の分かる程度の形のいい胸で括れが綺麗で他とバランスのとれたいいお尻で身体のラインが綺麗な女の子がいいんだよ!
「あんたいつまでそんな理想をみてるの! ちゃんと現実をみなさい!」
見てるよ!
だから彼女作らないいんじゃないか!
どうせリアルには理想なんていないから!
「ちょっと散歩してくる!」
後ろで母さんが何か言っていたが、ぼくは構わず家を飛び出した。
何となくコンビニへ向かい、トボトボと横断歩道を渡る。
…誕生日に喧嘩してしまった。
ぼくだって、彼女が欲しくない訳じゃない。
ぼくは溜息をつきながら空を見上げる。
今日からぼくも“魔法使い”か……。
結局、彼女いない歴=年齢を三十年間も貫き通してしまったなー。
その時、上を見上げて歩いているぼくは気が付かなかった。
物凄い勢いで突っ込んでくる車があることに。
そして。
ぼくは三十年という短い人生に幕を閉じることに——
「生まれましたわ。ほら、髪の色など貴方にそっくりよ」
「何を言う。目鼻立ちはお前似だ。将来美人になるぞ」
え? 何処ここ。
——ならなかったようです。