遊戯王GX ~もしもOCGプレイヤーがアカデミア教師になったら~   作:紫苑菊

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第1話

ここはデュエル・アカデミア中学棟。

ここは未来に生きる決闘者を育てるための教育機関であり、海馬コーポレーションが管理する学園である。

そして今日、そのアカデミア高等部への入学試験が行われている。といっても、今は午後1時。もうほとんどの実技が終了し、今は電車の遅れで遅刻した生徒が真ん中のデュエルスペースで最後の試験を残すのみとなっている。

ここにいる生徒は、主に2つに分かれている。1つはこの会場の3分の1を占める、中等部のエリートと呼ばれる人たち。そしてもう1つが、別の中学から転入しようとしている受験者たち。

そしてその彼らほぼ全ての注目を集めているのが、今現在、スペースの中にいる2人組。

1人はクロノス・デ・メディチ。アカデミア本校のオベリスク・ブルーの教師であり、アカデミアの実技最高責任者にして、現在最後のデュエルを取り締まっている試験監督。

1人は彼のデュエルに圧倒されながらも、絶対に勝つという意思のもと、デッキに手をかけ、絶体絶命のピンチである遊城十代という少年である。

おそらく、少年、十代はここまで試験にてこずることはなかっただろう。彼の実力は本来、アカデミアのエリートであるオベリスク・ブルーに匹敵する。

だが、彼がここまでてこずるのは、彼の試験担当者、クロノスが、かなりの厳格な性格であり、エリート思考の持ち主であったからだろう。彼は、筆記試験の悪い少年が、にもかかわらず遅刻(彼にはほとんど非はないのだが)してきたことが気に入らないのか、試験用、彼本来のデッキよりも数段構築の劣るデッキを使用せず、彼本来のデッキを使用していることに他ならない。

本来なら、ここで彼の勝利はほぼ絶望的。だが・・・。

だが、この十代という少年は、神に好かれているとしか思えない運を発揮する。

 

「俺は融合を発動!!フェザーマンとバーストレディを融合し、来い!マイフェイバリットカード、フレイム・ウィングマン!!」

 

現れたのは炎をまとったHERO。HEROの割には、『破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える。』という殺意の籠った能力で、相手を必ず焼き殺そうとする鉄の意思が感じられる、HEROらしくないモンスター。

だが、彼の攻撃力は2100。クロノスのフィールドに存在する古代の機械巨人の3000には届かない。

 

「融合召喚したところで、攻撃力2100。私の古代の機械巨人には及びまセーン。いまさらそんなモンスターで何ができるノーネ?」

 

それは、間違いなくクロノスの言う通り、2100が3000に勝つことは出来ない。

そう、このままなら。

 

「じゃあ先生に教えてやるぜ。HEROにはHEROにふさわしい、戦うべき舞台ってもんがあるんだ!フィールド魔法、摩天楼-スカイスクレイパー!」

 

次の瞬間、会場にいる人全員が驚くことになる。

 

「バトル!!フレイム・ウィングマンで先生のモンスターに攻撃!!」

「攻撃力の低いモンスターで攻撃?私の古代の機械巨人には、足元にも及ばないーノ。」

殴りたいこの笑顔。ガンジーでも全力で助走つけて殴るレベルである。

 

「HEROは必ず勝つ!!スカイスクレイパーは相手モンスターと戦闘を行う時、攻撃力が低いとHEROの攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

「オー?!ディーオ!!」

「いけ、フレイム・ウィングマン、スカイスクレイパー・シュート!!」

 

OCG以上の効果を発揮するフィールド魔法。その力がHEROに加わる。どことなくニンジャスレイヤーを彷彿とさせるHERO。敵は死すべし、慈悲はない。

 

「マンマ・ミーア!!我が古代の機械巨人ガー!!」

「フレイム・ウィングマンの効果で3000の効果ダメージを受けてもらうぜ、先生!!」

 

クロノスのライフは2900。そして古代の機械巨人は3000。クロノスの敗北が決定した。

その事実は会場のクロノスを知る全ての人が絶句する。たとえ知らない人でも、教員の強さを身をもって知っているので騒ぎ出す。

 

そして、そんな中にアナウンスが流れた。

 

『これで、デュエル・アカデミア本校の入学試験を終了します。次は、教員の採用実技試験です。今日、試験を行った生徒も、自由に見学してかまいません。今回の受験者は一名です。それでは、受験者は急ぎ実技担当最高責任者、クロノスの元まで来てください。』

 

この声に会場は騒然となる。当然だ。今まで、このような場所で先生同士のデュエルがされることなど聞いたこともない。教員試験は本来、こことは別会場で行われるものなのだから。

 

「受験者、沖田曽良です。」

「クロノス・デ・メディチなノーネ。よろしくなノーネ。」

 

クロノスとしては、先ほどのデュエルの後なので出来れば自分がやるのは避けたい。だが、ここで勝てば自分の実力を誇示できるかもしれない。よって、クロノスはこう言った。

 

「今回の試験監督は私でスーノ。私のライフを1000ライフまで削った時点であなたの採用はほぼ決まると思って下さいーノ。」

 

そして、クロノスはこの言葉を後悔することになる。

ここでもっと条件を厳しく明確にさえしておけば、彼が学校に来ることを拒めたかもしれないのにと。

 

「「デュエル!!」」

 

「俺のターン、ドロー。」

 

沖田 手札5→6

ちなみにこの時代はまだマスタールールと呼ばれる前のものであり、先行ドローも表側守備表示召喚も可能であった。

まあ、今はどうでもいいが。

 

「俺はアロマージージャスミンを召喚し、テラ・フォーミングを発動。デッキからアロマガーデンを手札に加え、発動する。アロマガーデンの効果。1ターンに一度ライフを500回復する。そしてアロマージージャスミンの効果発動。1ターンに一度ライフが回復した時、カードを一枚ドローする。ドロー。さらにジャスミンはライフが相手より多い場合、もう一度植物族モンスターを通常召喚出来る。アロマージーローズマリーを召喚し、カードを三枚伏せてターンエンド。」

 

アロマージージャスミン

効果モンスター

星2/光属性/植物族/攻 100/守1900

(1):自分のLPが相手より多く、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分は通常召喚に加えて1度だけ、

自分メインフェイズに「アロマージ-ジャスミン」以外の植物族モンスター1体を召喚できる。

(2):1ターンに1度、自分のLPが回復した場合に発動する。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

テラ・フォーミング

通常魔法

(1):デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 

アロマガーデン

フィールド魔法

(1):1ターンに1度、自分フィールドに

「アロマ」モンスターが存在する場合にこの効果を発動できる。

自分は500LP回復する。

この効果の発動後、次の相手ターン終了時まで

自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は500アップする。

(2):自分フィールドの「アロマ」モンスターが戦闘・効果で破壊され

墓地へ送られた場合にこの効果を発動する。

自分は1000LP回復する。

 

沖田6→3

 

現れたのは、白髪と青髪の女の子のような植物族モンスター。彼女らの登場により、会場の野郎共と一部の女子が騒ぎ出す。聞こえる熱狂的な声の中には、『ローズマリーちゃんもっと足開いて!!』『ジャスミンちゃんhshs』など、少々気持ちの悪いことになっている。大半の女子と一部の男子ははそんな男子たちにドン引きである。何よりもドン引いていたのは使用者である沖田だが。

 

「わ、私のターンなノーネ。ドロー」

 

流石のクロノスもこの熱狂的な声にはタジタジのようだ。いや、よく見て見ると騒いでる男子はオベリスク・ブルーの生徒が多い。おそらく自分の生徒がここまで変態(紳士)だったことがショックだったのだろう。青年、沖田も流石にこれには同情を禁じ得ない。これからされる一方的な蹂躙に比べればまだこの程度の(精神的)ダメージはマシだろうが。

 

クロノス 手札5→6

 

「私は、手札から天使の施しを発動なノーネ。これにより、デッキから3枚ドローし、2枚捨てるノーネ。さらに、死者蘇生を発動するーノ。これで墓地から、古代の機械工兵を特殊召喚するノーネ。さらにこの瞬間、地獄の暴走召喚を発動するノーネ。」

 

天使の施し

通常魔法

自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札を2枚選択して捨てる。

 

死者蘇生

通常魔法

(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

古代の機械工兵

効果モンスター

星5/地属性/機械族/攻1500/守1500

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードを対象にする罠カードの効果を無効にし破壊する。このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動する事ができない。また、このカードが攻撃したダメージステップ終了時、相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

 

地獄の暴走召喚

速攻魔法

相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。

 

クロノス 手札6→4

 

インチキカード(天使の施し)からの暴走召喚。これを最初のターンに行える彼のデュエルタクティクスと運は相当なものだろう。この世界の基準で言えば。

だが、それでも・・・。

 

「通します。俺はデッキから2体のローズマリーを特殊召喚。」

 

「なら私は、工兵をデッキから2体特殊召喚なノーネ。そして、魔法の歯車を発動なノーネ。3体の古代の機械工兵を生贄に、現れよ、古代の機械巨人!!」

 

魔法の歯車(アニメ効果)

通常魔法

自分の場に存在する「アンティーク・ギア」と名の付くモンスター3体を墓地に送り、デッキから「古代の機械巨人」1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。その後、手札の「古代の機械巨人」を全て召喚条件を無視して可能な限り特殊召喚することができる。

 

古代の機械巨人

効果モンスター

星8/地属性/機械族/攻3000/守3000

このカードは特殊召喚できない。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

クロノス 手札4→3

それでも、OCGプレイヤーには届かない。

 

「奈落で、チェーンはありますか?」

「え?」

 

クロノスの必勝コンボ。デッキから古代の機械巨人が出てきた瞬間に、彼も、そしてギャラリーも彼の勝利を確信したはずだった。

だが、1枚のカードによって、その力はいともたやすく破壊され、除外される。元々特殊召喚出来ない古代の機械巨人には除外も破壊もほとんど関係ない話だが。そもそもこいつは4枚のディスアドバンテージを使ってまで出すモンスターではない。この様に一度破壊されれば死者蘇生だろうが何だろうが蘇生できないのだからリカバリが大変なことになってしまう。今のクロノスのように。

 

「ま、まだ通常召喚を行ってないノーネ。手札から、古代の機械騎士を召喚するーノ。カードを伏せてターンエンドなノーネ。」

 

古代の機械騎士

デュアルモンスター

星4/地属性/機械族/攻1800/守 500

このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

●このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

クロノス 手札3→1

 

打点は下級ラインでは十分な強さを誇るモンスター。

「では、エンドフェイズ時に罠を2枚発動します。まずは潤いの風。ライフを1000払いデッキから『アロマージー』を手札に加えます。デッキからジャスミンを手札に。更に潤いの風の2つ目の効果も起動。自分よりも相手の方がライフポイントが高い場合、ライフポイントが500回復。そしてライフが回復したので、ローズマリー3体とジャスミン、それから今表にした渇きの風の効果発動。ローズマリー3体がチェーン1から3、ジャスミンが4、渇きの風がチェーン5です。チェーンは?」

「な、ないノーネ。てか何が何かさっぱりなノーネ。」

 

潤いの風

永続罠

「潤いの風」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):1000LPを払ってこの効果を発動できる。デッキから「アロマ」モンスター1体を手札に加える。

(2):自分のLPが相手より少ない場合にこの効果を発動できる。自分は500LP回復する。

 

これだけのチェーンが一度に乗り、流石にクロノスもわけが分からない様だ。そもそも普通のデュエルでチェーンが5つも同時に乗る方が稀である。チェーンバーンは除くが。あれはチェーンを乗せることを目的として作られている。

 

「チェーンを逆順解決。ではまず渇きの風の効果。ライフポイントが回復した時に相手モンスターを1体破壊します。」

「え?」

「破壊します。」

「りょ、了解なノーネ。」

 

渇きの風

永続罠

「渇きの風」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分のLPが回復した場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象としてこの効果を発動する。

そのモンスターを破壊する。

(2):自分フィールドに「アロマ」モンスターが存在し、自分のLPが相手より3000以上多い場合、その差分のLPを払ってこの効果を発動できる。攻撃力の合計が、この効果を発動するために払ったLPの数値以下になるように、相手フィールドの表側表示モンスターを選んで破壊する。

 

アロマージにおける除去カード。ライフが回復するだけでモンスターを1体破壊できる罠。かなり緩い条件で毎ターン1回の死者への手向けが打てると思えば、かなり優秀なカードである。

 

「そして、ジャスミンの効果で1枚ドロー。ローズマリー3体の効果で、ローズマリー2体とジャスミンの表示形式を変更する。守備表示に変更。」

 

アロマージーローズマリー

効果モンスター

星4/水属性/植物族/攻1800/守 700

(1):自分のLPが相手より多く、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分の植物族モンスターが攻撃する場合、

ダメージステップ終了時まで相手はモンスターの効果を発動できない。

(2):1ターンに1度、自分のLPが回復した場合、

フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動する。

そのモンスターの表示形式を変更する。

 

これにより、クロノスのフィールドは伏せ1枚。

 

「俺のターン、ドロー。サイクロン発動。対象はあなたの伏せカードです。」

 

だが、無慈悲にも、残りのカードすら消しとられる。伏せはミラーフォース。どうやらこの世界でもミラフォは仕事をしないらしい。

 

「アロマージーローズマリー2体を攻撃表示に変更。バトルフェイスに入ります。ローズマリーで攻撃。」

「受けるノーネ!」

 

ローズマリーから謎の香りの風が吹き、クロノスを攻撃する。

 

「2体目で攻撃。」

「痛いノーネ!」

 

2体目はなぜかクロノスのフィールドまで行き、ビンタをかます。アロマはどうした。

 

「3体目で攻撃。」

「はうッ!!」

 

これで、ローズマリーの攻撃がすべてクロノスに当たり、ゲームが終了する。最後の攻撃ではクロノスの股間を持っていた杖でダイレクトアタック。クロノスの性癖はドMでないので、観客席の大半から同情的な目で見られている。

沖田には聞こえない。聞こえないったら聞こえない。目の前の男の断末魔なんか聞こえないし見えてもいない。ついでに観客席の中から僅かに聞こえた『羨ましいクロノス先生!!』という声達も聞こえない。

 

「ありがとうございました。」

 

クロノスが負けたことで静まり返った居心地の悪い会場から、速攻で抜け出すことを彼は選択した。彼が会場から出た瞬間、歓声が巻き起こる。実技担当最高責任者から、一切のライフを削られず、3ターンで決着をつけてしまうそのデュエルタクティクス。更に言うなら彼が出したモンスターは全てが下級モンスター。その彼の実力はここにいる受験生の実力を問わず、感動させた。とあるHERO使いは感動し、クロノスの実力を体感したオベリスク・ブルー主席の機械族使いの生徒は驚愕しながらも好戦的な笑みを浮かべ、受験生主席の生徒は素直に称賛した。

 

こうして、彼はデュエルアカデミアに教師として赴任することが決定する。

そして彼がこの後、三幻魔との戦いや破滅の光、ダークネスとの戦いに巻き込まれることを、『前の世界』からやってきた『OCGプレイヤー』である『沖田曽良』は知る由もなかった。

 

そして、この新人教師のせいでクロノスの胃が大変なことになることを、クロノスもまた、知る由もなかった。

 




アロマージー可愛いやったー!

作者はメタビアロマージも脳筋ベルガモット軸植物アロマージーも大好きです。

EMEmと魔術師なんか消え去ればいいんだ。

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