ダンまち ヘルメス√   作:御子柴

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第二話

「で、助けてそのまま連れて来たって訳か。

珍しいじゃないか、アスフィが自分から厄介事を抱え込むなんて」

 

「すみません。ただあそこまで露骨な光景を見て、見なかったことにするのもどうかと思いまして…」

 

「良いんじゃないか。どこかのファミリアに所属している訳ではなさそうだし、

人助けは大事なことだろ、うん」

 

そう言って、ソファーに寝かされた少年を眺める。

 

一通りの治療は済ませており、今は静かに眠っている。

 

因みにあのゴロツキたちは二度とこんなことが出来ないよう、コテンパンにしてやった。八つ当たりなどでは断じてない。

 

「歳は14で、身寄りは無し。都市の外で倒れていたのを発見し、売り飛ばそうとしたところを私に見つかった訳です」

 

彼の情報に関しては奴らから聞き出した。と言っても大したことは分からなかったが。

 

「ふーん。じゃあ彼が目覚めるまで待つか。

しかしアスフィ、彼を助けたのは良いけどこの後どうするかは考えているのか?」

 

「いえ…教会に預けようかとも考えたのですが、それもどこか引っかかりますし…」

 

さらさらとした前髪を梳きながら、寝顔に視線を落とす。

 

よく見れば顔だちも整っており、美少年という表現がそのまましっくり来る。

 

あのゴロツキたちが歓楽街に送ろうと考えたのも分からなくはない。

 

無論、そんなことは断じてしないが。

 

「まぁその辺りは彼が目覚めてからゆっくり話し合おう。

今日は夜も遅いし、キミも疲れたろうアスフィ」

 

「えぇ、どこかの神が面倒な仕事を押し付けて下さったお陰でくたくたです」

 

「わ、悪かったって。後はこっちで見ておくから、下がっていいよ」

 

まだまだ言い足りないのだが、ここで騒いでしまうと彼が目覚めてしまいかねないので、アスフィは大人しく部屋を後にした。

 

 

 

 

---------翌朝

 

 

 

 

身だしなみを整え部屋に入ると、目覚めた少年が丁寧に膝を着き頭を下げる光景があった。

 

「この度は助けて頂いてありがとうございました」

 

「ちょ、ちょっと…頭を上げて下さい」

 

朝からこんな場面を見られれば、ファミリアの人間から何を言われるか分からない。

 

彼をソファーに座らせると、アスフィーは自分と彼の分の紅茶を淹れ、反対の席に着いた。

 

「まずは自己紹介をしましょう。私の名はアスフィ・アル・アンドロメダ。

ここヘルメス・ファミリアの団長を任されている者です」

 

「ぼ……いえ、私はクロノ、クロノ・アーツと言います」

 

「ではクロノ、身寄りのないことはあのゴロツキたちから聞き出しました。

貴方はこのオラリオの前で倒れていたそうですが、どうしてそんなところで倒れていたのですか?」

 

「両親は早くに病気で亡くしましたので、その後は祖父に育てて貰っていました。

その祖父からここオラリオの話を聞きまして、冒険者となれれば生きていくのに困らないかなと思いまして…」

 

「それで、オラリオまで来て力尽きたと」

 

顔を伏せて頷いた少年に、紅茶を飲むように促す。

 

「まぁ、倒れていた理由は分かりました。それともう一つ聞きたいのですが、

どうしてあの時、声を出して私に助けを求めなかったのですか?」

 

「まさか一人であの人数の男たちに敵うとは思わなかったので。

流石に私のせいで巻き添えを食わせてしまうのは耐えられなかったので」

 

なるほど。

 

確かに、何も知らない人間があの状況を見たとき、多勢に無勢と考えるのはごく自然なことだろう。

 

ただ、驚いたのはあの状況で他人を気遣う余裕のあった少年の優しさだ。

 

「もっと早く助けてあげれば良かったですね…」

 

「いえ、助けて頂いただけでも本当に感謝しているんです。

それで、その……大変言い辛いのですが…」

 

「……?どうかしましたか?」

 

「私はここへ着いたばかりで、奴らに身包みを剥がされまして…お返しできるものがないのです。ですが、この恩はどんなことをしても必ず返しますので」

 

「ま、待ってください。何も見返り目当てで助けた訳ではありませんし、そこまでしなくとも------」

 

アスフィがそこまで言いかけたところで、最悪のタイミングで扉が開いた。

 

「じゃあ払って貰おうじゃないか。君の、その身体で」

 

ニヤリと笑う主神を見て二人は暫く固まっていたが、アスフィは我に返ると静かに立ち上がり、主神の首根っこを掴むとそのまま部屋を出て行った。

 

 

 

後にクロノは語った。

 

あの時聞こえた断末魔は今でも鮮明に覚えており、彼女がこのファミリアで最も怒らせてはならない存在なのだと。

 

 

 

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