「つまり、俺のファミリアに入って働く事で、
助けた対価の支払いとしようじゃないかということです」
ボロボロになって帰って来た男は、隣に立つアスフィに怯えながら先程の言葉の意味を噛み砕いて説明してくれた。
「貴方の、という事は…」
「名乗り遅れたが、俺の名はヘルメス。
ヘルメス・ファミリアのトップであり、君たちの言うところの神だ」
居住まいを正し、独特の笑みを浮かべたヘルメス。
アスフィという女性とのやり取りを見る限り、
外見は本当に人と何ら変わりない。
だが彼女がそれを否定せず黙しているということは、
彼が自分たち人間が神と呼ぶ存在なのだろう。
じわじわと湧き上がる神を前にした緊張感から、
額には汗が浮かび上がる。
そんなクロノの心中を察したのか、アスフィは助け舟を出してくれた。
「あまり緊張せずとも大丈夫ですよ。
ヘルメス様は神の中でも変わり者ですから、自然体で話してくれて構いません」
「その通り。それに神と言ってもここに居る以上、人間と能力はほぼ変わらない。変に畏まらずにリラックスしてくれたまえ」
取り敢えず、お言葉に甘えて肩の力を抜く。
目の前の紅茶を口に含み、気持ちを落ち着かせ改めて向き直った。
「あの…お話は分かりました。ただ、自分で言うのも何ですが、僕のような子供でもファミリアには入れるものなんでしょうか?」
「歳や性別、種族は関係ない。そのファミリアの神が許可を出せば、基本的には入団は認められる。アスフィもキミを気に入ってるみたいだし、俺のファミリアに入る分には何も問題はない」
そうなんですか、とアスフィの方を見上げてみると、
多少顔を赤らめてはいたがそれ以上は何も無かった。
つまり後はクロノの気持ちの問題だった。
「恩返しどうのはこの際置いておこう。
一番大切なのはキミが冒険者になりたいか否か。
別の方法で対価を払うというのならそれでも構わない。
だが、クロノ。キミは遅かれ早かれ冒険者になるだろう。
それがウチか余所のファミリアになるかの違いだけだ」
心を見透かしたかのような言葉に、クロノは驚いた。
先程まで浮かべていた飄々とした笑みはそこには無く、
そこにあるのはクロノの返事を待つ神の姿だった。
そしてここまで噛み合った状況で、
クロノがその手を取らない理由は無かった。
「よろしくお願いします」
頭を下げたクロノの上で、空気が和らぐのを感じた。
顔を上げると今度こそ満面の笑みを浮かべた二人の姿があった。
「ようこそ、我がヘルメス・ファミリアへ。
我々はキミを歓迎しよう、クロノ・アーツ」