「と言う訳で早速契約を交わしてキミのステイタスを作ろう」
「へ、ヘルメス様、流石にちょっと急過ぎませんか?
クロノをファミリアでの暮らしに慣れさせてから、
冒険者として必要な知識を学ばせた上でですね…」
「アスフィの言いたいことも分かるが、その間にロキやフレイヤみたいな面倒な奴らに目を付けられたら堪らないしなぁ。
俺としては先にファミリアへ所属してもらった方が何かと安心なんだけど」
「それはそうですが…」
渋るアスフィにヘルメスもどうしたものかと首を傾げた。
確かにアスフィの言う事にも一理ある。
冒険者を目指す前に下地をしっかりと作ってやることで、
その後の立ち振る舞いは驚くほど変わってくる。
ただ…なんとなくだが、先に言った通りここでクロノを正式にファミリアへと迎えなければ、ロキやフレイヤ、或いは他の神に目を付けられそうな気がするのも事実だ。
そして黙ったまま二人の会話を聞いていた、当の本人に目を向ける。
「あ、あの…」
「どうしました、クロノ?」
普段の彼女を見ているヘルメスにとって、その声音は信じられないほどの優しさに満ちていた。
これに関しては彼の普段の行動がいけないのだが。
「アスフィさんのお気遣いは、とても嬉しいです。
自分が冒険者として足りないものだらけだというのも分かってます。
……ただ、僕は冒険者になって、ダンジョンに潜って、早くアスフィさんを守れるぐらい強く、なりたいです」
辿々しくも強い意志によって伝えられた真っ直ぐな言葉は、
アスフィの胸を一気に貫いた。
なんだこの愛しい気持ちは。
顔が熱い、鼓動が煩い、胸が苦しい。
何かを言おうと口を開けるが、何も言葉は紡がれなかった。
そして代わりに言葉を発したのは、クロノの言葉に身体を震わせている主神だった。
「良くぞ言ったぞ、少年よ!!
そうだ、最近の冒険者にはそれが足りなかったんだ!!
助けてくれた女を、今度は強くなって自分が守る。
なんと素晴らしい響きだろうかっ!!
流石はアスフィと俺が見込んだだけはある!!
いやぁ、クロノ。キミをファミリアに誘って本当に良かった」
グシグシと乱暴な手付きでクロノの頭を撫で回すヘルメス。
だが不思議とクロノは嫌な気持ちにはならなかった。
「よぉし!!クロノが男を決めた以上、俺は彼の意志を尊重しよう。
アスフィ、キミもここまで想ってくれている少年の気持ちを無碍にはしまい?」
赤く染まった顔のアスフィは、辛うじてヘルメスの言葉に頷いた。
「では姫の許可も出た事だし……い、痛いアスフィ、悪かったって。
じゃあクロノ、上着を脱いでうつ伏せになってくれるかい?」
言われるがまま、クロノは服を脱ぐとソファーに寝そべった。
「冒険者のステイタスは皆、背中に刻まれているんだ。
これはどこのファミリアでも変わらない。
そして、ダンジョンに潜り、モンスターと戦い、
蓄積された経験値を俺たち神がステイタスとして更新するのさ」
左手に持った針を指先に刺し、
溢れた血液をクロノの身体へと落とす。
本来であればそのまま赤い斑点が出来上がるだけだが、
彼の血は神の血液。
クロノの背中へ触れた瞬間、それは波紋のように広がって行った。
そして現れたステイタスを確認し、
ヘルメスはにんまりと笑みを浮かべた。
「喜べクロノ。キミは心だけじゃなく、能力も冒険者として見所があるぞ」
そう言って彼が見せたステイタスの紙には、
5つの項目に分かれた数字と、スキルの文字が刻まれていた。
《スキル》憧憬一心 リアリス・メント
補足、スキルの効果はベル君とほぼ同じ感じです。同じ名前と言うのもあれなんでちょっとだけ文字ってみました。
もう少しアスフィがデレるまでを練るつもりだったけど仕方ないね。
デレさせたくて書き始めたんだもん。お姉さんイイよね。