魔法に関しては適当設定。確か魔力の暴走に合ったルビがあった気がしたけど面倒なのでまんま肉まん。
気が向いたら本編読んで直すかも。
「よろしくお願いします。リアお姉さん」
「少年、もう一度最後の単語をいってみてくれ。深い意味は無い。決してないが、今の言葉はとても心に響くものだった」
構えれば不可視、振れば魔力を帯びた斬撃、使い手の魔力と技量によっては最強と言っても過言ではない其の剣の名を
しかしながら、体力や剣の技術はともかく肝心な魔力に関しては途方に暮れていた。
こればかりは剣を振り回したところで身につくものでは無く、アスフィやヘルメスからもある日突然魔法が発現し魔力が上昇する者もいれば、そうでない者もいると教えられた。
だからと言って折角彼女から貰った剣の能力を引き出せないままなど、クロノ自身が許さない。
時間が掛かってでも魔力のステイタスを上昇させ、この剣を扱える様にならなければ、情けなくてベルとパーティを組むことも、アスフィを守る事も出来ないだろう。
「ギギィッ!!」
ダンジョンから生まれるモンスターを斬り倒しながら進むクロノは、敵を狩りつくした事を確認し座り込んだ。
目を閉じ、自分の中に流れる魔力を確かめその微弱さに溜め息を吐く。
だが、そもそも魔力の制御を覚えていないクロノには、その鍛え方がまるで分からない。
魔法が発現していればそれをベースに戦い方や扱い方が分かりそうなものなのだが…。
目を開き握った剣を眺めてみる。
アスフィは魔力の制御はイメージが大切だと言っていたが、本職ではない彼女に具体的に教わるのは難しい。
不可視の風を纏う剣を観察し、クロノは試しにもう一度目を閉じた。
まずは自分の中に流れる魔力を意識する。
そして、その魔力の流れが剣に向かう様に集中した。
剣を覆う風の結界に自分の魔力を絡みつかせるようなイメージ。
すると、僅かだが剣に魔力が宿るのを確かに感じられた。
これならば…と、手応えを覚えたクロノはより意識を深く沈めていく。
持てる魔力を限界まで剣に流し込み、無理矢理にでも制御の感覚を掴もうと必死だった。
だがそもそも魔力の少ないクロノがこんな事をすればどうなるか。
頭の中は霞で一杯になり、意識が途切れようかとなった時、不意に後ろから暖かいものに触れられた。
瞬間、クロノは自分が周囲への警戒を完全に失念していたことを思い出した。
かろうじて後ろを振り返ると、どうやら冒険者のようだった。
何かを喋っているようだが、クロノにはその言葉は聞き取れず、そのまま意識は深い黒へと落ちていった。
目が覚めるとどうやらそこはダンジョンだった。
ずきずきと鈍い頭痛を感じながら、周囲を見渡す。
魔力の制御に夢中になり、気を失ってしまったようだ。
そういえば最後に誰かが声を掛けて来ていたような……。
「目が覚めたようだな」
とても透き通った声だった。
振り返るとそこにはローブを羽織った耳の長い女性、つまりはエルフがこちらを眺めて座っていた。
「貴方は…」
「それよりも、こんなダンジョンの真っ只中で一体何をどうしたら魔力の暴走を起こし掛けるのか、聞かせてもらおうか?」
眉間に皺を寄せた表情を見る限り、目の前のエルフが怒っているのは分かった。
どうやら理由は自分が魔力の扱いを誤っていたことらしい。
クロノは未だ鈍く痛む頭を抑えながら素直に頭を下げた。
「すみません、魔力を制御する方法を自分なりに試行錯誤していのですが、まさか他の冒険者に迷惑を掛けることになるとは思いませんでした」
ごめんなさい、とそう付け加えるとエルフは目を丸くした後に立ち上がるとクロノへ近寄って来た。
思わず身を強張らせたが、予想に反してエルフが行ったのはクロノの頭を撫でる事だった。
「すまない、私はてっきり何処かの魔術師が馬鹿な実験でもやっているのかと思ったんだ。純粋に魔術の修行をしていたのなら君を責めるのはお門違いだった」
そう言ってエルフが目を閉じるとクロノの頭を撫でる手から、体温とは違う温かさを感じた。
感じたと思った次には頭の痛みが驚く程にスーッと引いていった。
クロノがポカンと口を開けていると、エルフはクスリと笑いながら説明をしてくれた。
「まず少年、君が起こしたのは魔力の暴走と言う。少ない魔力を補おうと無意識の内に体力が魔力へと返還されてしまう現象でな、度が過ぎると命に関わることもある」
と言うことは、つまり彼女は命の恩人と言うわけだ。
話の途中ではあったが、クロノは再び頭を下げた。
「あの…危ないところを助けて貰ってありがとうございました」
「いや勘違いしたこちらにも非はある。こんな事ならもっと早くに止めに入るべきだったな」
柔らかな表情で語る彼女はとても美しく、クロノは素直に見惚れてしまった。
エルフはあまり人と関わらないと聞いていたが、彼女はその例には当て嵌まらないようだった。
「通常、魔力がゼロになった時点で意識を失うのだが、魔術に適性があり集中力の高い冒険者が稀に暴走を起こす」
「魔術の適性…」
「あぁ。見た感じ君ならばコツさえ掴めばすぐに扱えるようになるだろう。そうだ、何なら詫びに手解きをしてやろうか?」
「い、良いんですか?」
「丁度、遠征も終わって空きができたところでな。少年、そう言えば名前はなんと言うんだ?」
クロノが自分の名を名乗ると、エルフの女性は微笑み良い名前だと呟いた。
「私の名はリヴェ……いや、リアと言う。」
「よろしくお願いします、リア師匠」
「む、師匠か…悪くはないがどこかしっくりこない呼び名だ」
「では、リア先生?」
「……クロノよ、試しに今から私が言う呼称でもう一度呼んでくれないか?」
鬼気迫る表情でそう言われてはクロノも頷くしかできない。
顔が赤いが、そんなに師匠も先生も気に入らなかったのだろうか。
「えー、よろしくお願いします。リアお姉さん」
「少年、もう一度最後の単語をいってみてくれ。深い意味は無い。決してないが、今の言葉はとても心に響くものだった」
----------結局、彼女が満足するまで10回ほどこのやり取りを繰り返した。