一応、ヒロイン?的な存在は青道高校マネージャー2年の夏川さんにしてみました。
楽しんでくれれば嬉しいです。
第1話 プロローグ
夕日が落ちる時間帯に一人の男子が壁に向かって硬式専用のボールを投げ込んでいた。壁には不良達によって落書きされてしまっただろう。黒スプレーで引かれた野球の標準的なストライクゾーンに投げ込んでいるのである。
男子の身長は恐らく178センチ程のものである。体系はどちらかといえば筋肉質に近いものと伺える。
「はぁはぁはぁ……今ので大体60球程の投げ込みをしたのかな?」
恐らく1時間ほどゆっくりと感覚を確かめながら投げ込みをしているのだろう。大粒の汗が額から滝のように溢れ出ていた。男子は大きく息を吸い、そしてゆっくりと息を吐く。それを5分ほど続けていくとある程度息が整ってくる。
「さて、日が落ちるまでまだ時間があるから少し投げ込みでもしてから帰ろうかな?」
そう言ってからまた、男子は壁に向かって投げ込みを開始する。
オーバースローで振りかぶって投げる。男子が投げたのはスライダーである。キレ味と変化量も申し分ない程のものである。それを自分の願っていた場所に向かって投げ込む。寸分の狂いもなくストライクゾーン投げ込まれていく。
2球目に投げ込むのはスローカーブである。球速は恐らく110前半くらいまで落ちている。通常のカーブよりも更に遅く、一段階落ちていく。 ストレートとのコンビネーションで強豪校相手になら1巡目くらいは抑えれるのではないだろうか。
3球目投げ込んでいくのはフォークである。人差し指と中指の間にボールを挟み、手首の関節を固定しリリースする。代表的なフォークの投げ方である。しかし、これを投げるには相当な握力が必要である。その投げ方で投げ込む。するとそのボールは真ん中に行くと思うと突如落ち始めるのである。ストーンと落ちていく。そのこれほどまでに綺麗に落ちていくのはなかなかないのである。
4球目に投げ込まれたのはストレートである。球速は大体130後半程のものである。
そして彼は気づく。自分の後ろの方で誰かが見ているということ。それはそうだろう。自分しかいないというのに他の誰かの影が現れてきたのである。 大きさ的には女性と分かる。女性特有の胸のふくらみがあるためにである。
「一体誰ですか?」
男子が振り向くとそこにはベリーショートヘアで前髪を長くしている女子生徒がいたのである。見るからに男子よりも年上の雰囲気を只寄らせている。
「ええ? ごめんなさい。私青道高校野球部のマネージャーをしている。
「親切にありがとうございます。僕は海王中学校3年の
「そうなの? ところで毎日のようにここに来て投げ込んでいるの?私ここを毎日通ってから帰っているんだけど」
「ええ、僕にはシニアや野球部に通うお金が無いんですよ。だから、こういうところに来てから投げ込むしかないんですよ」
男子生徒の名前を神木真一と言うらしい。目の前の知らない女子生徒と話すのは緊張してしまっているのである彼は少し女性に対して上がってしまうというものである。中学のクラスでも1対1で女子とは喋ることはない。しかし、他の男子生徒がいるとなれば上がることもなく喋ることが出来る。どういう訳か今の彼は上がることもなく1対1で女性と話す事ができている。
更には神木の家は母子家庭である。父親は幼い頃から行方不明の状態である。兄妹は妹が2人いる。真一は中学生でありながら、学校の許可を取って早朝から新聞配達や牛乳配達などを行って生計を助けている。
「そうだったの? ところで貴方はどこの高校に行く予定なの?」
「僕は高校には進学できません。僕が働かないと家で待っている妹達を食わせていけないんですよ」
真一がそう言うと夏川は黙ってしまう。それほどまでにも残酷な家庭に育っているのだと悟っているのである。夏川はどちらかといえば裕福な家庭に育っている。その為にこのような中学生がいるとは思わなかったのである。
「そうだ! うちの高校に野球部推薦入学と言うのがあるんだけど、それで高校に入学するればいいんじゃないの?やっぱり高校を出ておかないといろいろとあとの人生に響いてしまうよ?」
「え? 野球部推薦入学ってあるんですか?」
「うん、うちの野球部は強豪だからね。でも近年エース投手がいないから甲子園には行けてないんだけどね。そこで私から監督と部長に伝えておくからそのへんは大丈夫だよ」
ドックンっと僕の心臓が脈を打っていく。高くなっていく鼓動、心拍数―――僕は野球がしたいのか?何でだろう。部活なんかに行ってしまったら、誰が妹達を養って行くと言うんだ!?
……でも一度しかない高校時代戦いたい。色々な学校と球児達と甲子園をかけて熱く、熱く、熱い甲子園をかけた全身全霊の試合がしてみたい!
僕はその欲求に勝てるわけがなかった。もしかしたら、甲子園に行き、そしてプロの世界で戦えるようになれば、妹達を食わせていける。 そう考えれば今高校に行くのもいいと言う考えが出てしまっている。
でも、受けてみるだけでもいいだろう。僕は自分の力が何処まで通用するのかを見てみたい。
この時神木真一は立派な球児になろうとしていた。まだまだ荒い荒い原石であるが、磨けば磨くほど光沢が光っていく原石になるのである。
「分かりました。僕もその試験だけを受けさせてもらえませんか? 家族にも相談してみたいので」
「そう? 分かったわ。そうだ。携帯電話は持っている?」
「携帯ですか?一応念の為に僕と母が持っています」
「これは私の携帯の番号ね。いつ受けるかはこちらから連絡を入れるからね。それじゃ今日は時間をもらってごめんね?」
神木は神木家の長男である。その為に母から携帯だけは何かあってはダメだから、携帯電話を持たされていたのである。登録されているのは家の番号と母の携帯番号だけであった。
神木は内心少し喜んでしまっていた。初めて家族以外からのメールアドレスをもらう事が出来たのである。更にそれが可愛い女子生徒で有ればなおさら嬉しいものである。
「いいえ、それではまた会いましょう」
「うん」
そう言ってから二人は周りが暗くなり始めている。その為に家に帰ることにしたのである。神木は夏川が走っていく方をジット見つめていたのである。
真一は知らず知らずのうちに一目惚れをしてしまっていたのである。可愛らしい瞳、彼女の一つ一つの仕草、サ
ラサラにしているシュートカットヘアスタイル。そして彼女が毎日使っているのであろうシャンプーの匂いが漂っていたからである。
真一は彼女が見えなくなるまで後ろ姿をジット見つめるのを辞めなかった。
この選択がどのような結果になっていくのかは真一にも世界にもわからなった。
■■■■■■■■夏川・唯■■■■■■■■
私は今日一人の男子に出会った。
何時も帰り道の橋の下の落書きされた壁に向かって投げ込んでいる姿を何度も見た事があった。最初の頃は頑張っている中学生かな?にしか思わなかったんでけど日に日に彼を見ているとどんな人なんだろうか?と言う気持ちになっていた。
今日は部活帰りにその人の投球練習を見てみることにしたの。私は行くころまでまだ居るのかな、それとももう居ないのかなと考えながら向かっていく。何時もの橋の下に到着してみると私が来るまで相当投げ込んだのだろうと伺えるほどの大粒の汗を額から流していた。
私は何故かほっとしてしまっていた。この時何故このような感情になってしまっているのかは分からなかったけど、次第にこの気持ちがわかるようになってきていた。この時から私は彼に恋をしてしまっていたという事をね。でもこの頃は気づいていなかったわ。
私はゆっくりと音を立てずに一番見えやすい場所まで行き投球を見ることにしてみた。彼の投球を見ていると球種がわかってきた。私も一応マネージャーをしている。そのおかげで少しばかりは野球の知識がついて来ている。見てみるとキレと変化量が申し分ないスライダー、おそらくカーブだと思われる球、中学生にしては珍しい球種であるフォークを投げ込んでいた。ストレートは130㌔くらいは出ているんじゃないだろうかと思ってしまう。
私もびっくりしてしまった。何でこんなにキレイに投げ込めるのにこんなところで練習をしているんだろう?と思ってしまう。もし彼が進学先を決めていないのなら私の青道高校に入って欲しいと考えてしまう。
うちの青道高校の投手はカーブだけの田中先輩、丹波先輩、スライダーが武器のサイドスローの川上君しかいなかった。ここまで器用にコースに投げ込んているのはいなかった。この人が同じチームに入れば投手の安定性も増すんじゃないの?と思ってしまった。 私の学年に野球雑誌「野球王国」に取り上げられるほどの逸材とされている御幸一也君と組めば物凄く強いチームになるんじゃないのかと考えていしまう。
それから私が5球程の投げ込みを見ていると不意に声をかけてくる。いきなり声をかけてきたから驚いてしまったわ。何故分かったのかと思っていると私の影が彼の場所まで伸びてしまっていたんだわ
私は観念してから彼の場所まで行き名前を言ってみる。それに彼の顔を見てみると年齢の割にどちらか問えば童顔の顔をしている。茶髪の髪を後ろで一つに纏めていて人懐こそうな笑みを浮かべている。何故か私の母性反応を十分に刺激してくるものであった。
茶髪の髪をしている彼は神木・真一君と言う。この東京で硬式野球でそこそこの強さを誇っている海王中学校出身と聞いたわ。
私が何故こんな所で投げ込みをしているのかを聞くと家族が貧しくてお金が無いからと言ってきたわ。お金がない無いなんてと思ってしまう。私はそう言いながらも金を持っている子を今までに何人も見てきていた。だからこの子も嘘をついているんだと思っていた。でもそれは覆ることになってしまっていた。
何故かというと私がふと真一君が使っているグローブとボールを見てみる事にしてみた時に、するとそのグローブの網の部分はもう破れてしまっているのに使っており、ボールでも縫い目の部分を自分で縫ったのだろう補修されている跡があった。
そのあと彼の話をいろいろ聞いていくと私の常識をすべて壊していくことが知ることが出来たわ。頼れる人がいない為にこんな中学生でバイトをしてから家計を助けていること。自由に使える時間がほとんど無いと言う残酷な状況だというに真一君は全く嫌な顔をせずに行っている。
私の中学生のころは毎日のように遊びをしたり、野球部のマネージャーをしたりとしてしていたのに、たった2つほどしか変わらない中学生と覚悟の違いを見せつけられてしまっている。
真一君は3人兄妹の長男で中学3年生と言うこと。母子家庭で家計が貧しくて中学生でバイトをしているという事、高校に進学せずに就職することが分かった。何故そんなに無理をしていこうとしているんだろうか?父親がいないだけで覚悟を決めれるんだろうか?妹がいるだけでそんなに変わってしまう事なんだろうか? 私は自分で自問してみるけど答えは出てこなかった。
私は今まで何一つ苦労など全く知らずに育ってきたのに、苦労を知り尽くしている真一君。私は彼のことをもっと知りたい、もっと感じたいという感情になっていた。
私は彼に青道高校の野球部推薦入学を教えてあげた。すると彼の左手が拳を作って震えていた。真一君は妹達を育てていかなければならないと言っていたのに心の奥では色々な球児と戦いたいと言う感情が芽生えていたのんだろう。
もし、合格したら野球部を甲子園に連れて行って。そして私に真一くんがマウンドで堂々と投げている姿を見せて欲しい。
そう思いながら私は私の携帯の番号を真一君に渡して帰り道について行く。
次の日になると私は学校に行く準備をしてから登校する。野球部の朝練の前に片岡監督と太田部長のいる監督室に向かう。
■■■■■■■■片岡鉄心■■■■■■■■
俺はこの青道高校野球部で監督をしている片岡鉄心(かたおか・てっしん)と言う。数年前にプロ入りが決まっていたのだが、自分を鍛えてくれた母校青道高校野球部の為に何か出来ないかと考え、プロ入りを蹴り母校の監督に就任した。
「打高投低」と言うのが今のチームにあってしまう。打撃力だけではこの東東京地区でトップクラスの高さを誇っていると言われている。チーム得点平均は6,21と高いものである。得点が高い物であるが、圧倒的に失点が多すぎる。チーム失点平均7,89、四球平均5,21とこの二つのせいで何度も試合に負けてしまうことがあってしまっている。
そうこのチームには絶対的エースが不在なのだ!!
その為にこの地区で強豪と言われている稲代実業、市大三校の甲子園を取られ続けていたこれは早急に投手育成を急務とされてしまうものであった。
スカウトの高島礼(たかしま・れい)には今年の年は投手を主にスカウトさせている。しかし、それでも絶対的エースになれる人材ではないと俺の感が告げていた。あと夏の本戦まで半年を切っている。それまでに何とかして投手を探さなければならない。
そんなある日である俺と部長の大田、スカウトの高島の3人でどの投手を獲得するのかを話し合っていると不意に扉を叩く音が聞こえてくる。
コンコン
「片岡監督少しいいでしょうか?」
「その声は夏川か? 入ってきていいぞ いったいどうしたんだ? 朝練の前に何か用でもあるのか?」
その声の主は1年のマネージャーとして入部してくれた夏川唯であった。珍しいことに彼女がこの様な場所に来るなどあまりない。しかし、この場所に来たということで何かあったのだから来たのだということが分かる。
片岡は中に入るように夏川に許可を出す。
夏川は俺のことが苦手用だな。それはそうか? 俺は何時でもサングラスを携帯している。その為に部員達から怖がられていることは知っているからだ。
無論他のマネージャー達もその影響を十分に受けてしまっているのは知っている。これは俺のトレードマークみたいな物だからな、絶対に外すことはないだろう。
「忙しい時にすみません。 実は昨日に結構いい投手を見つけたんですけど」
「投手を見つけた? 礼、リストを頼む」
俺は高島に投手のリストを手渡してもらう。そしてそのリストを見ながら夏川から名前を聞く。
「海王中学校の神木真一君という方です」
「か…神木真一だと!?」
俺は信じられない名前を耳にしてしまった。あまりの驚きぶりに太田部長、スカウトの高島、マネージャーの夏川までもが俺の変貌ぶりに驚いてしまっている。
神木・真一―――俺の記憶違いでなければあいつの子供のはずだ!俺の野球の原点を教えてくれた幼馴染の子供のはずだ。しかし、アイツは数年前に―――してしまったはずだが…
「済まない。取り乱してしまったようだ。それでどの様な球を投げると言うんだ?」
「えっと、球種が3つほどありました。左投げでスライダーとカーブ、フォークのです。ストレートの球速が130後半ぐらいの球です。バッティングの方はわかりません」
ますます聞いていくうちに俺の脳裏にはあいつの顔が浮かんでくる。互いに切磋琢磨していき、互いの持っている技術を教えあった神木東葉(かみき・とうよう)が浮かんでいた。同い年には見えないほどの童顔の彼であったが、投げると闘志をむき出しにして投げ込んでいた。おそらく息子である彼も相当な技術を持っているだろう。
「そうか? 一応彼を1週間後の土曜日に呼んでからテストを行う。想像している以上の者であったら野球部推薦入学をさせるぞ。それを彼に伝えておいてくれ」
「分かりました。私の要件はこれだけです。これで失礼します」
そういってから夏川は頭を下げてから部屋から退室していく。完全に出て行くのを確認してから片岡は全ての体重を椅子にかけるように座っていく。
「一体どうされたと言うんですか? 片岡監督?」
高島は片岡に心配想に聞いてくる。その表情は少し驚きが混じっているものであったが、それを出さずに聞いてくる。
「いや、何でもない。済まないが少し一人にしてくれないか?時間になったらグランドに向かう」
「分かりました」と言って太田部長と高島スカウトは監督の部屋から出ていく。
「まさかな。あいつの子供が野球をしているとは思わなかったな。しかし、これも奴の息子という運命なのかもしれんな? そうだろう? 東葉? お前の子供、もし来るというのなら俺がしっかりとエースに育ててやるからな。それにこれも奴の悪巧みというやつか?それとも神が遊んでいるというのか?」
そう言う片岡であるが、そのグラサンの目には少し涙が流れていたのである。一体これが何を示しているのかは誰にもわからない。
片岡鉄心と神木東葉と言う男との間に一体何があったのかは今はまだ誰にもわからない。
この二人に何があったのかが知るのはまだ先の未来の話。
野球部の恋愛っていいんでしょうかね?
野球部ではないのでわかりません。
でも、まぁヒロイン的なのでいいんでしょうか?
それではまた次回の投稿の時に