ダイヤのエース 君に捧げる一球   作:ダイジョーブ博士

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第2話 推薦テスト 前編

■■■■■■■■神木真一■■■■■■■■

 

 

真一は夜家に帰ってから母親に相談してみる事にした。

 

すると母親からは「お前のたった1回しかない。高校時代なんだからやりたいようにすればいい。家庭の方だって気にすることはない」と言ってきたのである。

 

こればかりには真一は母親に感謝をした。その日は真一は疲れてしまっており、風呂に入ると布団に入って眠りについてしまっていた。

 

次の日の朝になると携帯には夏川先輩からメールが入っており、何処で試験を行うのか、日付時間が細かく書かれていた。 服装は動きやすいものでくるように書かれていた。

 

真一は持っているもので一番動きやすいものと考えると学校のジャージしか思いつかないって言うか!これしか持っていないのだ。

 

それから1週間は毎日のように何時もの様に橋の下で投げ込むをしたり、近くの公園でランニングのキツメを行ったりして時間を費やしていた。そのおかげでもともと身体能力には恵まれていた真一の体は更に磨きがかかってきていた。

 

投球の方では60球を超え始めると疲れが見え始めてしまい、球を投げるときに抜けてしまうことがあってしまっていたが、今は前と比べて70球ぐらいまで投げても問題なくなってきていた。

 

今真一は青道高校の正門に来ている。

 

ここまでの道のりは母に聞いてからやって来たのである。しかし、ここから先は目的地であるAグランドに向かわなければならない。

 

青道高校は中学校の校舎に比べて広い。真一が通っている2倍は軽くあるんじゃないんだろうかと思ってしまうほどである。その為に何処に何があるのかすら分からないでいたのである。

 

「おーい! 真一くん!」

 

「ああ、夏川さん!」

 

真一が途方に暮れていると校舎の向かうから一人の女性が走ってくる。声の主からもそれはこの前会ったばかりの夏川のものであると分かった。

 

「ごめんね」と言いながら近寄ってくる。

 

その表情を見ると僕は何故か心に安心感が生まれてしまっている。何故と思ってしまう。僕の心は夏川さんと会いたがっていたというのか?でも、僕にも何故かは分からない。

 

「それじゃ、今から案内するからついて来てね」

 

真一は頷いて同意を示す。

 

「そう言えば、どうやってから変化球を覚えたの?」

 

ビックと真一の体が一瞬震えてしまう。それはそうだろう。リトルや野球部に入ったことのない真一がここまで変化球を覚えることなど普通ありえないのだから仕方がない。

 

答えるべきか、答えずにはぐらかすかを考えていると真一の視界に夏川の顔入ってきてしまう。その表情から伺えるのは「教えて欲しいな」と語っているものであった。

 

やれやれと首を振る。

 

「僕は何時もこのノートに書かれているように練習をして来たんですよ」

 

そう言って鞄から取り出してきたのは1冊の古いノートであった。それは何年も使っている様子で、ノートのあちこちがボロボロになってしまっている物である。

 

真一は手に持っていた古いノートを夏川に手渡す。

 

「……凄い、詳しくどの様に練習すれば良いかが書いてある。それに変化球の正しい握り方や投げ方まで載っているなんて、こんなもの一体どこで手に入れたの?」

 

「分からないんだ。家の本棚の中に置いてあったんだ。何時誰が入れたのかが分からないんだけどね母に聞いても知らないとしか言わないんだ」

 

夏川はその中を見てから驚きを隠せずにいてしまう。その為に一体何でこれを手に入れる事が出来たのかを聞くが当の本人である真一は本棚の中に入っていたのだという。疑問に思ってから母に聞いてみたが、何処か言いにくそうにしながら「知らない」と言うだけである。

 

しかし、本当にこんな詳しく書かれている物など市販の本屋に売っている本などと比べ物にならないものである。

 

それからも真一と夏川は雑談を行いながら目的地のAグランドに向かっていく。目的地に近づくにつれて、硬式のボールを金属バットで打つ独特の音が聞こえてくる。 

 

その音が聞こえてくるに従って真一の心がゆっくりと鼓動が大きくなってくる。

 

そう、神木・真一のなかに眠っている闘志がこの時から着火し始めていたのである。これがどのような結果になるのかはわかない。しかし、気持ちが高ぶっているのはわかる。

 

長年リトルや野球部に通えずに毎日のように1人で練習していたのだから、これほどの興奮に勝てる者はないものである。

 

そしてAグランドの中に入っていくと練習をしていた部員達が全員真一の方を見ているのである。それを見ながら夏川の後について行くとグラサンをかけていて一人だけ異常な威圧感をただ寄らせている男がいたのである。

 

彼の名前は片岡・鉄心監督である。この青道高校野球部総勢100名近い部員を育てている監督である。異様な威圧感をただ寄らせながら近寄ってくる。その隣にはメガネをかけている女性と少し暗い表情をしている男子生徒が立っていた。その彼はレガース、プロテクター、キャチャーミットをはめているいたのである。つまり彼は捕手ということが分かる。

 

「君が神木真一君か? 俺は片岡鉄心、この青道高校野球部の監督をしている。今から君の推薦入学が相応しいかテストを行う」

 

「はい、初めまして僕は神木・真一と言います。今日はよろしくお願いします」

 

真一は片岡に頭を下げて挨拶を行う。その表情は彼から放たれている威圧感で少し硬くなってしまっているが、それ以外は何ともないような感じである。

 

「テスト内容は制球力テストと実践テストの2つを行ってもらう。最初に肩を作ってきてくれないか? この滝川が勤めてくれる。彼に何を投げるのか、サインを決めておいてくれ。準備が出来たら声をかけてくれ」

 

それだけを言うと監督はベンチに入ってから僕の準備が出来るまで待っているという。

 

「初めまして、俺は今回お前のキャチャーを務めることになった。2年滝川・クリス・優と言う。一応捕手をしているが、正捕手では無い」

 

「初めまして、僕は神木・真一と言います。今日はお願いします。滝川先輩」

 

真一はふと思う。何故この人の目は輝いていないんだろうか? 今まで色んな人を見てきていたけど、ここまで目が曇ってしまっている人を見たのは初めてだ。 彼に何があったんだろうか? 今は僕が出来ることを全て出し切るしかない。

 

「さて、神木、お前はなんの球種を持っているんだ?」

 

「はい、僕が持っている球種はスライダー、スローカーブ、フォークの3つです」

 

「なるほど、そうか?(3つも、持っているのか?そんなに持っているとは思わなかったがな。どれくらいのキレと変化量によって評価は変わってしまうがな)ブルペンで肩を作る前にサインを決めておく。――――ということだ。わかったか?」

 

真一は頷いて肯定する。滝川先輩のサインを覚えていく。元々学力が高い方であった真一はすぐにこれを覚えることに成功した。 そしてブルペンに移動するとスピードガンを持っている夏川が待っていた。 彼女によるとどれくらいの球速を持っているのかを図るために来たのだという。10分ほどで25球ほどゆっくりと肩を温めながら投げ込んでみる。それと初めてマウンドというな場所で投げるとどうなるのかを考えながら投げてみる。

 

(少し違和感があるけど、何時も通り投げられそうだ)

 

更に10分程20球を座って投げ込む。暫くしていくと滝川先輩から声がかかる。

 

「よし、そろそろ上がるとする。それじゃ先ずは制球力テストを頑張ってくれ」

 

「分かりました」

 

そう言ってからブルペンから出ていく。

 

そしてから片岡監督が待っているベンチまで戻っていく。

 

「片岡監督、十分に肩を作ることができました。テストを開始してください」

 

「分かった。今からテスト内容を言う」

 

そう言ってからテスト内容を片岡監督が話す。話を聞いていくうちに次のようなことであった。

 

@1:コース指定は片岡監督が行う。

 

@2:投げる球種も同様に片岡監督が決める

 

@3:投げる場所はストラックアウト形式にする。

 

@4:変化球でコースに決めたら2点、ストレートの場合は1点とする。

 

@5:最後に投げ込むのは20球である

 

まぁ、大体こんなところですね。ほとんど何も考えることはないなです。ただ、片岡監督の指示に従ってから行えばいいということです。それでは初めての制球力を試されるので緊張してしまうかもしれませんがベストを尽くすしかありませんね。

 

真一はマウンドに上がり、ピッチャープレートに付いている土を左足ではらう。そして目の前の9分割にされているストラックアウト式のストライクゾーンを見つめる。

 

「よし先ずは5番にストレートを頼む」

 

「はい!」

 

そう言ってからテストを行っていく。一つ一つ指示されたコースに丁寧にピッチングを行っていく。

 

ストレート、スローカーブ、スライダー、フォークはまるで真一が願っているコースに意思でも持っているのではないだろうかと思ってしまうほどのものであった。

 

周りでこの様子を見ていた青道高校の野球部員は驚きの表情を隠せずにいた。それはそうだろう。まだ中学生がこれほどの制球力とスピード、変化球の変化量も申し分ないのだから。

 

この様子を見ていた片岡監督の顔も神妙なものに変わってしまっていた。真一の一つ一つの動作が彼の父である神木東葉がこの場所に来て投げているのではないだろうかと思ってしまう。

 

その結果を受けて思わず頬がにやけてしまっていた。これほどの逸材がどこの高校もマークしていない投手がいたのである。 ここまで片岡監督の心の中で付けている点数は35点というところである。あとは次のテストでどれくらいの実力を発揮できるかである。

 

SIDE CHANG

 

いったい何なんだこの男は?

 

俺の名前は滝川・クリス・優と言うもうすぐ三年になってしまう2年生だ。元は丸亀シニアの関東ナンバーワンキャチャーとして名を上げるほどの捕手だったんだが、今年の夏の本選前に方を壊してしまい戦列を離れてしまったんだ。しかし、もう俺の肩は診断の結果来年の夏の本選には間に合わないだろうと言われてしまった。それでも俺は可能性を信じてからまだ選手として甲子園を目指している球児の一人だ。

 

だが、1年という時間の間戦列を離れてしまうという事は高校球児にとっては事実上の「引退宣言」に等しいものである。だが、俺はそれでもいい。例えチームメイトとの間に溝ができようが、諦めることは出来ない。

 

ある日監督に呼び出されてしまった。

 

いったい何の用事があるのだろうかと思って監督室に向かっていく。そろそろ、俺も監督に切り捨てられてしまうのだろう等と考えながら扉を開ける。

 

結論から言うと退部勧告ではなかった。 

 

どういう訳か来年入ってくる球児の野球部推薦入学に相応しいかどうかをテストを行うらしい。その時にその球児とバッテリーを組んでくれないか?と頼まれた。あの片岡監督が直々に目をつけたのだろう。相当な腕を持っているのだろう。

 

しかし、話を聞いていくうちに信じられないことを耳にしてしまった。

 

それは「野球部推薦入学が妥当かどうかをテストをしに来る奴は野球部自体に入ったことはない。そのために投手の能力を最大限に引き出す事の出来る滝川、お前しかいないのだ。頼む引き受けてくれないか?」と言ってきたのである。

 

仮にもこの青道高校野球部は名門とはいかないが、東京地区では強豪校をはることの出来るチームである。6年前にも甲子園に行った程のチームでもある。

 

まぁ、その時は俺は少し頭が混乱してしまっていて「はい」と答えてしまった。言った時には流石にまずいのではないかと思ってしまったが、この片岡監督には今更「いいえ」とは答えることはできないのである。 

 

試験を行う場所は青道高校野球部のAグランドで今週の土曜日に行うらしい。その日は特になにもリハビリなどは夜に行っている。そのために時間は問題はなかった。それに久しぶりにキャチャーとして投手をリードできるという事が内心嬉しいものであった。

 

そしてから俺は1週間後の試験日を迎えた。俺も全身を一時期つけていた無かったレガース、プロテクター、キャチャーミットをはめてから片岡監督と共に受験者を待っていた。

 

すると向こうからマネージャーの夏川唯に連れられてから歩いてくるナチュナルの茶髪をしている男子生徒がいたのである。髪は染めてはいないのだろう元々の色をそのままにしており、自毛という事が近くに来てからわかった。

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。これから俺はこの投手をリードしてやらないといけないんだからな。それにもし直球だけと言われてしまったらどうリードしようかと考えてしまう。

 

俺が簡単に自己紹介を行うと茶髪の男子生徒も自分の自己紹介を行ってくる。そのあと感じな何の変化球を持っているのかを聞いてみることにしたのである。

 

しかし、俺の心配事などはすぐに吹き飛んでしまった。何故かと言うとだ。

 

「さて、神木、お前はなんの球種を持っているんだ?」

 

「はい、僕が持っている球種はスライダー、スローカーブ、フォークの3つです」

 

こればかりには驚いてしまったな。素人といってもいいはずの男が3つの球種を持っているというのだから。しかし、3つ持っていようと球威とキレと変化量を同時に操ることが出来なければ、ただの少し変化する球にしか思われることしかない。

 

俺は実際にどのくらいの球なのかも興味があった。 

 

神木真一とか言う男はブルペンに入る。ゆっくりとしたフォームで投げ込んでくる。フォームにも特に癖などはない。この投げ込むフォームは殆どの者が叩き込まれることのあるスタンダードであった。

 

俺が真一に要求したのはストレートを投げ込むように指示を出す。スタンダードから投げ込まれたフォームのストレートは俺のミットまで真っ直ぐ飛んできてキャッチする。ノビとキレも申し分のない程のモノと分かる。それから10球程のストレートを投げ込ませていく。そこで分かったことは真一の球威は130後半位とわかってくる。まだ中学生にしては早い。このチームのエースである丹波は137㌔ほどである。それと同等の球を投げ込んでいるのだから驚きだな。

 

次にスライダーを投げ込ませてみる。真ん中あたりから急激に変化してくるほどの変化量だな。これほどの変化量とキレを維持しながら投げ込めるのだから相当な練習を行っていったのだろうと俺は思った。1年に川上と言うスライダーを武器にしている奴もいるが、それ違った変化の仕方だな。

 

スライダーを10球投げ込ませてから次の球種であるスローカーブを投げさせてみる。スローカーブは高校生投手のあいだで投げられるカーブよりも更に球威も変化量も一段階落ちるものである。およそ100㌔程の球威でドロンと落ちてくる変化球である。変化量だけが物足りないと思ってしまった。弱小校程度の相手ならこのスローカーブとストレートだけで試合を行うことができると思ってしまった。緩急をつけたピッチングがしやすいからな。

 

今までにストレート、スライダー、スローカーブの3つを見てきていた。最後の球種であるフォークの球を投げさせてみる。ストーンと球威も120㌔位で突如打者からの視線から消えるかのように落差があるものであった。ここまで落差のあるフォークを投げ込んでいるもの等は見たことがなかった。

 

俺は真一の持っている球種を一通り全て投げさせてから、驚愕な表情を表に出さないようにしながら内心驚きを隠せなかった。

 

(こいつは本当に指導者などはいなかったのか?ここまで完成しつつある素人などは見たことがないぞ!?それにこの男が2年後にはどんな風に化けていくのかも楽しみもあるな。それだから監督も野球部推薦入学をさせようとしているんだろうな。楽しいな捕手……!?俺はまだ捕手と言うのを諦めていないのか?……俺はまだ捕手をやりたい! もっと投手をリードしていきたい!このまま高校野球を終えるなんてまっぴらのゴメンだ!)

 

滝川は監督の観察眼に関心をしながら真一を真っ直ぐに見つめていた。これほどの男がこのまま埋もれてしまっては勿体無い才能を秘めていると確信してしまった。

 

この時からであろう。今まで目に本来あったはずの光がなくなってしまっていた滝川であったが、神木真一と言う男との出会いがあったおかげで、再び目の奥から光がやどり始めていた。

 

この結果がどのように滝川・クリス・優にとってどのようなものになるのかは分からない。しかし、これだけは言えるであろう。決して悪い方に転ぶことはないだろう。

 

 

 

 

 

 




神木真一の投球フォームはパワフル2012決定版

オーバースロー1と思ってください。

それではまた次の投稿の日に会いましょう。

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