モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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週刊ポケモン生活30周年特別企画『モモナリマナブのおてんき質問室』②

 信じられないことに、前回の質問コーナーはそれなりに評判が良かったらしい。トレーナーと才能の話などは昔は言うたびに怒られていたのだが、時代が変わったのか僕の言い方が変わったのかはわからないがとにかくホッとした。ただ名前を出したクシノには苦い顔をされた、最近弟子たちがこちらの文字を覚え始めたようで、もう少し威厳ある師匠でいたいそうだ、もう遅い。

 編集部の方からはもう何週間かやってほしいと言われたのでまたいくつか質問を抜粋した。今回は先週の質問コーナー掲載後にホームページに設置したメールからの質問もあるので臨場感たっぷりだ。

 

 

 

Q 〇〇年度チャンピオン決定戦のワタルーカンナ戦でカンナ選手がフリーザーを繰り出した場面はリーグ史に残る伝説ですが、モモナリ選手はその他のカントー伝説のポケモンであるファイヤー、サンダーを目にしたことはありますか?(20代男性)

 

A そもそも僕が見たことなかったのはフリーザーだけでした。

 

 チャンピオン決定戦でカンナがフリーザーを繰り出したあの瞬間は今でも鮮明に思い出すことができる。セキエイ特別対戦場の、それもリーグトレーナーだけが入ることができる控室から見たその光景は素晴らしかったね。リーグトレーナーになって一番良かったことの一つかもしれない。

 さて、実はあの時、僕が覚えた感動と、他のトレーナーやファンが覚えた感動は実はちょっと種類が違ったんだよね。皆は初めてカントー伝説のポケモンの一つを見たかもしれないんだけど、僕はあのフリーザーを見たことでカントー伝説の鳥ポケモン三種をコンプリートしていた。あの時点ですでにファイヤー、サンダーとは会ったことがあったんだよね。

 僕の生まれであるハナダのハズレには、無人の発電所(今では改装されてカントーとジョウトをつなぐリニアの電力を賄っている)があって、周りと差をつけたい子供たちはそこで電気ポケモンをゲットしようとしては反撃を食らうのがお決まりの光景だったんだけど、僕はそこに慣れてちょくちょく通っていた。今思うと無茶だね。

 ちょくちょく行って大分奥まで行くことができるようになった頃に、でっかくて強い電気を操る鳥ポケモンとよく出会うようになった。あの時は知らなかったんだけど、あれはサンダーだったね。

 普通にめちゃくちゃ危険な状況だったと思うんだけど、当時の僕ってあまり深く物事を考えないから出会うたびに挑んでは返り討ちにされていた。でも今になってよく考えてみれば、幾ら僕が後のAリーガーだったとしてもまだ粗だらけの子供だったわけだから、サンダーがその気になればどうとでもできただろうね。多分だけど、あのサンダーは跳ねっ返りの強い生意気な子供とじゃれるのが好きだったんだろうと思う、無人発電所が改装されてからもちょくちょく姿は見かけていたんだけど、僕がいい歳になったら見なくなった、またどこかで生意気な子供を見つけたんだろうな。

 ファイヤーと出会ったのは僕が封鎖されたチャンピオンロードに潜り込んだときだ、今だから言うけど、実は当時の僕は少し期待していた。元々チャンピオンロードに炎をまとった鳥ポケモンが出現する噂はあったし、ファイヤーの生息地は険しい山が多いから状況的には合う。そこにバッチリ出会えたものだから嬉しかったね。

 ただ、サンダーと違って、ファイヤーは僕に敵対心むき出しだったね。ものすごい目で睨みつけてきて、緊張感があったよ。強かったしね。出会ったのはそれっきりだがいい思い出だし、チャンピオンロードに入ったペナルティなんてあの経験だけでお釣りが来るよ。

 ここまで昔を思い出して思うことは、やっぱりフリーザーを手持ちとして従えたカンナさんは凄い。

 まだ僕が子供だったサンダーはともかく、チャンピオンロードで出会ったファイヤーなんてもう何がなんでも人になんか従ってたまるかというオーラがビンビンだった。あれほど気位の高いポケモンをどういう状況であれパートナーにするには一体どれほどの積み重ねがあったのかと思うとクラクラするね。強いし。

 

 

 

 

Q 初めてのお手紙でこのように失礼な質問をすることをお許しください。モモナリ選手の手持ちの中でカバルドンの存在だけがすごく浮いてる気がします。カントー・ジョウトに生息するポケモンではありませんし、それなのにモモナリ選手の手持ちの中ではかなりの古参で、新人であった頃からの手持ちであったと記憶しています(確かアーマルドやユレイドルよりも古かったと思います)モモナリ選手の戦術の骨子であるだけに、その出会いを教えていただければ幸いだと思います(60代女性)

 

A 僕も彼もアンタッチャブルな存在だったんだよ。

 

 この質問の通り、僕の手持ちにカバルドンがいることは今更説明するまでもないだろうし、彼は僕の手持ちの中では古参の方なのも間違いない。そして、僕がジムに挑戦した頃にはこのポケモンの存在はカントーではものすごく珍しかったのも間違いない。

 僕が彼と出会ったのは、彼がまだヒポポタスであった頃だった。

 時系列的にはジムに挑戦を始める少し前だったと思う。その頃にハナダの外れの方で『怪物』騒動が起こったんだよね、まだ今ほど通信が発達していなかった時代だからあまり大きなニュースにはならなかったんだけど、あの頃、ハナダのある場所で『すなあらし』と共に聞いたことのない鳴き声が聞こえると話題になっていた。たまに姿も見せたことがあるらしいんだけど、やっぱり当時のカントー図鑑にはないポケモンだったから皆怖がってた。

 そういう状況だから、僕と彼が出会うのは必然だったし、すぐに仲良くなった。わけのわからないポケモンに突っ込んでいったんだよ当時の僕は。馬鹿だね、本当に。

 結果として僕は彼をゲットしたわけだけど、まー、あれは怒られた。アーボックに一騎打ち挑んだ時と同じくらい怒られた。でも彼自身は本当におとなしいポケモンだった、アーボックに比べたらぬいぐるみのようなものだったよ。

 結局何で彼がハナダにいたのかはわからなかった。まあ、ポジティブに考えれば観光客とはぐれたとかだけど、どうもそんな話はないし、ネガティブに考えようと思えばいくらでも考えられる。もし何かあったとしても、もう僕と彼の付き合いは相当長いし、はいそうですかと手放すことはない。

 彼が手持ちに入ってくれたおかげで、僕は自分のやりたいことをバトルの中でできるようになった。過程はどうあれ運命的な出会いだったと僕は信じている。

 

 

 

 

Q ジムリーダーとAリーガーが戦うとどちらが勝つと思いますか?(10代男性)

 

A ジムリーダーとはだいたい戦ったけどみんな強かったよ。

 

 この手の質問って純粋な疑問のタイプと少し悪意のあるタイプがあるからあまり好きじゃないんだけど、今回は純粋な質問だとして答えようと思う。

 まず、僕はこの辺の地方のジムリーダーとは大体戦っている、もちろんジム戦じゃない。本気で。ちなみにアローラのしまキングたちとも戦っている。本気で。

 その上で僕の答えは、ジムリーダーという立場の人間は大体超強い。もちろんジムリーダーがすぐにリーグに対応できると断言はしないけど、少し時間があればすぐに適応できるんじゃないかな。

 こういうことをチャンピオンになったことがない僕が言うのはものすごく恥ずかしいことなんだけど、リーグで強いこととポケモンバトルが強いことってよく似ているけど同じことではないと思っている。

 リーグ戦というのはある程度画一的なルールのもとで行われるものだし、スタジアムなんかもある程度固定化された環境だ。僕はサントアンヌ杯という大会によく出ているんだけど、この大会は基本的に海上で行われる。ならこの大会で優勝したことのあるトレーナーが世界一強いトレーナーかと言われれば、大多数の人間は首をひねるだろう。この世界の殆どは海なのにだ。大体、この理屈だったら僕が世界で一番強いトレーナーの一人だということになるし、誰もそんな事認めてくれないでしょ。

 基本的に『強い』という概念は状況とか環境とかによって変わってくることだし、だからこそそれらの要素を排除したり、あるいは統一したりして『その条件で強い』物を決めようとする。だから何かのルールのもとで行われた結果だけを見て強さを議論することって危険だなと思うよ。それに、もし『強い』が一目瞭然にわかってしまう基準があったら、僕達はここまでこの世界にのめり込んでないんじゃないかな。自分で決めなきゃ面白くないよ。

 そもそも元セキチクジムリーダーのキョウさんが四天王になってるんだからジムリーダーが弱いわけないんだよね。書いてて思い出したけど結局僕はキョウさんとは戦えてないんだよね、そういうのも含めて、バトルって難しいよね。

 ここからは全くの余談だけど、綺羅びやかなイメージのあるコーディネーターもトップ層は普通に強いよ。ただ、僕らの思う強さから逸脱することが彼らの美学なところがあるから目立たないだけで、僕達は彼らから学ぶことがあるとひっそりと思っています。

 

 

 

 

Q モモナリ選手がいい出会いを重視することは重々承知の上での質問です。モモナリ選手が気になる、育ててみたいと思ったポケモンはいますか? (40代男性)

 

A 僕ならこうするんだけどなと思うことはいっぱいあるよ。

 

 気になるポケモンということなら一杯いる。というより人の戦いとかを見てて「僕ならこうするんだけどな」とかそういうことを思うことはいくらでもあるし、多分リーグトレーナーならそういう発想から対策や戦術を詰めていくと思うので、多分競技シーンに登場したポケモンの殆どは気になってるんじゃないかな。何で皆めざめるパワーをもっと使わないんだろうとは思ってる、たしかに今ではメインでは使えないけど切り札的に十分使えると思うんだけどなあ。

 でも多分質問の文脈からすれば僕の手持ちに入れるかどうかということだろうからそっち方面でも答えると、手持ちに入れたいなと思うポケモンは何匹かいたけれど、現実的ではなかったね。

 僕にとって彼らは家族でありビジネスパートナーであり手足であり目であり、その逆もしかり、僕は彼らの手持ちであり家族でありビジネスパートナーであり手足であり目でもある。そう簡単に気分で増やすことのできる関係じゃないからね。例えばトレーナーでない人でも、急に家族が増えれば戸惑うと思うし、すぐに良好な関係は作れない。僕の中ではそれと同じだ。

 そういう意味では、ガブリアスを手持ちに加えたのってものすごい冒険だった。それを考えると環境とか流行りの要因で手持ちをやりくりするのは僕は向いてないね。

 誤解のないように書いておくと、レンタルパーティや育て屋を利用して色々なポケモンに対応する最近の流行りを否定するつもりは全く無いし、よく言われるようにそういうトレーナーが楽をしているとも全く思わない。状況に応じて適切な武器を繰り替えるには長期的な目線のクレバーさが必要であると思うし、人が育てたポケモンを自分の型にはめるってめちゃくちゃ難しいことだと思うよ、ポケモンはデータじゃなくて生き物なわけだから、それぞれ一匹一匹に個性やクセ、相性とかがある、それを見抜いてうまく統率させるスポーツの監督のような能力は僕には無いだろうし、それができるとも思わない。

 でもその逆に僕のやり方は僕のやり方なりにメリットが有るわけで、その結果僕はまだなんとかAリーグでやれている。僕や『チャンピオンロード世代』が頑張っている内は、僕達のような生き方も悪くはないんだと思ってほしい。

 それでも強いて手持ちに入れてみたいと思ったのはルチャブルと今手持ちにいないかせきポケモン、後はオノノクスかな。

 

 

 

Q ぼくはもんすたーぼーるをうまくなげることができませんどうやったらぽけもんをげっとできますか

(以下母親代筆)モモナリ選手はじめまして、私は〇〇地方で二人の子供を育てている専業主婦です。今年で5歳になる息子がよくモンスターボールをせがむので買ってあげるのですが、息子はいつも見当違いの方向にボールを投げてしまうためにポケモンをうまくゲットできず逃げられてばかりです。本当はジムリーダーの方々に聞くべきであるのはよくわかっているのですが、私のいる地方にはジムがなく、『週刊ポケモン生活』でのモモナリ選手しかトレーナーを知らないので、こうしてお手紙を出させていただきました。ぜひとも息子がポケモンをゲットできる様になるにはどうすればいいのか私に指導してください。

 

A ぼーるはぽけもんのおうち、きみのともだちをつくってくれるまほうのどうぐじゃないよ

 

 まず大前提として僕にこういうことを聞くのは間違ってます。お近くのポケモンセンターなどにそういう子供たちのためのパンフレットとか案内があると思うので探してみてください、多分ですけどジョーイさんたちもその手の質問のはものすごく食いついてくると思いますよ。だけどせっかくなので僕なりの答えを書きます。

 すごく懐かしい気持ちになる質問ですね。僕も初めてポケモンをゲットしたときのことを思い出すなあ。

 僕が初めてのポケモンをゲットしたのは五歳とかそこら辺だったんじゃないかな。僕の住んでいたところはハナダジムの近くで、子供たちの遊びとヒエラルキーは当然バトルだった。僕もよく地元のお兄さんたちのバトルを眺めながら「こいつら本当に下手くそだなあ」と思っていた(もちろん子供心にですよ)

 そこで水辺でコダックと出会ったときにお互いにビビビッと来たわけですね「こいつ、俺と同じことを考えてる!」とお互いに思ったんでしょう。そのまま仲良くなって家につれて帰りました。

 このエピソードから分かるとおり、ポケモンと仲良くなることにボールって実はそこまで重要じゃないんですよ。確かに世間のイメージとか映像作品とかでポケモンをゲットするときにボールを投げたりするのでお子さんやお母さんがそう誤解するのも仕方ないかなと思うんですけど、あれ元々きのみをくり抜いただけのものですからね。弱ったポケモンが小さくなる習性を利用しているだけで意思を捻じ曲げるわけじゃない。最近は技術の進歩で投げれば絶対にゲットできるボールもあるらしいですけど、メーカーが自重しているそうで、正しい判断だと思います。

 ポケモンがボールに入るのは一時的なものです。元気になれば話は別ですし、だからといってずっと弱ったままにするべきじゃないでしょう?

 例えば最強のトレーナーと名高いレッドのピカチュウはボールに入ることを嫌うことで有名だし、自分を例に出していいのならピクシーやアーボックは普段はボールから出ている。その他のポケモンも家ではボールから出しているし、ボールの中が好きな手持ちはいないなあ。

 僕やその他のトレーナーからポケモンが離れないのはボールに入れてるからじゃないんです。その方が都合が良かったり、悪い支配のされ方をしていたり、友達だったりするから一緒にいるんです。

 息子さんには、例えば自分が知らない人に急に連れて行かれてもすぐに仲良くはなれないでしょ? と伝えてあげてください。そして、ポケモンがどういう事を考えていて、どうすれば自分と友だちになれるかを考えさせてあげてください。僕から言えることはこのくらいですね。

 最後に余計なことを言っておくと、息子さんはポケモンに興味があるでしょうからいずれバトルをするかもしれません。そして、興味があるからはじめの内は勝つでしょう。

 ただ、だからといって調子づいて強いポケモンを与えたり、過度に期待したりすることはしないで欲しい。厳しいことを言うようですが、ポケモンの機微に気づくこと無くボールを投げればポケモンをゲットできると信じている時点で、あまり才能はないんじゃないかと思います。バトルで勝つことだけがポケモントレーナーの生き方ではなく、友達と一緒に不器用に人生を歩むこともトレーナーの一つの形であり、もしかすればそれが一番いいことなのかもしれないということを、お母さんは知っておいてください。




 エッセイ形式とセキエイに続く日常、そしてこの質問形式の3つのストーリーの中には「モモナリだけが知っていること」「モモナリと読者(皆さん)だけが知っていること」「この世界の読者が思っているモモナリのことやイメージ」「モモナリがこの世界の読者は知らないだろうと思っていること」などの情報が混在しています。それらを考えながら読んでいただけると、もう一匙くらい面白くなるんじゃないかと思っています。

感想、評価、批評、お気軽にどうぞ、質問等も出来る限り答えようと思っています。
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