モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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週刊ポケモン生活創刊30周年特別企画『モモナリマナブのおてんき質問室』⑤

 五週に渡ってお送りしてきたこの質問コーナーも今週で区切りとなるようだ。

 この企画の反響は非常に大きく、僕や編集部の想定を大きく超える量のメールや質問をいただき、結果として最初より多くの質問に答えることができずに終わることをまずはここにお詫びしておきたい。申し訳ありませんでした。

 エッセイではこちらから一方的に情報を発信するだけであったが、この様な企画では相手からの問いかけに対して僕が答え、更にそれに対する反応があったことが非常に嬉しかった。例えばエアームドの女の子は相棒を磨く動画を投稿したようだし、それに対する感謝の手紙も送ってもらった。エルフーンの人は問題解決に進んでいるようだし、化石復元の方からもお礼と写真を頂いた。また、ラッタの少女はもう少し頑張るのだと返信をくれた。やりたいようにやってきた僕の人生だけど、誰かの気持ちを楽にすることができているのなら嬉しいな。

 というわけで最後の質問コーナーでは多かった質問や僕個人に対する質問を抜粋しました。

 

 

 

 

Q モモナリ選手はじめまして、私はキクコとオーキドの対戦を見て以来リーグ戦観戦を趣味としています。私の知る限り、モモナリ選手はなにか特定の戦術を苦にしているとか、特定の人物に弱いというような傾向はないと感じているのですが、このポケモンに苦戦した、こういった戦術にやられたなどというものはありますか?(60代男性)

 

A あそこまで徹底的に否定されたのは初めてだった。

 

 キクコさんとオーキド博士の対戦からのファンとはものすごく根強いですね、本当に羨ましい限りです。僕もできることなら生で見たかったですよ。

 この質問を聞いて真っ先に浮かんだのは〇△期シルフトーナメント予選の対クシノ戦かな。まだ彼がCリーグであまり対戦数を重ねてない時の一戦だ。

 今だから言うけど、僕はこの一戦までリーグトレーナーとしてのクシノを少し舐めてたところがあったんだよね。僕が若くて天狗だったのもあるし、これは今でもだけどクシノというトレーナーに才能を感じることができなかった。人間としてものすごく良いやつだということは当時からわかっていたし、彼がものすごくストイックにこの世界に尊敬を払っていることも知っていたけれど、だからこそ少し冷めた目で彼を見ていたところもあった。そんなに頑張って何の意味があるんだろうってね。

 だから僕はこの試合も『いつもどおり』やれば特に苦労することはないんだろうなと思っていた、ところが、クシノはこの試合で僕の度肝を抜いてきた。

 彼がその試合で見せた戦略というのは端的に言うと『徹底的に僕に付き合わない』ことだった。

 あの試合のクシノはとにかく僕のやりたいことをやらせてくれなかった。試合中の殆どの時間『すなあらし』をはることができなかったし、戦況を複雑化しようとすればすぐに対策され、ゆっくりと時間を使って試合のテンポをスローペースにして彼が考える時間を増やした。クシノは頭が良いから時間があればそれなりに戦える。当然僕はそれを嫌ってテンポを早めようとして、ポケモンバトルであるのにお互いがポケモンの体力よりもそれぞれのトレーナーの鼓動を意識するような時間帯があったね。

 戦局をスローペースにする戦略自体は現Aリーガーのシンディア氏の受け中心の戦い方があるけど、あの時のクシノの戦い方はそれとは全く違った。その時のクシノがどの様な考え方だったのかはわからないけど、彼はポケモンバトルにおいて『モモナリを徹底的に否定すること』ことで僕に対抗してきた。シンディア氏の戦い方は戦局を支配して相手の心をコントロールしようとするんだけど、クシノはその逆で僕の心を支配することで戦局をコントロールしようとしたということだね。

 もちろんそれは誰相手にでもできることではない、プライベートな付き合いも含めて僕のことをよく知るからこそできた戦略だ。映像が残っているかどうかは知らないけど、多分参考にはならないね。

 結果としてはその試合は僕が勝ったんだけど、あれ以来ちょっとクシノのことも見直したかな、戦いにあんなアプローチがあるなんて思ってもみなかったよ。

 あと心に残っているのは〇〇期Bリーグの対キリュー戦かな。キリューが初めてのAリーグ昇格を決めた年だね。

 あの頃のキリューはかなり乗りに乗ってた。僕もそれなりに対策してある程度思い通りにできたんだけど、最後の最後に執念見せつけられて負けちゃった。あの試合のキリューはかなり気合入ってたね。

 

 

 

Q モモナリ選手いかがお過ごしでしょうか? 私は数年前モモナリ選手と当時チャンピオンであったキシ選手が飛び入りでキッサキトレーナーズスクールを訪れてくれたときに生徒だったものです。当時はモモナリ選手の授業のレベルがあまりにも高すぎて理解ができませんでしたが、勉強を重ねた今なら少しだけわかるような気がします。ここまで書かせていただいたとおり、私はシンオウ地方最北端、キッサキシティの生まれです。キッサキは一年の殆どが『あられ』が吹雪く町であり、トレーナーやポケモン達もその環境に適応した戦い方をしています。私も新任ポケモンレンジャーとしてその天候に対応する勉強を重ねています。最近痛感しているのは一口に『あられ』状態と言っても様々な状態があり、細かく対応することの難しさです。モモナリ選手は『すなあらし』が得意な戦法でありますが、モモナリ選手と他の選手の『すなあらし』には違いがあったりしますか? また、モモナリ選手が気になっているすなあらし使いがいれば教えて下さい。(10代女性)

 

A よくぞ聞いてくれた!

 

 うへぇ! あの頃の生徒さんがもうレンジャーになってるの!? 時が経つのが早すぎるよ。そりゃ僕も歳を取るわけだ。びっくりした。

 キッサキシティには強いポケモンたちがいる『キッサキしんでん』があるし、質問文にも書いてあるように常に『あられ』の吹雪く厳しい土地だ。その土地でレンジャーとして活動することは並大抵のことではないだろうと予測できるし、名誉なことだろうと思う。レンジャーには知り合いも多いけど、本当に大変そうで名誉ある職だなあと思うよ。

 さて、この質問はすごく良いね! 僕としてもすごく答えがいのある質問だ。確かに一口に『すなあらし』と言っても色々なやり方やスタイルがある、だけど中継や観戦ではわかりにくいのが現状だね。『すなあらし』を吹かせ続けた数十年のトレーナー人生。『すなあらし』には一家言あるよ。

 今の若いトレーナー達が戦略の中で使う『すなあらし』は持続的なダメージと『すながくれ』や『すなかき』の特性を利用できるギリギリの濃さがトレンドだね。僕にぶつけてくるトレーナーはあまりいないけど。

 あと最近はゴーグルの進化がすごいね。若手で『すなあらし』を使うトレーナーはほとんどがゴーグルを付けている。昔に比べて『すなあらし』という天候そのものの敷居が下がっているように感じるよ。僕はあまりゴーグルは好きじゃなくて、裸眼と手で対応している、一度つけたことがあるんだけど『すなあらし』が晴れたときに手間だったからね。それでもまだ目が悪くなる様子はないからこればっかりは親に感謝だ。

 その手の『すなあらし』で最近おっと思ったのはガラルリーグのキバナ君かな。もちろんトレーナーとしての格は彼のほうが上だよ。

 キバナ君の『すなあらし』はかなり繊細! 彼は緻密に戦略を考えながらうっているイメージだね。彼は『すなあらし』に限らず複数の天候を操るタイプなのに凄いことだと思うよ。頭が良いんだろうね。

 これは前にも書いたと思うけど、対する僕の『すなあらし』はもちろん前述の状況も重視するけど、それより何より『なんにも見えなくする』ことを重視してる。この『なんにも見えなくなる』という特性は『すなあらし』だからこそできることだと思っているよ。

 僕は怠け者で事前に対戦相手を研究したり特別な対策を敷くことが殆どない。そんな怠け者がここまで生き残れてきたのはこの『なんにも見えなくする』状況のおかげだ。相手の視覚を極力悪くして無理矢理にこっちの得意な状況に引き込むわけだね。

 最近はなんとか相手の聴覚も奪えないものかと足音のフェイクを考えたりしてるんだけど、これも結構ハマってくれる人がいるんだよね。多分これは若手の『すなあらし』にはない味だろう。

 あと僕が密かにライバル視しているのが中継用のカメラだね。この辺は年々進化を続けていて、今では『すなあらし』状態のトレーナーの表情をくっきり映すことができる。僕はそれが気に食わなくて、同じように年々もっともっと濃く『すなあらし』を吹かせられないものかとカバルドンと考えている。『すなあらし』の中は僕と対戦相手の物だけであって欲しい。

 この手の『すなあらし』で代表的なのはトキワジムリーダーのシゲルだね。彼の『すなあらし』は僕のものとは厳密には違うけど。

 彼のやり方は『すなあらし』に『トリックルーム』や特性の『いかく』で戦局をややこしくして、挑戦者の対応を見るというものだ。当然彼は少し手加減して多少は見えるような『すなあらし』を吹かせているけど、彼とバンギラスが本気になって『なんにも見えないすなあらし』を貼ったらきっと誰もバッジをゲットできないだろうね。

 ちなみに僕はメチャクチャ簡単にグリーンバッジをゲットした。まあ、僕はこの頃から『なんにも見えないすなあらし』での戦い方を知っていたから、当然といえば当然だね。

 

 

 

Q モモナリ選手お疲れ様です。今回で質問コーナーが最後だということでお便りを出させていただきました。私はカントー・ジョウトポケモンリーグ協会の職員であり、主にオークボの部下として働いていました。長年モモナリ選手のトラブルを担当してきたオークボには、半ば都市伝説となりつつあるモモナリ選手の『ご活躍』を伺っております。さて、この度はオークボが協会の常任理事という立場になり、恐らくモモナリ選手の担当も別の理事になることでしょう、私もいくつか担当することになると思います。後学のために質問させていただきますが。まだ協会(オークボ)が把握していないものの内、そろそろ時効だから話してもいいかというエピソードはあるでしょうか?(30代男性)

 

A 協会って結構優秀。

 

 いやー今回の人事にはびっくりしたね。まさかオークボさんが常任理事になってクシノが理事になるとは。

 人事が決定したその直後にクシノから電話が来て「覚悟しとけよ」と言われたときには震えたよ。これまでオークボさんより怖い理事なんていないと思ってたんだけど、このパターンがあるとは。

 まず大前提として答えておきますが、僕は神に誓って犯罪行為は行っていません。これはしっかりさせておきます。

 その上で答えると、多分殆どないんじゃないかなと思うんだよね。

 オークボさんってかなり優秀な人らしくて、ものすごい情報網を持ってるんだよね。だから僕がどんな地方で何やろうが大体把握してることが多かった。と言っても、別に僕も隠れて何かをしようと思っていたわけじゃないから当然といえば当然なのかもしれないけど。

 しかも今度からクシノが理事になるんだから過去を遡っても殆ど無くなるんじゃないかなあ。クシノが理事ならキリューも喜んで情報提供するだろうし。

 今書きながら思い返してもあまり思い浮かばない。

 強いて言うなら、カンナさんのフリーザーと戦ったことくらいかなあ。

 もう一つ二つくらいあるような気がするんだけど、まだ言えないような気がするよ。

 

 

 

Q 以前のコラムで、モモナリさんのアズマオウはうつくしさから外れる代わりに特別強力な個体である、自分の考え方として強いことが美しい、と書かれていました。にも関わらずそのアズマオウでうつくしさコンテストのハイパーランクで優勝という、リーグトレーナーとしては異色の成績を残されてます。コンテストのうつくしさを追求したのには、何かご自身の変化や新たな意味があったのでしょうか。

 

A 僕の思う美しいを見せびらかしに行った。

 

 これプライベートでもよく聞かれる質問なんだよね。実際に皆が持っているイメージと真逆のことをやったんだろうなと実感している。

 ただ、別にこれ僕の中ではそこまで変な理屈じゃないんだよね。自分の考えから外れたことをしたとも思ってないし、やってよかったと思ってる。

 たしかに僕はエッセイの中であのアズマオウを『うつくしさから外れる』と書いた。それは事実だろうし、アズマオウと僕とを引き合わせてくれた人もそう言っている。

 ただ、僕の中で少し思うところがあったと言うか、なんというか、見た目だけの審査じゃないなら美しさを表現できると思ったんだよね。

 コンテストって見た目の審査と技によるアピールの審査がある。はっきり言って僕とアズマオウでは見た目の審査は壊滅的だろうと思うし実際にそうだった。だけど、技によるアピールがあるなら勝機があると思った。

 勝機があるという言い方は語弊があるかな。

 つまり何がいいたいかと言うと、僕とアズマオウの『リーグトレーナーとしての技術』は『コンテストの技アピール』に通じると思ったんだよね。

 これは短絡的な話なんだけど、ポケモンバトルとコンテスト、どちらのほうが先にあった概念かと考えれば、僕はバトルのほうが先にあったと思うんだよね、一番手っ取り早いし。

 そうなったときに、後発のコンテストにおける『技の美しさ』とは何か、何を基準にするかということを考えて、コンテストにおける『うつくしさ』の根本には『バトル』があると思った。

 そうなれば、僕とアズマオウには『うつくしいこと』ができる自信があった。彼は素晴らしい強さを持ったポケモンだし、僕だって多少は技について知っている。

 だからあれはコンテストに挑戦するとか体験してみるとかそういうことじゃなくて、僕やアズマオウが思う『うつくしさ』を皆に見せびらかしに行ったんだ。

 でも不思議なことじゃないよね。コンテストって皆それぞれが思う『うつくしい』を持ち寄る場所だし、まさか『うつくしい』という概念に一定の基準があるわけでもないだろうから。僕はアズマオウを美しいと思ったからコンテストに連れて行った、それだけの話だよ。

 でも結果としてはうまく行かなかったんだよね。

 最初のハイパーランクの挑戦ではなぜかはわからないけれどミクリさんがエントリーしてきてね。最初僕はこれはチャンスだと思っていたんだけど、勝てなかったし、僕もそれには渋々納得だった。ミクリさんとミロカロスはそのくらい美しかった。

 ミクリさんが強さと美しさが両立することを世界に証明したトレーナーであることは今更説明するまでもないけど、僕にはそれができなかった、悔しかったね。

 僕が思い描いた根本は恐らく間違ってないと思うんだけど、コーディネーター達にとってそれはすでにはるか遠くの光景であり、彼ら彼女らは何十歩、何百歩も先にいて、そこからバトルを眺めていたということだ。

 しかもこの間は僕のゴルダックを引き連れてハイパーランク『かわいさ』部門で優勝しちゃうしもうめちゃくちゃだよ。まさか『技をわざと失敗すること』で『かわいさ』をアピールするだなんて思いつきもしないよ。

 その後もう一度挑戦してハイパーランクは優勝したけど、当然そこにはミクリさんはいなかった。

 リベンジしたいね。

 

 

Q リーグ戦で大敗してしまった後、そのまま挫けてしまうトレーナーと、何かを掴んだかのように躍進するトレーナーがいらっしゃるように感じます(後者の例:クロセさんに負けた後のモモナリさん、シバさんに負けた後のオグラさん、他地方ですがダンデさんに負けた後のカブさん等)。躍進できたトレーナーの方々には、何か共通項のようなものはあるのでしょうか?(20代男性)

 

A 自分が小さいか世界が広いか。

 

 この例に僕が出されることが嬉しくもあれば少し悔しくもあるんだけど。大体質問の意図はわかるよ。

 負けて挫けることってリーグトレーナーの中でも珍しいことじゃない、信じられないけど若い頃の僕は『挫けさせる側』の人間だった。僕との対戦を機にリーグに出場しなくなった選手もいたし、僕に負けたあと直接僕に『もう嫌だ』と言った選手もいる。特に僕の同期に多くて、だから僕の同期って殆ど残ってないんだよ。

 残念ながらカブさんについてはよくわからないけど、僕とオグラくんについてなら多少わかる。

 僕がクロセくんに初めて負けた時、僕は挫けるとかどうかという感情よりも先に『怖い』って感情があったんだよね。負けた理由がわからないんだもの。

 ただまあその後色々あって『ああそうか、クロセくんは僕より凄いのか』ということに気がついた。

 実は昔からこれと同じようなことはよく考えていて、僕は負けるたびに『僕より凄い人がいるんだ』と少し感動するところがあった(当然悔しさのほうが大きい)クロセくんの場合はそれより先に恐怖があったから気づけなかったんだね。

 オグラくんもこれとよく似ている。彼がシバさんに負けて少ししたあと『生きているって素晴らしい』と漏らしていたことはエッセイにも書いたと思うけど、最近また彼にこのときのことを聞くと「世界が広いことに気づいた」と言っていた。僕はこれが真理だと思う。

 負けた時、人は自分のことが小さいように思ってしまう。挫ける人と僕やオグラくんが見ていた光景は多分同じだと思う。

 ただそのときに、自分が小さいことに気づかず『世界ってでっかいんだなあ』と思えるある意味の開き直りと言うか、ぼうっとしたひらめきのようなものが僕とオグラくんにはあった。

 僕ほど無神経になれるかどうかはわからないけど、もし挫けそうなトレーナーがいたら、一度このように考えてみればいいんじゃないかな。

 

 

 

Q リーグトレーナーのモモナリさんに質問です。レンタルポケモンやリーグポケモンの育て屋のように、リーグトレーナーに売れそうな、もしくはモモナリさんがあったらいいなと思う産業ってありますか?(20代男性)

 

A 自分が死んだあとのことは不安だね。

 

 最近のポケモン周りのサービスは本当に凄い。業界の人達の努力には感心するよ。

 僕は育て屋は利用したこと無いけどレンタルポケモンはバトルタワーなどの施設で何度か使ったことがある。全く不満がないというわけではないけど、普通にリーグでも通用してもおかしくない能力があるように思った。あのポケモンたちがバッジを持っていないトレーナーの言うことも聞くのだというのだから本当にすごい体験ができる時代だと思う。今からリーグトレーナーを志そうとする人がそれを体験するのはどうかと思うけど、趣味として楽しむならばこれ以上のことはないね。

 僕がこの間ガラルに遠征した時、入国できないポケモンたちは自然に戻ってもらったり、知り合いに預けたりなどしていた。これは僕の立場があってできることであるから、ポケモンの一時的な預かり所のようなものがあれば便利かもしれないね。

 これは多くの質問でもあったことだし、僕自身最近考えていることなんだけど、僕がこの世から居なくなってしまったときにポケモンたちを残してしまうかもしれないことがとても怖いんだよね。僕はポケモンのことに関する並大抵のことはなんとかできると思って生きているんだけど、僕が居なくなってしまったら流石に僕がなんとかすることはできない。

 一応今現在の手持ちに関してはその後のことを考えてはいる。野生に戻ることができるポケモン達はそうするようにしているし、アーマルドやユレイドルはかつてのグレンポケモン研究所の研究グループに協力するようにしている。

 僕の手持ちの中で一番若いガブリアスなんかは確実に僕より長生きするだろう。一応ワタルさんを含むドラゴンつかいの一族とは話をつけているんだけど、そもそも僕が寿命で死ぬ時ってワタルさんもいい歳だろうからその時情勢がどうなっているかなんて誰も保証できないよね。これだけはすごく不安だ。

 同じようなことを考えているトレーナーたちは一杯いるだろうし、事実として育て屋を介した強力なポケモンを皆が持つことができるようになっているから、この様な問題はそのうち頻発するんじゃないかと思う。

 だからもし自分の死後に手持ちのポケモンの幸せを保証してくれるようなサービスがあれば、利用したい人は多いかもね。

 

 

 

Q モモナリ選手、お久しぶりです。私は〇〇年の地方合同新人戦の二回戦でモモナリ選手と対戦したものです。対戦そのものは惨敗でありましたが、後のAリーガーであり、当時飛ぶ鳥を落とす勢いであったあなたのポケモンに一太刀浴びせることができたのは何にも代えがたい経験でした。私は新人戦後に家族の願いもあってリーグトレーナーを廃業し、父の跡をついで医学の道に進みました。家族も増え、この道を選んだことは間違いではなかったのではないかと感じています。しかし、今でもたまに、リーグトレーナーを廃業したことに対する小さな後悔があります。嬉しい事ばかりではなかったですし、恐らく大成できなかったのではないかと思いますが、それでもトレーナーと言う生き方は本当に楽しかった。もし、子供たち全員が独り立ちしたら、もう一度トレーナーとして生きてみようかなとも思います。しかし、私のこの様な生き方はあなたのそれに比べて中途半端なのではないかと思うのです。モモナリ選手が「リーグトレーナー以外に道がなかった」とエッセイやメディアで発言していることは承知で質問させていただきます。私と真逆の立場であるモモナリ選手が、もしリーグトレーナー以外でやりたかったことはあるのでしょうか? また、それに関連して、引退後にやろうと考えていることはありますか?(40代男性)

 

A やりたいことが無くなったら引退かな

 

 いつもはある程度メールを絞って質問文として乗せるんだけど、今回はあまり切るところがないというのが編集部の判断だったのでそのまま載せました。もちろん、本人に許可はとってあるらしいです。

 すごく懐かしい話題だね。残念ながらこの人の名前は覚えていなかったけど、バトルの内容はおぼろげながらに覚えている。確かエーフィがエースだったような気がする。記憶の中では、本人が言うほど弱くはなかったと思うんだけどね。

 そして、質問についてなんだけど、あなたはもっと自分の人生を誇っていいと思うんだよね。

 これは僕が度々言っていることなんだけど、僕は戦う道を進む人間よりも、戦うことを諦めてそれ以外の道を進む覚悟をした人間の意思こそが尊敬されるべきだと考えている。例えばあなたは医者になった、もちろん誰もが医者になれるわけじゃないだろう、だけど、戦いを諦めた人間の殆どは、僕なんかよりもよっぽど社会に貢献している。こんな平和な時代で、戦う才能と美味しい料理を作る才能と、どちらがより価値があるかなんて、考えるまでもないよ。

 子供が独り立ちしたらトレーナーに戻りたい、素晴らしいことだよ。もちろん私財を全て投げ売ってリーグトレーナーを目指すというのなら誰かが止めなければならないだろうけど、きっとあなたはそうではない。死ぬわけでもあるまいし、戦いを楽しむことはいつでもできる。それこそ、リーグトレーナーでなくとも。

 友達が戦うことをやめるのは僕にとってはすごく悲しい、だけど、戦わない自分に価値がないと思うことはもっと悲しい。もっと誇っていいことなんだ。

 僕は物心がついた直後くらいには、もう隣にコダックがいた。その後やりたいことをやりたいようにやって、気がついたらリーグトレーナーだった。戦うこと以外にやりたいことなんてなかった、一時期趣味を見つけようと躍起になったこともあったけどどれも駄目だった。化石掘りは好きだけど、身命を賭そうとは思わない。そして、気がついたら今でもリーグトレーナーだ。多分これからもリーグトレーナーだろう。

 引退後を楽しみにするようなこともない。今が十分すぎるほどに楽しいからね。恐らく引退後に何かをすると言うより、やりたいことが無くなったときに引退するんだろう。

 書いてて思ったけど、実はリーグトレーナーも僕が入った頃と今とで比べるとかなり質が変わってる。

 僕が入った頃のリーグトレーナーって、もう本当の意味で『戦う以外のことができない』人達が多かった。だから粗暴だと思われていたんだろうし、あまり廃業後にいい話を聞かない人達も多かった。

 今のリーグトレーナーって『戦う事もできる』人達の割合がかなり増えたんだよね。人間としての力が強い人がたまたまこの世界を選びましたみたいなさ。例えばクシノなんかはその典型、まあ『戦う』事ができてたかどうかと言われれば疑問だけど。とにかく、今のリーグトレーナーたちは廃業後もうまくやってる。

 本人はいい顔をしないだろうけど、割と無頼派に見えるクロサワさんだって、僕から言わせれば引退後も上手に生きてる。

『戦う以外のことができない人』はファンからなんとなくかっこよく見えるのかもしれないけど、僕は『戦うこともできる人』や『戦わなかった人』の方がかっこいいと思うんだけどなあ。




 以上で質問コーナー編は一区切りです。皆様本当に多くの感想、質問ありがとうございました。失礼ながら質問を絡めた感想には返信があまりできなかったのですがそれでも更新するたびに質問していただいて助かりました。
特にマシュマロで質問していただいたかたに関してはマシュマロの性質上返信することができませんたが全て目を通しました。ありがとうございます。
 あと一本おまけとしてモモナリの周りの誰かがモモナリについての質問に答えるのを短めでやろうと思っているのでもしモモナリについて聞きたいことがあったら質問募集中です。

感想、評価、批評、お気軽にどうぞ、質問等も出来る限り答えようと思っています。
誤字脱字メッセージいつもありがとうございます。
ぜひとも評価の方よろしくおねがいします。

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また、現在連載している『ノマルは二部だが愛がある』もよろしくおねがいします!

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