モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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14-キューピット界一強い人

 先日、僕は来月のラジオ出演についての打ち合わせで、ポケモン協会本部に呼ばれていた。どうもこの文字の仕事を始めてから、こういう露出のある仕事が増えた気がする。

 ラジオ出演については近々然るべきところから発表があると思う。リーグトレーナーとしては初めての試みらしいので楽しみにして欲しい。

 

 問題はここからである。

 打ち合わせも終了し、さて心許せる友人を誘って飲みに行こうと思った矢先。僕は後ろから呼び止められた。

「モモナリ、少し時間あるか?」

 声の主は前チャンピオン、ワタルさんである。

「はあ、まあ別にこれといって予定があるわけでもなく……」

 ワタルさんは強い男である、体が強く、精神も強く、ポケモンバトルも勿論強く、酒にめっぽう強い。更にワタルさんは負けず嫌いである、運動だろうとゲームだろうとポケモンバトルだろうと、兎に角負けたと思うのが嫌いである。したがってワタルさんと飲みに行くと大体どちらかが潰れるまで飲むことになる。

 僕はそこの所よく分かっているので、そういう時には友人を誘う、そうすれば少なくとも僕が酔い潰れる可能性は限りなく二分の一に近い三分の一になるからである。

 さて、と今日の生贄は誰にしようかと考えていると、ワタルさんは僕にリュックサックを差し出した。

「ほら、これ」

 はて、何かワタルさんにモノをもらうようなことをしただろうか? と思いながらリュックサックを開けてみると、そこにはクッションによって優しく保護されたポケモンのタマゴがあった。

 意味がわからず言葉を失っていると「出会いがあったらと言ってたろ?」とワタルさんが言う。

「はい?」

「出会いがあったらガブリアスを育てると言ってただろう? エッセイ見たぞ」

 そこでようやく僕は理解した。確かに僕はエッセイで「出会いがあればガブリアスを育てる」というニュアンスの発言をしていた。

 それより衝撃的な事は、ワタルさんがこのエッセイを読んでいるということである、編集部の皆さん『週刊ポケモン生活』殿堂入りトレーナーワタルも読んでます。お気に入りは『小さなポケモン大好き倶楽部』だそうです。

「そりゃ言いましたけど、余りのタマゴなんてさすがに嫌ですよ」

 余りのタマゴ、と言うのはつまり孵化育成スタッフの厳選から漏れたタマゴのことである、さすがにそんなタマゴを育てるほど僕はお人好しじゃないし、リーグトレーナーの手持ちになることを考えると生まれてくるポケモンにとっても良くない、子供の居ない夫婦とか、老夫婦とか、幼稚園とかに贈呈するべきである。

「失礼だなあ、余りなんかじゃないよ、それは俺が保証するさ、ちょっとしたきっかけで手に入ったものなんだ、ぜひ君にと思ってね」

 やんわりと断る理由が無くなった。こうなってくると相手が誰かが問題である。皆さん、前チャンピオンワタルのこの申し出、断れますか? 僕は断れません。

 何故本誌の表紙にポケモンのタマゴを抱えた僕が写っているのか、と言う件に関してはこれで説明を終わろうと思う。

 

 さて、僕が最後にポケモンの孵化をしたのはもう何年も前の話である。その頃は若くて無鉄砲だった、スイッチがあったらとりあえず押してた時代である。

 その頃に比べたら、僕も少々人間がおとなしくなったと自覚している、生活も随分と変わっているし、タマゴの孵化にはまたテンヤワンヤしそうだ。

 唯一ポジティブな傾向は、ゴルダック含む僕のパートナー達が、有りもしない母性本能を完全にくすぐられていることである。特にアーマルドのゾッコンぶりは凄まじく、爪で恐る恐るタマゴを突くその姿は初々しくてこっちがたまらない。

 需要があれば、これからも動きがある度に書いていこうと思う。




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