モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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※タイトル前にある数字は時系列の整理(書かれる場面が飛び飛びになる可能性がある)ともしもの時の保険(話の間にもう一つ話を挟みたくなった時のため)の意味があるので伏線とかそういうことではないです。
数字が若ければ若いほどモモナリが若いという感じの目安にお使いください


セキエイに続く日常 4-ミアレの休日

 ミアレシティ、グランドホテルシュールリッシュ最上階は最高級のプレジデンシャルスイートルーム。エレベーターホールにはタキシード姿のガードマンが存在し、来客者に目を光らせている。

 ガードマンは、動き始めたエレベーターがどうやら最上階に向かっているらしいということを階数表示と己の経験から読み取った。瞬間、感覚をピリつかせる。特別サイズのタキシードを特注しなければならないほどの巨体、腰には四つのハイパーボール、カロス地方のジムバッジを七つ所有しているからこそ気を抜かないのだ。

 チン、と鈴の音が短く響き、静かにエレベーターが開く。現れたのは白のワンピースドレスと顔を隠す帽子をかぶった少女だった。

 身長とそのスタイルから少女であることは分かったが、顔が隠れているのでその正体はわからない、ガードマンは足音高らかに少女に近づき、この階には利用者とその家族、利用者が招待した人物しか足を踏み入れることが出来ない旨を伝えた。

 少女はその屈強なガードマンに怯むことなく、ハンドバッグからあるカードを取り出して彼に提示した。それはスイートルーム利用者からの招待状だった、ホテルのエンブレムがプリントされている面には利用者であるジーンのサインと、彼女を丁重に扱うようにと言うことわりがあった。

 ガードマンは非礼を詫び、彼女から招待状を受け取ると一歩後ろに下がった。少女はガードマンに軽く会釈をすると、スイートルームへと向かう、その時、ガードマンはほんの少しだけ彼女の顔を確認することが出来た。

 彼は少女が廊下に消えるのを見届けると、何の気なしに招待状の裏面を確認してみた。そこには恐らくその少女のものであろうサインがしてあった。

 これはいいチップを貰った、と彼は思わず鼻を鳴らした。彼はシュールリッシュのガードマンと言う職務上、芸能界の動きには敏感だった。

 もう三ヶ月もすれば、彼女は気軽にサインなど出来ない立場になるだろう。

 

「入りたまえ」

 スイートルーム利用者ジーンはカロスのみならず世界的に成功を収めている映画俳優だ、長身でありスタイルも良い、彫りの深い顔とテノールボイス、理知的な紳士が良く似合う男である。最近では演出や監督業にも手を広げ、業界での影響力は強い。

 帽子を脱いだ少女は、スイートルームに驚くことも、興味を示すこともなく、ジーンが勧めるままにソファーに腰を下ろした。

 少女の名前はカルネ、未だ少女ではあるが昔から舞台女優として知る人ぞ知る存在であり、とある映画監督にその美貌と才能を見出され映画女優としてデビューした、今年には『休日』というラブロマンス映画に主演女優として抜擢され、その公開を待つばかりである。

「なんでもある、ジュースでもミネラルウォーターでも」

 ジーンは『休日』に主演男優として出演した、当初はジーンの方が扱いが大きく、映画のテロップでは作品タイトル所にジーンの名前が表示され、カルネの名前はより小さなフォントだったが、撮影中に彼女の持つ魅力に気づいていたジーンは監督に彼女の魅力と将来性を語り、もっと扱いを大きくするように提言した。

「貴方には本当に迷惑をお掛けしています」

「気にすることはない。友人として君の意見は尊重したいからね」

 ジーンは細い金属の筒から葉巻を取り出し、カットをして火をつけた。一本一本の保存にわざわざ金属の筒を使わなければならないほどの品だった。

 その煙を一つしっかりと堪能してから「だが」と続ける。

「同じ映画人としては、良い選択とはいえないと思うね。何度でも言うが女優としての君の今後は保証されている、映画会社は君のためにおおよそ考えられる全てを一流で揃えるだろう、一流の監督に一流のスタジオ、一流の脚本家に一流の配役だ。そして君自身も女優として素晴らしい才能を持っている、この私でさえ、君を眩しいと思う時がある。君はカロスの永遠の恋人として人々の心に残り続けるだろう」

 カルネはその言葉に少しだけ俯いて照れを表した。ジーンは彼女のそのような純粋な部分も愛おしいと感じていた。しかし、だからこそ惜しい。

「どうしてバトルに拘る必要がある? 君が優れたトレーナーであることは十分に理解しているつもりだが、今後の女優生活と釣り合いが持てるものではない」

 『休日』はまだ公開されていない作品であるが、業界人からの評価は高く、事前試写会でも評論家から非常に高い評価を受けていた。その評判を受けてカロス地方で最も大きい映画会社が、カルネとの長期契約を望んだのである。

 しかし、カルネにはポケモントレーナーとしての顔もあった。彼女は若くしてカロス地方のジムバッジ七つ所持しており、残りの一つを手に入れるのも時間の問題だと言われていたのである。

 当然のことではあるが、映画会社はカルネがポケモンバトルをそのまま継続することに難色を示していた、もし万が一顔に傷がつくことになれば損失は免れないからである。映画会社はカルネがバトルから離れることを望んだ。

 しかし、カルネはその提案を拒んだのである、カルネの頑固さにはトレーナーを含めて皆が困惑していた。

 ジーンはカルネの才能がこのまま失われてしまうのは惜しいと考え、映画会社と交渉を続けていた。ジーンは業界に顔の広い男だったが、それでも状況は厳しかった、しかしそれも当然と誰もが思ってしまうほど、女優業とポケモントレーナーの両立はありえないものだったのである。

 カルネは手渡されたミネラルウォーターを一口飲んで深呼吸をした。彼は自分のことを友人と言ってくれるが、自分とジーンのこの業界における立場の違いは十分に理解している。その上で自分のために力となってくれているジーンには言葉では表し入れないほど感謝しているが、ここばかりは譲れないと考えていた。

「カロスのトレーナーにとってポケモンとの絆はもっとも重要なものです。そしてバトルはポケモンとの絆をより強固なものにします。ポケモンとの絆を深めるためにバトルをすることはカロス地方の根底に存在する概念です」

 その言葉は非常に大きな力を持っていた、ジーンは深くため息を付いた。やはりこの少女を説得するのは無理なようだと思った。

 ジーンは会社との話し合いの中で、ある条件付きならカルネのバトル継続を認めるという話をまとめていた。しかしそれはバトルに無知な自分でも狭き門だとわかっていた。だが、こうなっては仕方がない。

「会社は、ある条件付きで君のバトル継続を認めてもいいと言っている」

 瞬間カルネは表情を明るくさせた。しかし、すぐに顔をこわばらせる。ジーンがその話をすぐにしなかった意図、その条件が非常に厳しいものであることを感じ取った。

「海の向こう、カントー地方にあるトレーナーが居る。私はよくわからないが、カントー地方というのは強豪が集まる土地なのだろう?」

 カルネは首を縦に振って肯定した。言葉の違う土地にもレッドとシゲルの快進撃は伝説となって届いていた。

「そのトレーナーはモモナリという名前だ。とんでもないスピードでジムバッジを八つ集め、更に四地方合同の新人トーナメントをとんでもない強さで勝ち抜いた男だ。餓えた獣のような男だと聞いている、何よりも戦うことを優先し、自らの行く道に障害があれば、むしろ喜んで噛み付くような男だと。君が芸術の本場であるこの地で今後の成功を約束されているように、彼はバトルの本場で今後の成功を約束されている」

 ジーンは、非常に言いづらそうに続けた。

「会社は、君がモモナリに勝つことができれば君の今後について一切口出ししないと言っている。厳しいようだが筋は通っている、君が自分の身を自分で守ることができるほどの強さがあると証明すればいい」

 この時点で、ジーンは一つ思い違いをしていた。

 彼はこの条件がカルネにとって厳しいものだと思っていた。彼はバトルについて詳しいわけではないが、映画会社の人間から聞いたモモナリというトレーナーの経歴を聞く限り、若くしてトッププロに匹敵する才能を持っているトレーナーだということが分かる。多少バトルを囓っているような少女が敵うような相手ではないと悲観的だった。

 しかし、カルネはこの時ジーンとは真逆のことを考えていたのである。

「わかりました」

 彼女ははっきりとした発音でそう答えた。

 ジーンはあまりのあっけなさに言葉を失った。少しばかりの沈黙の間、彼は自分が呆けていることを悟らえないように葉巻を燻らせ、唇を舐める事が精一杯だった。

 

 

 

 

 カルネとモモナリの『エキシビション』はミアレシティでの『休日』公開イベントの一つとして行われることになった。

 もちろん名目上はただのエキシビションであり、その勝敗にカルネのトレーナーとしての活動がかかっていることはごく少数の人間しか知らない。対戦相手のモモナリ陣営ですら知らされていなかったのである。尤も、そのことをモモナリ陣営に伝えてしまえば、カントーポケモン協会が黙っていないだろう。

 エキシビション前日、シュールリッシュにて関係者と出資者が集まる前夜祭が開かれた。

 主演女優としてカルネは多くのスポンサーや映画関係者と言葉をかわした。業界の先人として強気に言葉をぶつけてくる人物もいれば、まだ新人映画女優でしかないカルネに必要以上にへりくだる人物もいる、しかし、彼等に共通していることは、なんとしてでもカルネに自分の存在を強く印象付けようとしていることだった。

 カルネは明日自分と対戦するモモナリと言うトレーナーを探していた。イベントの一つとはいえ関係者であることは間違いない、必ずこの場にいるだろうと思ったのだが、どうもそれらしき姿が見えないのである。

 モモナリが見つからずやや持て余しているカルネに、ジーンが手招きをした。ジーンの側にはカロス地方では見かけない系統の顔をした若い男がいた。カルネはなるほどと思った。

「カントーポケモン協会のオークボ氏だ、こちらの言葉に堪能でいらっしゃる」

 オークボと紹介された若い男は、カルネに小さくぎこちない微笑みを見せると、これまた小さい動きで握手を求めた。正装の着こなしや礼儀作法は身につけているものの、このような舞台には全く慣れておらず緊張していることが手に取るように分かる。

 大してカルネは、落ち着き払った微笑みを見せた。

「正直な所、このように華やかなイベントに参加するのは初めての経験でして、まさかジーン氏や将来の大女優にお会いすることになるとは」

 ほんの少しだけ訛りがあるように感じたが、十分に聞き取れる。カルネがそのことを褒めると「親の仕事の関係で五年ほどこっちに住んでいたことがありますので」と照れくさそうに言った。

「将来の大トレーナーの姿が見えないようだが、料理に夢中なのかな?」

 ジーンは気の利く男である。対してオークボは気まずそうに「モモナリは」と頬をかいた。

「あいつはホテルについてすぐに消えてしまいました、恐らくこの付近のトレーナーと手合わせしに行ったのでしょう」

「なるほど、こういう堅苦しい集まりは性に合わないということですか、私はトレーナーというものがよくわかりませんが、そう言う星の下に生まれているのでしょうね。勇猛果敢で、直線的な」

 ジーンはちらりとカルネに目線を向けた。その視線は業界人としてカルネに向けられたものであった。まさか君も同類じゃないだろう、と言う言葉が聞こえてくるようだった。

「いやあ、モモナリはトレーナーの中でもかなりの変わり者でして、彼をカントートレーナーの基準とされると、少し厳しいですねえ」

 ジーンの言葉からきちんと皮肉を読み取ったオークボは、笑みを崩さないままそう弁明した。今ここにいる人間のいくらかよりよっぽど頭の切れる男だなとカルネは感じた。

「明日のエキシビションは私も楽しみにしているんだ、明日の観客たちは私を含めて本格的な試合を見るのは初めての経験だろうから、プロの技術を思う存分見せてほしいね。ささやかではあるが、勝った方には私が個人的に賞金を贈呈しようと思っているんだ。将来の大トレーナーにもそう伝えておいてくれ」

 ジーンはカルネとオークボを交互に見やった。オークボは神妙な顔つきでそれを眺め、カルネは負けるものかとドレスの裾を握った。

 

 ちょうどその頃、ミアレシティでは一騒動起こっていた。

 周辺を縄張りとしているトレーナー達が、ポケモンセンターを求めてミアレシティ内に溢れかえっていたのである。

 巨大都市であるミアレシティでは当時二箇所でポケモンセンターが運営されていた、しかし手持ちのポケモンの回復を求めるトレーナーの数はそれらの許容量を遥かに越え、不安とストレスから気性が荒くなるトレーナーも数多く居た。

 結局この騒動はミアレジムリーダーが同施設を一時的に一般に開放することでなんとか事態を落ち着かせたが、この騒動はミアレシティ内に三つ目のポケモンセンター設立の決定打となったのである。

 言葉の通じぬ、しかしそれでいて勝負に貪欲なことは誰の目にも明らかのその少年トレーナーが巻き起こしたとされるこの騒動は、知る人ぞ知るある種の都市伝説となる。

 

 

 自らの対面に立っているモモナリと呼ばれた少年の、そのあまりにも自然体な姿に、カルネは少しばかり動揺していた。

 自らを奮い立たせているようにも見えない、かと言って必要以上に落ち着き払って居るようにも見えない、明らかに調子に乗っているようにも見えなければ、怖気づいているようにも見えない。

 周りを見渡せば、社交界にも顔が利くであろう数多くの観客が自らに注目しているだろう、もしかすれば、彼のような少年ですらその存在を知っているほどの有名人も居る。そしてこの地は彼の国とは何もかもが違い、様々なものに目移りしてしまいそうなのに、彼はそんな様子は微塵にも見せなかった。

 この男は馬鹿なんだ、とカルネは思った。そうとしか考えられなかった。自分以外のことにはまるで興味がなく、視野の狭い自己愛の強い男、彼女は経験上そんな人間を数多く知っていた。

 カルネはドレスのフリルをぐっと握りしめた。もちろんそれは彼女の思う戦いに向いた服装ではなかった。エキシビションがより盛り上がるからと用意された、映画と同じ衣装、求められているのは映画のお姫様だった。

 目の前に居る馬鹿な男に勝つ自信はある、しかし、だからこそ、今自分の置かれている現状が、あまりにも滑稽で、トレーナーとしての自分を馬鹿にしているようなものに思えた。

 ふと、モモナリと目が合った。カルネはフリルを握りしめたままで、彼に笑みを返さなかった、愛想笑いの一つすらも。

 彼も、彼女に笑みを見せなかった。

 彼女たちはほぼ同時にボールを放り投げ、一番手のポケモンを繰り出した。目が合った時がトレーナー同士の勝負の始まり、たとえ文化的、生態的に繋がりが薄くともそれは変わりない。この広いエキシビションの会場でただ一人、対戦相手のモモナリだけが自分をトレーナーとして認めてくれているような気がして、カルネはほんの少しだけホッとした。

 カルネの一番手はルチャブル、対してモモナリの一番手はゴルダック。

「フライングプレス」

 ルチャブルは格闘ポケモン特有の力強さを持ち合わせているが、同時に飛行タイプの素早さと三次元的なポテンシャルも秘めている、カントー地方にはそのようなポケモンがあまりいないことをカルネは知っていた。速攻で奇襲をかけ、モモナリを揺さぶる。

 上空から体全身を浴びせてくるルチャブルの攻撃を、ゴルダックはすんでのところまで引きつけ、かわした。ルチャブルの攻撃を『みきり』で見切っていたのだ。

 しかし、カルネはこんなことで主導権を手放さない。

「アンコール!」

 アンコールは一種の催眠術であり、相手のポケモンの行動をある程度まで続けさせることが出来る。

 ゴルダックに『みきり』を続けさせる狙いだ。

 しかし、モモナリは彼女がアンコールの指示を伝えきる前にゴルダックをボールに戻した。

 確かにアンコールという技には交代を強制させる効果もあるが、それはあくまでも相手がアンコールによって行動を縛られた時であって、ルチャブルがアンコールを仕掛ける前に交代されると一転して不利になってしまう。

 モモナリはカルネの指示を聞いてから交代をしたわけではない、ルチャブルの『アンコール』を予測し、先読みで交代したのだろう。

 強い、とカルネは気を引き締めた。戦略的な発想力と観察眼もそうだが、何より行動の一つ一つに淀みが無く、その全てが自信に満ち溢れているように見える。先程まではとても信じられなかったが、今ならカントー地方でずば抜けた才能の持ち主だというのも納得できる。

 モモナリが次に繰り出したポケモンは、図鑑でしか見たことがないポケモンだった。巨大な虫タイプにも見えるが、その全身が岩に覆われている、古代のポケモンであるアーマルドだ。

 恐らくこのポケモンは固く、力強い。さらにルチャブルの苦手な岩タイプの攻撃も選択肢として持っているだろう。

 さあどうしたものか、とカルネは考えを巡らせる。

 しかし、ここまでの攻防を完璧に理解できているのは恐らくこの場に五人いるかいないかだろう、観客の多くは、目の前で行われている強大な生物の対決に歓声を送るばかりだった。

 

 

 

 

「見事だった。と言うより他無いね」

 シュールリッシュ最上階のスイートルーム、ジーンは目の前に座る少女から目を離せないでいた。

 カルネとポケモン達は、モモナリとその手持ちのポケモンを見事全滅させ、勝利してみせたのだ。つまりそれは、映画会社が彼女の今後のトレーナーとしての活動を認めざるを得なくなったということでもある。

 しかし、ジーンは彼女が達成した事よりも、あの強大なポケモン達がカルネの指示に忠実に従っていることのほうが驚きだった。バトルをすることがポケモンとの絆を深めることに繋がる、と彼女が言っていたことは覚えているが、そんな倫理的価値観をジーンが理解できるはずがない、彼はあのポケモン達の上に立つカルネの生物としての強さと風格に驚いていた。そしてそれはけしてジーンだけの話ではなく、あの時あの場でカルネのバトルを見た殆どの人間がそう思っただろう。

 今、ジーンがカルネから目を離せないでいるのは彼女の美しさだけの問題ではない、目の前の少女は只者ではないと彼の本能的な部分が理性に働きかけているからだ。

「私はバトルに詳しいわけではないが、君も、あのモモナリと言う少年もとても優れたトレーナーであるということは理解できたつもりだよ。会社も十分に理解しただろうし、今後の君の活動に口を挟むような人物も現れないだろうね。まさに君はその強さを持ってして、自由を勝ち取ったわけだ」

 ジーンは手放しでカルネを賞賛したが、彼女はそれに少し微笑を返しただけで、それ以上に喜びを表すことはない。

 彼女の落ち込みようは、とても自由を勝ち取ったあとのようには見えない。

 ジーンはなぜ彼女が落ち込んでいるのか、心当たりがあった。

「彼には悪いことをしたとは思うが、君がそこまで責任を感じる必要はないだろう」

 カルネが勝利した時、会場全体は大いに湧いた、観客の殆どが彼女に注目し、拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

 しかし、それは無責任に試合を楽しめる観客だけの話であって、カルネ本人は全く違うものに目を奪われていた。

 彼女が勝利した瞬間、対戦相手のモモナリはまるで糸が切れたようにその場に崩れ落ち、付き添いのオークボの肩を借りなければその場から退場できないほどに憔悴していたのだ。

 彼女はそれまでその瞬間まで、自らの今後の事に必死で、お互いの置かれている状況がどのようなものなのかをよく理解していなかった。

 だが、試合とトレーナー生命の危機の緊張から開放され、憔悴しているモモナリを見て、彼にとってこの敗北がどれだけ重く、辛いことなのかようやく理解したのである。

「酷なことを言うようになるかもしれないが、彼が君より強ければ問題のなかった話、一人の栄光の裏側に幾多もの敗者の影があることは私達の世界でも変わらない」

 それは違う、と彼女は叫びたかった。事実、彼女はこれまでバトルに勝利してこのような気持ちを覚えたことなど無かった。バトルはお互いを高め合う行為だと、これまでは本気で思っていた。

 しかし、それを主張することなど出来るわけがない。今日この日、一人の才能あるトレーナーの人生を大きく歪めてしまったかもしれないのは彼女自身なのだから。

「私が踏み込もうとしているのは、そういう側面もある世界かもしれないということを頭では理解していました。だけど」

 彼女はぐっとこみ上げるものを、両の手を握りしめてこらえた。ここでそれを溢れさせてしまうことは、あまりにも非礼なことだと思っていた。

「なんという事を、してしまったのかと」

 声を震わせて、それだけ絞り出した。

 ジーンは大きくため息を付いた。なぜあれだけの生物としての強さを持っていて、このような部分は少女のままなのだろう。

「なるべく早く忘れる事だ、そうとしか言いようが無い。鋭い痛みも、数多く経験すればいずれは慣れる。きっと私にも君のような経験をした時があっただろう、しかしもう殆ど覚えていない。そんなことに気を取られていては、自分の歩くべき道が見えなくなってしまうよ。間違っても変な気を起こさないことだ、相手は格落ちした手負いの獣、何をするかわからない」

 

 

 

 

 深夜というわけではないが、皆がその日を楽しみきり、明日への準備を考え始める、そんな時間帯。

 シュールリッシュ五階、スタンダードフロア、ジーンやカルネの部屋に比べれば幾分か質素ではあるが、それでも歴史ある最高級ホテルの名に恥じない雰囲気がある。

 垢抜けぬ少女のふりをしたカルネは、ある一室の前でその歩みを止めた。

 自分に良くしてくれるある映画監督に頼み込み、彼のつてで彼女はオークボとモモナリの泊まっている部屋を知った。

 その部屋の前で彼女は一つ深呼吸した。今から自分がやろうとしていることが、必ずしも善意として受け入れられるわけではない事は十分に理解していたし、場合によっては何を言われても、何をされても自分に非がある事も覚悟はしていた。しかし、彼女は今それをしなければ自分がこれ以上に前に進むことができなくなるような気もしていた、それはバトルにおいても、今後の女優としての活動も。

 怯え、恐怖、不安に震える手で彼女はその扉にノックした。中から異国語でそれに応える声がした。

 扉を開けたのは、オークボだった。彼は少し警戒したように、ほんの少しだけ扉を開いた。無理もない、今この国で彼等を尋ねるものなんておおよそ考えられないからだ。

 カルネは帽子を少しだけ持ち上げて、オークボに目配せした。彼は一瞬だけ純粋な驚きの表情を浮かべ、次に疑いと不安と期待と憎しみと悲しみを噛み殺したであろう笑顔を作った。

「一体どうしたんです?」

 世間話をするつもりはなかった。今ここでオークボに合わせてしまうと、うまく自分が言いくるめられて、有耶無耶にされそうだった。

「彼を、少しだけ借りたいの」

 その言葉にオークボはさして驚きはしなかった、きっと予測の範囲内だったのだろう。当然である、カントーポケモン協会職員として、それはなるべく避けたい事だっただろうから。

「それは出来ません、貴方に悪意があるわけではないことは十分に承知しているつもりです。しかしそれとこれは話は違う」

 そんなことを言ってもカルネは引かないだろう、オークボだってそのくらいのことは分かる。だからこう続けるしか無かった。

「貴女は今、自分がなにをしようとしているのか分かっているのですか? 貴女とモモナリは十年来の幼なじみなわけでは無いし、苦楽を共にした親友でもない。モモナリは今日、貴女に負けたんだ。これ以上モモナリに負担になるようなことは出来る限り避けたい」

 その時、部屋の奥から異国語が聞こえ、モモナリが現れた。彼はオークボと話している少女がカルネだと気づくと、オークボと同じように一瞬驚きの表情を見せたが、オークボのように笑顔を作るわけではなく、目に見えてうなだれて、彼女から目をそらした。

「プリズムタワーを一緒に見ましょう」

 カルネはモモナリに向けて言った。

「夜のプリズムタワーは、とても美しいです」

 その言葉が、モモナリに伝わるはずなど無かった。きっとモモナリは彼女が何を言っているのかなんてわからないだろうから。

 しかし、モモナリはその言葉に顔を上げ、彼女の方を見た。

「行きましょう」

 カルネはモモナリに向けて右手を差し出した、舞台の上では見せない、本物の笑顔で。

 モモナリはオークボに何かを聞いた、オークボは半ば諦めたように二、三言つぶやくと、扉を大きく開いた。

 

 

 

 

 良いところがある、とカルネはモモナリの手を引き、行きつけのガレットの屋台に向かった。

 最近になって新しく出来たその屋台は、味はいいのに宣伝ベタなのかあまり繁盛しているところを見たことがない。休日だからという理由で日付の変わるギリギリまで営業しているのもそういう理由なのだろう。

 その店の店主は芸能に疎いのかそれとも分かっててやっているのかわからないが、彼女を決して特別扱いせず、歳相応の甘いもの好きの少女として扱ってくれるからカルネは好きだった。

「トッピングは全部のせるのがいいのよ」と彼女は二人分の料金を支払って、モモナリにそのガレットを手渡した。モモナリはそれを不思議そうに眺めていた。

「プリズムタワーを見ながら食べましょう」

 見たことのないスイーツに戸惑うモモナリの手を引いて、カルネはプリズムタワーに向かった。

 

 夜のプリズムタワーは美しいとカルネは言った。そしてそれはそのとおり間違いない。

 もちろん昼間に見ても歴史ある立派な建築物であることに間違いはないが、夜になるとまた違った意味合いを見せる。

 ミアレジムを兼ねているプリズムタワーは、代々電気タイプのエキスパートが管理しており、夜になれば周りを照らすように光り輝くのである。観光客にはあまり知られていない、眠らない街ミアレの象徴である。

 カルネは夜になってそのタワーを眺めるのが好きだった。大きく、美しく、そして周りを照らすプリズムタワーを見ていると、嫌なことや辛いこともも大したことじゃないように感じるからだ。

二人でベンチに座り、トッピング全部のせをぺろりと平らげた彼女は、ぐるりと回りを見回した。まるで昼のように明るかった。

「今日のことは、お互いに忘れましょう」

 まだもぞもぞとガレットに手こずっているモモナリに彼女はそう言った。もちろん、その言葉の意味が彼に届かないことはわかっているが、そのほうが、自身にとって都合がいいのではないかと思った。傲慢や嘲りに取ることも出来る言葉だったから。

「貴方と私は、戦うべきではなかった。お互いに、背負っているものがありすぎたのよ」

 その、傲慢のような謝罪を続けるたびに、カルネの胸の内が傷んだ。トレーナーを続けるというやむを得ない事情があったとはいえ、モモナリとの対戦を決めたのは自分自身なのだから。それも、エキシビションだとうそぶいて。

 今、プリズムタワーの明かりに救いを求めているのは自分自身だと思った。これは罰なのだろうとも思った、傲慢で、ワガママな自分への罰なのだ。

 その時、幾つも考えてきた言い訳、モモナリに向けているように見えて、その実自分をなだめるために考えてきた幾つもの言い訳が頭の中から吹き飛び「ごめんなさい」とたった一つ、こぼれだした。

ごめんなさい、ごめんなさいと、カルネは続けた。そう言い続けなければ、見られたくない姿を晒してしまうのかもしれなかった。

 ふと気づくと、ガレットを食べ終えたモモナリが、じっと、こちらを見つめていることに気づいた。

 それは見覚えのある構図だった、舞台や、映画で演じた、いわゆる男女のいい雰囲気というやつ。

 もちろんカルネ自身にそんなつもりは何一つ無かった、しかし、よく考えて見れば、そう思われても仕方のないシチュエーションだった。彼女はそれでもいいと思った、映画や舞台と同じだと。ロマンスを演じることでこの男が救われるのであれば、演技という犠牲を払ってもいいと思ったのだ。

 プリズムタワーが映し出すカルネとモモナリの影が、離れた。そう、離れた。モモナリはベンチから立ち上がると、ジリジリとカルネから距離をとったのだ。

 カルネはモモナリの行動が理解できなかった、一体彼は何がしたのだろうと考えたが、彼の右手が腰のモンスターボールを掴んでいる事がわかると、とたんにカッと体が熱くなる。

 今の今まですっかりと忘れていた、この男は、この目の前にいる男は、とんでもない馬鹿だということをようやく思い出したのである。

 そうわかると、彼の将来の心配をしていた自分が馬鹿らしくもなり、不安から開放された安堵もあり、それともこれはこの男が自分を落ち込ませまいとあえて演じてくれているのかという小さいが新たな不安などが生まれた。

 しかし、まずは戦おうと思った。戦いを挑まれて、断るつもりは無い。もう一度、この男と戦えるのかと言う高揚感も、彼女の体を熱くしていた。

 だが、このエキシビションリベンジマッチに「いたぞ!」の声と共に思わぬ邪魔が入った。

 声の主は、一人のエリートトレーナーだった。しかし、彼の後ろには数多くのトレーナーが集まり、口々に攻撃的な罵倒をモモナリにぶつけていた。尤も、モモナリはその意味までは理解できないだろうが、自分が何か言われているくらいのことは分かるだろう。

「女引っ掛ける暇があるなら俺達とちょっと付き合いな」

 エリートトレーナーはボールからホルードを繰り出した。カルネは何が起こっているのか意味がわからないが、何となくモモナリがここら一帯のトレーナーから何らかの敵意を向けられていることは分かった。

 モモナリはその理由に心あたりがあるらしく、バツが悪そうな顔をしてカルネを見た。おもちゃを取り上げられた子供のような表情だった。

 仕方ない、と割りきったのか、モモナリはエリートトレーナーの方に向き直ると、優しく下手投げでモンスターボールを投げた。現れたのはカルネにも見覚えのある地面タイプのポケモン、カバルドンだった。

「あのポケモンは」

 と、カルネが考えを巡らせるより先に、モモナリが彼女に目配せした。申し訳無さそうに笑うその男の意図を、カルネは読み取った。

 カバルドンが咆哮とともに背中から砂煙を巻き上げる、小さくとも力強い渦となったそれは、周りの土煙をも巻き込み、大きく、砂嵐へと成長し始める。

 その場にいたトレーナーたちがそれに注目した、そして次の瞬間、鈍い音と共にエリートトレーナーのホルードが悲鳴を上げた。

 あえて不自然な戦況を作り出し、一瞬の判断力の勝負に持ち込むつもりだ。慌ててベンチから立ち上がった彼女は彼との戦いを思い出した、途中までは優位に試合を進めていたが、その戦法を取られてからは五分五分、否、少しばかり自分が押されていたかもしれないから強く記憶に残っていた。

 彼がこの土地のトレーナーたちとどのように戦うのか、とても興味はあったのだが、彼女は足早にその場を去った。

「バレてないうちに早く逃げなよ。そりゃあ、君と戦えないのは惜しいけどさ」と言う、彼の意思を尊重して。

 

 

 

 

 彼女の服に砂埃が飛び散っているのを見て、オークボは頭を抱え「あの馬鹿野郎」とあえてカルネに分かるように言った。

 カルネは慌てて自分がモモナリに襲われたわけではないと、先ほど起こったことを説明したが、それでもやはり彼の返答は「あの馬鹿野郎」だった。

「同情の余地なし、自業自得、恨まれるべくして恨まれている。全て自分の撒いた種」

 オークボはだいたいそのような意味の恨み言をしばらく続けた後、ポカンとその場に立ち尽くすカルネをようやく思い出して、「男二人だったもので散らかっていますけど」と彼女を部屋に招き入れた。

 散らかっている、とは言ったものの、目につくのはベッドのシーツが豪勢にめくれ上がっているくらいで他にはこれといって何もない、二人共お土産などを買ったりはしないのだろうか、と、どうでもよいことがカルネの脳裏をよぎった。

「こんなものしか無いのですが、どちらにします?」

 オークボはホテル備え付けの冷蔵庫の中からミネラルウォーターともう一つ黒色のジュースを彼女に差し出した。ジュースのほうはカロスの銘柄ではない、カルネは反射的にジュースの方を指差した。

「貴方達にはどれだけ謝っても足りないと思っています。あのエキシビションはフェアなものではなかった」

「いや実はね、あのエキシビションがただのお祭りじゃないってことは薄々気づいてはいたんですよ」

 ブラスにジュースを注ぎながらそう言ったオークボに、カルネはビクリと身を震わせた。

「上流階級の人達と言うのは、例えば私のようなよそ者相手に綱渡りして楽しむというか、愛想笑いを浮かべるよそ者を見るのが好きというか、そういうところがあるんですよ。私が形式張った言葉しか理解できないと思ってスラングや語呂合わせみたいな思わせぶりなことばかり言ってくる。でも私は少年時代に体で覚えたタチですから、そういうものも全て理解できるので」

 ニッ、とオークボは笑う。

「初めは賭け事に使われているのかなと思ったのですが、どうもそんな雰囲気でもありませんし。もしよろしければ、教えていただけませんか?」

 カルネは観念した、彼女はオークボにあのエキシビションに自らの今後のトレーナー活動が賭けられていたことを全て話した。途中喉を潤すために飲んだジュースの少し気が抜けた炭酸の刺激は優しかった。

「ははあなるほど、それなら良かったじゃないですか。貴女の才能を失うのは惜しいですし」

「彼とカントーポケモン協会には悪いことを」

 その言葉に、オークボは「はっはっは」と笑いを飛ばした。

「いやいや、貴女が気を病む必要なんて何一つ無い。チャンピオンや四天王ならともかく、新人王とは言えモモナリはまだまだヒヨッコ、他地方の強豪アマに負けたところでウチの権威に傷がつくことはありません」

「そう言ってもらえると気が楽ではありますが、彼のショックを考えると」

「いやいや、その点も心配無用。あれはただ負けただけで潰れるようなタマじゃありません、私達もそれがわかっているから彼を選んだのですし」

 確かにそのとおりだとカルネは思った、あの時、プリズムタワーで見せたあの姿、とても戦うことにナーバスになっているようには見えなかった。

 しかし、それならば。

「確かに戦う事自体に恐怖を覚えているようではなかったですし、私に怯えている風でもなかった。私には彼がよくわかりません、あんなにショックを受けていたのに」

 少し、オークボの顔つきが真面目なものになった。

「ショックをと言うと少し違う、ショックというよりは引け目でしょうね」

「引け目、と言うと?」

「モモナリはあの試合の後、貴女に引け目を感じていたんですよ。申し訳ない気持ちと言ったほうが良いでしょうね。むしろ謝罪したいのはあいつの方だったんですよ」

 カルネの混乱を見越したようにオークボは続ける。

「あいつは貴女を少し舐めていた、バッジを七つ所有していて八つ目の取得も間近だということは伝えていましたから、例えばそこら辺のゴロツキの様に思っていたわけではないでしょうがね。しかし、まさかここまでとは思っていなかったのでしょう。貴女の見た目や経歴がそう思わせたのかもしれません」

 あの男は変わっているんですよ。と更に続ける。

「もっといい試合が出来た、と言っていましたよ。何度も何度もね」

「いい試合?」

「そう、あの男にとって勝った負けたは大した問題じゃないんですよ。誰かが勝てば誰かが負ける、私には到底信じられないことだが、あの若さでそれを理解し、納得している。あの男にとって真に価値のあるものは試合そのものなんです」

 つまりね、と背を丸める。

「その試合を、あの男は自分自身の手で汚してしまったのです。無様に敗北するにしても、より誇りある敗北に出来た。そして誇り高くあるべきだった貴女の勝利をも汚してしまった。それをね、悔いていたんですよ、まあ、あいつは変人ですから」

 納得出来ないわけではなかった、彼女自身、そう思わなかった日がなかったわけではない。しかし、それはあまりにも理想論過ぎた。

「私はてっきり」

 カルネはその次に言葉を続けるのを少しためらった。そしてその言葉が傲慢に聞こえないか、恥ずべきことを言っていないか十分に吟味してから続ける。

「彼がその、敗北によって自尊心を傷つけられたのかと。一人のトレーナーの人生を狂わせてしまったのかと、そればかりが不安で」

 その言葉は、およそトレーナーらしくはなかった。トレーナーとはもっと、エゴに満ち溢れた存在である。それをオークボも感じたのだろう、彼はじっと彼女の目を見据えて諭した。

「トレーナーの人生なんて何がきっかけで狂うなんかわかりませんよ、私はつまらない敗北で落ちぶれたトレーナーも知っていますし、逆につまらない敗北で奮起したトレーナーも知っています、そんなことを気にしていたらキリがない」

 カルネはジーンの言葉を思い出した。

 しかし、とオークボは笑う。

「本物の才能は、折れません。あの男は必ずトップトレーナーの一人となって、再び貴女の前に現れるでしょう。今日できなかったリベンジマッチを果たしにね」

 本物の才能は折れない、オークボの言葉にカルネはハッとした。

「もし貴女が彼を想っているのならば、プリズムタワーのようにその日まで光輝き続けていて欲しい。今日の日の敗北を忘れないためにも」

 さて、今日はもう遅い、部屋までお送りしますよ。とオークボは立ち上がった。

 カルネはこみ上げるものを見せまいと、俯きがちにそれを制し、彼等の部屋を後にした。今日あのエキシビションを見て、彼女にちょっかいを出そうなどという命知らずはいないだろう。

 これからも強くあろうと彼女は心に誓った、プリズムタワーのように光輝き続けようと思った。才能ある人間がその道を諦めぬよう、羨望でも嫉妬でも良い、象徴であり続けようと思ったのだ。

 後のカロスリーグチャンピオンカルネに、チャンピオンたる資質が備わった瞬間だった。




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