モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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『週刊ポケモン生活 アローラ特集号』 4-ポケモンリーグというカゴ

 アローラ地方で出会ったあるリーグトレーナーが、僕なりに要約するとこんなことを言っていた。

「アローラ地方もポケモンリーグという巨大な組織の元に降った事で、もう避暑地としてのアローラは消えた」

 勿論この避暑地という表現は、暑さから逃れるためという単純な意味ではないだろう。アローラはむしろアツい。

 彼にとってアローラ地方とは、ポケモンリーグという枠組み、世界を外から眺めることができる場所だったのだろう。いや、彼はリーグトレーナーだから現実的には世界のどこにいようとポケモンリーグという枠組みからは逃れられないわけではあるが、心持ちの問題だ。僕は基本的にポケモンリーグと自我について深く真面目に考えたことはないので、彼の心情を感覚的に理解することはできなかったが、理屈としてはわからないこともない。

 彼は、ポケモンリーグというものに苦しんでいるように見えた。もっとも、ポケモンリーグというものに苦しんでいるのは彼だけではなく、もしかすればリーグトレーナーの殆どは、勝負の世界に苦しんでいるのかもしれない。勝ち続けると言うことは、非常に大変なことだ。勝つことの裏に負けることがあることは皆わかっているはずなのに、その真理に甘えるとポケモンリーグでは生き残れない。もっともそれは、あくまでポケモンバトルの勝負と言う一面であり。闘争という一面から見れば、その考えは非常に甘いのだろう。その世界では、負けることそれすなわち死だ。リーグトレーナーは、戦う度に必ずどちらかが死んでいるという考え方もある。

 彼にとって、避暑地として慣れ親しんだアローラ地方にポケモンリーグが出来たことは、受け入れがたいことだったのだろう。

 また、アローラ現地のあるトレーナーは、リーグトレーナーとしての僕に、ニュアンスとしてはこのような質問をしてきた。

「ポケモンリーグによって、アローラ地方はどう変わるのか? 誰が救われるのか、もしくは、本当に誰かが救われるのか? それは本当に、アローラにとって良いことなのか?」

 この質問の根本にある問題は、先週僕が絶賛した島巡りというシステムにあると言う。

 その問題すべてをここに書き出すことは出来ないが、簡単に言ってしまえば、島巡りというシステムは、成功したものとしなかった者の差というものが非常に大きく出てしまうようだ。島巡りを断念したトレーナーが、半人前として立場を追われ、その結果非行集団となる例もあるらしい。

 また、島巡りを達成しても、アローラ地方を支配するカプ神に認められなければ立場につくことは出来ない。

 変化自体は、間違いなく起こると断言することができる。現在、アローラポケモンリーグの参加条件は島巡りを達成していることだが、他のリーグと同じようにアローラ地方にもジムを置くべきなのではないかという議論があるらしい。

 僕個人としては、それはとても寂しいことだし、アローラ地方のトレーナー達の強さを削ぐ結果になるかもしれない。だが、一概にそれが悪いとも言えない。

 野生への対抗を重視している現在の試練のシステムでは、才能が無い、向いていない、ただそれだけの理由で、命が失われてしまう可能性すらある。それを本人の責任としてしまうのはあまりにも酷だという意見も筋は通っていると思う。

 また、成功者と非成功者の落差についてだが、これは根本的な解決にはならないような気がするのだ。ポケモンリーグだって、極端な考え方をしてしまえば成功者はチャンピオンたった一人、Aリーガーに絞っても十人だ。それを神が決めるか、人間同士が生まれ持ったものを競い合って決めるかのどちらかとなれば、大して変わらないのかもしれない。

 非常に無責任になってしまうかもしれないが、ポケモンリーグがアローラ地方にとってどのような影響を与え、それがどのように転がり、結果アローラ地方をどうしてしまうかは、僕にはわからない。

 ただ一つだけ確かなことは、アローラ地方には素晴らしいトレーナー達がいる事だ。彼らがポケモンリーグとどのように付き合っていくのか、僕はそれに期待しているし、必要とあればいつでも力を貸そうと思う。




以上でアローラ編を終了します。
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