魔法少女リリカルなのはStrikers~風と桜の記憶~   作:strike

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少しはペースを戻せて来てるかなと……
このままのペースを維持できるように頑張りたいところですねw

それでは、第10話スタートです!!


第10話 新たな関係

翔馬の唐突な一言によって、高町家には重い沈黙が流れていた。

なのはは表情を固めて翔馬を、翔馬は真剣な瞳でなのはを、それぞれ見つめ合っていた。

それからどれだけの時間が過ぎただろう、長いようで短かったこの沈黙を破ったのは少し顔を俯かせたなのはだった。

 

「別れるって、……いえ、そうですよね。記憶を無くした彼女なんていやに決まって」

「あ、いや!! すまない、言葉が足りなかった」

 

先程まで砕けた口調だったのが一瞬で元に戻ってしまったなのはの言葉に翔馬は真剣だった表情を崩して慌ててそれを否定する。

そんな翔馬になのはは俯いていた顔を上げて少し怪訝そうな表情を向ける。

 

「えっと、どういうこと……ですか?」

「あくまで提案ってことを前提にしてくれ。……俺だって本当はこんな事を言いたくはない、……俺は、本当になのはの事……どんな時でも真剣に好きだって言えるから」

「……っ!!」

 

翔馬は言っている途中で照れ臭くなったのか、少し顔を赤くして視線を逸らしながらそう言うと、なのはも同じように翔馬の言葉に少し戸惑いながらも頬を少し赤く染めて視線を逸らした。

良い雰囲気になっていたが、このままの雰囲気では話が進まないと思った翔馬は少し浮ついていた気持ちを抑えて再度口を開く。

 

「……だが、実際のところなのはは俺との記憶を失って戸惑う事が多くあると思う、なんせ初対面の男と2日目で付き合うなんて普通じゃありえないだろう?」

「それは……そうかもしれません」

 

翔馬の言葉に少し戸惑いながらもそう答えると、翔馬はそれに頷いた。

 

「そして現状ではなのはの記憶を戻す術を俺達は知らない、だとすればもし記憶が戻らなかった場合、なのはは本気で好きでない男である俺と交際を続けることになる」

 

なのはは翔馬の言葉を聞くと少し俯いてしまう。

しかしその直後、さっきの言葉に疑問を感じたのか顔を上げて口を開こうとするが言いづらい事なのか言葉にするのを躊躇いながら視線を逸らしてしまった。

そんな様子のなのはに翔馬は疑問を感じるがなのはが何か言いたげだという事は分かったためなのはが言葉にするのを待ち続け、やっと決心がついたのかなのはは小さい声量で恥ずかしそうに言葉を発した。

 

「……でも、私が記憶を取り戻す場合もありますよね? その場合は、多分私も藤田さんを、……その、好きになる筈だから」

 

と、やっとのことで恥ずかしそうに発した言葉は何故か翔馬を落ち込ませていた。

 

「本人の口から『多分』って言葉を聞くだけで結構不安になるんだな……」

「あ、す、すみません!!」

 

翔馬の落胆する姿になのはは慌てて謝ると、翔馬は直ぐに冗談だと言って笑って見せた。

そんな翔馬になのはは不満げな表情で睨みを利かせると、翔馬は苦笑いで逆になのはに謝り落ち着いた所で逸れてしまった話題を元に戻した。

 

「……話を戻すが、さっき俺が言った事となのはの言った事は実際に起きうる可能性がある。なのはの記憶が戻る可能性と戻らない可能性、その2つがある以上、今の状態で付き合い続けるのはお互い精神的に負担がかかると思う」

 

少し話しをしている内に雰囲気がいつものような感じになっていたが、翔馬の言葉によってそれは崩されてしまった。

そして、なのはは翔馬の言葉を聞くと少し寂しそうな表情で翔馬を見つめ、その瞳はとても儚げに揺れていた。

 

「藤田さんは……記憶を無くした私に一緒に記憶を取り戻そうとは、言ってくれないんですね」

「……」

 

なのはのその言葉に翔馬は何かを口にしようとするがそれを飲み込んで黙り込むと血が滲むほどに拳を強く握りしめて、それをゆっくりと解いた。

そして、翔馬は椅子から立ち上がってリビングの窓まで足を進めるとなのはに背を向け、そこから見える夕日に視線を固定しながら口を開いた。

 

「すまない、俺は結構な臆病者でな……なのはが記憶を取り戻せなかった時、俺の事を好きになれなかった時、……俺でない誰かを好きになった時、そんな事ばかりを考えてる。もしそうなった時、傍にいるのが俺では……なのはが幸せになれないだろ? 過去の恋人に縋った所為でお前が不幸になる可能性があると言うのなら……」

 

翔馬はそこで言葉を区切り、いつの間にか激しく脈打っていた鼓動を押さえつけると背後にいるなのはに振り返って言葉を紡いだ。

 

「その時は、俺はお前の元を離れ、新しい場所で幸せに笑っているなのはを見届けるよ、それが俺にとっての幸せでもあると思うから」

 

そう言った翔馬は綺麗な赤い夕陽を背に受け清々しい位の優しい笑みを浮かべていた。

その姿はまるで翔馬の精一杯の優しさでなのはを包み込み、明確な別れを告げるかのようであった。

そして、なのはは悟った。

彼からどれだけの優しさをこの身に受けてきたのか、どれだけの悲しみを彼に背負わせてしまってきたのか、そして、どれだけの愛情を彼に注いで貰っていたのかを。

だけど、その事が頭でわかっていても感情が付いて来なかった。

嬉しいとは思う、でもそれが彼の事を好きだという気持ちにはどうしても繋がらない。

そして、好きという単語を意識するたびに浮かぶのはもう1人の男性。

翔馬の言う通りきっと、今のまま付き合っていたらお互いに負担が大きくなるだけだという事も理解できる。

だから、なのはは翔馬の優しさを受け止めることにした。

 

「……わかりました。貴方の……ううん、藤田君の言うとおりにする。……でも、きっと私、藤田君を好きになるから、記憶が無くてもまた、好きになるから……だから、待ってて」

 

そう言ったなのはの姿に翔馬は少し驚いた表情を見せてから、優しく微笑んだ。

 

「悪いが俺は待たないぞ? この別れはただの保険だ。俺がなのはを好きな気持ちは何時までも変わらない、……俺がなのはをもう一度好きにさせてみせる」

「っ!! ……うん!!」

 

そう頷いたなのはの瞳からは一筋の涙が零れた。

その涙が翔馬の優しさに対する嬉しさからなのか、それとも翔馬との別れによる悲しさからなのかは誰一人として知る者はいなかった。

 

 

 

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そして、日が暮れて辺りが暗くなってきた頃、翔馬はそろそろ明日の出勤に備えて帰ろうとしていた。

 

「今日は長居して済まなかったな、ある程度の話はできたと思うが……もし何かまだわからない事があれば連絡をくれ。まぁ、機会があるならはやて達に聞いても構わないけどな」

「うん、了解、今日はありがとう、お休みの日なのに……」

 

なのはの言葉に首を振って、手を伸ばそうとする翔馬。

しかし、その手は空中で止まり苦笑いしてその手を引っ込めた。

 

「ん?」

「いや、何でもない、……気にするな俺はお前の友人だ。頼られて迷惑なんて思わないさ」

 

そう言って翔馬は微笑むと玄関に向かって歩き出そうとした。

その時、玄関の方からパタンと言う音が聞こえて2人はリビングのドアに目をやる。

するとそこからはひょこっとヴィヴィオが少し汚れた体でリビングに入って来た。

 

「ただいま~」

「お帰りなさい、今日はずいぶんと遅かったんだね?」

 

ヴィヴィオはなのはの言葉にまぁね~と返しながら、翔馬の方へと駆け寄って行った。

 

「パパ、今日はもう帰っちゃうの?」

「ああ、明日からまた仕事だからな」

 

ヴィヴィオの言葉に翔馬はそう答えながらヴィヴィオの髪についた汚れを払うように頭を撫でてやる。

すると、ヴィヴィオは気持ちよさそうに目を細めて翔馬の成すがままにされていた。

そんな状態で2人が和んでいると、その様子を見ていたなのはが翔馬の背後から声を掛ける。

 

「ヴィヴィオ、先にお風呂入っちゃって、ご飯の用意しておくから」

「は~い!!」

 

ヴィヴィオは元気に返事をすると、翔馬の手を名残惜しそうに離してパタパタと脱衣所の方に向かって行った。

そんなヴィヴィオの姿を見た2人は少しだけ安心したような笑みを浮かべて微笑み合った。

 

「それじゃ、俺は」

 

と、翔馬が今度こそと足を踏み出そうとした時、なのはのインテリジェントデバイス『レイジング・ハート』が通信を伝えるためになのはの正面に回った。

 

「あれ? はやてちゃん?」

「……何かあったのか?」

 

なのはがモニターを開くとそこにははやての姿が映されており、翔馬は何かあったのかとなのはの後ろに回ってモニターを覗き込んだ。

すると、早速はやてが回線を繋いで声を発する。

 

「急にゴメンな、少しなのはちゃんに聞きたいことと伝えたい事があってな、翔馬君もおるみたいやしちょうどええわ。時間ある?」

「うん、私は大丈夫だけど……」

「まぁ、俺も特に急ぐことは無いから大丈夫だが?」

 

翔馬となのはの2人が頷くと、はやては少し笑顔を浮かべて2人を見つめながら質問を投げかける。

 

「ほんならまずは、診断の結果はどうやったん? 精密検査、まだ連絡貰ってなかったから気になってもうてな」

「あ、ごめんね、はやてちゃん。少し藤田君との話が長くなっちゃって……取り敢えず報告しておくと、体の方は全く問題なし、記憶の方はやっぱり完全に藤田君の記憶が消えてたよ」

 

なのははすっかりはやてとの約束を忘れていたのか苦笑いで謝ると今日の診断結果を伝え、はやてはやっぱりと言った感じで頷いていた。

そして、一通りの説明が終わると今度ははやてが翔馬に視線を向ける。

 

「そっか、翔馬君、なのはちゃんへの情報伝達は?」

「ちゃんとこっちでしておいた、ある程度の事は伝えてあるから問題は無い筈だが……もし何か欠落していればフォローは頼む。 と、今日連絡を入れようとしていたんだけどな」

 

はやてはなのはの症状と状態についてある程度把握すると、取り敢えずは良かったと呟いて笑顔を向けた。

それから、なのはの現状について話がいったん終わるとはやては少し表情を引き締めて2人に視線を向ける。

 

「ちょっと話しが変わるんやけど、実は今日連絡したのは、なのはちゃんの様子確認の意味もあったんやけど……少し厄介な事になってな、その報告の意味もあったんや」

「……まさかとは思うが、悪夢の笛(ララバイ)の事か?」

 

はやての少し言いづらそうにしていた雰囲気を汲み取って翔馬がそう尋ねると、はやては少し驚いた表情で翔馬を見つめてからそれを苦笑いに変えた。

 

「察しのいい人は話が早くて助かるわ、……そう、あの笛なんやけど、第3種捜索指定ロストロギア悪夢の笛は、本日をもって第1種捜索指定ロストロギアに認定されたんや」

「「っ!?」」

 

はやての言葉に翔馬達2人は顔を強張らせ、はやては2人の様子を確認していたが予想通りの反応だったのか表情を更に引き締めて話を続ける。

 

「今日、私とフェイトちゃんの用事ってのがそれ。 会議の内容を細かく説明してたら時間もかかるから簡単にまとめるとこうや、先日起きた事件により管理局のお偉いさんが巻き込まれてもうた。 でもその人は何の異常も無く次の日に出勤してたんやけど……そのさらに次の日、その人物と共にある管理局の極秘ファイルと保管されていたロストロギアが無くなってしまったんや」

 

はやての言葉に2人は息を飲んだ。

自分達が関わってしまった事件がまさかここまで大きくなっているとは思わなかったのだろう。

2人とも同じように動揺を隠せないのか、驚いた表情で固まっていた。

それから少し落ち着いたのか、翔馬が先に口を動かした。

 

「……あの事件、そこまで話がでかくなってるのか?」

「そうみたいや、本来ならあの事件程度で捜索指定ランクが上がるのは稀なんやけど、今回は巻き込まれた人物のおかげなのか事の重大さに気付いたんやろな」

 

なのはの言葉に翔馬はなるほどと頷いた時、今まで何かを考えていたなのはが少し焦ったようにはやてに視線を向けた。

 

「そう言えば……無くなったファイルとロストロギアって何だったの?」

 

なのはの質問にはやては少し言いづらそうにしていたが、元々話す覚悟はしていたのだろう。

一呼吸置いて表情を引き締めるとその無くなってしまった物の詳細を告げた。

 

「……第97管理外世界、地球で起きた事件をまとめたファイル、そして、ジュエルシードや」

 

はやての言葉になのはは完全に声を無くし、翔馬は疑問を感じてはやてに声を掛けた。

 

「……地球ってことは俺達が生まれ育った地だよな? あそこには俺達みたいな突然変異が無い限り魔力がほぼ存在しないはず……それに、管理局も余程の事が無い限り介入しない世界、そんな場所に行って何の意味があるって言うんだ?」

 

翔馬の言葉にはやては少し悩んでから首を横に振った。

 

「私も普通に考えたらさっぱりや、まぁ、少しこれかもっていう可能性も無くは無いんやけど……あまりに突拍子も無さ過ぎて話にならんし」

 

はやての言葉に翔馬はそれ以上深く突っ込まずにそうかと呟くと、何もしゃべることが無くなったなのはを心配そうな目で見て翔馬はさらに質問を重ねる。

 

「……それのうち1つでも行方は分かってるのか?」

 

はやては翔馬の言葉に悔しそうな表情を浮かべながら口を開く。

 

「現在捜索中や、まだ場所は特定できてへん……ただ、持って行っているのはあのジュエルシードや多分近日中に場所の特定はできるだろうってのがお偉いさん方の見解になっとる」

「そうか……早く見つかればいいんだが」

 

はやての言葉に翔馬は少し表情をしかめてそう言うと、先程から何も話さないなのはの様子を伺った。

そこには、表情を硬くして俯くなのはの姿があった。

 

「ジュエル……シード」

「……なのは、大丈夫か?」

 

翔馬はロストロギアの名をうわ言のように呟いていたなのはにゆっくり声を掛けた。

すると、なのはは翔馬の声で我に返ったのか少し苦笑いを浮かべながら翔馬に向き直る。

 

「あ、ごめんねっ、私は大丈夫だから……でも、どうしてそれを私達に? そういうのは機動課の役割じゃなかったけ?」

「……確かに、そうんな情報を俺達に流してもいいのか?」

 

先程のなのはの様子が気になったが、翔馬は元に戻ったように見えるなのはに続いてはやてに視線を向けた。

すると、はやてはなのはと翔馬の言葉に真剣な表情で2人を見つめ返す。

 

「確かにこの情報は重要機密になっとる、でも2人は例外や、何故ならこれから私の設立する部隊に招待するんやから」

「はやてちゃんの設立する部隊って……」

「まさか……」

 

はやての言葉に翔馬となのはは心当たりがあるのかハッとした表情ではやてを見つめる。

そしてその視線を受けたはやては不敵な笑みを浮かべて、2人を自分の設立する部隊に招待した。

 

「……そのまさかや。もう1度、機動六課を再編します!! 2人とも力を貸してくれへんか?」

 

はやての言葉に翔馬となのはの2人は戸惑いの表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

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