魔法少女リリカルなのはStrikers~風と桜の記憶~   作:strike

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さてさて、今回は続かせることが出来ました。

黒幕を逃がしてしまった翔馬達。
舞台は移動して地球へ!?
ただ今回は、少しシリアス多すぎたのでブレイクタイム。

楽しんで貰えたらうれしいです!!

それでは第16話スタートです!!


第16話 記憶のかけら

 

 ここは聖王協会の一室。

 そこでは、難しい表情をした7人の姿があった。

 

「……翔馬君とシエルちゃんの予想は大当たりだったわけやけど、まさか裏で手を引いてる人間が居るとは」

「今までの事件も組織だったものがなかっただけに、気付くのは厳しかったよね」

 

 はやての言葉に悔しそうな表情でそう答えたのはフェイトだった。

 

「でも、考える余地はあったんだ。それを度外視して突っ込んでしまったのは……」

「それを言った所で始まらないだろう。今はこの状況をどうするかだ」

「そうだね。一刻も早くゼルリヒトを捕まえないと」

 

 翔馬の後悔の言葉にクロノがそれを止め、なのはもそれに賛同するように続いた。

今、ここでは過去の事件についてまとめ終わり今後の方針を決めるため、視線をカリム・グラシア、そして、リンディ・ハラオウンへ向けた。

 

「現状についてはこれで全員が同じ認識を持てたかと思います。今のこの状態は危ういものです。彼の者がいったい何を思って地球へと赴いたのかはわかりません。しかし、何か大きな事件が起きる。そんな予感がします」

「それを止めるために、こちらから地球へ派遣員を出したいのだけれど……皆が知っての通り管理局に残った人達は復旧作業で人手が足りないくらいなの。だから、機動六課には地球へ行ってゼルリヒト・フューレンの目的の調査をお願いします」

 

 カリムと、リンディの言葉に全員が真剣な表情で頷く。

 しかし、翔馬は何かに気が付いたかのように表情を険しくすると発言を求めるように視線を動かすと、カリム達から発言許可を得て言葉を発する。

 

「1つ疑問が。 その依頼を受けるのは全く構いませんが……俺達の任務を大きく違えることになりませんか?あくまで機動六課はロストロギアの探索確保が仕事。既にロストロギアを失った相手を追うには大義名分が足りないと思うのですが」

「……今のこの状況で口出ししてくる部署も中々無いと思うんやけど、後から突かれるのも気分のいいもんではないなぁ」

 

 翔馬たちの言葉に、少し沈んだ様子のカリム達は躊躇いがちにそれに対する答えを提示した。

 

「実は翔馬さん達が持ち帰ってくれた、ロストロギアですが……アレはレプリカだったようです」

「「「「なっ!?」」」」

「驚くのも無理はないけど、本当のことよ。解析班に調べさせたら全くロストロギアの反応がなかったわ」

 

 壊れたと思っていたロストロギアが偽者だと言うことを聞いた翔馬達は驚きで表情を固める。

 

「そ、それでは、本物は……」

「ゼルリヒト、か」

「それしか考えられないね」

 

 クロノの呟きにフェイト、なのはは即座に心当たりを思い出してその名を口にした。そしてその言葉に頷きで返したのはカリム。

 

「本物の悪夢の笛を持つものはゼルリヒト・フューレン。ゆえに」

「機動六課に任務を与えます!!」

 

 その言葉にはやて、フェイト、なのは、翔馬の4人が席から立ち上がり3人の前に真剣な表情で並ぶ。

 

「地球へ赴き、第一種捜索指定ロストロギア、悪夢の笛の奪還をここに命じます!!」

「「「「了解!!」」」」

 

 翔馬達は最敬礼で答えるとカリム達に頷いてその場を後にした。

 それから機動六課の本部に帰った4人は地球へ出発するための準備を着々と進め、数日後には地球へと飛び立つのだった。

 

 

 

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「いや~、こっちに来るのは久々やなぁ~」

「そうだね、1年振りくらいになるのかな?」

「はい!! ママのママとパパに会うのは久しぶりです!!」

「アリサとすずかともモニター越しには何度か会ってるけど、実際に会うのは久しぶりだもんね」

 

 隊長達3人とヴィヴィオは先を歩きながらウキウキとした態度を隠し切れずにそんな会話を繰り広げていた。

数時間の時空渡航を行って辿り着いたのは機動六課の目的地である第93管理外異世界地球である。ゲートを潜って目的地に辿り着いた機動六課一同は今後の拠点となる場所へと歩みを進めいた。

 

「なのはさん達の3人は地球出身なんだよね?」

「フェイトさんは少し特殊だけどね。なのはさんとはやて部隊長は地球産まれの地球育ち、フェイトさんは9歳の頃からここで過ごしていたらしいわ」

「こんな平和そうな場所で生まれ育ったなのはさん達が今では管理局のエースだもんな」

 

 スバルとティアナ、ノーヴェはそういいながら苦笑いを浮かべ、エリオとキャロは視線をせわしなく動かしながら初めて見る風景に見惚れていた。

 

「それにしても、地球の雰囲気は独特ですね」

「うん、何というかのどかって言うか……」

 

 そして、そんな会話を続けているフォワード陣の更に後ろには翔馬達の姿があった。

 

「翔馬さんも地球出身なんですよね?」

「ああ、そうは言っても俺は物心付いたときにはミッドチルダに居たからな。全く記憶はないんだが」

「そうだったんですか。でも、こんなに早くこちらに来ることになるとは思いませんでしたね~」

「それには同感だ。まさかなのは達がこんな伝手を持ってるとは思ってもみなかったからな」

 

 翔馬は苦笑いを浮かべながら先頭を歩くなのは達4人に視線を向ける。

 あの聖王協会での会議の後、緊急会議を開いた機動六課は地球にいるであろうゼルリヒトを追うために準備を進めることになったのだが、翔馬は1人、渡航手続きなどの問題をどうしようかと考え込んでいたのだが、なのはとはやて、フェイトから既に準備が出来ていると言われ、聞いてみれば地球に知り合いがいて地球で仕事を行うための協力者となっているらしい。

しかも、転送用ポートを設置するだけの敷地と、活動拠点となるコテージすら用意してあるとの事で、地球での価値がどれほどのものかはわからないが、十分にお坊ちゃま、もしくがお嬢様クラスの人間とどうしたら繋がりを持てるのかと唖然としたものだ。

 そんなこんなで、あっという間に地球へと辿り着いてしまった翔馬はもう驚きで固まることもなくもうこんなものなのだと自分を納得させることで考えることを諦めたのだった。 街を抜けて、裏手の森の中に入り、かつてなのはの生まれ育った街を見下ろしながら暫く歩いていると、陽気な声が奥から響く。

 

「なのは~!! フェイト~!! はやて~!!」

「皆、久しぶりだね!!」

「アリサちゃん、すずかちゃん!!」

「2人とも元気だった?」

「ほんまに久しぶりやね」

 

 金髪で活発な印象を受ける女性、アリサと紫髪のおっとりとした雰囲気の女性、すずかがなのは達をコテージの前で出迎えると、なのは達5人は久々の再会を喜び合うかのように笑顔を見せる。

 そんな隊長達を見て呆然としているのはフォワード陣の面々だった。

 

「……なのはさんってあんなに可愛かったけ?」

「頼れるお姉さんってイメージだったけど」

「で、でも、まだ十代だし、大人っぽい雰囲気ですけど、お友達と会えば……なのはさんも女性ですし」

「フェイトさんもはやて部隊長も、凄く嬉しそう」

 

 機動六課設立時代からの付き合いであるフォワード陣もなのは達の様子に呆気に取られているようで、それは翔馬達も同じだった。

 

「私たちはまだしも翔馬さんが呆然とするのは納得いきませんね?」

「なのはの友達と話なんてしたことなかったからな……そもそも、してたなら、なのはの伝手にも心当たりぐらいあるに決まってるだろ」

「それはそうかもしれないですね……」

 

 そんなこんなで旧友を深めている所に割り込むのもどうかと翔馬は少しだけ考え込むが、隣のシエルに腕を突かれたため、これからの話し合いを行うため、長旅で疲れている体を癒す意味でも早く自己紹介は済ませておくべきと翔馬は彼女達の輪に進み出た。

 

「久しぶりの再開を邪魔する形になり申し訳ありません。時空管理局機動六課、ウィング隊隊長の」

「藤田三等空佐殿。時空管理局武装隊のエースストライカー、ですよね?」

 

 翔馬の言葉を遮って、最後にパチッとウインクを決めたのはアリサだった。翔馬はそのことに驚きながらアリサを見つめるとクスクスと笑って、種明かしをした。

 

「私はアリサ・バニングス、大学生よ。私があなたのことを知っているのはなのは達の友達だから、協力者として情報は少なからず入ってくるの。その中でも優秀な魔導師さんの情報が入ってこないなんてありえないわ。すずかだって知ってるくらいだし」

「私だって……って酷いよ、アリサちゃん!? はぁ、すみません、騒がしくて。自己紹介が遅れました。私は月村すずか。なのはちゃんたちの幼馴染で、今は大学生兼、時空管理局のお仕事でいらっしゃる方々の協力者として、微力ながらお手伝いさせてもらっています。これから暫くの間、よろしくお願いしますね」

 

 まさに、太陽と月という表現が一番しっくり来る2人組みに翔馬は少し驚きながらも口元に笑みを浮かべた。この子達がなのはの幼馴染と言うのなら、本当に友達に恵まれて育ったのだなとそれが少しだけ嬉しくて、翔馬は自然と頬が緩んでいた。

 そんな翔馬の腕を取って雰囲気をぶち壊しに来たのは、他でもないシエルだった。

 

「初めまして、アリサさん、すずかさん。私はシエル・アウローラ二等空尉です。今は翔馬さんの元で副隊長をしておりまして、更にお付きのお世話役も任せられて……っていったい!!」

「初対面の人に大嘘付くんじゃねぇ」

 

 翔馬は訳の分からないことを言い始めたシエルにジト目を向けながら容赦ない拳骨を脳天に落すと、シエルは涙目になって蹲りながら、頭がぁ~、頭が悪くなる~と、のた打ち回っている。翔馬はそんなシエルを鬱陶しそうに首を摘んで放り投げておくと、アリサはドン引き、すずかでさえも無理矢理作った表情は苦笑い以外のなのものでもなかった。

 取りあえず、そんなことはありながらもぞれぞれに紹介が終わって、コテージの中に入ると、その中の構造に呆気にとられてしまう。普通に玄関から入ってみたところは完全にコテージなのだが、地下へ降りる階段が設置されており、そこを抜ければ機動六課の制御室に勝るとも劣らない、設備が整っていた。もう何があっても驚かないと決めた翔馬でも流石に唖然としてしまうのは仕方のないことだろう。

 

「こんな設備よく用意できたな……」

「まぁ、管理局の人達が手伝ってくれたしね。あ、それとこの海鳴市の様子はここでモニターできるように家の警備会社のカメラとリンクしてあるから、ある程度の異変はここで気付けるはずよ?」

「アリサさんっていったい何者なのでしょう……」

 

 翔馬の突っ込みで更に出て来た機能にシエルまでもが苦笑い。なのは達は元々知っていたようで、翔馬たちの様子を笑って眺めているだけだった。

 

「それじゃ、今日は長旅で疲れたことでしょうし、温泉にでも行きませんか? 動き始めるのは明日からなんですよね?」

「せやな。今日はゆっくりして、明日から気合入れて頑張ろか」

「そうだね」

 

すずかの言葉に頷いたのははやて達の4人だけ。

フォワード陣と翔馬達は温泉って何?と言う表情でなのは達を見つめるが、行ってみればわかるよと、現地組2人と4人に背中を押されて夕暮れの山道を少し降りると、貫禄のある門構えに出迎えられて、その門を潜ってからやっと、ここがどんな場所なのかが理解できたようだった。

 

「温泉って、お風呂のことだったんですね」

「そや。けどな?そんじょそこらのお風呂と比べたらあかんで」

「ここは天然温泉だからお肌に凄くいいんだよ?しかも、今日は機動六課の皆のために貸切!!」

 

 そのすずかの言葉にフォワード陣の女性とシエルは食い付いて詳細を求めるようにすずかに詰めより、翔馬とエリオは苦笑いでその光景を見つめていた。

 そして、そろそろ分かれて風呂に入ろうと、男湯と女湯に分かれる所で問題が発生。

 

「エリオ君?一緒に入らないの?」

「うぇっ!? キャ、キャロ? いや、僕は男だから男湯に……」

「でも、フェイトさんと一緒に暮らしてるときは、一緒に入ったよ?」

「いや、それは……」

 

 キャロの攻撃に必死に対抗するエリオだが、目をウルウルさせて見上げるキャロに強く出られないと感じたエリオは、助けを求めるために視線を

 

「エリオ、もう私と一緒にお風呂入るの嫌なんだ……」

「私はええけど? エリオ可愛いしなぁ~」

「私も大丈夫よ?」

 

 向ける場所が間違っていたようだ。フェイトは泣き崩れ、はやてとアリサは面白そうに外堀を埋めていく。頼るべきはやはり男同士である翔馬に

 

「パパ、一緒に入らないの?」

「俺が入るのは流石に無理だって……なのはと一緒に入って来い」

「え~久しぶりにお風呂、一緒に入ろう?ママも一緒だよ?」

「ふ、藤田君が女風呂に!?」

「そ、それは……恥ずかしいですけど私なら」

「入らないって言ってるだろうが!!」

 

 翔馬も翔馬で大変なことになっているようだ。

 そして問答が続いて結局、どうなったのかというと……。

 

「エリオ、すまん。助けられなかった」

「ん~、お風呂大きいね~」

「そ、そうだね……」

 

 端によって背中を浴槽に預けて、隣でもみくちゃにされているであろうエリオに謝りつつ現実逃避を行う翔馬と、パシャパシャと元気にお風呂で泳ぐヴィヴィオ。そして、そこから更に離れた場所でタオルを巻きながら翔馬に背を向けるなのはがいた。

 結局、はやて達の策略により、エリオは女風呂へ連れて行かれ、なのは達はヴィヴィオの願いを叶えるべくこんな状況になってしまったのだ。

 翔馬は視線を少しずらして、なのはに引っ付くヴィヴィオの姿を見ながら、過去の思い出を思い起こしていた。JS事件に対応していたとき、ヴィヴィオを保護してから少し経ったある日にユーノの慌てた様子に先走ってしまった斗真がなのはの部屋に飛び込んでしまい、お風呂上りだったのか濡れたままのヴィヴィオの我がままで、3人でお風呂に入りなおすという事件。恋人同士でもないのにそんなことになってしまったときは、お互いにギクシャクしたものだが、今のこれはそれ以上だ。なんせ、なのはの記憶には翔馬との思い出が一切ないのだから。恋人同士ではなくとも、昔馴染みだとか、いくつもの戦場を駆け巡った仲であるとか、何かしらの繋がりがあれば良いが、今のなのはにとっては出会って1月も経っていない、赤の他人の男だ。翔馬との関係や過去を情報として知っていてもそれに頭や体が付いて来るとは思えない。その証拠に、遠目から見てもなのはの体は小刻みに震えている。その姿を見てしまった翔馬は温泉に浸かる時間もそこそこに立ち上がった。

 

「悪い、折角ゆったりとできる時間なのにな……俺は先に」

「藤田、君?」

「パパ!! ま、待って」

 

 翔馬の言葉に肩を揺らしたなのはが振り返ると同時に、風呂から上がって出口へと足を進める翔馬にヴィヴィオが勢い良く立ち上がって斗真に向かって走り出す。

 しかし、足場の悪いこんな場所でそんなことをしてしまえば結果は火を見るよりも明らかで、ヴィヴィオの足は水に濡れた床に取られてしまい背中から転びそうになってしまう。翔馬はいつか見た光景に似ているな、なんてことを思いながら、瞬時に移動するとヴィヴィオの背中を支えてやった。

 

「風呂で走るなって言わなかったか?」

「あぅ……ごめんなさい」

「あ……」

 

 翔馬の言葉に、ヴィヴィオはシュンと項垂れると同時にヴィヴィオ以外の声が聞こえ、翔馬は視線をそちらに向けると、ヴィヴィオの行動に慌てて飛び出していたのかタオルを握り締めて翔馬達の直ぐ傍で立ち尽くす、なのはの姿があった。

そして、その場で見た光景は何故かなのはの頭の中で反芻され、そしてそれはいつの間にか見たことがないはずの映像となって現れる。

機動六課の大きな浴場。シャワーの音だけが響いて湯気であまり遠くは見えないが、誰かが大きな背中を向けながら座っているのが見える。その人の腕を無理矢理に引っ張っているのはヴィヴィオだ。なのははそんなことをしては危ないと立ち上がってその場に向かおうとした瞬間、数歩下がって頭から落ちそうな娘に全力で駆け寄った。しかし、それよりも早く辿り着いたのは腕を引っ張られていた人の方で、勢いが余ってしまったのかヴィヴィオを助けに向かったなのはを巻き込みながら倒れ込んでしまう。そして、その人はなのはの事を庇ってくれたのか床に倒れた人の無事を確かめたとき、鼓動が早くなるのを感じた。その感情は……一体何だったのだろう。

 なのはが固まっているのも知らず、翔馬はヴィヴィオをちゃんと立たせてから、改めてなのはに視線を移した。すると、その様子がどうにもおかしいことに気付いた翔馬はなのはの肩を揺する。

 

「なのは、なのは!! おい、どうした!!」

「はっ……、え、えっと、ごめんなさい、少し、ボーっとしてた、みたい……」

「大丈夫なのか?」

「うん、もう大丈夫。なんか、さっきの出来事が前にも見たことあるような、気がして」

 

 翔馬はなのはを気遣うような目を驚きに見開いた。なのはは記憶を完全に消された訳ではない。ただ単純に思い出すことが困難になっているだけなのだと気付くことができたからだ。そうであればできる事はある。なのはとの色んな思い出を思い出せるように翔馬が頑張ればいいのだから。そう思った翔馬は少し安心したように表情を緩めるが、目の前にいるなのはは少し不安げに瞳を揺らしながら、翔馬を見つめていた。翔馬はあえて何も言わずに、ただ、ヴィヴィオを風呂へ入れなおすと、なのはもそれに倣って肩まで身を沈めた。

 

「藤田、君。もしかして、なんだけど……」

「ああ。2年前、たった一度だけヴィヴィオを保護した後に3人でな」

「それじゃ……やっぱり、あの光景は……」

 

 翔馬の言葉を聞いて、なのはは噛み締めるようにそう呟く、そこに含まれていた感情は嬉しさなのか、安心なのか、それはわからなかったが、確かに欠片を1つ手に入れられたような気分で少しだけ胸が温かくなるのを感じた。

 そして天然温泉を満喫した機動六課の面々がコテージに宛がわれた自分達の部屋でゆっくりと明日に向けて眠った頃、少し背の高い木の枝を支えに座って遠くを眺める翔馬の姿があった。

 

「藤田君?」

「ん? なのはか」

「どうしたの?こんな所で」

 

 翔馬の腰掛けている枝までふわりと飛行魔法で飛んで、枝に腰掛けるなのはに翔馬はそれを一瞥して、遠くに視線を投げた。

 

「いや、遠くまで来たもんだなと思ってな」

「どうかな?こっちは」

「穏やかな空気、澄んだ青の海、夜空に輝く星達。それにここに住む人たちも楽しそうだ。ミッドチルダに負けないくらいいいところだ」

 

 翔馬の言葉になのはは優しく微笑んで、そっかと呟くと、視線を翔馬と同じように遠くに向けた。少し会話が途切れて翔馬はおもむろに思いついたことを尋ねる。

 

「そういえば、ヴィヴィオだけど」

「こっちに連れて来てよかったのかってことかな?」

 

 翔馬は先回りされて苦笑しながら頷くと、なのはは宙に浮いている足をふらふらと動かしながら、その時の様子をおかしそうに話し出した。

 

「最初はアイナさんと管理局の手助けとして残ってくれたヴォルケンリッターの皆に任せてヴィヴィオはミッドチルダにいてもらおうと思ったの。だけど、ヴィヴィオが駄々捏ねちゃってね。絶対に行くって譲らないから、少しケンカしちゃったんだ」

「その様子が目に浮かぶな」

 

 なのはの言葉に翔馬は面白そうに笑って、なのはは少し不満そうだったが、そんなことをしてる2人がおかしかったのか同時に吹き出すと、また話を続ける。

 

「どうも、ホントに行きたかったらしくて、ヴィヴィオ、直接はやてちゃんに連れて行ってって頼んじゃったみたいで、はやてちゃんも甘いから。もしかしたら何か考えてるのかもしれないけど……」

「なるほど、問答無用で置いていくつもりが、はやてに連れられて来てしまったと。はやてらしいな」

 

 あはは、と苦笑いするなのはに翔馬は軽く笑うと、少しだけ、ほんの少しだけなのはに寄り添った。なのはは少しびっくりしたように翔馬を見つめると、そこには真剣な瞳で遠くを見つめる翔馬の姿があった。

 

「絶対に奴の企みを阻止する、そしてまた全員で無事に帰るんだ」

「……うん」

 

 

 

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