魔法少女リリカルなのはStrikers~風と桜の記憶~   作:strike

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投降が遅くなってしまい申し訳ありません!!
リアルの方が忙しくなってしまい…(-_-;)

すみません。言い訳です。

さて、そんなことは置いておいて、なのはの記憶喪失を知った翔馬がどうなるのか。



第7話スタートです!!


第7話 これから

翔馬は今、雨が降り始めた帰り道を無言で歩いている。

その天候は今の翔馬の心情を表しているかのように空は雲で覆われ、地面に水溜りができる程の大雨。

道を歩く翔馬の表情を伺うことはできないが、いつも堂々とした歩き方と違ってその姿は頼りなさげだった。

翔馬はそれでも、雨に打たれることを厭わずただひたすらに足を前へ動かしていた。

そんな時、ふいに背後から声が掛かり翔馬は歩みを止める。

 

「あれ? 翔馬さんじゃないですか。 今日はなのはさん達とお出掛けだったんじゃ?」

「シエル、か……?」

 

翔馬が振り向くとそこには傘を差した普段着の姿のシエルがいた。

シエルは翔馬がここに居る事、そして、翔馬の様子に何か不安を感じながらも表情は笑顔を保ちつつ翔馬に近づいて傘を差し出す。

 

「どうしたんですか? 雨が降ってるのに傘もささずに…… あ!! もしかしてなのはさんに振られたとか!! も~それならそうと言って下さいよ。 何時だって私の隣は、空・い・て・ま・す・か・ら♪」

 

シエルはわざと1人楽しそうに体をくねくねさせながらそう言うが、いつまでも返ってこない突込みにやっぱりと溜息を付くと翔馬の腕を自分の胸に引き寄せて抱きかかえる。

すると、やっと翔馬は体を動かしてシエルの肩を押すと同時に自分の腕をシエルから引き剥がそうとした。

 

「悪いシエル」

「「今はお前の冗談に付き合えるような気分じゃないんだ」」

「……ですよね?」

 

シエルは寂しそうに微笑むと唖然としていた翔馬の腕を今度こそしっかりと取ると自分の傘の中に引き込む。

 

「さっきの言葉は冗談にしても、この行動は冗談なんかじゃありませんから。 こんな格好で外を歩いていたら確実に風邪引きますよ? 私の家が近いのでそこで体を温めましょう。」

「何を勝手に……」

「はいはい。お小言はちゃんと翔馬さんが体を温めた後にちゃんと聞きますよ~」

 

シエルは今は絶対に翔馬の言葉は聞かないとばかりにそっぽを向くと無理矢理翔馬を自分の家に引きずって行く。

そして、シエルの家に着いた後の行動は速かった。

玄関に入るとまずシエルは部屋の奥からタオルを持って来て翔馬の体をサッと拭くと翔馬を家の中に上げてそのまま無理矢理、脱衣所へ閉じ込める。

ここまでたったの10秒。

 

「軽くしか拭いていないので、ちゃんと湯船に浸かって体温めて下さいね? こんな状況にさせておいて30秒後に翔馬さんがお風呂に入って無かったら……」

「……無かったら?」

 

翔馬はシエルが扉を開けた瞬間に外へ逃げ出そうと算段を組んでいたのだが、返ってきた言葉は予想をはるか斜め上を行くものだった。

 

「翔馬さんを組み伏せて……無理矢理にでも()と一緒にお風呂に入ってもらいます!!」

「はぁ……、お前が俺を組み伏せられる訳……って、ちょっと待て。 最後に何か不穏なこと言ってなかったか!?」

「ん? なんか言いましたっけ?」

 

翔馬の突込みにシエルはとぼけるとドア越しに少しだけ安心したような笑みを零していた。

 

「取り敢えず、私と一緒のお風呂が嫌ならさっさと入って下さいね? あ、もちろん一緒に入りたいというのならそれも吝かでは無いですけど♪」

 

と、シエルがドアノブを捻って中に入るような素振りを見せるとその数瞬後にはドアの向こうで扉が閉まる音がして翔馬が風呂に入った事を確信し苦笑いを浮かべる。

そして、シエルはそっとドアノブから手を離すとキッチンへ向かい風呂上がりの翔馬へ軽いおもてなしを準備するのだった。

それから暫くすると、バスタオルを腰に巻いて何やらピンク色の布を持ち、こめかみを引き攣らせる翔馬の姿があった。

 

「おい、シエル」

「あ、上がったんですね。 湯加減はどうでした? って!! お、女の子の部屋でバスタオル一枚って……翔馬さん一体ナニを///」

 

声を掛けられ、風呂から上がったばかりの翔馬に振り向くと何故か恥ずかしそうに顔を赤くするシエル。

それに対して翔馬は込み上がって来る怒りを何とか残った理性で抑えつつ手に持った布をシエルの前に差し出した。

 

「……コレは、なんだ?」

「え? 着替えですけど……、あ!! もしかしてうさぎさんはダメでしたか? 仕方ないな~。」

 

シエルは、翔馬の様子が何を意味しているのか察したように笑顔を浮かべると素早い動きで新しい着替えを持って来た。

 

「……それなら私のお気に入りですけど、くまさんを、お貸しします!!」

 

そう言って、少し葛藤しながらもシエルはバッと勢いよくクマの着ぐるみパジャマを翔馬へ差し出す。

ここまで言えばわかると思うが翔馬が手に持っているのはうさぎの着ぐるみパジャマだ。

そんなシエルの行動を目の前にして、既に沸点の境を彷徨っていた翔馬が苛立ちを抑えられる筈も無く……

 

「そう言う意味じゃねぇ!!」

 

容赦ない全力の拳骨をシエルの脳天に食らわせた。

 

「痛った~い!!? 何するんですか!?」

「何するんですか?じゃねぇだろ!! 何でこれなんだよ!? もっとまともな服は無かったのか? と言うよりも俺の服をどこにやった!!」

 

シエルは脳天を押さえながら翔馬を睨み付けると少し怒りながら言い返す。

 

「翔馬さんの服がビショビショだったから、乾燥機に掛けてあげてるんじゃないですか!! それに私、男物の服なんて持ってないですし翔馬さんの体格でも入りそうなものを探したらこれだっただけです!! 怒られる筋合いはありません!!」

 

と、シエルが一見真っ当そうな言い訳を述べ、その言い訳を聞いた翔馬は完璧な笑顔を浮かべる。

 

「……だったら、何でゼフィロスが無いんだ? あっちなら戦闘服があるだろ?」

 

シエルは翔馬の言葉に難しい表情を浮かべて数十秒。

結局何も思い浮かばなかったのか翔馬と同じように……いや、翔馬とは別の方向性でとびっきりの笑顔を浮かべた。

 

「……てへっ♪」

 

その後、雷が落ちた時の様な轟音が原因で周囲の民間人から管理局へ調査依頼の通報があったのはまた別の話だ。

 

「それで? 何で俺がこんなところに連れてこられたんだ?」

 

翔馬はシエルの部屋にドカッと腰を降ろしてコーヒーに口を付けながら、怒りの鉄槌を下したボロボロな姿のシエルに何事も無かったかのように問いかける。

もちろん、ゼフィロスをシエルの手から取り戻し今の格好は戦闘服だ。

 

「そんなの決まってるじゃないですか~翔馬さんが傘もささずにあんなところ歩いてるからですよ。 何であんなところにいたんですか?」

 

シエルは涙を浮かべながら床に突っ伏してそう言うと、気怠そうに体を起こして身なりを整え始める。

そんなシエルとは対照的に翔馬の表情は一気に暗くなってしまい、シエルは身なりを整えながら横目で翔馬の表情を見ると少し寂しそうに無言で髪を梳いて黙り込んでしまった。

それから僅かな沈黙が流れるが、翔馬の呟きによってその沈黙は破られる。

 

「今日、出かけた先で事件があってな……。俺達で対応しようとしたんだが、その時に、なのはの記憶が消された……。」

「そんなっ!?」

 

翔馬の予想外の言葉に驚いたシエルは、髪を梳く手を止めて翔馬に詰め寄る。

 

「記憶が消されたって、なのはさんが記憶喪失になったってことですか!? どうしてそんなことに!? 原因は……」

「落ち着けシエル!!」

 

シエルの止まらない問い掛けに翔馬は一喝すると、シエルを落ち着かせた後で今日起こった出来事をシエルに包み隠さず伝えた。

そして、翔馬の話を聞いたシエルは少し顔を伏せて辛そうにするが、ふと顔を上げると同じように辛そうにしている翔馬の姿があり、シエルは一度深呼吸すると真剣な表情で翔馬を見据える。

 

「それで、翔馬さんはどうされるおつもりなんですか?」

「……何?」

 

声を掛けられて顔を上げた翔馬は、シエルの発した言葉の意味を探るように視線を向けた。

 

「なのはさんの記憶から翔馬さんが消えてしまったこの状況で、翔馬さんはどうされるのかと聞いているんです。 まさか、このまま黙って傍観するなんて言いませんよね?」

 

シエルは揺らぐことない瞳で翔馬を見つめ、これで翔馬が立ち上がってくれるのならと更に続けようとしたが、それは翔馬の声に遮られてしまった。

 

「何言ってんだ? そんなこと俺がするはずないだろ」

「そうですよね……。 愛する人の記憶から自分が消たんですから立ち止まってしまっても仕方がない……って、へ?」

 

シエルは、翔馬の言葉を神妙な表情で聞いていたが、翔馬の言葉が自分の思っていたものと違う事に気が付くとハトが豆鉄砲を喰らったような顔で翔馬を見つめる。

するとそこには、いつもの様な不敵な笑みを浮かべてシエルを見つめ返す翔馬の姿があった。

 

「俺が何時、なのはの事を諦めるなんて言ったんだよ? ……まぁ、確かに事実を知った時はかなり落ち込んだけどな。 でも、症状の全てがわかった訳でもないし、解決策だってある筈だ。 まだ何もしていないのに立ち止まれるはずがないだろ?」

 

翔馬の言葉にシエルは唖然としていた表情を安心したように優しい笑みに変えた。

 

「……それじゃあ、私は勘違いしてただけだったってことですね」

「ん? 勘違い?」

 

シエルの言葉に翔馬は首を傾げるとシエルは何でもないとそっぽを向いた。

が、何かを思い出したようにシエルは首だけ回して翔馬に顔を向ける。

 

「って、それならなんであんなところを傘も差さずに歩いていたんですか?」

「ああ、ただ車を近くのモールに置きっぱなしにしていたからそれを取りに行こうと。 後、少しなのはの事について考えてたら雨が降ってたことにも気が付かなくてな……」

 

翔馬の言葉に、シエルがしたことは全て無駄なお節介だった事に気付いてガクッと項垂れると、溜息と共に笑みを零した。

 

「……本当に、昔から変わらないですね。 翔馬さんは」

 

シエルは翔馬に背を向けてそう小さく呟くと丁度、乾燥機の止まる音が聞こえて翔馬に声を掛けると服を取りに行くのだった。

そして、乾いた服に着替えた翔馬は時間を見てもう遅い時間であることに気が付くと、シエルにもう帰るという事を告げて玄関へ向かう。

 

「悪いなシエル。 こんな遅い時間まで」

 

翔馬は靴を履くとシエルの家から出て、玄関の前でシエルに向き直る。

 

「いえいえ。 お気になさらずですよ」

「って、無理矢理家に連行されたのにお礼言うのも変だったか」

「元はと言えば、翔馬さんが風邪引きそうな格好で歩いてたからです!!」

 

シエルの突込みに翔馬はそうだったかと笑いながら頷いて、シエルに背を向けた。

 

「それじゃ、俺はそろそろ行くよ。 明後日からの出勤、忘れるなよ?」

「翔馬さんこそ。 ……無理だけはしないで下さいね?」

「ああ、分かってる」

 

翔馬はそう言って、片手を上げると雨の上がった帰り道を歩き出すのだった。

 

「翔馬さん!!」

「ん?」

 

翔馬が数m歩いた所で背中からシエルの声が聞こえて振り向くと、家の玄関から零れる光を背に受けたシエルが胸の前に手を組んで翔馬を心配そうな表情で見つめていた。

 

「もしも、……翔馬さんが立ち止まりそうになった時には私が手を引きます。 困った時には私が力になります。 辛くなった時には、私が抱きしめます。 だから、1人で全部抱え込まないで下さい!! これでも昔は貴方の……パートナーで、今では貴方を支える副隊長なんですから」

「っ!?」

 

翔馬はシエルの言葉に目を見開くと、ゆっくりとその目を閉じて次に目を開けた時にはいつもの表情に戻っていた。

 

「最後に変なもんが混じってんじゃねぇか。 ったく、そんな奴に安心して任せられるかよ。 ……でも、まぁ、お前がそこまで言うんなら、俺が潰れそうになった時、その時は頼む。」

「っ……はい!!」

 

シエルは翔馬の言葉に笑顔でそう返事すると翔馬は今度こそ、自分の家に帰るため歩みを再開した。

 

 

 

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そして、翔馬はギリギリ駐車場が閉まる前の時間に車に出し終えて今は既に自宅に着いてベッドに体を放り投げていた。

 

「さて、これからどうするか……」

 

翔馬は誰もいない空間に向かって声を出すと、溜息を1つ付いてなのはの事を考えてみる。

現状、わかっているのは翔馬に関する記憶がなのはの中から消え去っているという事、その原因が第3種捜索指定ロストロギア悪夢の笛だという事。

そして、その犯人が翔馬が2年前に検挙したテトラであるという事の3つだけだ。

明日の精密検査の結果次第ではわかることもあるかもしれないが、翔馬が何かできる訳でもない。

そして、悪夢の笛に関しては、ユーノが一生懸命資料を掻き集めていることだろう。

だったら、自分に一体何ができると言うのか。

翔馬は、病院からの帰り道、シエルと出会うまでずっとそのことを考えていた。

だが、少し気分が落ち着いて正常な判断ができるようになったのか少しだけ自分のやるべきことを見つけられたのかもしれない。

翔馬はシエルに会ってから少し落ち着けたような感覚を思い出すと少しだけ笑みを浮かべて立てかけてあった木刀を手に持って再度外へと向かい、日課のトレーニングを行うのだった。

 

「ふぅ……ん?」

 

翔馬は一通りのトレーニングを終えて、自室に戻るとデバイスが通信回線の開通を求めて来ていた事に気が付く。

しかもその相手は、翔馬の良く知る人物からだった。

 

「どうしたんだ? こんな夜遅くに」

『ゴメンな……。 こんな時間に掛けるのは迷惑かもとは思ったんやけど、今日中に話しておきたいことがあって……』

 

そう言って、翔馬の声にこたえたのは先程病院で別れた筈のはやてだった。

大体、話題については見当がつくが、用事と言うものが見えず翔馬は少し不審がりながら耳を傾ける。

 

『単刀直入に言うんやけど、明日のなのはちゃんの精密検査、翔馬君に立会って欲しいんや』

「は? 立会いって、俺が? なのはの?」

 

翔馬の言葉ににこやかな笑みで頷くはやて。

しかし、その理由も分かっていないためどう反応していいか迷っているとはやての方から口を開いてくれた。

 

『まぁ、今回は意地悪とかそう言うんやないから安心してな』

「当たり前だ。 こんな時間にそんな笑えないジョークかましてくれるんなら俺はお礼にお前を一発殴ってやらないといけなくなるからな……」

 

翔馬の言葉に体を大袈裟に震わせてコワッと呟くと、翔馬の呆れた視線を受けて失敗したことを悟ったはやては咳払いで誤魔化して話を戻し始めた。

 

『明日、私は元々出勤やから、フェイトちゃんが病院に行って立会う予定やったんやけど、どうしても今日からでなくちゃいけない用事が出来てしもうたらしいんや』

「はぁ、それで俺がヴィヴィオを連れて病院でなのはの検査に立会えと……」

『理解が早くて助かるわ』

 

はやては翔馬の言葉に満足そうに頷くと翔馬は深いため息をつく。

 

「だけどいいのか? 俺自身は構わないが、なのはの方にも心の準備ってもんがあると思うんだが?」

『まぁ、確かに本人の許可は取ってへんけど、なのはちゃんと翔馬君はできるだけ一緒におった方がええんやないかって思うてな。 そうすれば何か万が一の事があっても、早急な対応が可能やし、何より記憶を取り戻すきっかけになるかもしれへんやろ?』

 

はやての言葉に翔馬は良いように使われている気がしないでもないため、渋々ながら頷くと、はやては嬉しそうに笑みを零してさっそく明日の予定について翔馬と打合わせを行った。

予定としてはこうなった。朝にはやてがヴィヴィオを連れて病院へ行き、そこで翔馬と合流。

一度はやては翔馬達と共になのはの所まで行き、立会人が変わることを説明してくれるそうだ。

その後は、翔馬とヴィヴィオがなのはと付いて回る。と、言う形らしい。

 

「そういう事なら了解した。 明日は1日明けておく」

『頼むわ。 ほんなら、夜遅くにゴメンな。 明日はよろしく』

「おう」

 

翔馬ははやてに短くそう返すと通信回線を閉じた。

 

「なのはの精密検査、か……」

 

翔馬はなのはの症状が明確になる事とこれからの対策に目星がつけられるかも知れないという事を思うと、少しだけ前に進めたような気がして作った拳を握りしめた。

そして、自身に必ずなのはの記憶を取り戻すことを決意し、明日を待つのだった。

 

 

 

 

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