東方幻想斬~BLEACH the fantasy time of end~ 作:ディーン・グローリー
ここ二ヶ月多忙だったのですが、一昨日ようやく楽になり、これから更新を早めていこうと思います。
《1》
「何で、フランがここに?」
魂魄妖夢との模擬戦から博麗神社に帰ってきたら、何と紅魔館の吸血鬼――フランドールスカーレットが一護に抱きついてきた。
――え、どうして、何で博麗神社にフランが……と思ったが、一護はあの約束を思い出した。
紅霧異変が終わり、帰宅しようとした間際にフランから「今度、お姉様たちと遊びに行ってもいい?」と聞かれ、快く了承したのだ。いつ遊びに来るかは言っていなかったため、いつ来るかは全く予想がつかなかった。
別にいつ来られても良かったが、まさか模擬戦の後になるとは思わなかった。
「えへへ、遊びに来たんだよ~」
フランが抱きつきながら、顔を上げ応える。
その笑みに、あの時の狂気など一切感じない。純粋で無垢な、少女のような可愛らしい笑みだ。
もうフランに狂気などというものは宿っていないだろう。
……と、そこに三人の少女が一護の前に現れた。
「いっちご~」
「一護!」
「一護さん」
三人の少女が一護の名を呼んだ。
聞き覚えのある声に、一護は前を見る。
そこには水色の髪の小柄な少女と、金色の髪の小柄な少女と、緑色の髪の小柄な少女の、小柄3人娘が居た。
上から氷の妖精であるチルノ。宵闇を生きる妖怪のルーミア。妖精の中でも強い大妖精。
この三人も、博麗神社に来ていた。
「お前らまで。何で?」
「紅魔館の咲夜さんと言う方からお声を掛けられまして。一緒に博麗神社に来ないかと」
一護が問うと、大妖精がご丁寧に答えてくれた。
「うん、それでねぇ、一護が博麗神社に居るって聞いたから来ちゃったんだ! ……む」
自分も飛びつきたいチルノだが、一護に抱きついているフランが邪魔で出来なかったため、少し頬を膨らませる。
そしてそんな思い馳せる刹那――
「わーい! 一護久しぶりなのだ~」
と、一護の空いている背中に抱きつくルーミア。
「お、おい、ルーミア。お前まで、よせって」
前後から抱きつかれては身動きの取れようがない。
いや、もしかしたらこの状態を嬉しがる少女愛好者(ロリコン)が居るかもしれないが、一護は少女愛好者ではない断じてないし認めない。
チルノはそんな三人の姿を見て、怒りの念を募らせた。
その姿はまるで駄々をこねる前の女の子だ。
「フランも、ちょっと離れてくれないか? 今の俺は少し汗臭いからさ。ちょっとシャワー……じゃなかった。湯浴みをしたいんだよ」
妖夢との激戦後で、やはり汗は結構でた。
故に自分ではあまり分からないが、少し臭うだろう。そんなもの、誰にも近くで臭って欲しくない。
「だったらフランも一緒に入る!」
「あ、ルーミアも一緒に入るもん!」
そう言ってみたが、事態が面倒な方向に転んだ。
「頼むから。少し離れてくれ。つか、咲夜の声がかかったってことは、紅魔の他メンバーもここに来てんのか?」
「うん、お姉様も咲夜もパチェも美鈴もみんな来てるよ~」
「そうか、そいつは挨拶に行かねえとな」
礼儀として当然だろう。
シャワーは……と言うか、シャワーと言う言い方は幻想郷では通じないだろうが、別にシャワーでも構わないだろう。それにフランのいる紅魔館は洋館だから通じるが。
シャワーは挨拶を一通り終えてから入ろう。
「んじゃ、とりあえず顔見せるか。だから、早く離れてくれないか。後で遊んでやるから」
「うん、分かった」
「う~、仕方なのだ~」
二人は名残惜しそうに、抱きつくのを止めた。
これでようやく動けると思った矢先だった――
チルノが抱きついてきた。それは勢いよく、腹にダメージが来るくらい。
「グッ――何すんだよ……チルノッ!?」
もしあの後、妖夢と食事に行って帰ってきてたら間違えなく、チルノの特攻で胃の中の物が全て口から発射されたであろう。
それくらいの衝撃が、腹部を襲ったのだ。
「だって、あたいだけ一護に抱きついてないもん!」
「……はぁ?」
突拍子もないことを言われ、もう何が何だか訳が分からなくなった一護だった。
チルノが何故か満足気になって離れたところで、ようやく一護は居間へとやって来た。
居間ではまるで我が物顔で座すレミリア・スカーレット。
レミリアの付近に泰然と佇むメイドの十六夜咲夜。
魔道書らしきものに目を通しているパチュリー・ノーレッジ。
睡魔に犯されかけている紅美鈴。
紅霧異変に関わったもの全員が集合していた。圧巻だ。
「…………」
絶句する一護。
いやまぁ確かにフランから聞いてはいたが、改めて見てみると吸血鬼、時間を操る女、魔女、武人……普通の人間がいない。
「ふむ、久しいな一護。まさかこのような狭苦しい場所で暮らしてるとは、息が詰まらんか?」
不遜な態度、と言うより尊大な態度で紅い眼を輝かせながら、レミリアが言葉を発する。
華奢な体つきをしているが、その威光たるや凄まじい統率性(カリスマ)がにじみ出ている。上に立つに相応しい力を有している証拠だ。
「しかしお嬢様。こう言った場も、趣あって良いのではないでしょうか? 下賤な者たちにはお似合いで釣り合った場だと思われます」
「…………」
咲夜が言う。
いや、つうか、とんでもないことを言う。本当にあの時、共闘した仲なのだろうか?
もしこの場に霊夢が居たら、咲夜の言葉を発破に戦いが始まっていたであろう。
「――と、そんなことを言ってみたが、まぁ別に悪いとは言っていない。先の発言も冗談だ。こういう屋敷も案外落ち着くものだよ」
レミリアがテーブルに肘を付きながら、前言を撤回し言った。
外見だけでいえば糞生意気なガキである。
「お久しぶりです、黒崎さん!」
うとうとと、上の空だった美鈴が、朦朧とした視界で一護を確認すると、いきなり一護の前に立ち頭を下げた。
「あの時は、いや~まさか負けるとは思わなかったんですが、良い戦いが出来てよかったです」
異変で戦って以降、一度も話さなかったから、一番緊張する相手だと思っていた。
しかし普通に、気さくに話しかけてきてくれて、どこか嬉しい一護である。
「だからもう一戦、私と挑んではもらえないでしょうか!?」
何て言い出した。
「あ、いや、また今度な。今日はもう疲れた」
妖夢に続いて美鈴と戦えば、もう今日は動けなくなるだろう。この後、恐らくフラン達にも遊びを求められるだろうし。
と、その時だった。
「おー、何だ何だこの面子は?」
空から魔女が降ってきた。
金髪に、いかにも魔女が被ってそうな帽子に、極めつけは箒に乗ってきていると言う、テンプレ的な魔法使い――霧雨魔理沙だ。
魔理沙が外から縁側を跨いで居間へと入る。
「おっ、よぉ一護。何でこんな濃ゆい面子が勢ぞろいしてんだ?」
「お前はまず靴を脱ぐ習慣を心がけようぜ」
どうしてなのか、魔理沙は土足で居間へと上がってきた。
和と洋の生活習慣の違いが簡単に出るが故、魔理沙は何度も注意しても間違えて土足で居間へと入り、汚れた後処理は一護がすることとなる。
魔理沙は悪気もなしに「悪ぃ悪ぃ」と言い、改めて靴を脱いで上がる。
「おう、久方ぶりだなパチュリー。今度また本を借りに行くぜ」
満面な笑みで、子供らしく魔理沙がパチュリーに言った。
何の曇りもないその笑みに、罪悪感など一切ない。そも、なぜ人に物を借りるのに罪悪感が生じるのか。それは――
「あんた、私の部屋から書物を何冊も無断で借りに来てるでしょ。まずはそれを謝罪と共に返してくれないかしら」
パチュリーが不満全開に言う。
そう、魔理沙は無断で本を借りていき、例えパチュリーと出会ったとしても「死ぬまで借りるだけだぜ」などと抜かす始末。
手に負えない。始末に負えない。
しかしこれでも、魔理沙に罪悪感など皆無なのだ。
「死んだら返すから、心配すんなって」
「……私が喘息じゃなかったら、今すぐにでも取り返してるのに」
まるで苦汁を舐めたかのように、苦い顔をするパチュリー。
悔しさがにじみ出ている。
「居間にこんなに集まると鬱陶しいわね本当に」
廊下から霊夢が現れ、居間の様子を見て呟く。
小さい居間に現在六人。そこに霊夢や少女四人が加われば、窮屈なことこの上ない。
「ん、一護、その左肩の傷はどうしたの?」
霊夢は一護に目を移すと同時に、左肩の切り傷に即座に気付いた。
勿論、この傷は妖夢との模擬戦での傷だ。
一応は隠していたつもりだったが、やはり簡単に見破られた。
「ふむ、確かに血の香りがするな」
レミリアは鼻をクンクンとさせながら、一護の血のにおいを嗅ぐ。
「ああ、ちょっとな。ほら、今朝も言っただろ。約束の相手と弾幕ごっこをしてきたんだよ。これはその時に負った傷だ」
「「「――弾幕ごっこ!!」」」
途端に、廊下からフラン、ルーミア、チルノが現れる。
どうやら一護の弾幕ごっこと言う単語に反応したらしい。
弾幕ごっこで反応する……同時に一護はとてもじゃないが嫌な予感がした。否、その予感は当たるだろうから、これは先を見据えて冷や汗を流した。
「一護ー、早く遊ぼー、もちろん弾幕ごっこね!」
フランが煌く笑顔でそう言ったのだった。
《2》
一護はみんなと弾幕ごっこを終えて、かいた汗を浴室で流していた。
「はぁ、疲れた。妖夢との弾幕ごっこの後だから、もっと疲れた」
一護がお湯で体を洗い流しながら、バスチェアに腰を下ろしつつ呟いた。
その時だった。
「ふむ、妹の相手ご苦労だった一護」
「…………」
浴場の戸が開いたかと思うと湯気に包まれた、一糸まとわぬレミリアが堂々と入ってきた。
「……れ、レミリア!?」
突発的な登場に一護は驚く。
白い肌に、全く実っていない果実を連想させる容姿、端的に言うと出ているところが出ていない体だ。幼女体とまではいかないが、少女体? なのかな。
肩から腕、そして胸……お尻へかけて、優しい曲線を描く身体のラインが否応なく目に入る。
可愛らしい胸は、あまり成長しておらず、その一方でお尻の丸みが際立っている気がする。
全体的に少女らしい華奢な体つきである。
「ふふ、いい反応ね。けど、いくら私でもそんなに見つめられると照れるぞ」
「ち、違う! 見てねえ! つうか堂々と入ってきたやつに言われたくねぇよ!」
顔を赤らめながら一護は言う。
と、レミリアは何の恥じらいもみせず、蓮の言葉を無視して口を開く。
「いやなに、妹を救ってくれて、まだちゃんとお礼を言ってなかったと思って。ありがとう、一護。あなたのお陰でフランは笑顔でいられているわ」
「いやここでお礼言う必要なくね!?」
一護は思わず突っ込んでしまった。
性的刺激があまり無いのは、一護が少女愛好家ではない証左にもなる。
だが、やはりレミリアは女だ。あまり女性に対しての免疫が無い一護にとって、例え外見が少女でも、どこか激するとこはある。
「お前、羞恥心ってやつはねぇのかよ」
「羞恥心? 年下に見られたところで恥ずかしくもない」
「なら俺が恥ずかしい。だからとっとと出ていけ」
「まぁそう言うな。お礼に私がお前の背中でも洗ってやろう。この私自らが洗ってやるのだ、喜びなさい一護」
「いやいやいや、ないから。つかもう洗ったし」
「何だそうなのか。なら、一護、お前が私の背中を洗ってくれ」
「え?」
するといつの間にか、一護の眼前に背を向けたレミリアがいた。
木製のバスチェアに腰かけている一護の目の前に、床にお尻からペタリと座り込むレミリア。
レミリアの肌は白く、まるで人形のようにシミも何もない美しい肌、柔らかそうな身体がアップで映らせる。背中には勿論、吸血鬼の羽が生えている。
特にこの幼そうな肩甲骨が何とも可愛らしい。
「ふむ、洗って良いぞ」
「…………」
ここで断ったら男が廃ると思った一護は、生唾を飲みながら頷く。あれ、お礼される側なのに、何で俺が洗わなきゃいけないのだ、なんて疑問は彼方に吹き飛んでいる。
一護は泡のたったスポンジを手に、レミリアの小さい背中にあてがう。
まるでガラス細工を取り扱う慎重さで、ゴシゴシと非常に優しく丁寧に、上下にスポンジを動かす。
「結構あれだな、普通の少女と変わらないよな、お前の肌って。弱々しくもどこか強い芯の通ったっていうか、吸血鬼独特の美しさって言うか」
一護はどこか変な語彙になりつつも、レミリアの肌の綺麗さには本当に見蕩れている。
と、一護が心奪われていると自然に擦る力が強まり、
「はふぅ、ん、んあ、あぁん」
何て艶かしい声をレミリアは上げた。
それに対し一護は驚き、
「な、何変な声出してんだよ!?」
少し顔を赤らめて言う。
「いきなり力を強く入れるからだろ。さすがの私もビビッたぞ」
半分マジ、半分わざとだがと、レミリアは心中呟く。
「わ、悪かった。次はもう少し優しくする」
と、再びレミリアの背中をスポンジで目に見えない汚れを落とす。
少し弄りたくなったレミリアは、は再び同じく艶かしい声を、半分は本気で上げる。
「あ、あん……ふあっ、あぁぁ」
「だから何なんだよその声は! 結構優しくしただろ?」
「だって、気持ちよかったんだもん」
「何がもんだ。アタマ大丈夫かお前」
そんな中でもレミリアの背中を洗っているのは、一護が律儀だからだろう。
「もういい、お前が何を言っても突っ込まねぇ」
「何だ詰まらん」
そんな時だった。
再びガララと、浴室の戸が開いた。
そこにいたのは……
「愛しのお嬢様が見当たらないと思えば、あなたは一体何をしていらっしゃるのですか?」
ドスの効いた声を発した咲夜であった。
なぜか手元に銀製のナイフを輝かせながら、迫力のある笑みを浮かべている。
「いや、えっと、あの……」
一護はダラダラと汗を流し……
「おや、咲夜か。どうだ、お前も一緒に入るか?」
「お嬢様、そのお誘いは大変うれしく思うのですが、少々私は黒崎一護と大切なお話ができましたので」
「え、いや誤解だ咲夜!」
一護の悲鳴にも似た説得は空しく、時間をとめた咲夜が一護を連れ出し、その後……一護の悲鳴が木霊したのだった。
*
「妖夢~遅かったわね」
一人の着物を着た女性が、縁側でお茶を啜りながら妖夢の帰宅した姿を見て言った。
「すみません。少し時間が掛かってしまいました」
妖夢は頭を軽く下げながら言う。
女性はそんな妖夢の姿を見て、クスリと笑い、
「随分と楽しんできたらしいわね。その様子だと、得られたものは大きかったと言うことね」
「え、あ、はい。どうしてお分かりに?」
「顔に書いてあるもの」
まるで幸せそうに、自分の娘を愛でるように言った。
妖夢もそれが嬉しい。
と同時に、ある事を思い出した。
「そういえば幽々子様。あの後、八雲の使いが来られまして」
「紫の……藍の方?」
「いえ、あの素行の悪い男のほうです」
男という言葉に女性の脳裏に一人の男が現れる。
「あの男性ね。で、何て?」
「今度、紫様が外の世界で見つけた美味しい飲み物を一緒に飲みましょうと」
「分かったわ。でも、その程度の伝言を何であの男に頼むのかしら?」
「それは、分かりません」
妖夢が答えると女性が残りの茶を全部飲んだ。
女性は空になった湯呑みを置き、少し俯く。
(それに、あの男が命令されて素直に聞くような人には思えないけど。まぁ私の偏見かもだけど)
「あの、幽々子様」
妖夢の声に思い耽っていた女性が顔を上げる。
「何、妖夢?」
「……次の春に計画を実行するんですね」
それを聞いた女性が「そうよ」と軽く答える。
この春に実行する計画で、再び一護と戦う事になることを妖夢はまだ知らない。
*
所変わって再び博麗神社――
あれから数時間、一護は三人の弾幕ごっこにつき合わされた。
もう完全にボロボロになった一護は晩飯の後、みんなより一足先に眠りにつく。疲れの度合いは異変解決クラス。
紅魔メンバーもルーミア達も泊まっていくようだ。
――だから、一護は朝起きた時、大変なめにあった。
朝……一護が目を覚ますとルーミア、チルノ、大妖精、フランが一護にくっ付いていた。
「…………」
予想外というか、予想内というか……率直に現状の問題点を上げるとするなら、動けないことだろうか。
起きようにも、四人が、しかも約一名吸血鬼が抱きついている状態だ。
力加減が分かってきたのか、それが幸いした。もし吸血鬼、フランが力加減をまだ理解していなかったら、体が粉砕していただろう恐怖。
――ガラガラ。
と、ちょうど良いタイミングで霊夢が一護の部屋の戸を開けた。
「起きてる? 一護」
霊夢は一護を見る。
同時に一護にくっ付いている四人も目に入る。
「霊夢、助けてくれ」
一護が四人を起こさないように小声で助けを求める。
だが何故だろう。霊夢の一護を見る目が徐々に軽蔑、侮蔑の眼差しに変わっていく。
「お、おい。何だよ、霊夢?」
「昨日から言って上げたかったんだけど、今言うわね」
「……?」
「あんた、ロリコンでしょ」
「――――」
ロリコン……ハ? ロリコン……だと!?
霊夢はそれを言うと出て行ってしまった。
そして、一護はこれから一ヶ月先まで霊夢から名前ではなくロリコンと呼ばれることとなった。