東方幻想斬~BLEACH the fantasy time of end~   作:ディーン・グローリー

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遅くなって申し訳ないです。

色々と多忙だったので、なかなか書けませんでした(´Д⊂


第19斬【アリスの人形劇】

「にゃ~負けてしまった」

 

 橙は残念そうに俯いて言う。

 迷い家にての黒崎一護VS橙の弾幕ごっこは、一護の勝利で幕を閉じた。

 戦況は一護の圧倒。驚かされる点もあったが、やはり過去に戦いあった美鈴やレミリア、フランにルリミアと言った強敵とやりあっているので、式神の更に式神に値する橙には負けない。

 橙はあのあと聞いてみると、どうやらとある主人の式神の、その式神らしい。つまり式神を主とする変わった式神なのだ。

 

「そんな落ち込むなよ。また相手してやるから」

 

 一護はシュンとする橙に言う。

 すると、俯き加減だった橙は一気に顔を上げ、

 

「え、本当!?」

「ああ、約束する」

「やったにゃ~!」

「まぁ橙の主人がここの出入りを許してくれたらになりそうだけど」

「だったら心配いらないにゃ。藍様は厳しいところはあるけど優しいし、紫様はいつも暇そうにしてるから大丈夫だよ!」

「一番上の奴が一番暇そうなんだな。あれ、そういえばグリムってやつはどんな人なんだ?」

 

 話によると紫という人の式神が藍で、その藍の式神が橙なのだ。ならもう一人のグリムさんと言う人が残る。

 

「グリムちゃんは居候だよ。口が悪くて、いつも暴れてるにゃ。だから藍様が注意していつも怒ってるの。けど家事スキルは上がってるって、紫様は言ってた」

「そうか。随分と褒めていいのかどうか分からねえ奴だな」

「居候に来たときは本当に大変だったにゃ。掃除すると物は壊すし、お皿を洗うと全部割っちゃうし、お庭のお手入れをお願いすると周囲が荒れ地になるし。藍様、すごく大変そうだったにゃ」

「手を焼きそうな奴だな。うちの霊夢なら居候させねえと思う」

 

 自分とも仲良くするのは困難そうだなと、一護は思った。

 

「さてと。じゃあ橙。こっから出る方法を教えてくれ。そろそろ行かねえと」

「うん分かった。こっちだよ」

 

 一護は橙に連れられ、ここから抜け出す出口へと向かった。

 

   *

 

 その頃、霊夢達はどんどん先へと進んでいた。もはや頭の中に一護の存在があるのかどうかすら危うい。

 アリスはあの後、目的である一護がいなかったため興ざめしたかのように帰っていった。

 

「……今のって春告精だよな?」

 

 魔理沙が後ろを振り向きながら、先ほど霊夢が撃ち落とした妖精のことを思って言った。

 

「そのようね。鬱陶しかったから、撃ち落としたわ」

 

 とても酷い言い方だ。

 春告精というのは、春になると春が来たことを伝えにくる妖精。

 普段はとても無害で、誰かを襲うかなど決してしないのだが、このような異変が発生していたせいか、不安や不満が爆発し暴れていたのだ。故に霊夢は弾幕で軽く撃ち落とした。

 可哀想な反面、仕方ないだろうという気持ちで一杯だ。

 

「それにしても、黒崎さんは中々姿を現しませんね」

 

 咲夜が特に心配はせず、事務的な言い回しで言う。とても非情には見えるが、一護のことはちゃんと覚えていてくれたらしい。

 

「そのうち現れるわよ。それより、雲の上まで上昇しましょ」

 

 一護のことを気にしている場合でもないのか、霊夢は一気に上空へと浮上した。魔理沙と咲夜もそれに倣って上昇する。

 

「雲の上に何かあるのですか?」

「気づかなかったの? 桜の花びらが徐々に空の方に上がっていってたのよ」

「え……?」

 

 それを聞いた魔理沙と咲夜はそこらに舞う桜の花びらを見る。

 霊夢の言う通り、たしかに桜の花びらが雲の上にゆっくりと上がっていっている。よく観察しないと分からない現象に、霊夢は真っ先に気づいたのだ。流石は数々の異変を解決してきた博麗の巫女である。

 そして、三人は雲の上にまでやってきた。

 

「おっ、ポカポカしてきたぜ」

 

 雪雲の上は太陽の日差しを全身に浴びれる世界が広がっていた。必然的に、地上のように寒くはなく、暖かい春のような陽気に満ちている。

 元来雲の上というのは寒いのだが、ここに異変が発生していると考えると有り得る話である。

 

「見えてきたわよ。目的地っぽいとこが」

 

 霊夢が前方を見て呟く。

 そこには途轍もない大きさの門があった。特筆して描写すべき点はないが、単純にとても大きな門がある。

 

「恐らく、あの門の向こうにいる誰かが春を奪っているのね」

「だったら話は早いな。調べに行こうぜ」

 

 魔理沙が門に向かおうとした瞬間――さながら門番のように三人の少女が現れた。

 一人目は金髪のショートボブに金色の瞳。

 頭には円錐状で、返しのある黒い帽子をかぶっている。服装は白のシャツの上から黒いベストのようなものを着用し、下は膝くらいまでの黒の巻きスカートを着ている。

 ベストに二つあるボタンは赤。スカートにも同じボタンが二つ付いている。また、ベストやスカートの裾には円や半円を棒で繋いだような赤い模様があしらってある。帽子の先には赤い三日月の飾りがついている。そして傍らにヴァイオリンが浮いている。

 

 二人目は全体的に強いウェーブがかかった薄い水色の髪。

 服装は、薄いピンクのシャツの上にこれまた薄ピンクのベストのようなものを着て、上同様薄ピンクのフレアスカートを履いている。 ベストは前面ボタン閉じタイプのもの。そして、円錐状で返しのあるピンクの帽子を被っている。返しの淵には、ここにもフリルが付いている。

 ベストの裾、スカートの端、襟の淵フリル手前、帽子の返しの淵フリル手前には黒いライン付きである。帽子の先には青い太陽の飾りがついている。そして傍らにトランペットが浮いている。

 

 三人目は少し薄い茶色の髪で、毛先に行くに従って強い内巻きの癖がついているショートヘアである。

服装は、白のシャツに赤のベストのようなものを着ていて、他の二人と違い赤いキュロットを着用している。

 二つあるボタンは緑。ベストやキュロットの裾には白いジグザグ模様がある。そして返しのある赤い円錐状の帽子を被っている。 帽子の先には緑の星の飾りがついている。同じく傍らには楽器のキーボードが浮いている。

 

 見た感じはバンドのように見えなくもないが、とてもここに演奏しに来たようには見えない。

 

「残念。ここから先は通さないよ。回れ右して帰ってほしいな」

 

 茶髪の少女が笑顔で言う。

 

「それじゃあ力尽くで通るけど、いいわね。その前に、あんたたちは誰なのかしら?」

「この門の番を任されている者。この先にいる方に依頼されたわけよ」

 

 金髪の少女が抑揚のない声で答えた。霊夢の力づくという言葉に、全く動揺していない。

 

「ふ~ん、じゃあ、あんた達を文字通り倒せば、自由に出入りできるってことね。分かりやすくて私好みだわ」

「そうねぇ、そうなるのかな。でも、この門は多分あんた達を通してくれませんよ。諦めて帰ってくれないかな?」

 

 水色の髪の少女が、どうでも良いかのように答える。

 話し方や態度が、とても個性的な三人だ。

 

「心配しなくてもいいわ。この程度なら簡単に通れるから」

「そう、なら弾幕ごっこで決めましょ。負けた方は諦めて引き下がるで。面倒だけど後腐れないでしょ」

 

 金髪の少女が、弾幕ごっこを提案してくる。

 霊夢からすれば、話が早くて助かる限りだ。

 

「上等よ。三対三だからちょうどいい弾幕ごっこになるわ」

「決まりね。じゃあ、自己紹介するよ。私はプリズムリバー三姉妹の長女――騒霊ヴァイオリニスト ルナサ・プリズムリバー」

「私は次女の騒霊トランペッター メルラン・プリズムリバーです~」

「私は三女の騒霊キーボーディスト リリカ・プリズムリバーよ」

 

 金髪の少女、水色の髪の少女、茶色の髪の少女の順番で自己紹介をした。

 

「私は楽園の素敵な巫女 博麗霊夢よ」

「私は普通の黒魔術少女 霧雨魔理沙だぜ」

「私は完全で瀟洒な従者 十六夜咲夜です」

 

 各々二つ名を言い名前を言った。

 そして、三対三の弾幕ごっこが始まった。

 

   *

 

「やっと出られたけど、あいつらどこまで行ったんだ?」

 

 一護はようやく迷い家から脱出し、先に行った三人を追っている。もともと霊圧探知というスキルが苦手な一護は、朧げではあるが三人の魔力や霊力を感じつつ追っている。

 迷い家の環境で変に温まったせいか、こちらに戻ってきた時の急な気温低下により一護の身体が少し震えていた。

 ……と、そんな時だった。

 

「あら、あなたは確か黒崎一護よね?」

 

 横合いから、一人の少女が接触してきた。

 そこには、ちょっと前まで霊夢達と会った、魔理沙の友達の魔法使いアリスがいた。

 

「誰だよあんた? 何で俺の名前を」

「私は七色の人形使い アリス・マーガトロイドよ」

 

 アリスは自らの名を名乗り、

 

「あんたのことはもう幻想郷では有名よ。知っていても、特に気にする点ではないと思うけど」

「……そうだったな。アリスか、覚えたぜ」

 

 文々。新聞で、一護のことは知れ渡っていたのだ。完璧に盲点だったというより、思い出したくなかった。

 

「で、俺になんか用か? 悪いが、今は急いでいて要件なら後で――」

「少し、弾幕勝負に付き合ってもらえないかしら?」

 

 一護が言い切る前に、アリスが尋ねてきた。

 

「改めてこの世界について聞きたいんだが、何で幻想郷の奴らは挨拶をするかのように弾幕ごっこをしたがるんだ?」

「それがこの世界での流儀よ?」

「くそ、不良(ヤンキー)と変わらねえじゃねえか」

不良(ヤンキー)と一緒にしないで。私は興味を持った相手としか戦わないわ」

「ほぼ変わらねえよ」

 

 一護は頭を抱えつつ答える。

 

「……悪い、今はそんなことをしている暇はないんだ。こっちは急いでてよ」

「ええ、聞いているわ。だから心配ならいらないわよ。魔理沙から黒崎一護との弾幕勝負をしても良いと、許可を貰ってるから」

「は? いや待て。お前、魔理沙を知ってるのか?」

「ええ、まぁね。あと、博麗霊夢と、メイドにも一応許可をもらったわ」

「どういうことだよ?」

 

 

 そしてアリスから簡単に事の経緯を聞いた。どうやら一護がいない間に霊夢たちがアリスとエンカウントし、そのような話の流れになったのだ。

 一護は少し悩む。

 アリスという少女からは霊夢と似たような匂いがする。一度言い出したら、己の言葉を曲げない力。恐らく変に言い回しても、簡単には納得してもらえないだろう。逆に考えている間の方が時間を浪費してしまう。

 故に――

 

「分かった。弾幕ごっこ、してやるよ」

「随分と速い心境の変化ね。まぁ断っても強引に付き合ってもらう予定だったからいいけど」

「そうかよ」

「けど、お礼だけは言っとくわ。ありがとう。じゃあ、早速やりましょうか」

 

 アリスが一言礼を言うと、周りから金髪ロングヘアーの可愛らしい人形がいくつか現れた。

 

「人形か。可愛らしいじゃねえか。いいぜ、来いよ」

「余裕な態度ね。甘く見たら、後悔するかもよ」

 

 湧き上がるアリスの魔力。

 その力を即座に感じ取った一護は、並の相手ではないことを思い知らされた。

 

(こいつ、純粋な魔力ってやつなら魔理沙と互角レベルかよ!?)

 

 魔理沙と同等のレベルであり、相手の能力などの詳細等は一切不明。故に、この戦いは少し長引く。いや、下手をすれば負けてしまうことも視野に入れなければいけない相手だ。

 

「さぁ、行くわよ!」

 

 魔力を横溢とさせながら、人形たちが駆動し戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「操符『乙女文楽』」

 

 先手は、アリスがスペルを唱えた。

 初手は小手だめしにも等しい、矮小なスペル。アリスの周りにいる数体の人形から、レーザーと共に無数の弾幕が一護に向かって放たれた。

 

「黒符『月霊幻幕』」

 

 一護も冷静にスペルを唱える。

 三日月状の弾幕が展開され、アリスの弾幕に向かって放つ。

 二人の間に無数の弾幕が飛び交い、相殺しあう。一つも余さず、お互いがお互いの力をゆっくりと測り合っている。

 一護はそんな中で一気に動いた。

 己の弾幕と、アリスの弾幕が飛び交う中を、針の穴を縫うように避けて躱し、アリスのもとへと飛ぶ。

 

「直接攻撃ってわけ。悪くない動きだわ。けどね――」

 

 瞬時に、アリスの周りを浮上する人形たちが動いた。

 自分の主を守るボディーガードのように、アリスの前に移動したのだ。

 

「…………」

 

 その人形たちの動きを見た一護は、即座に後退する。本来なら、このまま人形もろとも攻撃を仕掛ければ良いのだが、あの人形一体一体に込められている魔力が凄まじい。それに、何か他に能力を隠している危険性を孕んでいる。性急は得をしない。

 

(くそ、あの人形が邪魔だな。バウントと戦ってる気分だ)

 

 一護の脳裏にバウントとの戦いを想起させた。

 バウントはドールという人格を持った武器を使い戦う集団。アリスの戦い方は一護の目にはバウントと同じように見えるようだ。

 

「白符『白亜の露西亜人形』」

 

 一護がバウントの戦いを想起していた時に、アリスが休まずスペルを唱えた。

 人形たちから六方向に弾幕が大量に放たれる。さながら無数に飛び交う蛍を連想してしまう。

 

(だったら、これだ)

 

 一護もカードを取り出しスペルを唱える。

 

「黒符『天幻月牙』」

 

 一護がスペルを唱えた瞬間、アリスの周りの空間から三日月状の弾幕が現れた。

 このスペルは相手との距離などを一切無視して放てるスペルだ。これを初見で躱せるのは、相当の手馴れくらいだろう。

 故、その弾幕が一斉にアリスを襲った。

 一護は飛んでくる弾幕を躱しながら、やったかどうか見る。恐らく、この程度で勝つのは不可能だろうが、ダメージくらいは負っただろう。

 しかし、現実はそう甘くはなかった。

 

「やるわね。流石というところかしら」

 

 アリスが無傷で現れた。

 手傷どころか、服にすら一切の傷もなく汚れもない。

「――!」

 

 驚かずにはいられない一護。

 

「テメェ、何で無傷なんだ……って顔ね」

 

 アリスが一護の心中を読むように言った。思いっきり的を射抜いたセリフだ。

 

「まぁ、とても簡単なことよ。それはね、あなたのスペルや能力を全て魔理沙から聞いていたからよ」

「何だと……!?」

「そんなに驚くことじゃないわよ。魔理沙が家に来て、よくあなたの事を話していたから知っていただけよ」

 

 どうやら魔理沙とアリスは友達同士らしい。確かに魔理沙のことだけを魔理沙と言っていた。霊夢はフルネームだし咲夜はメイド。明らかに距離感が違う。

 

「あなたの能力は〝物質に宿る魂を操る程度の能力〟で、スペルの種類は全部で四つ。その中で一番強力なのが月牙天衝。そして、魔理沙から聞いた中で一番興味深かったのが、黒衣の姿よ」

 

 黒衣の姿……恐らく死神の姿の事だろう。

 そして、アリスは全部といっていいくらい一護のことを知っている。魔理沙のせいで。故に、攻略法も知られていると思ったほうが賢明だろう。

 

「私にその姿を見せてくれないかしら?」

「まだ、見せてやれる程の力を出しちゃいねぇだろう。お前が本気で来たら見せてやるよ」

「そう。なら、少しだけ本気を出そうかな」

 

 ため息混じりに、本気など出したくもない口調で締める。

 そして――

 

「蒼符『博愛の仏蘭西人形』」

 

 人形たちがアリスの周りに行き、それぞれ一発の青い弾を放った。

 その青い弾が白い弾に複数に分裂し、そして更に赤色の弾に無数に分裂した。それを繰り返すことにより、相手の避け際や反射を狂わせていく。

 

「甘ぇ! 黒符『月霊幻幕』!」

 

 一護もスペルを唱え、アリスの弾幕に対抗する。

 いくら無数に分裂しようと、自分に向かってくる弾幕だけ相殺すれば何の問題も無い。しかしこの所業は簡単に見えるが、とても技量がいる。自分の弾幕を巧く操作し、正面全域を全て見通し、演算しつつ予測なども加えて分裂する弾幕を対処しなければならない。

 これはもはや、一護の並外れた戦闘経験による手腕。一護だからこそ出来る方法だ。

 

「まだまだ行くわよ。闇符『霧の倫敦人形』」

 

 アリスは続けて新たにスペルを唱えた。

 人形たちがアリスの周りでグルグル回転しながら無数の弾幕をばら撒いてくる

(こいつは、なにかの布石か?)

 

 こんな単純なスペルが決め手になるとは到底思えない。この程度なら、とてもじゃないが、黒衣の姿にならずとも充分渡り合える。魔力は高いが、スペルが浅はかすぎるのだ。

 だが、それは本当に布石を投じたに過ぎなかった。

 無数に放たれた弾幕により、完全にアリスの姿を見失ったのだ。

 

(どこ行きやがった!?)

 

 一護が辺りを見回す中……

 

「ここよ」

 

 一護の真下に、アリスがいた。

 一護から見て、地上をバックにアリスがスペルを唱える姿が、同時に目に映る。

 

「咒詛『魔彩光の上海人形』」

 

 アリスの周りの人形たちが無数の弾幕と少数の大弾を展開し、それらを一斉に放ってきた。

 

「舐めんな!」

 

 並外れた身体能力で、空中を駆けながら全ての弾幕を避けて、弾く。その間も先と同じミスをしないよう、アリスを視界に入れながら動いていた。

 

「どうしたよ、こんなもんか? お前の実力は」

 

 一護は全ての弾幕を避け終わった後にアリスに言った。

 

「いいえ。まだ、全く本気なんて出していないわよ」

「だったら、そろそろ本気を出したらどうだ?」

「……それもそうね。早くあなたの黒衣の姿も見てみたいし」

 

 アリスは目に見えて分かるほどの魔力を溢れ出し、スペルを唱える。

 

「蒼符『博愛のオルレアン人形』」

 

 人形たちがアリスの周りで、一発ずつ青い弾を放った。

 その弾が先程の博愛の仏蘭西人形のスペルのように青、白、赤の順番で無数に分裂していった。

 

(さっきのスペルと同じか?)

 

 一護がそう思い、先の手順と同じように対策しようとした瞬間、大量の赤い弾幕が再び分裂した。赤い弾幕が黄緑の弾幕に無数に分裂したのだ。数も速さも、分裂するごとに、驚異的なほど増す。

 

「しまッ!?」

 

 一護は咄嗟の事で避けるのに遅れ、何発か被弾してしまった。

 

「休む暇は与えないわよ。雅符『春の京人形』」

 

 アリスが直ぐにスペルを唱えた。

 このスペルも先程の霧の倫敦人形のような弾幕だ。

 だが、圧倒的に先刻のやつより強力だ。

 

「クソッ、黒符『月霊幻幕』!」

 

 避け切るのは無理だと思った一護はスペルを唱えた。

 一護の周りに三日月状の弾幕が現れ、その弾幕が向かってくる無数の弾幕を相殺していく。しかし、そうこうしているうちに、またアリスの姿を見失った。

 

「またかよ! 次は――」

「ここよ」

 

 アリスの声が、全く先と同じように真下から響いた。

 一護が気づくと同時に、アリスがスペルを休むことなく唱える。

 

「咒詛『首吊り蓬莱人形』」

 

 これも先程の魔彩光の上海人形のようなスペルだ。

 だが、これも同じように強力になっている。

 この戦法は、本当に先と同じだ。スペルが強化されている以外は、行動もスペルを唱えるタイミングも全く同じ。これは何かの作戦かと思った一護は、直ぐ様ポケットから代行証を取り出した。恐らく心理的な何かを狙っているのだろう。なら、全く別の展開を用意してやるのみだ。

 

「黒斬『月牙天衝』!」

 

 黒い霊圧が代行証を中心に卍型を描くと同時に、一気にアリスめがけて放った。

 全ての弾幕も月牙の前では無意味。故に、アリスまで直行する。

 

「これが黒崎一護の最強のスペル……月牙天衝」

 

 アリスは一髪千鈞を引く勢いで、月牙を観察して軽く避けた。

 それもそのはずだ。月牙天衝の情報も魔理沙から聞いているのだから。

 

「今のが、あなたの最強のスペル、月牙天衝ね。想像以上の威力だわ」

 

 流石のアリスも今のには驚いたようだ。

 

「けど、油断は大敵よ。魔符『アーティフルサクリファイス』」

 

 刹那――一護の背中が爆発した。

 一護は苦悶の声を上げ、痛みと理解できない現状に、倒れそうな体を踏み止める。

 

「くッ……テメェ、何しやがった……!?」

 

 急に、何の前兆もなく自分の背中が爆発したのだ。激痛よりも、そちらが気になる。

 

「あなたが私の弾幕をスペルで防いでいる時に、真下に回ったついでに私の魔力を込めた人形をあなたの背中に付けておいたの。戦いに夢中で気付かなかったでしょ? まぁついでに魔力も隠匿しておいたけど」

「それが、爆発したのか……?」

「そうよ」

「……強ぇな、やっぱ。仕方ねぇ、俺も少し本気でいくぜ」

 

 そのセリフにアリスの口元が少し緩んだ。

 ようやく、自分の見たかったものが見れるのだから。顔には出さないが、今アリスの心が、たった一護の一言に心を震わせた。

 瞬間、一護の身体が黒い霊圧を纏っていく。そして徐々に霊圧が形成を始め……死神の姿へと変わっていった。

 

「……お望み通り、見せてやったぜ。これが、お前のいう黒衣の姿だ」

 

 アリスは一護の姿に驚愕していた。

 

(……これが、魔理沙の言っていた黒衣の姿。凄まじい霊力。先刻とはまるで別人みたいだわ。ええ、期待通りね。久しぶりに、興奮してきた)

 

 吹き上がる戦いへの欲望が、逡巡すらせずにアリスを動かせた。

 アリスが左腕に魔力を込め次なるスペルを唱えようとした瞬間、一護は一瞬でアリスの目の前に瞬歩の勢いで移動し、その腕を掴んだ。

 

「!? え……ッ!!?」

 

 アリスは目を見開いた。

 

(……いつの間に、私の前に移動を? この私が、全く見えなかったっていう訳!?)

 

 アリスは強引に一護に掴まれている腕を引き離し、一護から距離を取った。

 

「凄い、凄いわ。私をここまで驚かせた人間なんて初めてだわ。さぁ、これからが本番よ!」

「すまねぇけど、一瞬で終わらせるぜ」

 

 一護はそういい、構えた。

 アリスは持っていたスペルを唱え始める。

 だが、この戦いは一瞬で一護の言った通りに幕を閉じる事になる。

 

   *

 

 一方、三対三のチーム戦はお互い全く疲弊していない。

 それと霊夢チームは全くチームプレーをしていない。まぁ、この三人がチームプレーをしたら逆に変に感じてしまうだろうが。

 しかし三姉妹はその真逆。三人が三人ともお互いの事を通じ合わせ、無駄のない動きで攻める。

 

「さぁ聞きなさい楽しみなさい。騒符『ライブポルターガイスト』」

 

 ルナサがカードを取り出しスペルを唱えた瞬間、三姉妹から無数の弾幕が放たれた。

 

「そんなもの喰らわないわよ。霊符『夢想封印 散』」

「私も行くぜ。魔符『スターダストレヴァリエ』」

「幻符『インディスクリミネイト』」

 

 霊夢たち三人も各々スペルを唱え、飛んでくる弾幕を相殺していく。

 プリズムリバー三姉妹は霊夢たちが弾幕に気を取られている一瞬の間に、それぞれ霊夢たち三人を取り囲むように移動した。

 そして、三姉妹は各々のスペルを唱える。

 

「弦奏『グァルネリ・デル・ジェス』」

「管霊『ヒノファンタズム』」

「冥鍵『ファツィオーリ冥奏』」

 

 三姉妹の放った無数の弾幕が霊夢たちを襲う。

 そして、凄まじい爆発が起きた。

 

「あれ、もう終わっちゃったのかな?」

 

 水色の髪を靡かせながら、次女であるメルランが言う。

 

「多分。私たち三人のスペルを綺麗に受けたから、無事ではないと思うわ」

 

 それに長女のルナサが答えた。

 

「思ったより呆気なかったね。早くこの依頼から解放されたな。何か悪いことしてるみたいでいたたまれないし」

 

 末っ子のリリカが言った。

 だが、爆発による爆煙が消えた瞬間、三姉妹は驚愕した。

 霊夢たち三人が無傷で現れたのだ。

 

「夢符『封魔陣』よ」

 

 どうやら、霊夢がスペルを発動して防いだらしい。

 

「そんな……! 私たち三人のスペルをたった一枚のスペルで……!」

 

 リリカが驚きながら口を開く。

 

「チームワークは確かに凄いわ。それは認めてあげる。けどね、個々の力が低すぎるのよ。例えチームワークが良くても、私からすれば……まぁいいわ」

 

 一瞬、酷い言葉が頭に浮かんで言いそうになったが霊夢は止めた。

そして――

 

「あなた達とはもっと違う出会い方をしたかったわ。演奏、上手そうだし。戦いとか抜きで聞きたかったわ」

 

 珍しく霊夢が、敵である三姉妹に温情のようなものをかけた。

 

「ええ、なら奏でてあげましょうか? 依頼が終わるまで私たちの演奏を聴かせてあげるわよ」

「それも一興ね。けど、そういうわけにもいかないの」

「えー、そんなこと言わずに聴いて行ってよ。私たちのファンになるくらいいい曲よ」

「それはまた、別の日にお願いするわ」

 

 霊夢は魔理沙と咲夜にアイコンタクトを送り、

 

「さて、もう準備運動はこの位で良いわね。それじゃあ、一瞬で終わらせるわよ。魔理沙、咲夜」

 

 霊夢の言葉に場の雰囲気が一気に動き出す。

 この戦いも、そう永くは続かないだろう。

 

 この二つの戦いは――文字通り、一瞬で終わってしまう。

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