東方幻想斬~BLEACH the fantasy time of end~   作:ディーン・グローリー

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大きく加筆修正を行うだけでも、結構大変でした。

まぁ、この作品を流石ににじファンから見ている方はいないでしょうから、初心に還って書いていますが。
では、読みたい方はどうぞm(_ _)m


第2斬【博麗の巫女】

《1》

 

 青い空……まさに晴天の中、一人の男が大地をベットにすやすやと寝ていた。

 オレンジの髪に、均整の整った顔立ち、高校生くらいだろうか、そんな少年が寝ているのだ。風が吹き、周囲の木々がゆらゆらと葉を揺らしながら、枯れ葉が風に乗って落ちていく。

 その枯れ葉は少年の鼻元に落ちると、少年の意識が夢から現実へと変換された。

 

「……ん、いてぇ」

 

 少年は地面という不自然な場所で寝ていたせいか、目覚め悪そうに起きた。

 

「…………」

 

 その少年の名は黒崎一護。

 ただの高校生であり、現状特筆すべき点はない。しかし、少し前までは死神代行であり、藍染の手から仲間を、世界を護った男。その代償として死神の持つ霊圧を失い、元々あった霊が見えると言う特性も失った。

 その為、普通の何の変哲もない人間へと戻った、普通の少年なのだ。

 そんな一護は、普通なら初めに見る景色が自室の天井のはずなのに、何故だろうか、綺麗な青空だった。

 ――……おいおい、まいったな。寝ぼけてんのか?

 一護はゆっくりと上半身を起こし、首を左右に振り周囲を見渡す。

 見知らぬ森。奥深い森。大自然。

 そんなことでしか表現できぬ空間だった。

 寝起きの一護は、呆然ともう一度周囲を見回す。

 

(あれ……どこだ此処?)

 

 脳が冴えてきた一護は、現状を理解。そのため、愕然とした。

 

「――って、どこだ此処は!? どうなってんだよ一体!」

 

 理解不能の一言に尽きた。

 とりあえず冷静に、昨日のことを振り返る。

 

(えっと、確か昨日は普通に自分の部屋のベットで寝て、それから……思い出せねぇ。いや、思い出せる訳ねえよ。そこで俺は眠っちまったんだから)

 

 そう、一護はちゃんと昨日普段通り、ベットの上で寝ていたのだ。

 だがそれ以降、一護の身に何があったのかは分からない。分かるはずがないのだ。

 

(可能性としては親父の悪戯か? いや、ここまでふざけたことは流石にしねえか。……しねえよな?)

 

 いくら破天荒な父親でも、流石にこんな悪ふざけはしない。

 

(つか、近所にこんな深い森なんてあったか?)

 

 一護は地元である空座町のことを思い出すが、こんな深い森など一向に検索には引っ掛からない。

 

(もしかして、空座町の外か? 何で俺がこんな森に? ……取りあえず人を探して此処が何処なのかを聞かねえと。くそっ、携帯がねえのがここまで不便だと痛感するなんてな。ま、あったところで電波来てるかも怪しいけど)

 

 ここで冷静に対処できるのは、死神代行と言う非現実を過ごしてきたからだろう。そうでなければ、このように冷静な対処は難しいだろう。

 

「…………」

 

 縦横無尽、朝の散歩の如く森の中を歩き出す。

 見えるのは木、木、木。それだけだ。

 その最中、一護は考えていた。

 何故、自分がこのような森に居るのかを。

 誘拐……それが一番安易であり辻褄が合う道理だが、直ぐにそれは有り得ないと言う回答を出した。

 何故なら、自分を見張る人間も居ない上、監禁もされていない。それに寝る前は窓の鍵は掛けた。カーテンは閉めなかったが。

 だったら一体……

 

 ――ガサガサと、不意に森の奥から草木を掻き分ける大きい音が聞こえた。

 

(人か?)

 

 一護は考える思考を停止させ、恐る恐る音源へと近づく。

 誘拐犯と言う説が完全に解けたわけではないため、慎重に行動しなければならない。

 

 …………

 逃げる、と言う術はもう出来ない。

 一護が人だと思った物音は人でも、そして動物でもなかったのだ。

 それは妖怪……と表現するのが合っているのだろうか? 漫画に出てくる異形の化物と表現したほうが分かりやすいのかもしれない。

 そう、それは化物。

 人間の限界であろう体格を優に超える図体。両手の指先には鋭く尖った長い爪。そして何より人間と違うのは、身体の全てを覆う茶色い毛と獣の顔。

 まるで狼の化物。

 人間の枠組みから外れた人外。何より感じさせる威圧が、並大抵のもではない。普通の人間なら恐怖に震えて、腰を抜かしてしまうか、失神してしまうような重圧である。

 その化物は獲物を見つけたような眼で一護をギロリと見る。

 

(ホロウ)! いや、こいつは(ホロウ)じゃねえ!?)

 

 虚ではまず無いだろう。

 何故なら虚にあるはずの胸の穴も、仮面も何処にも見当たらない。

 何より、今の一護は霊圧が微塵もないため、霊を見ることが不可能なのだ。ゆえにそれは有り得ない。

 

「しゃあねえ!」

 

 一護はズボンのポケットに締まってあった代行証を取り出す。

 これは触れることによって死神へと成れるドクロの彫られた木版だ。だが今の一護は――

 

(しまった! いつもの癖で……死神にはもう、成れねえんだった!?)

 

 そう、何も起こらないのが必然。

 霊圧の無いものが触れたところで意味を成さない。

 瞬間、化物が鋭い牙を誇らしげに見せびらかすように、大口を開け咆哮を上げる。耳を突き刺すような獣の咆哮に、周囲の木々がざわめく。

 その刹那に、疾風の勢いで化物は一護に襲いかかった。

 

「ッ!?」

 

 一瞬だけ焦りを見せる一護だが、直ぐに冷静に処理作業を行う。

 スッと、一護は化物の初撃を巧く躱した。

 すると、化物は避けられたことに動揺し、動きが止まる。だが再び、追撃を行うため攻撃を再開する。

 鋭く尖った爪が、一護を文字通り引き裂こうとするが――

 一護は避けきる。

 そう、一護は死神時代、仲間を護る為に鍛え上げた身体と反射神経を活かしているのだ。

 簡単にはやられたりはしない。

 だが相手は人間ではない異形の化物だ。連続する化け物の猛攻。回避は可能だが、一撃でも受ければ満身創痍、下手をすれば即死の域だ。同時に、普通の人間の一護には勝ち目は無く、徐々に体力が衰え始める。

 

(くそ……! そろそろ身体の限界だ。今の俺じゃこいつに勝ち目はねぇ! どうすりゃ……)

 

 体力が衰え、避けるのがやっとに成った途端に一護は、足元の木の根に気づかず片足を躓き背中から地面に倒れこんだ。

 その一瞬の隙を、化物は逃がさない。

 鋭い爪を、一護を貫くため十指全てが穿とうと動く。

 

(やべぇ! やられる――!!)

 

 そう思ったが刹那。

 

 一護の前に人影が一人現れた。

 

 そいつは変わった巫女装束を着ている。袖がついておらず、白色の袖を別途腕に括りつけ、肩と腋の部分を露出している。しかも下は袴ではなくスカート。

 恐らく巫女なのだろう。

 その巫女さんは、襲いかかる鋭い爪を何かの札を手に軽く弾き、無駄のない動作で次の動きを起こす。

 手に持っていた御札を一枚、化物に向けて投げたかと思うと、電撃のようなものが走り化物は苦悶の声上げ、崩れ落ちたのだ。

 一瞬の、本当に一瞬の出来事だった。

 

「……あんたは、一体?」

 

 倒れた身体を起こし、目を丸くして巫女さんの背中を見る。そして無自覚に問いかけた。

 あのデカく頑丈な身体の化物を、自分より小さい少女が一瞬にして倒してしまったのだ。

 一護は驚くしかなかった。

 そして謎の巫女は一護の方に振り向き、質問に答える。

 

「博麗 霊夢」

 

 

 巫女――博麗霊夢との出会いが、一護のこれからの物語を大いに変えてくれるのだった。

 

 

《2》

 

「――で、あんたの名前は?」

 

 一護を絶体絶命の危機から救い出してくれた巫女――博麗霊夢に名前を尋ねられた。

 

「……黒崎一護」

 

 自分の名を名乗ると同時に、ゆっくりと立ち上がる。服に付いた砂を手で軽く払いながら、博麗霊夢と向き合う。

 それで明確に分かった。霊夢の身長は本当に少女クラスだ。朽木ルキアと同じくらいだと言って良い。それが故、面映かった。少女に助けられる自分の姿が。

 ……そんなことを思っている一護とは対照的に、霊夢は一護の格好をまじまじ注視していた。

 

「な、何だよ?」

 

 別に恥ずかしい格好はしていないが、ここまで真剣に見られると恥ずかしい。

 服装は適当な一着を着ている。ただ寝ていた時に此処に来たせいか、現在は靴は履いていない。格好で恥ずかしいといえば、この点くらいだ。

 そして霊夢は確信したかのように、言葉を紡ぐ。

 

「ふむふむ、なるほどね。……あんた、外来人でしょ?」

「外来人?」

 

 唐突に意味の分からない単語を使われ困惑する。外来人……外国人のことかと、一瞬思うが違うだろう。相手は完全に日本人だ。それと同じで自分も日本人。それを間違うわけがない。では、どういった意味で使ったのだろうか?

 霊夢はやっぱりね、と言うような表情になり口を開く。

 

「外から幻想郷にやってきた人間を指す言葉よ。率直に言うと、あんたは不運にも自分の住んでいた世界から、こちらの世界に幻想入りしてしまったって言う事」

「はい?」

 

 いきなり自分の知らない単語を使われ、一護の頭がこんがらがる。

 とりあえず、冷静に事を対処しようと思う。

 

「えっと、悪いけど一から順に説明してくれないか? 幻想郷とか幻想入りとか、そんな訳の分からない単語を使われても理解できねぇよ」

「あら、それもそうよね。まぁ暇だし、ゆっくりと話して上げるわ」

「そいつはどうも」

 

 一護は一言礼を言う。

 霊夢は話が長くなるのか、近くにあったちょうど良い感じの切り株に腰を下ろす。

 そして大間かな霊夢の幻想郷の講義が始まったのだ。

 

   *

 

 霊夢の説明が終わったのは数十分後だった。

 大まかだったが、一護はしっかりとそれを理解し、順応できていた。元々、死神代行だったお陰とも言うこともあるのだろう。常人なら理解に苦しみ、夢だと思い込むかもしれない。

 

「どう、理解できたかしら?」

「ああ、大体は。つまり、この幻想郷とかいう世界は博麗大結界っていう結界で、俺が住む世界とは完全に隔離された世界って訳だな」

「まぁ簡単に纏めると、そんなとこね」

「すげぇな。だからこんな妖怪とかいんのか」

 

 一護は絶賛気絶中の妖怪を一瞥する。

 幻想郷は過去に初代博麗の人間が創り出したらしい。それに加担した妖怪の力も相まって、妖怪という存在が幻想郷で生きているようだ。

 

「あんたも凄いわよ。こんな状況を簡単に受け入れるなんて。今までの外来人とは対応が違いすぎるわ。ちっとも面白くないわよ。少しくらい焦りなさい」

「面白くなくて悪かったな。俺にも色々あるんだよ」

 

 黒崎一護は元々死神代行で死後の世界〝尸魂界〟や〝地獄〟、現世と尸魂界の狭間に存在する〝虚圏〟にも行った事があるのだ。今さら、幻想郷とかいう場所に来ても、それ程までに動揺はしない。

 それにどちらかと言うと、幻想郷の方が尸魂界に比べてまだ現実味がある。

 

「ふぅん、まぁ詳しくは聞かないわ。けど外来人はみんな慌てふためいて、説明もちゃんと聞いてくれないことの方が多いし。それに比べたら、あんたはマシね。話が円滑に進んだから」

「そいつはどうも」

「外の世界の常識なんて知らないけど、あんた変人って言われたことない? 格好も変だし」

「失礼なことを言うんじゃねえよ。他のやつより適応力があるだけだ。てか格好を馬鹿にすんじゃねえ。俺は寝てたらこっちの世界に来てたんだからな。ふだん外を出歩くときはこんな格好してねえよ」

 

 そもそも脇と腹を丸出しにしている巫女さんに言われたくない。見方によっては痴女だ……と一護は思う。

 

「あんた、いま私の格好を見て失礼なこと思い浮かべなかった?」

「あ、いえ、していないです」

 

 何やら先ほどの妖怪を一撃で屠った札を取り出したので、一護は頭を下げて謝罪した。

 そして咳払いし、話を進める。

 

「まぁなんだ。さっきの説明が本当なら、あんたの力で俺を外に戻せるんじゃないのか?」

「え?」

「いや、あんたの力を使えば、俺を元の世界に戻せるんじゃないかって話なんだが」

 

 博麗大結界を何らかの形で操作し、外と干渉させたら次元の歪みか何かで一護を戻せるだろう。

 だが霊夢は――

 

「そ、それは、その……ね」

 

 盛大に釈然としないのだった。

 

「……何だよ、どうかしたのか?」

「そ、それがね、今はあんたを帰すことができないの」

「は?」

 

 ここで一護は初めて動揺した。

 

「……な、どういう事だよ?」

「帰してあげられないのよ。結界が突如おかしくなって。一昨日までは結界に何の異常も無かったんだけど、昨日……結界に原因不明な異常が起きて、博麗大結界がまるで誰かに操られているような感じがして、干渉することができないの」

 

 博麗大結界の原因不明の異常。

 それにより、霊夢が結界を操れないのだ。

 

「だから私は現在それを解決するべく動いているわけ」

 

 霊夢はそれを言い終えると立ち上がる。

 

「まぁどうやって解決できるのかも、全てが不明なんだけどね。言ってて自分でも恥ずかしいけど、手がかりも何もない状況ってわけ」

 

 苦笑いを浮かべながら言った。

 それが故、一護の識閾が変わったかのように、自然と言葉を吐いた。

 

「なら、俺も手伝っても良いか?」

 

 そんな発言をしたのだ。

 霊夢は少しビックリし、慌てて返す言葉を検索した。

 

「え、あ……あ、あんたなんか足手まといになるからいいわよ」

 

 何て言ったのだ。

 だがその反面、嬉しかった。

 自分の手助けをしてくれる人間なんて、聞いて呆れるがそれでも嬉しかった。

 一護は一護で引かない。

 

「いいだろ別に。どうせ帰る手段もないし、することもない。その上、異変が解決しねぇと俺は帰れねぇんだし。まぁあれだ。――俺は足でまといにならねぇよう努力する」

 理屈にも適った台詞を吐く。

 それに霊夢は目を丸くして、少し思案したあと言った。

 

「分かったわ。あんたがそこまで言うんなら手伝わしてあげる」

「ああ。じゃあ改めて」

 

 一護は片手を霊夢に差し出す。

 

「よろしくな霊夢」

「こちらこそよろしく、一護」

 

 霊夢は片手を差し出された一護の手に持っていき握手を交わした。

 

 後、一護と霊夢はあらゆる異変に立ち向かう事になる。




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