東方幻想斬~BLEACH the fantasy time of end~   作:ディーン・グローリー

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第22斬【グリムジョー・ジャガージャック】

「――グリムジョー!」

 

 黒崎一護は確信と共に叫ぶ。

 目の前に、忘れるはずもない男が立っている。

 死神時代、激しい激突を繰り返した敵。虚圏の虚夜宮で倒したはずの破面――グリムジョー・ジャガージャック。

 その男が、何の因果か幻想郷に……黒崎一護に背中を向けるようにして佇んでいる。

 

「……よォ、黒崎一護」

 

 ゆっくりとした動作で、グリムジョーは振り向きつつ呟くように一護の名を口にした。

 刹那、一護の視界からグリムジョーの姿が消えた。

 いや、消えたのではなく、単純に動いたのだ。常人には目視不可な速さで、風のようにして一護を引き裂くように――

 

「ッ!」

 

 一護は透かさず後ろに跳ぶ。

 その瞬間には、己のいた位置に地面を打ち砕くほどの拳が叩き込まれていた。間一髪、ちょっとでも避けるのに遅れていれば、地面の代わりに自分の頭蓋が砕かれていたであろう一撃だ。

 

「何しやがんだグリムジョー!?」

 

 今のは確実に殺す気の攻撃。

 一護は睨みつけ、砂塵飛び交う中、油断せずに問いただす。

 

「久し振りじゃねぇか、黒崎。まさか、テメェまで此処に来ていたなんてな。偶然じゃねェかオイ。なぁ、どうして此処にいやがんだ黒崎?」

 

 グリムジョーは一護の言葉など無視し、己の疑問のみをぶつける。

 先の一撃は訛っていないかの試しだったのか、特に戦闘態勢に入るのではなく質疑した。

 

「それはこっちのセリフだ。何でテメェがここにいんだよ?」

「先に聞いたのは俺だぜ。テメェから答えろ」

「……俺はただ、偶然ここに幻想入りしちまっただけだ」

 

 今ではその回答も怪しいが、しかし現在はそれで正解だろう。

 

「お前も、同じ理由か? グリムジョー」

「……ああ。俺も此処に幻想入りして、そこの女に此処の知識を教わった」

 

 グリムジョーは紫を一瞥して言った。どうやら、八雲紫に世話になっているようだ。

 とてもじゃないが、それだけで女――八雲紫の総合力を凄まじいものと感じ取れる。グリムジョーのような野蛮で戦闘大好きな男に何かを教え、一緒に暮らしている。そんなことができるのは並の者では不可だ。

 よって、紫はとんでもない力を持っているのだろうと察せれる。

 

「…………」

 

 そこで、一護はある事に気付いた。

 

「テメェ、霊圧はどうした?」

 

 そう、一護はグリムジョーの霊圧が弱まっている事に気付いたのだ。

 以前グリムジョーと戦った時より半分位の霊圧が消えている。

 

「さぁな。俺はテメェとノイトラの戦っている最中に意識が途絶え、此処に来た。そして、理由も何も分かんねぇが、俺の霊圧のほとんどが消えてやがったんだよ。それどころか、帰刃(レスレクシオン)まで使えなくなっちまってる」

「何だと?」

 

 グリムジョーは苦虫を噛み潰したように言った。

 一護が感じたところ、恐らくグリムジョーは全盛期の三分の二程の霊圧を失っている。しかも聞くところによれば、破面の最終奥義に等しい帰刃まで使えなくなっているらしい。

 しかしグリムジョーは、そんなことほぼ歯牙にもかけず言葉を吐く。

 

「けどまぁ、実際そんな事はどうでもいいんだよ。俺は……テメェと戦う為に此処に呼んだんだぜ」

「――」

 

 半分以上、予想していたことだ。

 グリムジョーが一護の目の前に現れた時点で、なぜ自分がここに呼ばれたのか、今から何をするのか予想できなかったわけがない。

 ――戦い。

 一護とグリムジョーの間にあるものは、それのみと言って過言ではない。

 

「心配しなくても、ちゃんとした弾幕勝負でだ、黒崎。テメェは言ったよな。何回でも戦ってやるってよ」

 

 一護はグリムジョーとの戦いの終末を思い出す。

 確かに言っていた。自分のことが気に喰わないなら、何度でも戦ってやると……発言した記憶が残っている。

 

「だから、俺と戦え! 黒崎! 今度こそテメェに勝ち、俺の方が上だって事を教えてやる! あの時の雪辱ここで晴らさせてもらうぜ」

 

 もはや純粋な執念、執着心。

 そう言った本能により、己の好敵手である黒崎一護に仕向ける。

 

「……ああ。だったら、俺も手加減無しで行くぜ。覚悟しろよ、グリムジョー」

「いいぜ、そうこなくっちゃな黒崎。勝負ルールは至って簡単だ。――最後まで立っていた奴の勝ちだ。さぁ、始めようぜ!」

「ああ」

 

 グリムジョーがそういうと一護は即座に代行証を使い、死神の姿になった。

 こいつ相手に下手に手を抜けば、一瞬で自分の敗北が決まるだろう。故、手加減など最初から皆無で挑む。

 

「テメェのことは紫から聞いてるぜ。死神の力を無くしたらしいな」

 

 その発言に、一護は眉をひそめた。

 

「藍染の野郎を倒す為に失ったんだろ。いいじゃねぇか! 俺もお前も一から再び強くなった! 対等ってやつだよ!」

 

 確かに一護は霊圧を失い、幻想郷で一から鍛え強くなった。

 滞在期間は違うものの、始まりは対等と言って過言ではないだろ。いや、グリムジョーは霊圧の三分の一は残っていたことを鑑みるに、普通に考えてアドバンテージはグリムジョーに傾いている。

 しかし、いちいちそんな小さなことで揉めるようなことは断じてしない。

 

「喋ってる暇なんてあんのか? グリムジョー。随分と余裕だな」

 

 刹那――グリムジョーが舌を回している中、一護はいとも容易く背後を取っていた。

 手加減、油断。そんなことをしていて勝てる相手ではないのは理解している。故に隙をつき、初撃を貰い受けた。

 戦いなど、お互いが臨戦に入った時点で始まっているも同義なのだ。

 一護は右腕に備わっている漆黒の霊圧を刀に形成し、攻撃を仕掛けた。

 だが、振り向き様に抜き放ったグリムジョーの刀により、宙でぶつかり合い火花を散らせただけだった。

 

「舐めんな!」

 

 単純な力任せにより、鍔迫り合いなどほんの数瞬により終わった。

 膂力は完全にグリムジョーの方が上だったのか、そのまま一護は勢いよく吹っ飛ばされる。

 しかし態勢を直ぐに立て直し、追撃に備えるためスペルを放った。

 

「黒符『月霊幻幕』!」

 

 一護の周りに三日月状の弾幕が展開され、吸い込まれるようにしてグリムジョーへと飛んでいく。

 

「おいおいその程度の弾幕で俺をやれると思ってんのかよ!」

 

 それを見たグリムジョーも、同じくスペルを唱える。

 

「豹符『豹鉤』!」

 

 グリムジョーから無数の棘状の弾幕が、螺旋を描くように放たれた。

 そしてお互いの弾幕が掻き消しあい、相殺し合いながら激しい爆風と先行を轟かせる。

 烈火怒涛の勢いで放たれるお互いの弾幕に、一切の手抜きがされてない。

 

「黒符『天幻月牙』!」

 

 そんな中、一護は新たなスペルを唱えた。

 グリムジョーの周囲空間から、一護の弾幕が顕現される。少しでも逃げ遅れれば、弾幕の餌食となるそのスペルは、初見で躱すのは半端ではない技量が必要となる。

 だがグリムジョーは初めから読んでいたのか、一瞬でその場から姿を消した。

 響転(ソニード)――破面が使う高速移動能力。常人なら消えたとしか思えないその速度。

 だが一護は常人ではない。それ故、見切り対処する。

 瞬間、一護の懐でグリムジョーの刀剣が炸裂した。

 同時に耳を掻っ切るような、凄まじい金属音が響き渡る。

 見切っていた一護は、即座にグリムジョーの刀剣と自分の霊圧刀で防ぎ、そして一気に弾いたのだ。

 

「なるほど、平和ボケはしてねぇようで安心した。雑魚の妖精に負けたと言う情報を見たときは、目を疑ったんだがな」

「そいつは文々。新聞か。お前も読んでたんだな。なら、一つお前に教えといてやるよ。あれは事実だ。俺は負けた。いや、言い方は悪いし身勝手な物言いになるけど、あれは負けてやったんだよ。けどな、妖精は弱くねぇぞ」

 

 最初はグリムジョーが例の新聞を読んでいたことに少し驚いたが、しかしそんなことより妖精――チルノやその他のみんなを雑魚と呼ばれるのは、どうにも嫌気がさす。

 チルノ、そして大妖精は紅霧異変の時、一護を守るため殺しすら躊躇わない敵に、果敢にも挑んだ。

 そんな妖精を弱いと、誰が言えようか。

 

「負けてやったか。クク、ハハハハハ! そいつはまたそどうしてだと聞きてぇところだが、今はそんなことはどうでもいい。妖精に負けたと見たときは、テメェも雑魚に成り下がったのだと不安だったが、杞憂で何よりだ!」

「そう、かよ!」

 

 そしてお互い、莫大な霊圧を刀剣に纏わせた。ここに激突した力と力の鬩ぎ合い。拮抗するが、しかし僅かに一護が押され始まる。やはり霊圧の総量や、膂力が相手の方が上回っている証拠だろう。

 

「ぐッ、クソォ――!」

 

 しかしどうしてだろうか。始めのように、力任せの激突でも吹き飛ばされることはない。

 これは、一護の力が……戦いの中で天井知らずに膨れ上がっているのだ。

 論理的解析は不可能に等しい。だがしかし、現に一護は通常時より、戦いの中での方が霊圧の力強さが増す。それはレベルアップでも何でもない。最初から一護に備わっている力がフル活動しているだけなのだ。

 紅霧異変時に美鈴からレミリア、フランに刹蘭、ルリミアと戦った際、霊圧が限界状態になっても尽きることは無かった。それは――己が思っている以上に、感じている以上に、霊圧が眠っており底が見えないからだ。負けそうな時、諦めてはいけない時に一護は無意識下で下げている力を、一気に上げている。たったそれだけなのだ。

 

「いいぜ黒崎。戦いはこうでなくちゃアな!」

 

 グリムジョーは後方に飛び、一護から距離をとるとスペルを唱えた。

 

「存分に楽しめよ。虚符『虚閃』!」

 

 瞬間、紅い閃光が一護の視界を埋め尽くした。

 死神時代に、嫌というほど見てきた大虚や破面が放つ技――虚閃(セロ)だ。

 破壊の限りを尽くす閃光が、大地を抉り、吹き飛ばしながら迫る。更に閃光だけあり、速さも凄まじく、例え知っていても避けるのは困難を極めた。

 それ故――

 

「ガッ、アアアアアアアア!!」

 

 虚閃に呑み込まれた一護は、全身を蹂躙されると同時に、ボロ雑巾のように吹っ飛ばされた。

 

「まだだぜ黒崎! 豹符『豹鉤』!」

 

 グリムジョーは攻撃を休める事なく続いてスペルを唱える。

 再び棘状の弾幕が展開され、螺旋のように回転しながら一護を襲う。そも、この弾幕は貫通性と見掛けによらない破壊力に優れており、喰らえばそれ相応の痛手を負うのは必須。

 一護は虚閃でのダメージに抗いつつ、対抗、いやグリムジョーの弾幕を消し飛ばせるほどのスペルを唱える。

 

「調子に乗ってんじゃねえ! 黒斬『月牙天衝』!」

 

 一護から破壊力の優れた月牙が放たれ、グリムジョーの放った棘状の弾幕を掻き消していく。

 のみならず、月牙はそんな弱い弾幕だけでは食い足りないようで、そのままグリムジョーへと飛来した。

 

「チッ、虚符『虚閃』!」

 

 グリムジョーは月牙に向かって、同じく破壊力に優れた虚閃を放つ。

 だが、紅い閃光すら両断しながら、漆黒の月牙はグリムジョーを包み込んだ。

 瞬間、とてつまない爆発が発生し、凄まじい爆風と鼓膜を打ち破るような爆音が響き渡る。

 

「…………」

 

 一護は追撃するでもなく、様子を見る。

 爆煙で姿こそ見えないものの、あの奥からはまだまだピンピンしているかのような霊圧を感じ取っていた。いや、ピンピンどころか、換気に震えているようにも感じる。

 

「……フッ、フハハハハハハハハハハ!!」

 

 そして、哄笑が上がったかと思うと、爆煙が引き裂かれて、そこからほぼ無傷に等しいグリムジョーが現れた。

 

「いいぜ黒崎! この時を待ってたんだ! 今度こそ俺がテメェを全力で潰せる時をよ!」

 

 さながら地震でも起きたかのような錯覚さえするほど、グリムジョーは地面を蹴り飛ばし一護へと駆け出す。そしてその速さはまるで野獣。ソニードのような瞬間移動のような速さではなく、簡単に目視できるが圧倒的加速が付随していること。それは精神的にも恐ろしく、まるで蛇に睨まれたカエル状態へと追いやられる。

 しかし一護は冷静に向かってくる獣に対して、まずは遠距離からの攻撃を仕掛けた。

 

「黒符『月霊幻幕』!」

 

 漆黒の弾幕が、駆けてくる獣を打ち抜くように発射されていく。

 しかし獣のような俊敏な動きで、全ての弾幕の間間を抜けていき、己の獲物を……食い破った。

 

「ガァッ!」

 

 グリムジョーは一護との距離が近くになると、止めの響転で一気に目の前まで瞬間的移動を行い、そのまま一護を上空に蹴り上げる。

 そして、蹴り上げた一護の方まで跳び、次は一護を地面の方に蹴り落とす。

 その威力、一護の身体が大地を陥没させ、地鳴りと土煙が辺りを支配するほどだ。

 

「行くぜ、黒崎」

 

 土煙のせいで、一護の姿は視界に入っていないが、ある程度の場所は分かる。

 そこに手のひらをかざし……

 

「喰らいやがれ――虚符『王虚の閃光』!」

 

 グリムジョーが新たなスペルを唱えたかと思うと、絶大な霊圧が手のひらに凝縮される。

 そして、超極太の青い虚閃が放たれた。

 普通の虚閃とは威力の桁が違う。次元すら歪ませ、破壊力はまさに上位互換であり範囲も増している。

 さながら神が下した罰のように、極太の青い閃光が大地に降り注ぎ、大地が破壊の限りを尽くされた。爆風や爆煙が辺りを覆い尽くすと、大型隕石でも落ちたかのようなクレーターを作り出していた。

 

「……どうした。こんなもんじゃねぇだろ。……出てこいよ」

 

 グリムジョーは上空からクレーターの様子を見るが一護の姿はない。この程度で倒せるほどの相手ではないことを理解しているグリムジョーは、何気なしに呼びかけてみたのだ。

 瞬間、背後に一護が現れた。

 

「黒斬『月牙天衝』!」

 

 一護はグリムジョーが振り向く前に月牙を放つ。

 月牙はグリムジョーを飲み込んだが、直ぐに月牙が掻き消された。

 

「いいぜ! 黒崎一護!! いい眼だ。その眼が! 気に喰わねえんだよ!!」

 

 グリムジョーは再び一護に斬り掛かる。

 一護もそれに対抗するべく、グリムジョーに応対する。

 一護とグリムジョーの最初の初太刀が激突すると同時に、凄まじい突風と砂煙が吹き荒れた。

 そして、直ぐに二撃目の激突に入る。

 一回一回激突すると同時に地面が砕け、突風が吹いた。

 

   *

 

 それを観戦している八雲紫と藍は驚いていた。

 

「すごい戦いですね、紫様。幻想入りした時のあの人は脆弱でしたが、ここまで成長しているとは驚きです」

 

 藍が戦いを見ながら紫に言う。

 

「ええ。二人共、身体能力だけならとても優れてるわ。これは中々見ものな戦いになりそうね」

 

 紫はこの戦いを楽しみながら見ている。

 面白い戦い程、終わるのが早い。

 だから、この戦いも直ぐに決着が着くだろう。

 紫がそう思いながら、背後に呟きかける。

 

「あなたもそう思うでしょ。博麗霊夢」

 

 ガサガサと、爆風や烈風により倒れかけている草木を掻き分けながら、そこから巫女姿の霊夢が現れた。

 

「そうね」

 

 一体いつから気づいていたなどとは聞かない。

 端的に肯定の言葉だけを言う。

 

「あなたがここにいるってことは、幽々子が?」

「それしかないでしょ」

 

 紫の質問は返しているが、目と意識は既に一護の方に向けられている。

 

 

「……どうした。こんなもんじゃねぇだろ。……出てこいよ!」

 

 漆黒の衣を纏う一護を見て、霊夢はどこか緊張している。

 そして観戦する中、紅い閃光が一護を襲ったが、霊夢は特に表情を変えずに見据える。見続ける。

 

「そうか、お前はお前なりの努力をしたって訳かよ」

 

 一護の言葉から、相手が一護の知り合いだと簡単に理解できたし、幽々子からそのへんのことは少しだけ聞いていた。

 

「まだだぜ! 本番はこれからだ!」

 

 そして霊夢の目の前で繰り広げられる死闘。

 弾幕、剣戟、スペル、霊圧、体術と、あらゆる攻撃手段と防御手段、反撃手段を瞬時に演算し練りこんだ卓越した闘争。共に奥義を尽くし、幻想郷が二人の力で侵食していく、誰も介入できない域で絡み合いながら喰らい合う。

 音速を遥かに超え、世界の理すらも半分無視した異質かつ凄惨な戰。

 刀と刀が軋るだけで、幻想郷に衝撃が走り抜ける。大空が二つに割れ、烈火怒涛の攻防が巻き起こっている。

 

 霊夢はまるで、自分の戦いでもあるかのように、一護に向けて小さく言葉を吐く。

 

「……これが、あいつの正真な本気。なら――勝ちなさいよ。負けることは許さないから」

 

   *

 

 斬り込み合い、弾幕の掛け合い、そして鍔迫り合い。

 その中、一護は強引的に月牙を放ち、グリムジョーをそのまま後方に吹っ飛ばした。

 

「終わりだグリムジョー!」

 

 一護は刀を構え、グリムジョーの方に凄まじいスピードで一気に跳ぶ。

 だが、グリムジョーは直ぐに態勢を整えスペルを唱える。

 

「甘ェんだよ。封閉『反膜の匪』!」

 

 グリムジョーがスペルを唱えた瞬間、一護の周りに半透明の結界が張られた。

 これにより、一護はその中に閉じ込められる結果となったのだ。

 

「何だよ、これ!?」

 

 一護は刀で結界を破ろうとするが、全く効果がない。

 

「無駄だぜ黒崎。そいつは内側からじゃ絶対に破れねぇ。その代わり、外側からの攻撃なら簡単に破れるがな!」

 

 そのセリフに、一護は一瞬で理解し驚愕する。

 グリムジョーはスペルを唱えた。

 

「吹き飛べ! 虚符『虚閃』!」

 

 グリムジョーの虚閃が、閉じ込められている一護に向かって放たれた。

 これに閉じ込められれば必中。故に防ぐしかない。

 そして虚閃はいとも簡単に結界を破壊し、一護を包み込んだ。

 

「ッ、オオオオオオオオオオ!」

 

 一護は己の漆黒の霊圧で全身を包み、完全防御耐性で挑んだが、それでもやはり威力は凄まじく激しい痛みが全身を襲う。

 

「よく耐えたな。だが、次で終わりにするぜ。黒崎一護」

「黒斬『月牙天衝』!」

 

 グリムジョーが動き出す前に、一護が月牙を放った。

 しかし一直線に放たれた月牙は、軽く横に飛び躱されてしまった。

 だが、それが狙いだったのだ。

 

「…………」

 

 一護は笑みを零した。

 グリムジョーは、一護の笑みを理解するのに、そう時間はかからなかった。上空から霊力を感じとったからだ。

 そう、上空からグリムジョーを狙うように、弾幕が烈風のごとく降り注ぐ。

『天雨月閃』――あらかじめ敵の避ける位置を予測しておき、月牙を放つ前、つまり結界が虚閃に破られた際に放っておいたのだ。

 

「くッ、くそ……!」

 

 まともに喰らってしまったグリムジョーだが、これで倒せるほど安い相手ではない。

 

「よく耐えたじゃなぇか、グリムジョー。けど、次で終わりにするぜ」

「テメェ……!」

 

 グリムジョーは一護にさっきのセリフを真似られて少し苛立つ。

 

「ふざけてんじゃねぇぞ!」

 

 グリムジョーが一護に駆け出そうとする。

 だが、一護の方が先にグリムジョーの目の前に行き、先に斬りかかった。

 グリムジョーは一護の攻撃を刀で受ける。

 

「くっ、舐めんな!」

 

 グリムジョーは空いている足を使い、一護の脇腹を蹴る。

 

「グァ……ッ!」

 

 それにより、一護の腕の力が一瞬弱まった。

 そこを狙いグリムジョーは一護の刀を弾き、一護の顎を蹴り、上空に吹き飛ばす。

 

「虚符『虚閃』!」

 

 グリムジョーはスペルを唱え、上空に飛んだ一護に虚閃を放った。

 一護はそれを見ると素早く月牙を放ち、虚閃と相殺させる。

 その隙にグリムジョーは一護の背後に移動する。

 この展開を予測していた一護は防御の態勢を取り、グリムジョーの攻撃を半減させる。

 だが、グリムジョーの攻撃が予想以上に強かったのか、地面の方まで吹き飛び、思いっきり叩きつけられた。

 

「これで最後だ! 黒崎一護!! ――豹符『豹王の爪』!」

 

 グリムジョーが正真正銘、最後のスペルを唱える。

 手を前方にかざし、両の指先から霊圧で十本の青色の巨大な刃を両手に創り出した。これは虚圏でグリムジョーと戦った時に最後に見せた技と同じだ。

 

「さぁ、テメェも最後の力を振り絞って、月牙天衝を放ちやがれ!」

 

 上空から見下ろし命令するグリムジョー。

 一護はそれに答えるようにスペルを唱える。

 

「黒斬『月牙天衝』!」

 

 一護の右腕に霊力が込められる。

 

「ああ、いいぜ、グリムジョー。俺も本気でぶつかってやるよ」

「そうこなくっちゃな。……黒崎一護!」

 

 グリムジョーは一気に十本の巨大な刃を放った。

 

「終わりだ! グリムジョー!」

 

 一護も月牙天衝を放った。

 霊力を込め過ぎたせいか、一護は方膝を地面につける。

 

 そして、渾身の力を込めて放った月牙が巨大な刃を一本づつ砕いていく。

 一本、二本、三本、四本、五本、六本、七本、八本と。

 だが、九本目を砕いたところで月牙が消滅してしまった。

 

 そして必然的に、残りの一本の刃が一護に撃墜したのだった――

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