東方幻想斬~BLEACH the fantasy time of end~ 作:ディーン・グローリー
加筆修正どころか、過去のデータが全て消失したため、文字通り一から書き直しになってしまいました。これからの更新は遅くなるかもしれません。
ではでは、読みたい方はどうぞ。
《1》
森の中を、黒崎一護は駆ける。
草木を手で薙ぎ払い、大きい木があれば効率よく避けて進む。
一護の息は荒く、汗が滝のごとく流れている。一体なぜ、こんなに全力疾走しているのだろうか。
すると、一護の目の前にちゃんとした道が現れた。道といっても舗装されている訳ではなく、人が歩きやすくされているだけの道だ。言うなれば軽い山を登るときの山道。
一護はそこに出ると、目の前には石の階段があった。中々段数が多く、小学生が見たら一斉に地獄の階段とか言い出しそうなくらいだ。
そこを二段三段飛ばしくらいで、一気に駆け上がる。
山の上。それ程高くはないのか、すぐに階段上に赤い鳥居が見えた。一護にとって、そこがゴール地点だ。
「ッ!」
そして一護は、鳥居をくぐった。ゴールのテープを切ったかの如く、マラソンは終わりを迎えた。
「ハァ、ハァ……つ、疲れた……」
フルマラソンを終えた走者よろしく、一護はバテバテモードだった。
顔から汗の雫がぽたぽたと垂れ落ちる。身体の水分が一気に減ったのを感じた。
「結構早かったわね。いや驚いたわ。体力は私以上よきっと」
一護の目の前に、清々しい表情をした博麗霊夢が現れる。一護とは対照的に、一切疲れの色がない。
それにキレかけた一護だが、何とか抑え、若干の憤りを見せて言葉を吐く。
「うるせぇよ……つか何いきなり飛んでいってんだよ!」
そう、霊夢は飛行したのだ。
あの後、自分の神社に案内すると言うや否や、いきなり地面から足が浮き、そのまま空へGO。更に酷いことに、そのまま何も言わずに飛んでいっちまう。
一護は霊夢を全速力で走りながら、見失わないように何度も呼びかけたが、聞こえていないのか全く反応を示さなかった。
それ故、一護は霊夢を見失わないよう、全力で霊夢の後を追ったのだ。その途中、妖怪に遭遇しなかったのは単に運が良かったからなのだろうか?
「うるさいわね。私は基本、空を飛んで移動するのよ。まぁあんたが凄く頑張って走ってたから、そのまま飛んだんだけど。けど、私的には逆に空を飛んだことに驚いて欲しかったんだけど」
「悪いが、そういうとこには鈍いんでな」
実質、死神時代は霊子を足場にし空中立ちを可能にしていた一護だ。驚くどころか歯牙にもかけないだろう。
「あんたって異常よね。そこんとこ自覚してる?」
「異常じゃねえよ。あんたよりかはな多分」
いやまぁ、自分が異常なことは自覚するどころか、考えもしていなかった。ただ、自分を置いて清々しく飛んでいくやつの方が異常なのは間違いないだろう。
「さぁ、こっちに来なさい。寝泊りする部屋を貸してあげるから」
けどあれだ。酷いことはされたが、根は優しいのだろう。
先程まで赤の他人同然だった黒崎一護を、軽く自分の神社の部屋を貸してくれるのだ。優しいのか、単に気軽なノリが好きなのか分からないとこだが、悪い人間では断じて無いだろう。
「それを終えたら、昼ご飯ね。もう昼時だし」
「え、そうなのか」
時計がないので分からない。
太陽の位置なんかで時間を確認しているのかな。かなり原始的だ。
そして一護は見た。
この神社の賽銭箱を。
「……何だろうな」
ボソッと一護は呟いた。
「なによ?」
「いや、賽銭箱が神社と比較したら、随分と廃れてるなぁと思ってさ」
何て言ったのだ。
するとどうだろう、霊夢から形容しがたい殺気が一護に向けて放たれた。
「え、今なんか言った?」
笑顔だが、黒い。殺気が笑顔に形成されている。
「い、いや、何でもねえ……」
霊夢の殺気の根源は恐らく賽銭箱。
ああ今ので分かった。
――賽銭箱については触れないでおこう。
そう決意した矢先だった。
「てか賽銭箱で神社の繁栄を語られたくはないわ。そもそもここは立地的に悪いだけで、少しでも良好的な場所にあれば、それはもうウハウハなのよ。今頃この神社は超広大な神社になっていたわ。幻想郷で一番有名でお金がたんまり貯まる神社になってわよ!」
「ああ、そうなのか」
何か語りだした。触れないでこうと思った途端、向こうから触れてきた。
「ちゃんと人が住んでいる安全な場所にあれば、こんなに廃れなかったのよ」
「自分で廃れたって言って悲しくならないのか?」
「それにね、私の夢の一歩でもあるの。この神社の賽銭箱が、みんなのお祈りでたんまり貯まるのが。別にお金がほしいわけじゃないわよ。私は単に、この博麗神社を立派にしてあげたいの」
「夢か……」
「その大切な夢の第一歩なのよ賽銭箱は。廃れていてもいい、少しずつ、本当に少しずつでも賽銭箱も立派にしてあげたいの」
「……そうか」
霊夢の言葉にどこか感動する一護。
幼いながらも、立派な志があるようだ。
「てなわけで、ここに来たんだからお布施の一つでもしなさい。罰が当たるわよ」
「そんな脅迫的なお布施聞いたことねえよ。巫女さんとは思えねえな」
「……今思ったんだけど、麗しい巫女を売りにしたらお布施が増えるかしら?」
「お前こそ一度、罰が当たった方がいいんじゃねえか?」
――しかも麗しい巫女って誰だ? 俺の目の前にはチンチクリンな巫女さんしか見えねな。
何て思ったのが看破されたらしく、一護の顔面にパンチが見舞われたのだった。
《2》
――昼、一護と霊夢は昼食を終え、神社の縁側でお茶を飲みながら座していた。
勿論、飯時などに幻想郷のことなどは殆ど聞いた。
その数ある幻想郷の説明の中から一番気になったのが、弾幕ごっこと言うゲームだ。
弾幕ごっこって言うのは、何かに白黒付けたい時にするバトルのようだ。文字通り弾幕を張り、相手を迎撃する簡単なバトル。けど当たり所が悪ければ死ぬという、危険と隣り合わせのゲーム。
その勝負ではスペルカードと言う特殊な弾幕などを展開する、所謂必殺技という物もあるらしい。しかもそのスペルカードと言う物には、能力という物が大きく左右し、それによってどういった弾幕が張られるのかが決まる上、最近では能力を駆使したバトル展開もあるらしい。
故、弾幕勝負をするには能力が勿論必要になる。
そこで一護は切り出した。
「まずはその、弾幕ごっこってのを覚えたほうが良いと思うんだ」
「まぁその通りね。異変の解決には、絶対に必要不可欠だから。と言っても、あんたにはそう言った特殊な力とか無さそうだし。誰でも使える技ってわけでもないのよ」
霊夢が一護を見ながら答えた。
今の一護には霊圧がない。それ故、普通の人間と相違ないのだ。
「……けど、誰にだって可能性はあるわ。そうねぇ、こういう時は、なにか身近な……そう、大切な物から能力を形成できるって奴もいたわね」
「大切な物?」
「ええ、と言っても手ぶらだよね」
一護は幻想入りしたのは突然の出来事、しかも寝ている時だったので何も所持していないのは当然だ。
「いや、一つだけなら」
一護はズボンのポケットから、ある物を取り出す。
偶然なのか必然なのか、一護のポケットにはあれが入っていた。
――死神代行戦闘許可証。通称、代行証が唯一の所持物だったのだ。
「つっても、何も起きないんだけどな」
と言って、一護は代行証をポケットに入れた。
だがそれを見た霊夢の顔は何とも、面白い物を見た目付きだった。
「そうね、一護、今のを――」
霊夢が言いかけた時に、ある声が割って入った。
「おーい霊夢! 遊びに来たぜ!」
霊夢の声が、元気良い声に掻き消された。
そして、一護と霊夢の目の前に、箒に乗った魔女が現れた。
「あら、魔理沙」
霊夢は魔女の名を口に出す。
「おう、元気万倍の霧雨魔理沙だぜ! 暇だから来てやったぜ霊夢。……と、そこのオレンジ髪の男は誰だ?」
魔理沙と呼ばれた少女が、一護の姿を見て尋ねる。
「ええ、この人は今朝がた不運にも幻想入りしてしまった人間よ。私が保護して、博麗神社に丁重に案内したのよ」
丁重に案内と言ったか? あれが、あんな極悪な案内に丁重なんて付けるんじゃねえとツッコミたい一護だが堪える。
一護は縁側から腰を上げて、
「あ、えーと、黒崎一護だ。あんたは?」
「私は東洋の西洋魔術師 霧雨魔理沙だぜ。今後とも宜しく」
二つ名と同時に、自分の名を名乗る。
同時に手を差し出し、一護と魔理沙は握手を交わす。どんな相手にも分け隔てなく、愛想よく気持ちよく接する態度には、一護も好感を持てた。
魔理沙は黒を基調とした服装と帽子をかぶっており、例えるなら魔女のような恰好だ。
「えっと、霧雨はその」
「魔理沙で良いぜ。上の名前で呼ばれるのは慣れてないからな。それに、博麗神社にいるんなら長い付き合いになるだろうし、下の名前で呼び合った方が親交が深まるだろうぜ。その代わり、私も一護って呼ばせてもらう」
と、何とも良い台詞を吐いてくれる。
「ああ、じゃあ遠慮なく魔理沙って呼ばせてもらうぜ」
「おう、みんなそう呼んでるしな」
「魔理沙はその、魔女みたいな格好をしてるけど、文字通り魔女なのか?」
突拍子もない質問をした。けどここは幻想郷だ。妖怪がいたんだ、魔女がいても不思議でない。
「おいおい一護、私は魔女を模した格好とよく言われるが、初期の魔女像は白を基調とした格好をしてたんだぜ。これ豆知識な」
「へぇ、そうなのか」
本当に豆知識だなと一護は思う。
「まぁ嘘だけどな」
「嘘なのかよ!」
「騙せると思ってよ」
「確かに騙すことには成功しただろうけど、お試し的な感覚で俺を騙すな」
一護は溜息をつき、
「で、魔理沙は魔女で合ってるのか?」
「おう、どう見ても魔女だろ? こんな分かり易い格好してるんだからな。それに最初、西洋の魔術師って名乗ったじゃん。馬鹿なのか一護は?」
「馬鹿じゃねえよ。俺のいた世界じゃ魔女なんて物語の中にしかいなかったんだよ。実際に見るのは初めてなんだ」
「へぇそうなのか。ふふん、なら少しだけ魔法を見せてやるぜ」
魔理沙は箒をクルクル回転させて言った。
「お、いいのか?」
「勿論だぜ。しっかり見ておけよ。いっくぜー!」
そしてそのまま箒を振るうと、星のようなキラキラな弾幕が流れ星のように迸った。
恐らく先ほど霊夢に説明してもらった弾幕と言うやつの一種だろう。それを分かった上でも、どこか魅了され感嘆の声を上げる一護だった。
「おお凄ぇな魔理沙」
「だろだろ。これが魔法って奴だぜ! あはは!」
瞬間、ドカン!と何かを破壊する衝撃音が轟いた。
「…………」
その先を見ると、魔理沙の放った弾幕が、この神社の命でもある賽銭箱を木っ端微塵にしていたのだ。
(れ、霊夢の夢の一歩である賽銭箱が……! 貯まる前に吹き飛んじまった!)
開いた口が塞がらなくなる一護。
「……あー、霊夢。わたし用事思い出したから帰るぜ!」
脱兎の如く逃げようとする魔理沙の肩を霊夢が凄まじい速さで掴んだ。
「奇遇ね魔理沙。私もちょっとあんたに用事があるのよ。最重要で最優先のね」
「悪い霊夢! 謝る! そして直すから許してくれー!」
「問答無用ォオ!」
「ちょっと待ってくれ霊夢! これには俺にも非がある。魔理沙に魔法を見せてくれって言ったのは俺だ。俺も直すのを手伝うから許してやってくれ。何なら、もっと綺麗で立派な賽銭箱を作るからさ」
一護が仲裁に入り、霊夢を止める。
それを聞いた霊夢は逡巡するも、
「……じゃあ、宝袋型の超立派な奴! 金箔をふんだんに使った奴ね!」
「賽銭箱は少しずつ成長させるんじゃねえのかよ!? 何とんでもねえ要望出してんだ!」
一護が突っ込んだ。
とりあえず、後で魔理沙と一護が賽銭箱を修理するということで、この話は決着がついた。
けど、今のやり取りでお互いの間柄が一気に縮んだ感じがする。まるで既に友達だったかのような感覚にさせられた。
と、そこに霊夢が口を開く。
「そうだ。一護、魔理沙。少しいいかしら。まぁ拒否権はないんだけど」
「ん?」
そして、霊夢はとんでもないことを言った。
「今から二人に弾幕ごっこをしてもらうわ」