東方幻想斬~BLEACH the fantasy time of end~   作:ディーン・グローリー

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とある方からの意見が届きまして、少し話数を簡略化しました。故に一話一話のボリュームを上げただけなんですが。自分的にも、読みやすくなったと思います。




第35斬【ウルキオラ・シファー】

《1》

 

 幻想の結界チームが日本屋敷に侵入して、直ぐに二人は魔理沙たちが弾幕勝負をしていた場所へやってきた。

 そこで二人は、凄惨な光景を目の当たりにする。

 

「紫……これは一体、どういう事?」

 

 霊夢が言う。

 その光景は、まるで大型の爆弾が爆破し、辺り一面を木っ端微塵に吹っ飛ばしたような光景だった。

 屋敷の長いトンネルのような廊下が、天井に大穴を開け、床や廊下に隣接している部屋が爆発地のように無くなっている。

 そこに魔理沙、アリス、鈴仙、てゐが死体のように倒れた姿で発見された。

 

「どうやら先に侵入した魔理沙とそこの金髪少女が、あの二人の兎耳Girl'sを倒したようね。倒したと言っても相打ちらしいけど」

 

 隣に立つ紫が、四人の姿を見て、自分の考えを推理して言う。

 まんま正解である。

 

「まぁ、それしか考えられないわよね。じゃあ、さっさと先へ急ごうかしら。魔理沙たちの死は、無駄にはしないわ」

「いえ、死んでないわよ」

 

 そして霊夢と紫はそんな魔理沙たちを置いて、先へ進もうとした瞬間、二人の目も前に、二人の女性が現れた。

 一人は長い銀髪を三つ編みにして、青いナース帽を被っている。

 服装は左右で色の分かれる特殊な配色の服を着ている。青と赤から成るツートンカラーだ。上服は右が赤で左が青、スカートは上の服の左右逆の配色となっている。袖はフリルの付いた半袖。全体的に色合い以外はやや中華的な装いだ。

 もう一人はストレートで、腰より長い程の黒髪をしている。

 服は上がピンクで、大き目の白いリボンが胸元にあしらわれており、服の前を留めるのも複数の小さな白いリボンである。袖は長く、手を隠すほどである。そして下は、赤い生地に月、桜、竹を連想させる模様が金色で描かれているスカートと、その下に白いスカート、更にその下に半透明のスカートを重ねて履いている。スカートは非常に長く、地面に着いてなお横に広がるほどだ。

 その二人の女性が、倒れた四人を挟むように対峙する。

 

「――こいつら、強いわ」

 

 霊夢が一目見て、そう判断した。

 久し振りに、霊夢の口から強いという言葉を聞いた気がする。

 

「ええ。さっきの吸血鬼の少女と、メイド女とは訳が違うわね」

 

 紫も相手の二人が強いと認めざるを得ない力量だと判断した。

 

「残念ながら久方振りに、本気を出さないといけないかもね。肩がこるから嫌なんだけど」

「それってもう年なんじゃない?」

 

 本気を出す。

 八雲紫の本気を、今だかつて見た者は極少数だと言われている。

 それが、今回の戦いで出ようとしている。

 

「……月の使者が攻めてきたと思いきや、巫女と妖怪ですか。これは計画とは違いますね」

 

 銀髪の女性が口を開く。

 目の前の光景に全く目を向けず、霊夢と紫だけを見る。

 

「何か、この屋敷にご用かしら?」

「メチャクチャ用有りよ。あの満月を見て分からない?」

 

 霊夢が指差す。

 その方向には、スペルのせいで大穴の開いた天井……その先の満月を差している。

 だが満月ではなく、少し欠けた出来損ないの満月になっているのは言うまでもないだろう。

 銀髪の女性が霊夢の指差した方を見て、察した。

 

「成程、そういう事ね。で、あなた達はその異変の元凶が此処にいると思ってきたのかしら?」

「思ってきたと言うより、あなたが異変の元凶者でしょ?」

「……証拠はあるのかしら?」

「とぼけるつもり? てか、こういうやり取りはあまり好きじゃないから、力付くで吐かせるわね」

 

 長話をするつもりが全くない霊夢は、早々に決着を付ける事にした。

 霊夢と紫は、既にこの二人が異変の元凶者だと踏んでいる。

 理由は、怪しい妖気の終着点が此処だからのと、長年異変の解決に携わってきた霊夢の勘がこいつらだと言わせるからだ。

 

「そうそう、私もこういう白を切るような行為は嫌いなのよね。ってか面倒」

 

 今まで何も話さなかった黒髪の女性が割って入った。

 そして、その女性の瞳が好戦的になる。

 

「だから、少し遊びましょう。弾幕ごっこと言うゲームで」

「姫様……」

 

 銀髪の女性が横目で黒髪の女性を見る。

 何故、黒髪の女性が姫と言われたのかは分からない。

 

「話が早くて良いわ。とっとと始めましょ」

 

 いちいち姫と言う単語には突っ込まない。

 そのまま霊夢と紫は臨戦態勢に入る。

 

「仕方ないわね。姫様が言われるまでもなく、こういう展開は読めましたし」

 

 銀髪の女性と黒髪の女性も臨戦態勢に入る。

 

「楽園の素敵な巫女 博麗霊夢よ」

「境目に潜む妖怪 八雲紫」

 

 霊夢と紫は二つ名と共に名乗る。

 

「月の頭脳 八意永琳」

「永遠と須臾の罪人 蓬莱山輝夜よ」

 

 二人の女性も二つ名と、名前を名乗る。

 

「さてと、久し振りの弾幕勝負……楽しむわよう!」

 

 黒髪の女性、蓬莱山輝夜はまるで遊園地に連れて来られた子供のような表情で言った。

 

「紫……今回は一緒に戦いなさいよ」

 

 先の件もあるから一応指摘しとく霊夢。

 

「大丈夫よ。流石の私も、この二人を一人で相手させるほど、非情な妖怪ではないわ」

「そう……」

 

 吸血鬼とその従者を一人で相手させるほどの紫が、このセリフを吐くと言う事は、かなり手強い相手だ。

 

(――ッ!! 何、今の霊力……!?)

 

 ふと霊夢は、ある霊力を感じ取った。

 その霊力は目の前にいる永淋のでも、輝夜のでも無い。

 

(一護……)

 

 感じ取ったのは一護の霊力だった。

 霊夢は一護の霊力に変な違和感を感じた。

 それに対し、異常な程までの胸騒ぎがする。

 

(……杞憂に終われば、良いんだけど)

 

 戦い前の霊夢は、自分の心配は全くせずに、どこかで戦う一護の安否をしたのだ。

 

 そして……それが杞憂で終わる事は、無かった。

 

   *

 

 迷いの竹林の一角――

 そこは最早、竹林と呼ぶべき場所では無くなっていた。

 竹林の全てが跡形もなく消えており、大地が砕け荒涼地帯のようになっている。

 そこで禁忌の死神チームとウルキオラが激戦を繰り広げている。

 斬魄刀を抜いたウルキオラと霊圧で刀状に構築した霊圧刀を持つ一護が刀を交える度に、周辺の大地が砕け散り、突風を起こしている。超高速の斬撃に、それによって発生する衝撃波は熱すら帯びていた。

 その中でフランが一護を援護するように、スペルを唱える。

 

「禁忌『クランベリートラップ』!」

 

 空間に四つの魔法陣が描き出され、それらがウルキオラと一護を囲むように移動した。

 それをチェックした一護は即座にウルキオラから離れ、魔法陣の領域から離れる。

 その瞬間、ウルキオラを四方から囲むようにして移動していた四つの魔法陣から、無数の弾幕が内部にいるウルキオラ目掛けて放たれた。

 

「これで隙を突いたつもりか?」

 

 カツン……と、一瞬ウルキオラの足元から音が出たかと思うと、その刹那にはウルキオラの姿が消えていた。

 瞬間、ウルキオラが刀を振り下ろしながら、フランの目の前に現れる。

 

「!!」

 

 何の躊躇いも無いウルキオラの斬撃を、フランを何とか身を翻して避ける。

 フランは吸血鬼で身体能力が高いから、今の一撃を避ける事が出来ても何ら不思議では無いが、並みの妖怪だったら、斬られた事にも気付かずに地獄の旅路に出ていたであろう。

「QED『495年の波紋』!」

 

 フランはウルキオラの斬撃を避けると、スペルを唱えた。

 円形状に広がる弾幕が、各場所から現れ、無数の弾幕がウルキオラを襲う。

 フランはこれで倒せるとは全く思っていない。

 このスペルを発動した訳は、あくまでウルキオラとの距離を取るためだ。フランは直ぐ様、後方に勢いよく跳ぶ。

 

「逃げれると思うなよ。虚符『虚閃』」

 

 ウルキオラは迫り来る弾幕を全く気にせず、スペルを唱えた。

 指先から超濃密度の霊力の塊である虚閃を放つ。

 その標的はフランだ。

 

「ッ!」

 

 流石のフランも予想外の攻撃に、避け切る事が出来ずにいた。

 

「黒斬『月牙天衝』!」

 

 一護が直ぐ様、フランの眼前に立ち、迫ってくる虚閃に向かって同じく超濃密度の霊力を内包した月牙天衝を放った。

 それにより虚閃を相殺する事に成功する。

 

「虚符『虚弾』」

 

 続けてスペルを唱えるウルキオラ。

 無数の弾幕が一護とフランを襲う。

 その弾幕はただの弾幕ではなく、少しでも気を抜けば被弾してしまう程の速さを有している。込められている霊力は少ないものの、速さと連射性は桁違いだ。

 

「高く跳べフラン!」

 

 一護が叫ぶ。

 それと同時に、地上にクレーターを形成するくらいの勢いで二人は上空に跳ぶ。

 もし一秒でも遅れていたら、被弾していたであろう。

 

「甘い」

 

 ウルキオラが一言吐き捨てるように言うと、弾幕の方向を、即座に一護とフランの方に変えた。

 

「黒符『月霊幻幕』!」

 

 一護は直ぐにスペルを唱える。

 三日月状の弾幕を一斉に向かってくる弾幕目掛けて放った。

 それにより、ウルキオラの弾幕を相殺していく。

 

「禁弾『過去を刻む時計』!」

 

 フランがその隙を突き、スペルを唱えた。

 十字のレーザーがさながら風車のように回転しながら、ウルキオラに迫る。

 それと一緒に無数の弾幕も展開され、放たれた。

 

「下らん。まとめて消してやる――虚符『王虚の閃光』」

 

 もうこれ以上は時間の無駄だと思ったウルキオラは、強力なスペル――王虚の閃光を放った。

 フランのスペルも一護のスペルも全て、いとも容易く掻き消されていく。

 

「――黒斬『月牙天衝』!」

 

 その光景を見た一護は、自分も強力なスペルを放つ。

 その時、一護は“再び妙な違和感”を感じた。

 フレデリックに向かって、最後に月牙天衝を放った時と同じ感覚だ。

 だが、いちいちそんな事を気にしていられない一護は、気にするのを止める。

 月牙と王虚の閃光が激突する。

 瞬間、月牙が王虚の閃光に飲み込まれ、凄まじい爆発を起こした。

 その光景を見たウルキオラは少し目を見開き、口を開く。

 

「……王虚の閃光を相殺するか」

 

 表情を変えずに、ウルキオラは少し感心するように言った。

 

「成程、どうやら俺のスペルが貴様に通用する事は無さそうだ。いや、あったとしても少し時間がかかるな」

 

 ウルキオラは自分の王虚の閃光を相殺されて、そう判断した。

 だが、ウルキオラのスペルはこれだけでは終わらない。

 

「俺の主が座す屋敷に、どうやら誰かが次々に侵入している。つまり、ここで時間を費やすにはいかないということだ」

 

 ウルキオラは刀を前に突き出す。

 一護とフランは何もせず、ウルキオラを見据えた。

 

「見せてろう。これが俺の……真の力だ」

 

 そう言い符名の無いスペルを唱える。

 

「鎖せ……『黒翼大魔』」

 

 

《2》

 

「鎖せ……『黒翼大魔』」

 

 ウルキオラが符名の付かないスペルを唱えた。

 黒翼大魔……ウルキオラの刀剣解放だ。

 だが、刀剣解放は幻想入りすると同時に不可能になっている。

 

「…………ッ!」

 

 それなのに一護はあの時と同じプレッシャーを感じた。

 瞬間、ウルキオラが確認できなくなる程の、黒い翠色の混じった液体が噴水のように舞い上がった。舞い上がった翠黒い液体が、雨のように一護とフランに降り注ぐ。

 

「嘘……だろ……!?」

 

 あの時と同じ、帰刃の際に起こる現象。

 一護は目を疑った。 

 噴水が止んだと思うと、そこには解放したウルキオラが立っていたのだ。

 背中に巨大な漆黒の翼。仮面の名残が四本の角のついた兜のようになり、服も下部がスカート状のものに変わっている。仮面紋もより大きくなっている。

 これは紛れもない帰刃だ。

 悪魔にも、吸血鬼にも見える、恐怖と絶望を一つにしたような畏怖の姿。

 正真正銘、刀剣解放したウルキオラだ。

 

「……何をそんなに驚いている」

 

 解放したウルキオラが、一護の姿を見て言う。

 

「俺が解放した事が、そんなに解せないか?」

「ああ、信じらんねぇな。何で解放出来んだよ? グリムジョーは解放できなかった。それなのに、テメェは……」

「単純なことだ。俺はスペルという力で、一時的に帰刃を可能にした」

「スペルだと!?」

 

 一護は声を出して驚く。

 スペルによりウルキオラは帰刃を一時的とは言え、成し得た。

 恐らくグリムジョーですら、まだ気付いていないだろう。

 

「……黒崎一護。構えろ」

 

 ウルキオラの発言に直ぐさま構える一護。

 ここでの問答など無意味。まずは戦いに専念するのが絶対だ。

 

「光槍『フルゴール』」

 

 ウルキオラはスペルを唱える。

 右手から翠色に輝く一本の槍のような物が形成された。

 

「構えを崩すな。意識を張り巡らせろ。一瞬も気を緩めるな」

 

 その発言をした瞬間、一護の眼前にウルキオラが刹那的速度で現れ、一護に攻撃を仕掛ける。

 光の槍で一護を薙いだ。

 だが一護はあの時のことが記憶に焼きついていたので――ウルキオラの攻撃を防ぐ事が出来た。

 ウルキオラの速度は、まるでコマ落ちした映画のような感覚。一瞬のまばたきも許されず、まるで一護の目の前に空間移動して現れたような感じだった。

 フランですら全くウルキオラの速度を目視できなかった。

 それなのに一護はウルキオラの攻撃を反射的に月牙を出し、防ぐ事が出来た。

 理由は前述通り、あの時の事を覚えていたからだ。

 虚夜宮の天蓋の上で、ウルキオラが解放した時、一護はあのセリフを聞いて、解放したウルキオラの初撃を防ぐ事が出来た。

 今回も同じで、ウルキオラはあのセリフを言い、一護に攻撃を仕掛けた。だから一護は反射的に身体が動き、ウルキオラの攻撃を防ぐ事が出来たのだ。

 

「やはり、反応速度だけは大したものだな」

 

 ウルキオラは一護に攻撃を仕掛け終えると、間合いをおき言う。

 

「だが、この程度で思い上がるなよ。次は、これ以上のレベルで行く」

 

 このセリフに一護とフランは構えなおす。

 瞬間、ウルキオラの姿が消えた。

 

 ――今、第三幕が開いたのだった。

 

   *

 

 同時刻、幻想の結界チームは、今回の異変の元凶者である八意永琳と蓬莱山輝夜との弾幕勝負を繰り広げていた。

 屋敷内での戦いは不可能と見たのか、屋敷の上空で戦闘を繰り広げている。

 障害物が何も無い、空での弾幕勝負。

 星の輝きに負けないくらいの弾幕が空に飛び交っており、相殺し合った弾幕は花火のように輝いている。

 

「認めたくないけど、やるじゃない。霊符『夢想妙珠』!」

 

 無数の弾幕が飛び交う状況の中、霊夢がスペルを唱えた。

 複数の光弾が展開され、一斉に永淋と輝夜に殺到する。

 

「甘いわね。神符『天人の系譜』」

 

 自分に向かってくる光弾を見て、何の危機感も持たない永淋は冷静にスペルを唱えた。

 複数の赤いレーザーが放たれ、それが四又に数を増し、複数のレーザーが連鎖的に数を増していったのだ。

 更に永淋から米粒状の弾幕が扇のように広がる形で、無数に放たれた。

 そのスペルは横にいる輝夜を守るには充分な弾幕とレーザーの数だ。

 永淋の予測通り、霊夢の光弾は全て弾幕とレーザーに押し負け、掻き消された。

 そして必然的に、永淋のレーザーと弾幕は霊夢と紫を襲う。

 

「境符『四重結界』」

 

 自分たちに向かってくる弾幕とレーザーを見て、紫がスペルを唱えた。

 紫と霊夢を囲むように四角い結界が張られ、迫ってくる弾幕とレーザーから守る。

 

「なかなかいい結界ね。けど、これは防げるかしら?」

 

 永淋の弾幕とレーザーが止むと、輝夜がスペルを唱える。

 

「神宝『ブリリアントドラゴンバレッタ』」

 

 五色の弾幕と三色のレーザーが大量に、放たれた。

 それにより紫の結界はいとも簡単に破られる。

 永淋の弾幕とレーザーを防いでいたせいで、結界が衰えていたのだろう。だが、それを差し引いても輝夜のスペルは、半端なレベルではない程レベルが高い。

 

「やるわね本当に。こんな強いのがいるなんて予想外だわ。結界『光と闇の網目』」

 

 自分の結界が砕かれても、冷静に対処する紫。

 赤いレーザーと青いレーザーが発射され、続いて無数の弾幕が発射された。

 それらが輝夜のスペルを相殺する。

 

「うんうん。やっぱり弾幕ごっこはこうじゃなきゃ。この程度のスペルでやられたら興醒めだからね」

 

 輝夜が今までは腕試しだったかのような発言をする。

 確かにまだ、これといって高性能なスペルは発動されていない。

 

「それじゃあ、ちょっとレベルの高いスペルで行くわね」

 

 そう言い、輝夜は気楽な感じで上級レベルのスペルを唱えた。

 

「神宝『蓬莱の玉の枝 -夢色の郷-』」

 

 瞬間、あらゆる角度に七色の無数の弾幕が展開され、あらゆる角度から無数の弾幕が発射された。

 

「なら、こっちもそれ相応のスペルで挑んであげるわ。紫奥義『弾幕結界』」

 

 紫は相手のスペルにレベルを合わせて、スペルを唱えた。

 二つの魔法陣が現れ、そこから無数の弾幕を発射しながら移動する。

 

「それそれ」

 

 紫が任意に魔方陣を移動させ、楽しそうに向かってくる弾幕を相殺していく。

 

「強いじゃない。気に入ったわ」

 

 満足そうな表情で言う輝夜。

 

「永淋、私はあの女と一対一で戦いたいわ」

「危険です。あの妖怪は、私の弾幕も、姫様の弾幕も防ぎました。相手の力量がまだ未知数ゆえ、一人で戦わせる訳にはいきません」

「姫の命令よ。従いなさい」

「主君の過失を諫言するのは、従者の役目ですけど」

「ム……面倒臭いわねぇ~。もぅいいわよ!」

 

 と、膨れる姫。

 今が弾幕ごっこ中だと言う事を忘れてしまう。

 

「……ハァ~仕方ありませんね。分かりましたよ。姫様も久し振りに身体を動かしてくれましたし、今回だけは、目をつむります」

 

 永淋は輝夜の膨れた顔を見て、渋々従う事にした。

 

「やったーーー! 聞いていたわね、八雲紫!」

 

 輝夜は願いが叶い、歓喜すると、紫を指差して言った。

 

「聞いてたわよ。確かに私もタッグ戦より、一対一派の妖怪だしね」

 

 紫は輝夜の案に乗る事にした。

 そっちの方が自分も戦いやすいし、楽しいからだ。

 

「それでは、必然的に私とあなたになりますね」

 

 永淋が霊夢を見据えて言った。

 

「そうなるわね。私もタッグよりシングル派だから、願ったり叶ったりだわ」

 

 どうやら霊夢も紫と同じ考えだったようだ。

 

「さて、とっとと始めようかしら。異変解決までのカウントダウン開始よ」

 

 勝ち誇った顔で言う霊夢。

 だが、数十分後に異変どころでは無くなるのであった。

 

   *

 

 一方、ウルキオラと戦っている一護とフランは……

 ――ウルキオラに苦戦し、一方的に攻められていた。

 

「槍撃『ルス・デ・ラ・ルナ』」

 

 そんな中、ウルキオラが追い討ちを掛けるように、スペルを唱える。

 翠色をした無数の鏃状の弾幕が展開され、一護とフランを襲った。

 

「くそっ! 黒符『月霊幻幕』!」

「禁弾『カタディオプトリック』!」

 

 間髪いれずスペルを唱える一護とフラン。

 一護は無数の三日月状の弾幕を発射し、フランは無数の大弾、中弾、小弾を発射する。

 それらで何とかウルキオラのスペルを破る事が出来た。

 だが、ウルキオラはそれだけでは終わらない。

 

「こっちだ――黒崎一護」

 

 ウルキオラの声がするや否や、一護の顔面をウルキオラは鷲掴み、野球ボールを投げるような感覚で、一護を放り投げた。

 それだけで数百メートル吹っ飛び、その勢いをどうにか霊圧刀を地面にブッ刺して止める。

 

「いっちー!!」

 

 フランが吹っ飛ばされた一護の方を見て叫ぶ。

 その瞬間、ウルキオラがフランの目の前に現れた。

 同時に、翠の槍をフランに穿つ。

 

(早い……!)

 

 フランは直ぐに炎の剣……レーヴァテインを出し、フルゴールの攻撃を間一髪のところで弾く。

 

「成程、吸血鬼と言うのは聞いていた以上に、やるようだな」

 

 自分の攻撃が弾かれた事に多少驚くウルキオラ。

 相手が吸血鬼ともあり、少し早く、強めに攻撃したのだが、それを弾かれたのだ。

 

「禁忌『フォービドゥンフルーツ』!」

 

 フランは今すぐウルキオラとの距離を遠ざけるためにスペルを唱えた。

 戦い始める前に、本能的にウルキオラの事を危険と感じていたフランは、距離をおきたいのだろう。

 無数の弾幕が、ウルキオラとフランを取り囲むように展開される。これではフランも巻き添えを喰らうが、勿論そんなへまはしない。

 フランは即座に弾幕の領域から離れる。

 

「また距離を遠ざけるか。無駄な事だ」

 

 ウルキオラはフランを追いかけようともせず、迫りくる弾幕にも全く警戒していない。

 まるで一々そんな事をしなくても、今この場で迅速に、フランも弾幕も対処できてしまえるみたいに。

 

「虚符『黒――」

 

 ウルキオラがスペルを唱えようとした瞬間、ウルキオラの周りに三日月状の弾幕が現れた。

 虚空より現れた弾幕が、一斉にウルキオラに襲い掛かる。

 続いてフランの弾幕もウルキオラに被弾し、ウルキオラを包み込むほどの爆発が起きた。

 突然、虚空より現れた弾幕の正体は、一護のスペル黒符『天幻月牙』だ。

 

「大丈夫かフラン?」

 

 一護は吹っ飛ばされた後、即座に元の場所に戻ると、ウルキオラが何らかのスペルを、フランに向けて放とうとしていたので、自分が先にスペルを唱え、ウルキオラのスペルが発動する前に防いだのだ。

 

「大丈夫だよ。いっちーは?」

「ああ、心配いらねぇ」

 

 見るからに大丈夫とは言いがたい二人。

 二人共お互い心配をかけないようにしているのだ。

 

「そうか」

 

 声がした刹那、弾幕により出来た黒煙が、一気に掻き消された。まるで強風により、まとめて消されたような軽い感じで。

 そして掻き消された黒煙から、全く無傷のウルキオラが現れた。

 

「まだ、余裕があるようだな」

 

 一歩前を歩き……

 

「だったら見せておいてやる。こいつが黒翼大魔状態で発動できる限定スペル……」

 

 指先を一護とフランの方に向け――

 

「――虚符『黒虚閃』」

 

 スペルを唱えると同時に、黒い虚閃が放たれた。

 範囲も威力も、普通の虚閃とは圧倒的に段違いに高い。

 

「――!!」

 

 一護とフランの視界全体に、黒い閃光が迫る。

 

「フラン!!」

 

 一護は咄嗟の判断で、フランを横の方に撥ね飛ばした。

 この黒い虚閃の恐怖を、一護は知っている。

 だからフランをその恐怖に巻き込みたくはなかった。

 

 そして、恐怖の黒い虚閃は一護を覆い包んだ。

 

 更にそれだけでは止まらず、数km先までの大地と竹林を消し去る。

 

「いっちーー!!」

 

 一護に撥ね飛ばされ、黒虚閃に巻き込まれずに済んだフランは、一護の名を叫ぶ。

 自分を助けるために、一護は敵の攻撃を真正面に受けてしまった。

 あれだけの威力だ。

 例え弾幕ごっこでも、ただでは済まない。

 それに弾幕ごっこは当たり所が悪ければ、死ぬ事だってある。

 もしかしたら一護は――

 

(そんな訳、無いよね)

 

 ある事を考えかけた瞬間、フランは首を横に振り、考えそうになった事を否定する。

 今まで一護はフランの〝ありとあらゆるものを破壊する程度の能力〟を喰らっても死ななかった。

 この程度で死ぬわけが無い。そうやって、どうにか否定できる論を並べては見た。

 だがフランは、一護の姿を見て、今までの考えが全て一蹴された。

 全身が黒焦げに近いの姿の一護が、ピクリとも動かずに倒れているのだ。死神の姿も解けている。そして、霊力そのものまでも、流水のように下がっていく。

 

「……いっちー」

 

 弱々しく一護の名を言うフラン。

 だが何の反応も示さない。

 

「お前らの道はここで終わりだ」

 

 ウルキオラが一護を一瞥し、フランに向けて言う。

 だけど、フランの耳にウルキオラの言葉などは入ってこなかった。

 放心状態に陥ったフランが、一護に歩み寄る。

 そして、一護の元に立つと、膝を曲げて座り、一護の背中をさする。

 

「…………」

 

 そんなフランを興味なさげに瞥見し、背中を向け立ち去る。

 だが、その瞬間――

 

 ウルキオラの右腕が爆発し、右腕の根元からもぎ取られたかのように吹っ飛んだ。

 

「――ッ!?」

 

 その事実に驚くウルキオラ。

 何で自分の腕が吹っ飛んだか分からない。急に、不意を打つように簡単に吹き飛んだ自分の右腕を見て、流石のウルキオラも驚きが隠せなかった。

 

「逃ガサナイヨ」

 

 瞬間、背後から狂った人形のような声が聞こえた。

 ウルキオラは直ぐに後ろを振り返る。

 そこにフランが立っていた。

 フラン……と言うべきか。

 さっきまでとは全くの別人に近い。

 纏っているオーラが狂気に満ちており、紅い目が更に紅く血のようになっている。

 ……そう、フランが狂気の姿になったのだ。

 恐らく一護が倒されたせいで、今まで抑えていた狂気が一気に溢れ出したのだろう。

 

「……何をした?」

 

 自分の右腕を破壊したのは、間違いなく目の前の少女だろう。

 

「破壊シタノヨ。ドッカーンテネ」

 

 楽しそうに会話するフラン。

 まるで無邪気な子供のようだ。

 それと同時に、子供のような残酷さも感じられる。

 

「破壊しただと? 俺の鋼皮を貫通して……」

 

 解せない。

 鋼皮は強固な霊圧硬度による外皮だ。

 それが、まるで何の意味も持たないかのように、破壊されたのだ。

 

「次ハ、キミノ左足ヲ破壊シテ上ゲルネ」

 

 フランはそう言い、手の平の上に赤い目玉のような物を出現させた。

 そして、それを握り潰した瞬間、ウルキオラの右足の根元が爆発し、右足が胴体からもぎ取れた。

 

「ッ!? バカな……!」

 

 軽々と、防御など何の意味も持たないかのように破壊された右足。

 どうにか倒れずに、左足だけの力だけで体制を維持する。

 

「知ッテル? 全テノ物質ニハ目トイウ最モ緊張シテイル部分ガアッテ、ソコニ力ヲ加エレバ簡単ニ物質ヲ破壊デキルッテコト。アハハ、楽シイヨネ。自分ノ身体ガコンナニ簡単ニ消シトブンダモン!」

「…成程、そういう事か」

 

 今のを聞いて、ウルキオラはフランの能力を一瞬で分析した。

 

「お前の能力は、その目を自分の手の上に出現させ、破壊しているのか」

「ソウダヨォ~大正解! 正解者ニハ、モレナク脳ヲ一瞬デ破壊シテ上ゲチャウ♪」

 

 脳の破壊。

 それは完全な死を意味している。

 フランは再び、自分の手の平に、赤い目を出現させた。

 これを潰せば、ウルキオラの脳は潰され、即死する。もしかしたら能力を使う暇すらなく、死んでしまうだろう。

 そしてフランが目を潰そうとした瞬間……

 

「遅い」

 

 ウルキオラがフランの腕を掴み、目の破壊を一瞬戸惑わせる。

 その一瞬の間にウルキオラが、空いている片方の手にフルゴールを形成し、フランを横一閃に斬った。

 事象の拒絶で腕と足を即座に元に戻しておいたのだ。

 

「ガハッ!」

 

 フランは横一閃に斬られた事により、後方に吹き飛ぶ。

 

「例えお前に、あらゆる物を破壊する能力が有ろうとも、その目を破壊される前に、お前を倒せばいいだけの事だ」

 

 簡単に言うが、フランの能力をそうやって攻略する者など、ほんの一握りだろう。

 

「お前等はここで終わりだ」

 

 今度こそ終わりだと思ったウルキオラ。

 だが、再び解せない事が起きた。

 

 一護の霊圧が尋常ではないほど高まっているのだ。

 

 ウルキオラはこの現象に身に憶えがあった。

 それは初めて一護と出会った時だ。

 ヤミーと一護が戦っている時、一瞬不可解なほどに霊圧の揺り幅がデカくなった。

 その時の現象が、今一護に起きているのだ。

 

「……まさか」

 

ウルキオラが一護を見据えながら呟いた瞬間……

 一護の顔に白い何かが集まっていく。

 そして、それが一護の顔を半分覆い尽くすと、ゆっくりと立ち上がり、大気の霊力を纏い死神の姿になった。

 

「バカな」

 

 ウルキオラは目を見開いて驚く。

 そこにはフラン以上の狂気の姿、そしてウルキオラ以上の霊圧を持った一護が立っていたのだった。

 

 

《3》

 

 フラン――

 

 フランが……やられた……?

 俺が、悪いのか……?

 

 俺が弱いから――

 俺に力がねぇから――

 俺が負けたから――

 

 ……くそ

 くそくそくそくそくそくそくそくそ!

 

 何で、俺はみんなを護れねぇんだ……!!

 

   *

 

「ァァァアア」

 

 一護の顔半分が虚の仮面に覆いつくされ、眼球は黒、瞳は黄色に変わっている。

 凄まじいほど残酷で邪悪な笑みを浮かべている。

 これを一護とは言いたくないくらいの、狂気に満ちた一護になってしまった。

 

「……何だ、その仮面は?」

 

 ウルキオラが虚化していっている一護の姿を見て言う。

 完全虚化した一護は知っているが、この状態の一護は知らない。

 

(……この霊圧は、虚?)

 

 一護の霊圧を確認するウルキオラ。

 さっきまでの死神の霊圧と違い、虚の霊圧に近づいている。

 

「ゥゥゥゥ」

 

 人間でも、獣でも無いような唸り声。

 強いて言うなら、虚に近い声音だ。

 それが何重にもブれて聞こえる。

 

「……アアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 急に大地を揺るがすほどの声を上げ、ウルキオラに襲い掛かる一護。

 

「どうやら、言葉が通じんらしいな」

 

 会話が不可能だと思ったウルキオラは、右手にフルゴールを形成し、一護より先にフルゴールで斬りかかる。

 だが先に斬りかかったにも関わらず、一護の目にも止まらない霊圧刀の振りで、ウルキオラのフルゴールが弾かれた。

 

「グッ!」

 

 フルゴールが弾かれた瞬間、一護の頭突きを喰らい、後方に飛ばされるウルキオラ。

 

「ァアア!!」

 

 一護は休む事無く、ウルキオラに向かい、斬りかかる。

 態勢を整えたウルキオラは、指先を一護に向け、スペルを唱えた。

 

「虚符『黒虚閃』」

 

 指先から先程の黒い虚閃が放たれた。

 黒い虚閃が地面を削り飛ばしながら迫る。

 それを見た一護は、地面を強く蹴り、その場から姿を消した。

 

「!!」

 

 姿を消した一護を確認したウルキオラは、直ぐに一護を目で追った。

 

(後ろか……!)

 

 そしてウルキオラは、フルゴールを自分の後ろに振り下ろした。

 瞬間、一護がそこに現れ、自分に振り下ろされてくる光の槍を、霊圧刀で防いだ。

 

(まだ、目で追えるレベルか)

 

 ウルキオラはそう考えると、姿を消し、一護の肩を深く斬り抜けた。

 それにより一護の肩から鮮血が噴出し、仰向きに倒れる。

 痛みに悶えているのか、一護は苦しそうに身体を動かしている。

 

「終わりか?」

 

 ウルキオラは小さく言った。

 しかし、その時、一護から噴出していた紅い血が、白い液体に変わった。

 

「!?」

 

 それを見たウルキオラは目を見開く。

 一護から出ている白い何かから、巨大な口の付いた蛇のような生物が現れたのだ。

 巨大な口に比例するように、その蛇の大きさも尋常ではない。人間なら十人くらい一気に軽く飲み込めそうだ。

 

「何だ……こいつは?」

 

 巨大な蛇が、ウルキオラを呑み込もうと、襲い掛かる。

 そして、ウルキオラを呑み込もうとした瞬間……

 

「――槍撃『ルス・デ・ラ・ルナ』」

 

 ウルキオラはスペルを唱える。

 翠色をした、無数の鏃状の弾幕が一斉に、巨大な蛇に放たれる。

 それら全てが巨大な蛇を貫き、跡形もなく消し去った。

 

「…………」

 

 前方を見据えるウルキオラ。

 今の巨大な蛇のせいで、砂煙が舞っていて一護の姿が見えない。

 

「――!?」

 

 ウルキオラは砂煙から現れた一護を見て、驚愕した。

 胸の中心に穴が空いており、胴体と左腕が虚のように白くなっている。しかも左肩には複数の突起があり、腕には紅い模様が出来ている。

 

「アアアアアアア!!」

 

 一護が虚のような叫び声を上げた。

 その瞬間、黒い霊圧が一護の周囲を囲い、そこから一気に霊圧が溢れ出た。

 溢れ出た黒い霊圧で、再び一護の姿が確認できなくなった。

 

「何だ……?」

 

 理解できないウルキオラ。

 さっきまでの一護の霊圧が、一気に虚の霊圧に近づいているように見える。死神と虚の力を合わせ持った人間など、全くもって考えられない。

 その瞬間、溢れ出す黒い霊圧から、眩い光りが放出し、辺りの空間を全て包み込んだ。

 

「ッ!」

 

 直ぐに放出された光りが弱くなっていき、光の中心地点から異形と化した一護が現れた。

 一護の全身は白い虚のような姿になっており、仮面が顔の四分の三を覆い尽くしている。

 髪の毛も腰まで伸び、長い尻尾まで生えている。

 この姿は、仮面の軍勢との虚の抑制修行の時に、一護が暴走状態になった時の姿だろう。見た目はもう、完全に虚である。

 

「馬鹿な……何だ、その姿は? 虚の真似事か? それで虚の力を得たつもりか?」

 

 ウルキオラが異形と化した一護の姿を見据えて問う。

 だが一護からは虚のような唸り声が口から出るだけで、答えは返ってこない。

 

「愚劣だ、黒崎一護。前にも言ったが、貴様が例え虚のような姿に成ろうとも、貴様と虚が並ぶ事など永劫ありはしない」

 

 そう言うと、ウルキオラは一枚のスペルを唱える。

 

「光槍『雷霆の槍』」

 

 右手に翠色に輝く、光の槍が形成された。

 フルゴールにも似ているが、槍が少し炎のように靡いている。

 そして一瞬ウルキオラがビデオのブレのようにブレたかと思うと、一護から離れた位置に立っていた。距離にして約100m。

 

「喰らえ」

 

 ウルキオラは持っていた雷霆の槍を、勢いよく一護に向けて投げつけた。

 その刹那に、一護は手の平を飛んでくる槍に向ける。

 瞬間、深紅の塊が手の平に溜まり、そこから一気にアレが放たれる。

 ――虚閃だ。

 

 虚閃と雷霆の槍が衝突したのだった。

 

   *

 

 同時刻、竹林の上空で弾幕勝負をしている四人――霊夢、紫、永淋、輝夜は、凄まじい轟音と、異様な霊圧を感じ取った。

 

「っ! ……この霊圧は、一護?」

 

 異様な霊圧を一番先に感じ取ったのは霊夢だった。

 

「永淋! 今、ウルキオラは誰と戦っているの!?」

 

 輝夜は永淋に向けて言う。

 凄まじい轟音で、一旦弾幕勝負は中止になっている。

 

「恐らく私たちを狙いに来た者達だと思いますが……おかしいですね。ウルキオラの霊圧が弱まってきている」

「は、あのウルキオラが負けてるの!? アイツ、詰まらない奴だけど実力はあるはずよ。相手は一体何者よ?」

 

 驚く輝夜。

 どうやらウルキオラの力は、かなり良い評価をされているみたいだ。

 

「感じた事のない霊圧です。恐らく、ここに博麗の巫女がいるって事は、あの新聞に載っていた黒崎一護って言う少年だと思うのですけど……」

 

 あの新聞……。

 知っての通り文々。新聞の事だ。

 

「黒崎一護で当たっているわよ」

 

 永淋の予想を答えた紫。

 

「けど、おかしいわね。この霊圧……本当に一護君のものなのかしら? 随分と霊圧が異質になっているようだけど……?」

 

 流石の紫も、今回の一護の異質な霊圧には理解できなかったようだ。

 

「何なのかしら……? この霊圧、霊夢は何か知ってる?」

 

 幻想郷で一護と一番一緒にいる霊夢なら何か知っていると思った紫は、一護から感じる霊圧について聞いてみる。

 

「……ええ、知っているわ」

「へぇー、流石」

 

 まさか知っているとは思わなかった紫も、他の二人も驚く。

 

「もし、あの時の一護がまた同じ力を使っているとしたら……そのウルキオラって奴、死ぬかもしれないわよ」

 

 霊夢の発言に永淋と輝夜は目を見開いたのだった。

 

▲▲▲▲▲

 

「……この力は」

 

 そこは時間の概念や空間の概念さえも存在しない、別次元の別宇宙のような隔離された無の場所。そこには何も存在することは不可能であり、誰であろうと干渉できない牢獄。

 そこに彼がいた。

 

「成程、黒崎一護か。これは随分とまた、面白い展開になってきているな」

 

 彼――刹蘭は座す。

 そして見る。

 

「目的に達するための鍵は、絶対に離さないさ。過去の“失敗と、真の自由、そしてあの頃に戻るため”」

 

 混沌とする己に対して、一瞬だけ悲しみが孕んだかのように言った。

 

「――俺にとっての最愛の時。永劫続いて欲しかった時間。ああ、絶対に“アレ”は潰す」

 

 同時に赫怒の念を募らし、何かに復讐を誓っている。その念だけで、この無限に広がる無の宇宙が、無を超えた滅びに昇華するように。

 

「さぁ、見に行くか」

 

 ――そして刹蘭が動く。

 もちろん、場所は幻想郷だ。

 

▼▼▼▼▼

 

「馬鹿な……二度もこの俺が、虚と化した人間に苦戦するとは」

 

 先程までのウルキオラとは思えないほど、ボロボロの姿になっている。

 息遣いも荒く、所々から血が出ている。普段ならウルキオラの持つ能力〝超速再生〟により、脳と臓器以外の全てを超速再生出来るのだが、その能力は幻想入りすると同時に無くなっていた。

 だが、それをカバーするように〝事象を拒絶する程度の能力〟と言う能力を覚醒させたのだ。この能力を使えば、身体の負傷なんぞ一瞬で元に戻せる。

 しかしこの能力は万能ではなく、力の上限及び限界が存在する。一度に何度も能力の行使ができず、力の発現には一日単位で回数の制限がある。

 しかしまだ上限に達していない。まだ使えるはずなのだ。

 だが、この能力が一護の前で全く発動しない。

 まるで、あの時と同じように。

 

「…………」

 

 異形と化した一護は今にも倒れそうなウルキオラを見て、再び手の平をウルキオラに向ける。

 軋る音を立て、深紅の塊が溜まる。

 そして一気に深紅の虚閃を放った。

 

「虚符『黒虚閃』」

 

 深紅の虚閃に対して、漆黒の虚閃を放つウルキオラ。

 二つの虚閃が激突すると、凄まじい轟音と真紅の爆発を起こす。大地が吹き飛び、突風と共に黒煙が舞った。辺り一面を衝撃による熱気が覆う。

 

「…………」

 

 黒煙のせいで辺りが見えないウルキオラは、周囲に神経をとがらせる。

 その瞬間、前方の濃い黒煙から一護が現れた。

 

「光槍『フルゴール』」

 

 ウルキオラは右手に光の槍――フルゴールで一護に対応する。

 斬りかかってくる一護に対し、ウルキオラはフルゴールで一護の霊圧刀を弾いた。そして、その隙を狙って一護を穿とうとするも軽々と躱され、同時に再びに一護の斬撃が舞う。

 激突するたびに、大気が大きくたわんだ。空振りするだけで大地が裂けた。二人が衝突するたびに、世界が悲鳴を上げる。

 

「槍撃『ルス・デ・ラ・ルナ』」

 

 そして一護の攻撃を弾いた一瞬の隙にスペルを唱え、ウルキオラの周りに翠色をした無数の鏃状の弾幕を展開し、一斉に一護に放つ。

 それら全て被弾した一護は全く怯まず、ウルキオラに追撃する。

 

「!!」

 

 全く効かなかった事に驚愕したウルキオラは、一護との距離を取るために、後方に勢い良く跳ぶ。

 

「光槍『雷霆の槍』」

 

 距離を広げたウルキオラは、即座にスペルを唱えた。

 右手に雷霆の槍を出現させる。

 

「ガァァァアアアアア!!」

 

 一護は奇声を上げならがら駆ける。

 ウルキオラの広げた距離が一気に縮められた。

 

(……普通に雷霆の槍を放つだけでは駄目か)

 

 ウルキオラは向かって来る一護に、雷霆の槍を投げようとはしない。

 投げたところで、防がれるか、避けられるか、虚閃で相殺されるからだ。普通に投げても効かないのは目に見えている。

 

(だったら……)

 

 ウルキオラは全神経を一護に集中する。

 そして一護の斬程内に入った瞬間、一護はウルキオラを斬りつける。

 だが、それをウルキオラは紙一重で躱した。並の妖怪なら避けることは到底不可能なほどの斬撃だろう。 だが、ウルキオラはそれを見極め避けたのだ。

 

(ここだ!)

 

 そしてウルキオラは、雷霆の槍を一護の顔面目掛けて穿った。

 一瞬の隙を突いた雷霆の槍の攻撃だ。

 

 瞬間――ウルキオラの帰刃状態が解けてしまった。

 

「ッ!」

 

 急に帰刃状態が解けてしまったせいで、雷霆の槍が消えてしまう。

 雷霆の槍は帰刃状態の限定スペル。通常の状態では発動する事が不可能なスペルなのだ。

 

「何!?」

 

 一世一代のミスを犯してしまったウルキオラ。

 帰刃状態になれると言っても、それは一時的にであって、永久ではない。時間制限と言う制限がある。

 ウルキオラはその時間制限が来てしまい解けてしまったのだ。

 一護は振り下ろした霊圧刀とは違う腕で--普通の左腕でウルキオラの顔面を殴った。

 それによりウリキオラは勢い良く吹き飛んだ。

 

「く……ッ!」

 

 ウルキオラは直ぐに態勢を立て直す。

 最初に視界に移ったのは、自分に向かって休むことなく駆けてくる一護だった。

 帰刃状態では無いウリキオラにとって絶望的な状況。再び帰刃状態に成れば良いのだが、そんなに世界は甘くない。二度目の発動は不可能。なぜなら帰刃のスペルは一度唱えれば、一日は発動不可能になってしまう。

 どんなものにもメリットとデメリットは生じてしまうと言うことだ。

 

「虚符『虚閃』!」

 

 駆けて来る一護に向かって虚閃を放つウルキオラ。

 だが当然無駄な事は百も承知。

 一護は空中に高く跳び、虚閃を避ける。

 

「!」

 

 一護は空中に跳びあがり、そのままウルキオラに空中から斬りかかる。

 

「しまっ――」

 

 想定外の攻撃にウルキオラは為す術なく、立ちすくむ。

 普段のウルキオラなら想定内の攻撃だったが、急な展開に思考が追付かなかったのだろう。

 一護の斬撃が、ウルキオラを空中から襲う。

 

「まさか俺が、同じ人間に二度も敗れるとはな」

 

 心の中で一人呟くように言ったウルキオラ。

 敗北を確信したようだ。

 

「――何やってんのよ! あんた!?」

 

 その刹那、ウルキオラに斬りかかっていた一護が、誰かに蹴り飛ばされた。

 一護は無様に倒れる。

 

「ったく、危機一髪じゃない。良かったわね、あんた。紫に感謝しなさいよ」

 

 ウルキオラの前に一人の少女が立った。

 

「ちょっと、何とか言いなさいよ」

 

 黙りこくったウルキオラの方を向く少女。

 その少女の正体は……博麗霊夢だ。

 

「ァァアアア」

 

 一護は蹴られたにも関わらず、何も無かったかのように立ち上がる。

 

「アアアアアアアア!!」

 

 一護が虚のような奇声を上げ、霊夢の方に駆け出す。

 と……その時、霊夢の前に一人の女性が現れた。

 

「全く世話が焼けるわね。神宝『サラマンダーシールド』!」

 

 現れると同時に、女性はスペルを唱えた。

 女性から無数の火炎弾と赤いレーザーが放たれる。

 一護はその火炎弾とレーザーを受け、動きを止めた。

 

「ウルキオラ、姫が自ら助けに仕ったわよ」

 

 動きを止めた一護を確認した女性が、ウルキオラの方を振り向いて言う。

 その女性は蓬莱山輝夜だ。

 そして輝夜と霊夢に続いて、紫と永淋が現れた。

 どうやら紫のスキマにより、ここまで来たようだ。

 

「なぜ、貴様らが……?」

 

 ウルキオラは四人を見て言う。

 この場に急に現れた事に驚いたようだ。

 

「あなたを助けに来たのよ。後、ついでにアレを止めにね」

 

 永淋がウルキオラの問いに答える。

 

「一護……とっとと正気に戻してあげるわ」

 

 霊夢は言い、異変最後の戦いが幕を上げる。

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