東方幻想斬~BLEACH the fantasy time of end~ 作:ディーン・グローリー
博麗霊夢は館の門番である紅美鈴を黒崎一護に任せて、一足先に侵入していた。
紅い館の中にある家具や調度品の数々はどれもこれも高価な物で、壁や絨毯が全て赤色に統一されている。どうやら館の人は随分と赤を好むと見える。
ここまで赤いと逆に返って不気味さすら感じる。
そんな中で赤い館のメイドなのか、沢山の妖精たちが霊夢の迎撃に入ってきた。
主への忠誠心からなのか恐怖心からなのか、メイドたちは必死に霊夢を取り押さえようと弾幕を放ってきたが軽い軽い。
霊夢の霊力を持ってすれば、妖精たちの弾幕など効かない。故に、ちょっとした弾幕を適当に放っただけで妖精たちを一掃できた。
妖精では霊夢には勝てない。
「……にしても、広いわねこの館」
霊夢は向かってくる妖精メイドを倒しながら呟いた。確かに、この館はかなりの広さだ。博麗神社の敷地の倍はある。
館の主はどうにも位の高い者なのだろうか?
そんなことを思っている時だった――
霊夢の前に、妖精ではないメイド衣装を身に纏った人間が現れた。
その人間を見て、動きを止める霊夢。
成程、こいつはただ者ではないだろうと直感で理解したのだろう。
「あなたが報告に入っていた侵入者ね」
メイドは霊夢の目を見据え言った。
その目には、どこか殺意を秘めている。
「あんたは?」
「侵入者に名乗る名などありませんが、そうですね名乗るもまた一つの礼法」
回りくどいことを言い、
「紅魔館のメイド 十六夜咲夜。ここまで働いた狼藉、許すわけにはいきませんよ」
*
その頃、一護は思ったより体力の回復が早く、既に立ち上がっていた。だが、身体は美鈴との戦いでボロボロになっており、ほぼ立っているのがやっとの状態だ。
最後の激突を果たした一護と美鈴は両者共倒れ。しかし一護の方が早く意識を取り戻し、立ち上がったのだ。
「……早く、霊夢に追いつかねぇと」
フラフラな足取りで紅魔館の入り口に向かう。
今にも倒れそうだ。
恐らく常人なら一週間は目を覚まさないだろう。
だが培ってきた身体力と精神力、そして霊力などもあり立って動けるギリギリの状態にあるのだ。
「そんな体でどうするつもりだ一護」
不意に自分の後ろから聞き覚えのある声がした。
忘れなかったら殺すぞと言われても忘れられないような声をした人物――
「その声は……」
一護は振り向き様に言い、声の主を見る。
もはや確信はしているが。
「よぉ、一護」
声の主は霧雨魔理沙だった。
魔理沙は片手をブンブン振り上げ笑っている。一護と違って何処にも傷が無い。
「魔理沙、何でお前がここに……?」
「決まってるだろ。この紅い霧の異変を解決しにきたんだぜ」
至極当たり前のように、当然の様に、魔理沙は即座に答える。
……どうやらチルノが言っていた助っ人と言う人物は霧雨魔理沙で相違ないようだ。しかし、来るのが遅すぎないか? 時系列からするに先に魔理沙が着いていないと不自然すぎる。迷子か。
そんな疑問を心の中で呟きながら、今しなければいけない事を思い出す。
「そうだ、早く霊夢のとこに行かねぇと」
一護は再び満身創痍の身体で紅魔館に向かおうとする。
今、一護の身体を動かしているのは霊夢を一人にしてはいけないという想いだ。
門番でこのレベル、なら奥にはもっと厄介な者が待ち構えているだろう。そんなとこに霊夢一人ではいくらなんでも危険だ。
「待てよ一護」
そんな一護は見兼ねた魔理沙は、一護を呼び止めた。
「さっきも言ったけど、そんな体じゃ勝てる戦いも勝てないぜ」
「ああ、分かってる。けど、立ち止まるわけにもいかねぇんだよ」
真っ直ぐ魔理沙の眼を見て言う。その目は絶対に自分の言葉を曲げない、強い信念を感じる。
魔理沙は一護の眼を見て溜め息をつき口を開く。
「分かったぜ。一護がその気なら、私から良い物をプレゼントしてやるぜ」
そういうと、魔理沙は一つの何やら怪しい紙包みを取り出す。
紙包み、それは異変解決に向かう前に、ついでとばかりに持ってきた丸薬。
「……何だよ、それ?」
一護はその丸薬っぽい物を怪しい眼で見る。
てか怪しい要素しか生まれない。
「これはこの前、私がキノコを素に作った回復薬だぜ。滋養強壮、霊力回復、何でもこれ一つで治るぜ!」
この丸薬は回復薬らしい。 結構ありきたりである。
だが、この状況で回復薬はかなり有り難い。どれほど回復するかは分からないが、今の状態よりマシだろう。
「ありがとな、魔理沙」
一護は丸薬を受け取り、口に入れた。
自分でも何の疑いも無しに飲み込んだことを少し不思議に思った。何せ、本当に回復薬という確証がないからだ。しかし今はそれほど切羽詰まっているゆえ、普通に何の躊躇いもなく自然的に飲んでしまった。
「効き始めるのに少し時間が掛かるが、効果は抜群だぜ」
「……なぁ魔理沙、飲んどいて何だが、本当に大丈夫だよな?」
「当たり前だろ。私を信用しろよ被験者第一号」
「第一号!? え、本当に大丈夫だよな!?」
「冗談だぜ。ははは、一護はビビリだな」
「……今は信じるしかないか」
安心材料はないが、時既に遅い。
一護は重い足をあげ、
「とりあえず、行こうぜ魔理沙」
「おう!」
こうして一護と魔理沙は紅魔館の中に入っていった。
*
「外も中も代わり映えしねぇな。不気味だ」
一護は館の中の赤い空間を見て感想を至極簡単に言った。外も赤く、中も赤い。どれだけ赤が好きなんだって言いたくなる。
「でも広いな。これだけ広ければ、どこかに蔵書ホールがありそうな気がするぜ」
一護とは逆に魔理沙は何やら期待の眼で館の中を見渡している。
「とりあえず進むか。さっきから胸騒ぎがしやがる」
ここに入ってから、何やら判然としない不安が募る。
赤い不気味な色がそうさせるのかは分からないが。
とりあえず二人は適当に、この館の中を歩き出した。
歩いている途中に所々でメイド姿の妖精が気絶している姿を見かける。
どうやら霊夢が倒していったようだ。まぁ妖精では、いくら掛かっても霊夢には手も足も出ないだろう。
と、不意に魔理沙が一護の肩を掴んできた。
「どうした? 魔理沙」
一護は後ろを歩く魔理沙の方に振り向く。
「あそこに行ってみないか?」
魔理沙は自分たちからみて横の方を指差す。
そこには地下へと続く階段があった。
「あそこから強い魔力を感じるぜ。もしかしたら、紅い霧の犯人かもしれないぜ?」
「地下か……」
一護の脳裏に何かが蘇る。
そう、夢だ。
あの暗い部屋の、あの少女の夢。地下室のように、まるで牢獄のように何もない場所に、一人の年端もいかない少女が閉じ込められていた。
もしかしたら、
「分かった」
一護はあの夢と何か関係していると思い、地下に行くことにした。
*
本の世界……と言ったら良いのだろうか?
地下室の扉を開くと、そこにはまるまる大部屋全てに本棚があり、そこにはほとんど隙間なく本が並べられていた。そこらの図書館では歯が立たないであろう量、恐らく人生を何十回と繰り返さないと読みきれない程の量だった。
「すげぇ数の本だな」
一護は感心したように言う。
いやホント、関心というよりは驚愕だ。
こんな比喩表現抜きに山ほどある本を初めて見た。……地震が起きたらどうするのだろうか? 本の津波がやって来るだろう。
「……す、すげー! 本が一杯あるぜ!」
瞬間、魔理沙の目が眩しいくらいに輝いた。
そういえば魔理沙は本好きだ。それもオタクと呼べるほどに。
だから、こんな数の本を見たら嬉しくて仕方ないのだろう。
「こいつは、後で何冊か借りていかないとな」
何て、敵地でそんな素っ頓狂な発言をした。
お前は何しに来たんだ? と一護は心の底から思ったり
「私が見ず知らずの人に、大切な本を貸すと思っているの?」
ふと、何処からか知らない声が室内に響いた。
その声の根源を直ぐさま並外れた聴覚で突き止め、その方向を見る。
そこには、一人の少女が浮いていた。
長い紫髪の先をリボンでまとめ、紫と薄紫の縦じまが入った、ゆったりとした服を着ている。さらにその上 から薄紫の服を着、ナイトキャップをかぶっている。また服の各所に青と赤のリボンがあり、帽子には三日月の飾りが付いている。
その少女が二人を見据えている。
「あなた達が小悪魔が言っていた侵入者ね」
「……あんたがこの館の主か?」
一護は敵の姿を現したのを驚きつつ、警戒する。もし相手が急に襲い掛かってくる敵なら、即効対処する準備は出来ている。
それに回復薬のお陰もあって、身体の痛みが消えていっている。戦うくらいなら出来るだろう。まさか本当に効果があるとは半信半疑だったが、効いていたので喜ばしいことである。
「違う。私はこの館の主ではないわ。館の主なら、自室にいると思うわよ」
「え、あ、そうか」
何やら親切に教えてくれた。
……実際、まだこの紅い霧の主犯がここの主と決まったわけではないが。
「あなた達は、今この幻想郷に起きている異変を解決しに来たの?」
「ああ、まぁな」
随分と、気軽に話しかけてくる。
こっちは館の侵入者。相手は館の者。
こんな気兼ねなく会話していて良いのだろうか?
「その主の場所を教えてはくれねーか?」
会話が出来る相手なのだろう。別に敵地の全員が敵という訳ではないのだから。
そんな勢いで主の場所を聞き出そうとする一護。だが流石にこれは断られると思ったのだが……
「良いわよ」
あっさり了承してくれた。
かなり適当な人と見る。
「……俺が言うのも何だけど、自分の館の主人の場所をそう簡単に教えていいのか?」
「別に構わないわ。私はのんびり、ここで本に囲まれて生活できれば文句ないもの。それにあなたはそう悪い人に見えないしね」
「はぁ、そうですか。じゃあ早速教えてくれねえか?」
「ただし、条件があるわ」
と、まぁこうなるだろうとは思っていた。
ただで、何の理由もなく自分の主であろう人物の場所を教えてくれる訳が無い。いや教えるのもどうかと思うが。
「この大図書館の中から、ある一冊の本を探し出して欲しいの」
「本?」
「ええ、こんなこと他人に、いえ侵入者に頼むようなことじゃないんだけどね。こっちも、ちょっと困っているのよ」
「分かった。探してやるよ。で、その本の名前は?」
「〝初代魔術師ダルク・マグス〟の綴った本よ」
「何ぃぃぃいいいイイイイ!!」
魔理沙が本の著者を聞いて凄い驚いた。
「あの、ダルク・マグスの書いた本が有るのか!?」
魔理沙の目が輝くどころか星が飛び出している。
古いコメディ漫画のようだ。
「ええ。今それを小悪魔にも探してもらってるから、あなた達も一緒に探してちょうだい。探し出せたら主の場所を教えてあげるわ」
「ああ。その人の本を見つけたら良いんだな」
「良いぜ良いぜ。絶対見つけてやるぜ」
魔理沙は本探しだというのにうきうきしている。多分だが、見つけ出した暁には、その本を借りるつもりだろう。
「そういや、自己紹介がまだだったな。俺は黒崎一護、よろしく」
一護は悪い人じゃなさそうなので自分の名前を名乗る。
別にさっきの女性(紅 美鈴)が悪い人というわけではないが。
「私は霧雨魔理沙だ。よろしくだぜ」
一護に続いて魔理沙も名前を名乗る。
「私は知識と日陰の少女 パチュリー・ノーレッジ。この大図書館の主よ」
*
その頃、霊夢はメイド長の十六夜咲夜と死闘を繰り広げていた。
銀髪のボブに両方のもみあげ辺りから、先端に緑色のリボンをつけたみつあみを結っている。服装は青と白を基調としたメイド服であり、頭にはカチューシャを装備している。
メイド衣装の見本のような姿だ。
そんな彼女が巫女であられる博麗霊夢と戦っているのだ。
絵的には随分晴れるであろうが、しかし繰り広げている戦いは必死そのものであり、一歩間違えれば死へ繋がるかも知れない戦いなのだ。
「奇術『ミスディレクション』」
咲夜はスペルを唱えると、無数のナイフの弾幕を広範囲に放ってきた。
「夢符『封魔陣』」
霊夢もスペルを唱え青白い結界を展開し、ナイフの弾幕から身を守った。
そして、新たなカードを続けて取り出しスペルを唱える。
「霊符『夢想封印』!」
霊夢の周囲に光り輝く弾幕が現れ、光弾を咲夜に向かって発射した。
「……無駄ですよ」
咲夜はそういうと、その場から姿を消失させた。
(消えた!?)
瞬間、霊夢の後方に咲夜が現れた。
霊夢は直ぐ様、気配に感づき、後ろに振り返る。
「幻在『クロックコープス』」
咲夜がスペルを唱えた瞬間、霊夢の周りに、いつの間にかナイフの弾幕が現れ、飛んできていた。
(いつの間に!?)
霊夢は即座にナイフの弾幕を避けるが、三本ほど腕や足に刺さる。
刺さった腕や足から赤い血が流れた。深くは刺さっていなかったのか簡単にナイフを抜き取り、放り投げる。
この時点で、もはや死と隣り合わせの戦い。
血が流れる戰なのだ。
「あんた、一体何をしたの?」
霊夢はナイフにより痛みなどほとんど意に介さず、敵である咲夜に語りかける。
「私が優しく教えるとでも。もう一度、ご自分の目で確認してみてはいかがですか?」
咲夜は少し挑発じみたことを言う。
さっきの咲夜の移動は空間移動……所謂テレボートを使ったとしか思えない程の速さだった。だが、空間移動とは何か違う気がする。
霊夢はそれを確かめる為に、挑発に挑む。
「それもそうね」
再びカードを取り出し、スペルを唱える。
「霊符『夢想封印』」
複数の光弾が咲夜に向かって放たれるが、さっきと同じように霊夢の後方に虚空より現れ、弾幕を余裕で回避する。
(消えたと思ったら、移動されている。やっぱり空間移動系……にしては、移動の後のあの余裕な姿は些か不自然ね)
もう一度、直ぐ様、咲夜に向かって弾幕を放つ。
瞬間――咲夜は再び空間に呑まれたかのように消え、次は霊夢の頭上に現れる。
「幻世『ザ・ワールド』」
咲夜がスペルを唱えた瞬間、霊夢の周囲を囲むように無数のナイフが展開された。
「チェックメートですね、侵入者。そういえば、まだあなたの名前を聞いていませんでした。まぁ、今更どっちでもいいんですけど!」
そういうと咲夜は展開していた無数のナイフを、霊夢に一斉発射した。これをまともに喰らえば、いくら霊夢でも命に関わるだろう。
「夢符『封魔陣』!」
霊夢はスペルを唱え、渾身の結界を張った。
*
同時刻、一護は大図書館でパチュリーに頼まれた本を探していた。
敵地で何を悠長なことをと思われるだろうが、まぁそれもまた一興であり異変解決への一歩なのだ。
「こんな大量の書物から一冊の本を探し出すのって、結構きついな」
冗談抜きで、砂漠から特定の砂粒を見つけ出すかのような感じだ。
「そうですね」
一護の横に立つ一人の女性が答える。
赤い長髪で頭と背中には悪魔然とした羽が生えており、白いシャツに黒色のベスト、ベストと同色で膝丈より長いスカートで、ネクタイを着用している。
この女性がパチュリーが言っていた小悪魔。
大図書館で司書をしているらしい。既に一護と魔理沙との自己紹介は終えている。
「これじゃあ、自分で館の主の部屋を探した方が早いかもな」
何て、最もなことを言う。
しかし一度、請け負った仕事は途中で止めたくない。
「すみません、司書である私が責任をもって努めないといけない仕事でしたのに、まさか一般の方に手伝っていただくなんて」
一般というより侵入者。
もろ敵だ。
「いや、別に構わねえよ。こっちも対価をもらう予定でしているんだからな」
こんなだだっ広い図書館の中をボランティアなんかではしたくないし、規模がデカすぎる。
何やら蔵書の数が凄く、外の世界――いわゆる一護のいた世界の本まで置いてある。
難しい文献から女性のファッション誌、漫画雑誌にライトノベルやお堅い文庫本まで。
「けど、あんたも大変だな。こんな数の本の管理、普通に考えて無理だろ?」
「ええ、本音を言うとかなり大変です。けど今まで見たことのなかった本に触れることの出来る立場で、それはそれで面白いですよ。え、こんな本があるのですか、と感動の出会いがあったりしますから」
「それはまぁ、天職ってやつなのかね」
「それより大変なのは、パチュリー様の御面倒を見ることですね。気付いたら涎を垂らして寝ていますから。よくその涎が本に落ちて染みになったりして、私が綺麗にして直してるんですよ。本も時々、机に側に直し忘れてたりと、色々とお世話が尽きないんですよ」
と、小悪魔が少し愚痴りだした。
一護はそれを軽く聞き流しながら、本の背表紙を見ていく。
既に何百冊以上の本を見て、目が疲れ始めてきた。
「……流石にただ探すって行為だけじゃ見つからねえな。最後にいつ使ったか思い出せねか?」
「申し訳ございません。それが全然憶えていなくて」
「そうか……ん、まさか……」
一護は何か思いついたのか、再び口を開いた。
「なぁ、パチュリーがいつも本を読んでる机ってどこにある?」
「え、あっちですけど」
小悪魔は横の方を指差した。
「そうか。さんきゅう」
一護は小悪魔が指差した方に向かった。
(俺の勘が正しけりゃ、本の場所は……)
灯台下暗しの下にある。
*
霊夢は咲夜のナイフの弾幕を封魔陣で何とか防いだ。
だが、霊夢の体力はほとんど残っていない。今の封魔陣で、相当な霊力を消費してしまった。恐らく使えるスペルは残り一枚か二枚が限界だろう。
「今のを、よく防ぎ切りましたね」
咲夜は感心したように言う。
「けど、もう体力切れですわね」
確かに霊夢の体力及び霊力は既に消耗しきっている。
しかし、ああようやく、目の前の敵の能力が分かったと――霊夢は口元を緩めて不敵な笑みを作る。
「あんたの能力が分かったわ」
その言葉を聞いた咲夜は少し顔つきが鋭くなる。
「……面白いですね、では言ってごらんなさい」
「あんたの能力は時間やそういった時の概念を操る程度の能力……で、当たってるかしら?」
それを聞いた咲夜は驚く。
まさか、本当に――当てられるとは思わなかったからだ。
「……正解よ。私の能力は〝時間を操る程度の能力〟。私は流れる時を操れるの」
「大層な能力ね」
「当てたことには驚きましたが、当てたところで攻略法が分からなければ意味ありませんよ」
咲夜はカードを取り出す。
「これで本当の最後です。メイド秘技『殺人ドール』」
スペルを唱えると無数のナイフが発射された。
そんな絶体絶命の状況で、霊夢はスペルカードを取り出す。
「このスペルはあまり好きじゃないんだけど、そんなことも言っていられないみたいだわ」
言うと、それを唱えた。
それは自分の能力と渇望が具現化した特殊なスペルカード……
「天に生み出されし夢想よ 私にその天位たる力を授けろ『夢想天生』!」
*
「マジかよ」
一護と小悪魔はパチュリーの読書机を探っていたら、目的の本を見つけてしまった。
綺麗な装丁の本で、かなり高価な本に見える。
「良かったです。見つかって。でも、どうして黒崎さんはここだと分かったんですか?」
「簡単だ。簡単すぎて説明したくねぇよ」
簡単かどうかは分からないが、端的にパチュリーという人物像を小悪魔から聞く限りここくらいしか思いつかなかった。
本を大事にはしているが、どこか抜けがある感じのパチュリー。誰も本棚に直した記憶がないということは、読んでそのまま読書机に置いていたのだろう。
そして月日が経ち、他の本も積み重なり隠れて見つからなくなった。こんなところだ。
と、そこにパチュリーと魔理沙が来た。
「ようやく見つかったようね。助かったわ、ありがとう」
パチュリーは小悪魔が持つ本を見て言う。
「ああ。じゃあ、約束通りこの館の主の部屋を教えてくれ」
「ええ、分かっているわ。レミィの部屋は」
*
同時刻、その館の主の部屋では一人の少女と一人の男性が向き合っていた。
暗くてお互いの詳しい表情や容姿が分からない。
「まさか、本当にあなたが現れるなんてね」
「私はただここに寄っただけだよ。レミリア・スカーレット」