また、砂糖吐きそうになるかもですので、読み飛ばしても問題ありません。
Side キョウスケ
(告白ねぇ…。)
先日、オーリスと共に食事に、それも安い早い美味いが標語の様なチェーン店に行った時、その帰りに彼女に告白された。
「あなたが好きです。私と一緒になってください。」
真摯に自分の言葉を告げる様は何処か彼女の父親を彷彿とさせるもので、あぁ血は争えないなと思った。
寧ろ、あんな偉大な人の背中を見て育ったのならさもありなん。
「すまない、なんて答えたら良いか分からない。」
「じゃぁ、待ちますから、ちゃんと答えを出してくださいね。」
そう言って別れたのが昨日で、今日はオフだった。
(部下に相談するのもなんだし、ここは上司に相談するか。)
Side レジアス・ゲイズ
(それで私に相談するとか、色々と間違っちゃいないか…。)
レジアスは直属の部下から緊急の連絡と言う事で通信に出たのだが…その話の内容を聞いて、思わず天を仰いだ。
自分が妻を娶った時は相手方の父親と殴り合いの大喧嘩の末だったが…うちの娘と此奴の場合、全力で後押ししないと確実に二人とも生涯独身で過ごす=孫の顔を見れない事になるだろう。
『話が話ですし、レジアス中将にとっては場合によっては後継者問題になりそうですので。』
「生憎と、組織内での後継者は既に選定済みだ。その中継ぎになりそうな人材にも見当はついておる。いらぬ心配をするな。」
『は、申し訳ありません。』
こういう所だけを取れば、優秀で何処にも出しても恥ずかしくない、立派な部下なんだがなぁ…とレジアスは現実逃避して遠い目になる。
「私としてはこの話は良いと思っている。お前もそろそろ身を固めても良い歳だしな。…それとも、オーリスは気に入らんか?」
『いえ、そんな事は。オレには勿体無いと思う程素晴らしい女性です。』
実は家庭では家事一般はレジアスの方が得意なのは言わない方が良いな、うん。
と言うか、そう思ってるならとっとと貰って孫の顔を見せてほしい。
一体お前たち二人を見てどれだけの人間が進展しない関係にやきもきしていると思ってるのだ?
「取り敢えず、落ち着いて考えるべきだな。期限は無いのだろう?」
『はい。既婚者であり関係者である中将の意見も参考にしたいと思いまして。』
つまり、未だキョウスケの中ではこの件に関する答えが見つからない、と。
「折角の休日だ。天気も良い事だし、散歩でもしながら考えると良い。私の経験や考えを話すのはその後の方が良かろう。」
『は、了解しました。』
そして通信が切れた。
「ふぅ…。」
何かどっと疲れた気がするレジアスは、そっと執務机の上に置いてある家族写真を手に取る。
そこには未だ幼いオーリスとまだ若いレジアスに、今のオーリスから検を取って穏やかにした様な女性の姿があった。
「なぁ母さん…私達の娘も、遂に結婚したい相手を見つけたらしいな。」
前途多難過ぎるが、とは言えなかった。
Side ゲンヤ・ナカジマ
「で、今度はオレの所に来たと?」
「はい。ゲンヤさんなら何か解るかと。」
ゲンヤはこの鉄面皮の後輩の言葉に、思わず手で目を覆った。
(レジアスの奴、苦労してんなぁ…。)
ここはゲンヤの自宅だ。
久々の休みに娘と妻が買い物に行っている間、自分はゴロゴロしていた所、唐突な訪問に出くわしたのだ。
「クイントは…無いな、うん。」
「はい。」
自他共に認める肉食系の妻にこの手の話はし辛かった。
「取り敢えず、オーリスの事は嫌ってないんだよな?」
「はい。」
まぁこの辺りは予想通りだ。
寧ろもし違ったらオーリスが哀れ過ぎるが。
「あー…いきなり結婚ってのも急だし、一先ず交際始めて、そっからどうするか決めるかも手だぞ?」
「解りました。」
そしてキョウスケは丁寧に礼を告げてから、手土産のドーナツ30個程を置いて去っていった。
「どーなんのかねー、これは…。」
二人の事を思うと、深ーい深ーい嘆息しか出なかった。
Side ????・???????
『と言う訳なのですが。』
「そこでまさかの私に相談かね!?わはははははははは!」
まさかの驚きを提供され、通信越しに爆笑してしまった。
『ドクターなら、女所帯での生活での経験もあるかと。』
「あー、まー確かにそうだがね。結婚生活となると色々違うと思うよ?」
確かにウーノを始めとした娘達に色々とやってもらってる身だが、彼女のそれはどちらかと言うと造物主に対する敬虔な信徒のそれだと思うのだが。
「取り敢えず、この手の事は自分の気持ちをよく考え、それを正直に告げた方が後腐れが無いと思うよ。」
『とは言え、恋愛とかはした事がないものでして…。』
うん、その点は私も予想済みだとも。
と言うか十代前半からテロリスト絶対殺すマンだった君がプレイボーイだと言われても逆に信じられないしね。
「なら、その事も一緒に言えば良いのさ。恋愛もした事が無いから、結婚を申し込まれてもピンと来ないのだと。」
『分かりました。ありがとうございます。』
「あぁ、別に良いとも。所で義手の調子はどうかね?」
『調子は良好です。ただ先日無理をさせた事もあったので、近々調整に行きます。』
「うん、待ってるよ。ではね。」
そうして通信を切ったのだが…実に面白そうだね、うん。
「ウーノ。」
「既にステルスドローンを出撃させています。きっと面白い絵を撮ってくれるかと。」
うん、うちの子は実に完璧に私の趣向を理解してくれるなぁ。
「…それに、将来の参考になりそうですし。」ボソッ
「ん?どうかしたかい?」
「いえ何も。」
ま、良いか。
あぁ、実に楽しみだなぁ!
Side ナハト
「お前はどう思う?」
『そこで私に聞きますか?』
私は確かに貴方の長年の相棒ですが、あくまでデバイスなのでそういった感情とは無縁なのですが。
ちなみに戦闘時こそ無駄な事は話しませんし、平時でもおしゃべりが好きな質ではないので静かにしていますが、主からの相談となれば無碍にできません。
『先程までの皆さんの助言は的確だと思いますので、それに従ってみては如何でしょうか?』
「…正直な気持ちと言われても、それが解らん。」
私と出会った頃からモーションセレクトシステムを使用し続けた影響でしょうか、主は表情筋が麻痺され、普段から感情の波が凄まじく小さいのです。
割と喜怒哀楽はある方なのですが、一つ一つの波がどうしても小さいので、不愛想と見られてしまうのです。
特に戦闘時はシステムを発動するのでそれが顕著になります。
『では、逆に考えましょう。オーリス女史がマスター以外の男性と交際している光景を思い浮かべてください。』
「む」
おや?これは行ける?
私としては主と主と長い付き合いのあるオーリス女史がくっつく事は大歓迎なのですが…この反応、まさかのまさかですか?
いえ、落ち着きなさいナハト。
先ずはちゃんと主の意見を聞いてから、外堀を埋めていくのです。
『どうかしましたか?』
「…確かにオーリスは好ましいと思う。彼女には色々と世話になりっぱなしだったからな。」
その好意、友情ですか恋愛ですか?と聞きたいのをぐっと我慢しますよ、ナハトは出来る子なので。
「だが、彼女はその立場上、どうしても政略結婚の色合いが強くなる。そう簡単に相手が見つかるとも思えん。」
そこは抜かして考えてください頼みますから。
そう言いたいのをぐっと我慢しますよ、えぇ。
『では、もし見つかったら?』
「…祝福したい、と思う。」
『本当に、ですか?』
「何が言いたい?」
好機が来ましたよ、えぇ。
『普段のマスターなら言い淀む事も無いのに、どうしたのですか?』
「……。」
『ほら、今日はそんな風によく言い淀みますね。』
あと一押しあと一押し、焦るな、焦るな…!
『では、オーリス様と同じ家に住み、同じ時を過ごすご自分を想像してください。』
「………………。」
まだ、まだ…!
…ッ!?
来た!表情筋が僅かに緩んだ!これでかつる!
『今抱いた感情が答えです。その気持ちを正直にオーリス女史にお話しください。』
「解った。ありがとう、ナハト。」
『いえいえ、マスターのお役に立てる事こそ、我が喜びです故。』
今日は他の者達に報告会ですね。
大仕事をやり遂げた爽快感とはこんな感じなのでしょうか…。
もうそろそろ、マスターも幸せになっても良いのです。
仇討だけで、人生を消費してほしくはありませんから。
「オーリス、返事をしに来た。」
「えぇ…。」
「オレは、お前が傍にいないのが、嫌だ。だから、どうかこれからも、オレの傍にいてほしい。」
「!」
「答えを、聞かせてくれ。」
「わ、わたしも、あなたと、一緒に、いたい…!」
「解った。」
「き、キョウスケ、キョウスケ…!」
「オーリス…ずっと、一緒だ。」
「うん、うん!」
甘いの書くのはもう前に十分やったから良いんだ…。
追記
こんな時間帯に投下したというのに、この感想の速さよ…
君達一体何処に潜んでたのさ(汗