リリカルでメカニカル   作:VISP

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第七話 時は流れて

 

 新暦61年から暫くの間、キョウスケらにとっては割と穏やかな日常が続いた。

 犯罪者を、テロリストを、狂人を血祭りに上げたり、希望者に地獄の様な訓練を強いたり、偶に娘との事で上司に弄られたりしたが、それでも今までのハードモードが基準の彼の人生では比較的穏やかな時間が続いた。

 そんな日々がなんと5年も続いたので特段記す事も無いので、この際年表と共にダイジェストで語っていく。

 

 

 新暦62年 ミッドチルダ全域にADデバイスの配備及び希望者の機種転換訓練が終了。

 

 新暦63年 ミッドチルダの犯罪発生率が過去最低、検挙率は過去最高を記録する。

 この成果にはAD他新型兵器配備によるものとされ、主導したレジアス・ゲイズ少将は中将に昇進。

 AD教導隊ベーオウルブズ隊長キョウスケ・ナンブ三等陸尉は二等陸尉へ昇進。

 

 新暦64年 クイント・ナカジマが任務にて戦闘機人2名を保護、以後は養子として引き取る。

 

 新暦65年 PT事件発生。また、地上本部にて次期主力ADの先行量産型モデルがAD教導隊に配備される。

 

 そして新暦66年現在、ある管理外世界を舞台に、第○○次闇の書事件の発生が確認された。

 これは本来、キョウスケらには関係の無い事件だった。

 海の連中がまた何か必死にやってるなー位のものだった。

 問題なのは闇の書の使役する叢雲の騎士ことヴォルケンリッターズが、よりにもよってベーオウルブズがテロ鎮圧のために赴いた管理世界に現れてしまった事だった。

 

 

 

 

 

 第41管理世界。

 現地宗教の過激派によるテロ、民族紛争、そして管理局の支配体制反対派と管理局駐留部隊との間で常に緊張状態のこの世界に、彼らはやってきた。

 全ては主の御命ため。

 終われば我らの首を差し出してでも、あの方に平穏を。

 それだけを胸に騎士達は年から年中戦争状態の現地住民らを襲撃した。

 リンカーコアの質そのものは低いものの、それでも人口密集地であり、管理局がおいおいそれを介入できない場所であるため、数だけは多く集まった。

 彼らの使命を邪魔する者はいない。

 これ幸いにと騎士達は蒐集作業に没頭した。

 勿論、現地住民の質量兵器や低ランクながらも魔法を用いた抵抗はあった。

 だが、騎士達は古代ベルカ式の、それも一騎当百は下らない猛者達だ。

 小銃弾なんて効かないし、対装甲兵器なんて当たらない。

 そして何より、彼らは戦乱の時代を延々と戦い抜いた、文字通りの怪物だ。

 今更罠や奸計や謀略程度でどうにかなる程に軟な存在ではない。

 インテリジェンスデバイスの真価がその稼働年数にある様に、彼らもまた圧倒的過ぎる経験によって、あらゆる策を戦術を戦略を捻じ伏せ続け、蒐集を続けた。

 無論、管理局もこれを黙って見ている事は無かった。

 だが、現地住民との不和や散発するテロリストからの襲撃やテロ活動や現地政府のボイコットが彼らの行動を阻む。

 上層部もまた一連の動きには手を焼いており、遂には一部から「管理外世界とその一歩手前の世界にだけ被害が出るのなら放置」という日和見的な意見まで出る始末だった。

 だが、彼らは知らなかった。

 只今、この世界で最大の憎まれ者とその部下達が、各地のテロリストの拠点を襲撃中であった事を。

 その彼らが昨年に最新式のADを受領している事を。

 たまたま狙いを付けて襲撃した場所が、寸前まで彼らの戦場であった事を。

 騎士達は、知らなかったのだ。

 それがどんな事を意味するかもまた、彼らは知らなかった。

 

 

 

 

『転移反応4!北東3と西1!』

 

それに最初に気付いたのはセンサー系が最も充実しているヴァイスリッターⅡ、ウルフ6だった。

すっかり新人っぽさも消えた彼女の言葉に、戦闘終了直後と言う事で気が緩みかけだったベーオウルブズに一瞬で喝が入った。

 

 「シュワルベ・フリーゲン!」

 

 赤い魔力を纏った鉄球4個による同時攻撃。

 軌道からして4個それぞれが個別目標を追尾、バリア貫通機能も付随されているようだが…如何せん、遅すぎた。

 

 『対空迎撃!』

 

 連射される散弾魔法に、4個の鉄球はあっさりと破壊された。

 だが、その際の爆炎に紛れ、高速で接近する影には当たらない。

 

 「紫電…ッ」

 

 炎熱変換された魔力を纏い、炎の魔剣と化したアームドデバイスを手に、シグナムが地へと激突する勢いで疾駆する。

 目指すは敵指揮官、この見慣れぬ集団の中で、対空迎撃に参加しなかった者!

 

 「一閃!!」

 

 同ランクのミッド式の魔導士では防御は愚か、反応する事さえ難しい直上からの斬撃は、しかし、この時ばかりは相手が悪かったとしか言う他ない。

 

 ガギィン!

 

 硬質な音と共に、その刃は特殊合金製の杭で受け止められていた。

 

 『クレイモア。』

 

 同時、敵指揮官の装甲服の肩部装甲が展開すると同時、己の直感を信じて、シグナムは後先考えずにカートリッジをロード、バリアすら発生させる時間も惜しみ、騎士甲冑の強化に回して全力で防御した。

 

 ズバァン!

 

 だが、それで正解だった。

 敵指揮官の両肩から放たれた無数の散弾は、まるで散弾地雷のそれだった。

 少なくとも、真っ当な魔導士の取る手段ではない。

 幸いにも無数とは言え小粒の散弾だったため、命中数は相当のものだが、頑丈な古代ベルカ式の騎士甲冑はそれを全て防ぎ切った。

 

 ジャキ

 

 だが、あくまでそれは第一弾に過ぎない。

 向けられたチェインガンに、シグナムの背筋に寒気が走った。

 

 「うぅおおおおおおおおおおおおおおんッ!!」

 

 そこに青い狼の守護獣、ヴォルケンリッターが盾、ザフィーラが咆哮と共に正面にシールドを展開、左側面から突進を敢行し、カバーに入る。

 

 『…。』

 

 だが、不死身の英雄は怯まない。

 追撃を中止し、左腕のチェインガン付きシールドを構え、姿勢を低くし、真っ向からぶつかり合った。

 

 ドガッシャァァァンッッ!!!

 

 大型車同士が正面衝突した様な派手な破砕音が響き渡る。

 同時に、重量差を勢いで押し切ったザフィーラが、衝突時に罅が入ったフィールドをそのままに更に加速する。

 目指すは進行方向にあるビル。

 その荒れ果てたコンクリート製の壁に、二人は轟音と砂煙と共に砕きながら、室内に突入した。

 

 『隊長!』

 「フランメ・シュラァァァァァクッ!」

 『ッ!』

 

 咄嗟にウルフ4が隊長のカバーに入ろうとするが、意識を反らした瞬間に赤いドレスの様な騎士甲冑を纏ったヴィータが降下と共にハンマー型のアームドデバイスであるグラーフアイゼンを振り下ろした。

 が、この世界に来て、トラップや不意打ちは散々慣れさせられていたウルフ4は咄嗟にゲシュペンストmk-Ⅲの左肩部スラスターを吹かしてそれを回避、射撃で牽制しながら距離を取ろうとする。

 

 「んな小粒弾が効くかぁ!!」

 

 だが、ヴィータは騎士甲冑の防御力頼りに直進、再度グラーフアイゼンを振り被りながら突撃する。

 

 『ほう?これでもか?』

 

 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ!!

 

 「うが!?」

 

 だが、彼女の突撃は無数に連射され続ける射撃魔法によって吹き飛ばされる事で強制終了された。

 ゆらりと銃口から余剰魔力を煙の様に立ち上らせながら、ウルフ3のゲシュペンストmk-Ⅲが5連装チェインガンの銃身を向ける。

 その視線は油断なく、瓦礫の中から立ち上がるヴィータに向けられていた。

 

 『固いな、古代ベルカ式の高ランク魔導士か。』

 『各機、近接戦闘は避けろ!射撃は全て徹甲、又は徹甲榴弾に切り替え!ツーマンセルを崩すな!』

 『隊長が使い魔の狼とビル内に!あと、空戦可能な魔導士がもう一人来て…わぁぁ!?』

 『魔力反応を見落とすな!もう一人、支援役が居るはずだ!』

 

 各々が初撃を乗り切った事で、途端に通信が慌ただしくなる。

 どれもこれも切迫した状況を示すものであり、殆ど指揮を取っているウルフ2としても敵4人中、既に3人が高ランク魔導士級、しかも内二人が空戦という実に頭の痛い状況だった。

 

 『識別出ました!例の闇の書の攻性プログラムです!空戦Sと空戦AAA、陸戦AAAと支援役AAAの4名!』

 『くそ、海の連中の仕事だろうが!』

 

 嫌すぎる情報に喚きながら、ウルフ4が徹甲弾を連射、接近を試みるヴィータの騎士甲冑に損傷を与えるも、まともなダメージが入った様子は無い。

 

 『シグナム、こいつら手強いぞ!』

 『あぁ、こちらも中々だ、が…。』

 

 「我らの敵ではない。」

 

 音速に近い飛翔速度で、烈火の将シグナムが空を駆ける。

 目標は目の前の白い奴、指揮官ではないが、空中にて索敵等を行う支援役を落とせば、少なくとも追ってはこれない。

 それを見越してこそ、先程の指揮官をザフィーラに任せているのだが…。

 

 『スラッシュリッパー、アクティブ。』

 

 フォン、と奇妙な音と共に三枚の刃が付いた円盤が飛来、こちらを切り裂かんとそれぞれ別々の軌道を描きながら迫ってくる。

 同時、ウルフ5の空戦高機動仕様のゲシュペンストmk-Ⅲが徹甲弾を敢えて散らばらせる形で連射する。

 回避した所でどれか一つは命中する、そんな攻撃にシグナムは

 

 「シュランゲフォルム。」

 『カートリッジロード。』

 「飛竜一閃!」

 

 蛇腹剣となり、鞭に近い動きが可能となったレヴァンテインが、まるで炎の蛇の様に唸り、全てを迎撃、更に返す刃で二機の連結刃が迫り…

 

 バシュゥッ!

 

 「ッ!」

 『パンツァーガイスト。』

 

 二条の砲撃が足の止まったシグナムに放たれ、轟音と共に着弾する。

 

 『防ぎましたか…。』

 「ご苦労、レヴァンテイン。」

 

 寸前にデバイスによって発動された防御魔法が、それを防いだ。

 とは言え、急な事だったためか、全てを防ぎ切る事は出来ず、騎士甲冑の所々が欠けていたが。

 砲撃元に視線をやれば、スゥ…と中から滲む様に現れたのは重装仕様のゲシュペンストmk-Ⅲの姿だ。

 

 (光学迷彩からの不意を打っての砲撃か。面倒な。)

 『…やるね。ウルフ2・6はカバーを。』

 『任されました。』

 『了解です!』

 

 だが、生憎と強敵は上司含め慣れている。

 ベーオウルブズで数少ない空戦可能なウルフ5と6は眼前の強敵に再度アタックを仕掛け、ウルフ2は二人の突撃の隙を作るべく、再度砲撃を放った。

 

 

 

 

 

 ドガァン!!

 

 「ぬぅぅ!?」

 『………。』

 

 互いに同じ色を持つ両雄が、反対方向に弾き合い、建物に突っ込み、倒壊させる。

 だが、その視線は眼前の敵に向けられたまままだ。

 

 (いかんな。こいつを通せば、他が押し負けかねん。)

 

 ザフィーラは既に眼前の敵指揮官が尋常の手合いではない事を実感として思い知っていた。

 ヴォルケンリッターの中で最も硬い自分のシールドが既に何度も破壊されている。

 これ以上はデバイスを持たない自分にはおいそれと張れないと言うのに、奴の右腕の得物はそれを一撃で突破してくる。

 

 (この爆発力は危険だ。何としても食い止める!)

 

 そう覚悟を決め、再度手足にシールドを展開し、踏み込む。

 防御力の方が目立つが、その実、最も仲間達の中で素の身体能力が高いのもザフィーラだ。

 獣特有の動体視力も相まって、素手でのインファイトなら誰にも負けない。

 そんな彼だからこそ、眼前の敵と自分の相性の良さを悟っていた。

 

 「ぜぇあぁッ!!」

 『…。』

 

 ガキン、とナハトの右腕から撃鉄の音が響く。

 当たれば一撃、プログラム体の自分でも間違いなく致命傷になる。

 だが、それは奴が最大速度になればこそ。

 

 (死中に…)

 

 ゴゥ…ッ!!

 

 (活あり!)

 

 だから、敢えて奴の懐に飛び込んだ。

 圧倒的な加速力と共に左腕を前に構え、その盾で身を防ぎながら、必殺の右腕の杭を叩き込む。

 それが敵の戦い方。

 恐らく、数多くの格上すら屠ったであろう、致命の一撃。

 そのための姿勢は効果的かつ正確無比。

 相手の必殺であろうそれは、しかし、それ故に隙が存在する。

 

 ズガァッ!!

 

 杭が最大威力に到達する前=敵が加速に乗る前に杭を盾で流しながら、敵の両拳をこちらの拳で受け止める。

 

 『押せよ、mk-Ⅲ。』

 

ギャギャギャギャギャギャギャ…!!

 

「ぬぅぅッ!」

 

 だが、身体能力は多少勝るも、加速力に優れ、質量にもかなりの差がある相手を完全には止め切れない。

 それもまたザフィーラは予想していた。

 

 「でぇぇありゃぁぁッ!!」

 『…ッ。』

 

 相手を前に崩し、体を丸めて転がる様に真後ろに倒れこみ、片足の裏を相手腹部に当てて、押し上げるように真後ろへ頭越しに投げる技。

 柔道における巴投げ。

 スポーツはさて置き、実戦でこれを行う事は訓練した者でも極めて難しい。

 しかも、相手が1トン近い重量と地上で音速に近い加速を行う事が出来る馬鹿みたいな存在となれば、寧ろどうしてやる気になったのか、仕掛けた側の正気を疑うレベルだ。

 だが、ザフィーラは別にこのクラスの加速性も、重量も、パワーも、別段初めてと言う訳ではない。

 寧ろ、これを超える相手とすら戦った事もある。

 彼らの戦闘経験とは、そういう物なのだ。

 魑魅魍魎が如き敵が蠢く古代ベルカにおいて、その勇名が知られた騎士達は多かった。

 だが、彼ら程長きに渡る時代を戦い抜いた者は存在しない。

 その経験故に、ザフィーラは冗談の様に刹那のタイミングと神業的な身体操作を可能とした。

 そして、轟音と共に再び廃屋に叩き込まれた孤狼に、盾の狼が追撃する。

 

 「貴様はそこで沈んでいろ!」

 『ッ!』

 

 廃屋内の床、壁、天井と言う正面を除いた全方位から、ザフィーラの鋼の軛が迫る。

 咄嗟に身を起して前に出ようとするも、既に正面には先ほどよりも頑丈に魔力を込められた障壁が展開され、屋外に出るには壁を破壊するしかない。

 だがその前に、ほぼ全方位からの攻撃が、アルトアイゼン・ナハトを貫いた。

 

 

 

 

 一方、シャマルは戦闘が開始してから直ぐにベーオウルブズが鎮圧したテロリスト達からリンカーコアを蒐集していた。

 全員が完全に無力化され、しかもそれなりのランクの魔導士も混ざっている事から、蒐集結果は一度の蒐集にしては中々のものだった。

 しかし…

 

 (皆は今、これ全部を無力化した相手と戦っているのよね…。)

 

 やべーぜ、どー考えてもやべーぜ。

 彼女の思考を要約してしまえばこれに尽きた。

 勿論シャマルだって仲間達の強さは知っているし、何が相手でもおいそれと遅れを取る事は無いと信じている。

 が、どうにも嫌な予感が拭えない。

 気になって索敵すれば、なんと今戦っている魔導士は腕が立つものの、一番上でランクはAA程度でしかない。

 つまり、まだ親玉や別動隊が控えている可能性が高い。

 そして、こういう時はさっさと撤退した方が良いと長年の軍師としての勘が告げている。

 

 (皆、蒐集ノルマは達成したから撤退よ。)

 (ぬ、もうか?)

 (あいよ!んじゃジャミングと転送タイミングはそっちに任せた!)

 

 ヴィータは兎も角、本来リーダーである将がまた脳筋を拗らせている事に頭痛を感じつつ、シャマルはふともう一人の仲間からの連絡が無い事に気づいた。

 

 (ザフィーラ、どうしたの?)

 (…すまん。手傷を負った。これから合流する。)

 (おいおいマジかよ!?)

 

 その知らせに内心で驚きつつ、素早くザフィーラのバイタルをチェックする。

 結果、腹部に中程度の負傷があり、長時間の戦闘続行は不可能な状態だった。

 

 (無理せず撤退するわ。指定ポイントに集結次第跳ぶわよ。)

 (((了解!)))

 

 幸いにも封鎖結界も無かった事から、騎士達はあっさりと撤退に成功した。

 

 

 

 

 

 『退いたか…各員、状況知らせ。』

 『こちらウルフ3、被弾無しですが弾薬がイエローです。』

 『ウルフ4、同じく。』

 『ウルフ5、ギリギリ小破。』

 『ウルフ6です!被弾ありません!』

 

 瓦礫の中に立ちながら、敵の撤退を見届けたウルフ2が各員に連絡すると、一人を除いて直ぐに返事があった。

 

 『隊長は?誰か見ませんでしたか?』

 『青い使い魔とやり合いながら郊外の住宅地の方に向かいました。』

 『あ、魔力反応ありました。確かに住宅代の方です。』

 『通信機が逝かれたか?ウルフ6、先行してバイタルチェック。必要なら医療班に連絡を。』

 『了解!』

 

 フォン、と独特の音と共にヴァイスリッターⅡが飛翔する。

 目指すは戦闘の収束した旧住宅街方面のいるであろう隊長だ。

 そして、お目当ての人物は直ぐに見つかった。

 

 ただし、全身ボロボロの状態で

 

 『た、隊長!?』

 『ウルフ6か。問題ない。』

 『大有りですよぉ!ウルフ2、隊長が負傷してます!医療班急いでくださいぃぃ!』

 

 見れば、機体の装甲のあちこちが剥げ、左腕は肩から先が無い。

 

 『って、負傷は義手だけですか?』

 『掠り傷だ。』

 『良いから詳しくお願いします。』

 

 が、戦闘が激しかった場合、上司が無痛症状態になる事がよくよくあるので、直ぐにウルフ6は負けずに詰問した。

 

 『打ち身があちこちにあるだけだ。』

 『じゃぁ念のため医療班の所に行きましょうね。』

 『分かった。』

 

 念には念を入れるべきとウルフ6はしっかりと釘を刺しておく。

 嘘ついても医者の前じゃ無駄だぞ、と。

 それが通じたのか、キョウスケも肩の力を抜いて大人しくする事にした。

 

 (どっか骨に罅入ってますね、呼吸音が微妙におかしかったです。)

 (気づかれたかなー?まぁ戦闘中は殆ど無痛症状態だしね仕方ないね!)

 

 

 

 

 

 

 「してザフィーラ、先日の指揮官はどの程度だった?」

 「あぁ、奴か。」

 

 主の家に帰宅後、シグナムは興味本位から狼状態のザフィーラに問うた。

 先日の奇妙な全身甲冑の魔導士の部隊、その中でも特に危険だと感じた青い指揮官。

 その相手をザフィーラ一人に任せてしまい(=楽しませてしまい)、(羨ましいと)気がかりだったシグナムは珍しくもザフィーラに話しかけていた。

 

 「…次にやるとしたら、相性の問題でオレだろう。」

 「そういう事が必要なレベルか?」

 「あぁ、手強かった。」

 

 ザフィーラの脳裏には鋼の楔に捕えられ、身動きが封じられたあの敵指揮官の姿があった。

 奴はあの時、左腕を肩の武装と共に完全に串刺しにされた状態で沈黙していた。

 だが、ザフィーラが止めを刺そうと屋内に踏み込んだ瞬間、奴は動いていた。

 左腕を自切し、右腕を先ほどの様に引き絞って。

 無論、ザフィーラもその一撃の攻略方法が解っているため、直ぐに反撃に移ろうとし…

 

 その左肩を敵の額の角に貫かれた。

 

 咄嗟に膝蹴りを叩き込んでいなかったら、そのまま左腕を引き千切られるか、奴の杭を撃ち込まれて戦闘不能にさせられていただろう。

 そんな時にシャマルからの通信があったので、正直あのタイミングは神がかっていたと思う。

 

 「シャマルに直ぐに治療してもらったが、出来れば会いたくない手合いだな。」

 「何故だ?中々に心躍りそうなものだが。」

 「奴の目は死人だった。」

 

 ザフィーラの言う死人は死兵、つまりは自分が死んだものとして考え、ただ組織や仲間、主君への忠義を尽くさんとする者の事だ。

 ヴォルケンリッターもかなり近い精神性を持っているが、あんな機械の様な冷え冷えとした目はしていない。

 

 「本格的にやり合うなら、次は誰か欠けるだろう。」

 「それは勘弁だな。主はやてを泣かせたくはない。」

 「その通りだ。」

 

 だが、何れ再会する事になる。

 不思議とザフィーラにはそんな考えが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本作のザッフィー
1、不遇さ軽減
2、見せ場増し増し
3、仲間の皆に頼りにされてる

本作のヴォルケンズ
1、基本的に経験豊富
2、役割分担と連携はきっちり
3、日常ではへっぽこ

以上の方針でお送りします。
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