Tales of Zero【テイルズオブゼロ 無から始まるRPG】 作:フルカラー
スラウの森と洞窟の狭間で偶然に遭遇した、エグゾア六幹部の一員『魔剣のキラメイ』と『鮮筆のメリエル』。私達が所持するエンシェントの欠片を狙い、彼らは戦いを仕掛けてきた。この苦難をどうにか乗り越え、事態は収束。私達は状況を整理することにした。
まず、ゾルクさんが次のように述べる。
「あいつら幹部のくせに、マリナの脱走についてほとんど触れなかったな。脱走直後はエグゾアの本部から追っ手が差し向けられてたんだろ? なのに今は目もくれないなんて変だよ」
続いてマリナさんも、腕を組みつつ口を開く。
「思えば、エンシェントビットを要求されなかったのも不自然だ。これほどの魔力の塊、エグゾアにとって未だ有用なはず。用済みになったとは考えにくいが……」
私も自分なりの意見を伝えることにした。
「脱走者の処理より優先することがあるのかも……。それに、盗まれたエンシェントビットの回収は諦めて代替品としてエンシェントの欠片を集めている、という線はないでしょうか?」
皆の意見を聞いていたジーレイさんが静かに呟いた。
「その可能性も考えられます。が、果たして本当にそれだけでしょうか。何かもっと別の、悪しき企みがあるような気がしてなりません」
エグゾアの行動を理解できず、皆で頭を抱える。けれどもこのまま悩んでいても埒が明かない。そこでマリナさんが、これからの方針を提案した。
「奴らの目的はわからないが、エンシェントの欠片の収集は妨害したほうが良さそうだな」
「エグゾアより先に俺達が見つければいいんだよな! ……でも、どこにあるんだろう?」
ゾルクさんだけでなく、マリナさんも私も欠片の在処を知るはずがない。どうしようもないと思われたこの問題は、ジーレイさんが解消してくれた。
「エンシェントの欠片の在処……それなら一か所だけ心当たりがあります。確かな情報ではありませんがね」
「それってどこなんですか?」
私が尋ねると、ジーレイさんは穏やかな口調で答えた。
「芸術の町バレンテータルです」
‐Tales of Zero‐
第12話「海原の彼方に」
大陸から離れ、西部に浮かぶ孤島。そこに存在するバレンテータル。セリアル大陸側の世界に住む人間なら誰でも知っている、芸術家の集う町だ。
ジーレイさんは、エンシェントの欠片らしきものがバレンテータルのどこかに存在する、という噂を聞いたことがあるらしい。
「あくまで噂ですので詳しい場所も知りませんし、エンシェントの欠片が絶対にあるとは保証できません。それでも行きますか?」
「行こう! ちょっとでもエグゾアの企みを邪魔できるんなら、絶対にそうしたほうがいいよ!」
ゾルクさんは即決し、マリナさんも静かに頷いて賛成した。もちろん、私も同じ思いだ。
「皆、賛成のようですね。ならば向かうことにしましょう。ですが期待はしないでください。いいですね?」
「そんなに釘を刺さなくても、わかってるって。それじゃ、バレンテータルに向けて出発だ!」
こうして、エグゾアセントラルベースへ向かう前に、芸術の町バレンテータルを目指すこととなった。
先述したように、バレンテータルは西の海の孤島にある。連絡船を利用しなければならないため、バレンテータルへの便が出ている港町ディクスまでやってきた。
港で栄える市場は普段と変わらず、曇り空に負けない活気を見せている。そして港には幾隻もの魚船や商船が所狭しと並んでいた。
連絡船のチケットはジーレイさんが購入してくれるらしい。「乗船口でお待ちください」とだけ言い残し、彼は発券所へ歩いて行く。ジーレイさんの優しさに甘え、私達は一足先に乗船口へ向かうことにした。
私がこの町に別れを告げてから、あまり日は経っていない。もっと長いあいだ帰ってこられないと思っていたので、家に立ち寄らなくても少しだけ嬉しかった。
――ディクスにいると、どうしても頭に浮かぶ。
この旅の主な目的は、エンシェントビットを海底遺跡に戻して世界の崩壊を防ぐこと。
でも私にとっては、エグゾアに売られたお母さんの安否を知るのも同等以上に重要だ。
絶対に見失わない大事な目的。
けれど、お母さんは人体実験に使われたかもしれないのである。
会えたとして……私を覚えているのだろうか。
私は……お母さんに……
気付けるのかな――
「ソシア、どうしたんだ?」
「えっ!?」
「すごく真剣な顔してさ」
不意に、ゾルクさんが顔を覗き込んできた。思わず体をびくりと震わせてしまう。
「あの、私、そんな表情になっていました……?」
「なってたよ。……もしかして、お母さんのこと考えてた?」
「はい……」
頭の中にあった不安が、表に出てしまっていたようだ。
「やっぱり……どうしても不安になるよね。俺達も、無責任に『大丈夫だよ』なんて励ましてあげられない。でも手伝えることは手伝うし、なんならいつでも話を聞くからさ。一人で抱え込んじゃ駄目だよ?」
「……ありがとうございます」
まるで私の心を見透かしているかのような言葉をかけ、優しく接してくれた。そのおかげで少しだけ安心することができた。
しかし、この流れを見ていたマリナさんは深刻そうに溜め息をつき、こう述べた。
「確かに私達はソシアに協力するが……ゾルクの場合、手伝っても足を引っ張るだけのような気がして心配でならない」
「いやいやいや、どうしてそうなるんだよ!? そりゃあキラメイに見逃されたし、戦いの面ではまだ頼りないかもしれないけどさ……それ以外については心配する必要なんてないよ!」
ゾルクさんは必死に弁明する。その姿を見つめるマリナさんの眼差しは、どこか厳しい。
「空回りして、かえって邪魔をしてしまうのがオチだろうな。意気込みは感じられるが、いかんせん間抜けな部分が目立つ」
「うぐっ……。間抜けってこと前から気にしてるんだから、あんまり言わないでくれよ……」
「ヘタレよりはマシじゃないか?」
「どっちも嫌だよ!」
二人が行う漫才のようなやりとりは見ていて飽きない。マリナさんは一見すると意地悪をしているかのようだが、あれで彼女なりにゾルクさんを見守ろうと努めているのだろう。そんな不器用な優しさを、私は感じ取った。
乗船口へと辿り着いた。連絡船の周りでは、海鳥が潮風に乗って優雅に空を羽ばたいている。ジーレイさんは、まだ来ていない。
「セリアル大陸の海も広いなぁ。この前ディクスに来た時はすぐに出発したから、こんなにじっくり眺めるのは久しぶりだよ」
ゾルクさんは海と足場を仕切る手すりに肘をつき、水平線の彼方を眺めていた。
そんな彼の傍にマリナさんが近寄り、彼と同じような姿勢をとる。そしておもむろに会話を切り出した。
「リゾリュート大陸にいた頃にも海を見たことがあるのか?」
「幼い頃、育ての親のヘイルおじさんに連れて行ってもらったことがあってね。すっごく広くて青かったのを覚えてる。こっちの世界の海も、ほんっと広いなぁ」
「そうだな。そしてこの広い海と、もっと広い『世界』を救うのはお前なんだ。しっかり頼むぞ」
「……うん。わかってるさ」
私は彼らから離れていたので何を話しているのかは聞こえなかった。でも喧嘩している様子はなく、むしろ和やかな雰囲気だ。なんだか二人はお似合いだと思ってしまう。姉と弟みたいで。
やがて、発券所からジーレイさんが戻ってきた。その手には四人分の乗船チケットが握られている。
「揃っているようですね。まもなく連絡船が港を発つようです。乗船しましょう」
「わかった。ゾルク、行くぞ」
船に乗るようマリナさんは促す。が、彼は手すりから離れようとしない。そして海原に目を差し向けたまま返答した。
「もうちょっとだけ、ここから海を眺めてたいんだけどなぁ……」
「船の上からでも目に焼き付けることは出来るだろう」
「それもそうだけど、わざわざ港から眺めるからこそ良いんじゃないか。まだここに居たいよ」
出港まであまり時間が無いというのに、青い波を視線で追い続けるゾルクさん。マリナさんは痺れを切らした。
「……全く。わがままな奴は放って置いて、私達だけで船に乗り込もう」
遠ざかる彼女と仲間に気付かず、同じ方を向いたままゾルクさんは笑い飛ばす。
「あっはっは! そんな冗談に騙される俺じゃ……」
ようやっと後ろを振り返ったが、そこに仲間の姿はない。もしやと思って乗るはずの船に目をやる。すると船と波止場を繋ぐ足場が、乗組員によって今まさに片付けられようとしているではないか。甲板には、私達三人の姿がある。
「……ああー!? 本当に置いて行くなよ!」
彼は驚くと同時に、乗組員に謝りつつ大急ぎで足場を駆け上がっていった。
私達の乗る連絡船は、書物などでよく目にするような大きな木製の帆船だった。製造から結構な年月が経っているらしく、新しい木材で補修されるなど所々に使い古された跡がある。木材の古いものと新しいものとでは色や質感が違うため補修の跡は見つけやすい。
海そのものは日常的に見てきたが船に乗るのは初なので、実は少し楽しみにしていた。魔皇帝の呪いのせいで空は一面を雲に覆われているが、それによって気分が削がれることはない。
甲板に立っていると潮の香りが風に乗って鼻孔をくすぐる。陸地で感じるものより、ずっと濃いみたいだ。私は心地よい海風を受け続けた。
連絡船がディクスの港を出て少し経過した。
客室でくつろいでいると、ゾルクさんは「風に当たりたい」と言い出し、ジーレイさんを連れて甲板へ向かっていった。ジーレイさんはあまり乗り気ではなかったようだけれど、ゾルクさんが強引に引っ張っていってしまった。
彼らを見送った私とマリナさんは、そのまま客室で過ごしている。
「ゾルクさんって海がとてもお好きなんですね」
「全く、はしゃぎ過ぎて船から落ちなければいいんだが…………うっ……!?」
突如、マリナさんは口を押さえてよろめいた。そして力なくその場にしゃがみ込んでしまう。
「大丈夫ですか!?」
「なんだこれは……。頭が痛くて、気分が優れないんだ。軽く吐き気もある……。もしかして、これが船酔いというものなのか……?」
彼女の言う通り、この症状は船酔いだろう。すぐさま彼女をベッドまで誘導し、横たわらせた。マリナさんが船酔いするなんて、ちょっと意外。
「ソシア、悪いが救護室で酔い止めの薬を貰ってきてくれないか……」
「わかりました。待っていてくださいね!」
「ありがとう……」
引き受けた私は、半ば小走りで救護室を目指した。
薬を貰った帰り、ゾルクさんとジーレイさんの姿を甲板で発見した。どうやら話し込んでいるようだ。なんだか内容が気になる……。
いけないこととは思いながらも少しの間だけ、二人の会話を物陰から聞いてみることにした。
「強くなりたい、ですか」
「キラメイに負けて思い知ったんだ、自分の無力さを。今までも強い相手とは戦ってきたけど、運が良かった部分もあるし命からがらだったりもした……。このままじゃいけないんだ。エグゾア六幹部に対抗できるだけの力をつけなきゃ、世界を救うなんて無理なんだ……!」
ゾルクさんが胸の内を打ち明ける。意味も無くジーレイさんを誘ったわけではなかったようだ。
「焦る気持ちは理解できます。しかし、一朝一夕でどうにかなる問題でもありません。今のあなたに出来るのは、その気持ちを忘れずに日々、努力を積み重ねることでしょう」
「努力の積み重ね……」
助言を受け止めたゾルクさんは、何かに気付かされた風な表情を浮かべた。ジーレイさんは彼を見守るように見つめ、言葉を続ける。
「地道ですが、きっとゾルクの実力に繋がります。
「……思い返せば、俺も昔はがむしゃらに剣を振って、叔父さんに叱られながら鍛練に励んでたっけ。セリアル大陸に来てから救世主として頼られて、心のどこかで調子に乗ってたのかもしれないな……。ジーレイのおかげで初心を思い出せたよ。ありがとう」
「お役に立てたのであれば光栄です」
「俺は救世主なんだから、もっと責任を持って強くならなくちゃいけないもんな」
意気込みのような、義務感のような。どちらにせよゾルクさんが発した言葉には決意が込められていた。
しかし水を差すように、それでいて意味深長にジーレイさんは零した。
「……それはどうでしょう。『救世主であるのだから無理矢理にでも強くならなければならない』と考えるのは間違いかもしれませんよ。ただひたすらに強さを求め続ける者より、自分自身を確立して『真の強さとは何か』を知った者のほうが、救世主という存在に相応しいかもしれませんからね」
「へ……? なんだよ、それ」
「特に意味は……ありません。わりとデタラメです」
「嘘だ、怪しいぞ。絶対に何かあるな」
「ははははは」
「笑って誤魔化すなよ!」
最後の最後でジーレイさんは話をはぐらかしてしまった。ゾルクさんが問い詰めても、ひらりとかわし続ける。本当に意味のない発言だったのだろうか?
……あ、大変だ。思ったよりも盗み聞きが長引いてしまった。早くマリナさんに薬を届けなければ。二人にばれないよう物陰から抜け出し、急いで客室へと戻った。
マリナさんの容態は、ベッドから出られるほどに回復してきた。時を同じくして男性二人も甲板から客室へ帰ってきた。
ジーレイさんに変化はないが、ゾルクさんは額に汗をかいていた。疲れた様子は見せていないけれど早速、鍛練に励んでいたのだろう。
船酔いでマリナさんがダウンしたことを二人に伝えた。
彼女にも弱点があるのだと知ったゾルクさんは「よっしゃ!」と言わんばかりの笑顔を垣間見せた。が、直後にマリナさんから飛んできた鋭い眼光で貫かれる。
鍛練でかいていた分を押し流す滝のような汗にまみれ、彼は表情を消した。マリナさんがどのような状態にあっても、一生勝てないのかもしれない。
ディクスの港を出発してから、どれくらいが経過しただろう。あとどれほどでバレンテータルに着くのか気になり、ジーレイさんに問いかける。すると、ちょうど半分のところまで来ているとの答えが返ってきた。
「うー……お腹が空いたなぁ。食堂にでも行かないか?」
質問を終えるのと同じ頃合いに、お腹に手を当てたゾルクさんがだらしなく呟く。昼食どきに差し掛かっているのだ。
「体調はかなり良くなったが、まだ私は遠慮しておく。みんなで行ってきてくれ」
やはりマリナさんは食べないつもり。私は気を遣って、そばに残ることを決めた。
「なら私はマリナさんについています。ゾルクさんとジーレイさんは、お先に食べてきてください」
「では、ソシアのご厚意に甘えさせていただきます。ゾルク、行きましょう」
「それじゃあ二人とも、また後で」
こうして彼らを食堂に行かせ、この客室はまた私とマリナさんだけの空間となった。
二人してベッドに腰掛けた。何も話さずにいるのもつまらないので話題を探す。そして、先ほど甲板で聞いた話を思い出した。ゾルクさんには悪いと思ったけれど、気になっていた内容だったので打ち明けることに。
「強くなりたい、か。キラメイに敗北したことが、よほど悔しかったんだな。それに私が『強くなれるよう努めればいい』と言った影響も、もしかするとあるかもしれない」
言わないほうが気負わせずに済んだのだろうか、とマリナさんは苦笑した。
「……実を言うと私もゾルクさんと同じで、不甲斐なさを痛感しているんです。六幹部に引けを取らないくらい力をつけないと、エグゾアにいるお母さんを探すことなんて……」
誰にも言うまいと思っていたが結局、吐露してしまった。
……でも、お母さんに会えた時を想像して不安になった件は隠した。言葉にして発することすら怖かったのだ。
「ジーレイの話を聞いていたんだろう? だったら簡単なことさ。気に病むことはない。それにスラウの森で言ったと思うが、武力を重視する戦闘組織の六幹部と戦って無事でいられただけでも大したことなんだ。ゾルクにも当てはまるが、これから先、奴らと渡り合えるくらい成長できるはず。だから、そんなに落ち込まなくていい」
「……はい。もしかしたら私、誰かに悩みを聞いてもらいたかったのかもしれません。ちょっとすっきりしたので……。本当にありがとうございます。私、頑張りますね!」
半分だけ肩の荷が下りたような気分になり、マリナさんに感謝した。
……お母さんについての不安は、心構えが出来たら打ち明けてみるのもいいかもしれない。
「礼を言われるほどのことなんてしてないさ。むしろ、上手く励ませなくてすまない。もっとためになる話が出来ればよかったんだがな……」
珍しく、困ったように照れるマリナさん。それを目にして、思わず小さな笑みを零した。つられてマリナさんも微笑む。なんとも言い難いこの空気は、どうしてかとても居心地がよかった。
――と、次の瞬間。
船が横に大きく揺れた。その衝撃はあまりにも凄まじく、ベッドに座っていた私達は床に叩きつけられてしまった。
「いった~い……」
「すぐに収まったが、ひどい揺れだったな……」
私は腰をさすりながらゆっくりと起きあがる。直後、食堂に向かったはずの二人が戻ってきた。一番にドアをくぐったのはゾルクさんだった。
「マリナ、ソシア、大丈夫か!?」
「驚いたが平気だ。しかし、これは一体なんなんだ……?」
ジーレイさんは即座にこの状況を把握しようとしていた。ぶつぶつと呟きながら整理している。
「波が荒いわけでもなし。衝突のような揺れでしたが、岩礁も無い海域で何かにぶつかるなど通常ならありえないことです。考えられるとすれば……」
彼の口から答えが出かかったその時。開けっぱなしのドアから乗組員の叫び声が聞こえ始めた。
「た、大変だ! 海賊が襲ってきたぞ! 乗員はみんな、避難するんだ!」
乗組員の声は近づき、そして遠ざかっていった。続いて、慌てふためく乗客の悲鳴や他の乗組員の焦る声が響いてくる。
「やはりですか。近頃、ここらの海に海賊が出没し始めた、という噂を耳にしたことがあります。まさか出くわすことになろうとは」
ジーレイさんはそう述べると億劫そうに溜め息をついた。厄介事に巻き込まれて面倒くさがっているのである。非常事態だというのに、彼はある程度リラックスしているようだ。
「乗組員の方、逃げるように呼びかけていましたが……避難する場所なんてあるんでしょうか?」
私は乗組員の言葉が信じられず、避難場所など無いと考えていた。マリナさんも同意見らしく次のように述べる。
「はっきり言って、この船に安全地帯など無いだろうな。それに誰かが戦わなければ海賊は追い払えない。私達でなんとかしよう。体調も、戦える程度まで回復したところだ」
「仕方ありませんね。退路が無いのであれば攻めるほかないわけですし」
そう言うとジーレイさんはどこからともなく魔本を取り出した。言葉とは裏腹に、やる気はあるようだ。
「ジーレイ、頼りにしているぞ。人助けも救世主一行の大事な役目だからな。そうだろう? ゾルク、ソシア」
「ああ! 船と乗員が危ないんだ! みんな、海賊を倒しに行くぞ!」
「はい! 絶対に守り切ってみせます!」
マリナさんに問われ、ゾルクさんも私も燃えたぎり気合を入れた。海賊だろうとなんだろうと必ず撃退してみせる、という熱意と共に。
全員の意思が一つになったところで、海賊を迎え撃つべく甲板へと急いだ。