ドラゴンクエスト ~勇者たちの戦記~   作:永遠の二番煎じ

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魔王軍残党の侵攻から逃れるため、プレスコット率いる村人たちは港町ポートランドを目指していたが、森で野生のキメラに襲われ村人たちは散り散りになった。


洞窟

プレスコットは追ってくるキメラを討伐していた。

「番長、大丈夫か?」

アレフは鉄の斧を振ってキメラを散らしているプレスコットの身をあんじた。

 

斧を振りながら、

「二人とも、そこの洞穴に隠れていろ!」

 

三人の後ろにはぽっかりと空いた洞窟の入り口のようなものがあった。

「行くぞ、アレフ。番長はきっと乗り切る。」

アレンとアレフは洞窟の中に逃げた。

 

洞窟の中は人の手が加えられたような構造になっている。

まるで今も工事中かのように松明が通路の左右に明るく灯っていた。

アレンは備え付けられていた松明をたどり、奥へと進んでいた。

 

「もう、いいんじゃねーか。」

アレフは洞窟の魔物を警戒しているようだ。

だが魔物はまだ洞窟内でエンカウントしていない。

「俺達二人ならスライムやドラキーくらい倒せるだろ?」

「そりゃあ、いけねーことはないが・・・」

アレフは普段より弱腰になっていた。

 

すると明かりのついていない洞窟の通路奥から声が聞こえた。

「助けてくれ!!」

 

アレンとアレフはいきなりの大声に驚いた。

「やべーよ、アレン。今の魔物の声だぞ?」

アレンは少し考え、アレフに提案した。

「助けてほしい、ということは魔物は身動きがとれない。いけるぞ!」

「そ、そうだな。確かに、お宝があるかもしれねーしな。」

アレフはびびりながらもアレンの背中の後についていた。

 

松明で元を照らしながら進むとスコップが落ちていた。

「スコップ?」

アレンはスコップを拾ってまじまじと見つめていた。

「きっといたずらもぐらだ。近くにいるかもしれないぞ。」

アレフは恐怖心を抱えながらもひのきの棒を装備した。

アレンはスコップを背中に背負い、再び歩き出した。

 

「おーい、助けてくれ!!!」

暗闇の奥に進むたびに助けの声はどんどん近くなっていく。

 

「待て!」

アレンは左手を広げ、アレフの足を止めた。

「どうした?アレン。」

「アレフ、下を見てみろ。」

地面を見るともう少し先には泥沼のような足場になっている。

「なんだ、いけねーのか。お宝もあきらめるしかねーな。」

アレフは少しほっとしていた。

 

おそらくいたずらもぐらは泥沼にはまって動けなくなっているようだ。

 

「ここだ!!!助けてくれ!!!」

いたずらもぐらは渾身の力で叫んだ。

 

アレンは声元を照らすとすぐそばにいたずらもぐらが下半分泥沼にはまっていた。

「うわ!」

二人は同時に声を上げ、尻もちをついた。

 

いたずらもぐらは二人の警戒心を解くかのように

「助けてくれ。おいらは人間に興味がない。悪い魔物じゃないんだ。」

 

二人は静かに立ち上がった。

「どうするんだ?アレン。」

「大丈夫だ、こいつはただの穴掘りもぐらだから心配ないだろう。」

「だが、魔王軍の手下かもしれないぞ?」

「魔王軍手下ということはないだろう。もし手下ならグループで行動するはずだし、さっきみたいに最低でもキメラくらい凶暴で強い魔物を送ってくるはずだ。手下であっても武器はないし、二対一。こちらのほうが有利だ。」

アレンは論破した。

 

「わ、分かったよ。しょうがねーな。」

アレフもしぶしぶ了解した。

 

「そんで、おいらのこと助けてくれるのか?」

アレンとアレフはひのきの棒をいたずらもぐらの近くに向けた。

 

「さっさと、つかめ。もぐら。」

「すまねーな。まさかおいらが人間の世話になるとは。」

いたずらもぐらは両手で別々のひのきの棒を持ち、アレンとアレフの二人に引き上げられた。

 

「ありがとう、人間の少年。ボスに泥沼があることを知らせないと。」

いたずらもぐらはお礼を言った。

 

「なあ、助けてやったんだから。なんか宝くれないか?」

アレフは調子に乗っていたずらもぐらに脅迫まがいのことをした。

 

いたずらもぐらは純粋に

「じゃあ、ボスに会わせてあげるよ。おいらを助けてくれたし、ボスもなんか褒美をあたえるだろ。」

アレンは首をかしげて、

「ボス?しかし、道は外から一本道だったぞ?」

 

「じゃあ、おいらについてきてくれ。」

アレンはいたずらもぐらに松明を渡した。

いたずらもぐらはゆっくりと来た道を戻り始めた。

 

「ところでお前はなんて名前だ?俺はアレンで後ろのお調子者がアレフだ。」

「おいらはもぐりんて名前だ。よろしくな!アレンにアレフ。」

すると松明で灯された通路を少し歩いた後途中でもぐりんは立ち止まった。

もぐりんは松明をアレンに渡した。

 

「どうした?もぐりん、途中で立ち止まって?」

アレフはもぐりんに近寄ろうとした時、

「待て。アレフ、なんかするつもりだ。」

二人は離れてもぐりんが途中通路の設置されていた松明を外した。

ゴ・ゴ・ゴ!!!という音を立てて隠し扉が出現した。

 

アレンはもぐりんに危険を感じなかったので背中に背負っていたスコップをもぐりんに返した。

扉は鉄製であったがまだ錆びておらず、新しいものだ。

次に勝手に扉が開き始めた。

「どういう仕掛けなんだ。」

アレンは不思議そうに見た。

 

「アレン、アレフ。おいらにしっかりついてきてくれ。」

もぐりんは扉の向こうに、

「待て!」とアレフは慌てて言いながらついていった。

すぐに扉は閉まり、壁と同化した。

 

アレンとアレフは目を見張った。

無人であった廃坑のような洞窟の隠し扉の中にはまだ洞窟が続いており、何十ものいたずらもぐらたちがピッケルやシャベルにスコップを持って土木作業をしている光景が広がっていた。

 

「どうした、アレンにアレフ。おいらに続け。」

アレンとアレフは置いていかれそうになりもぐりんの元に急いで走った。

「番長、今頃俺たちの事心配してんだろーな。」

「どうだろうな。番長はああ見えてずる賢いところがあるからな。」

「きっと、その賢さを利用して生き延びてる事を願うしかねーな。」

 

また行き止まりの壁の前にもぐりんは立ち止まった。

「もぐりん、例の仕掛けか?」

アレンは興味深々に聞いた。

「ああ、そうだ。」

もぐりんは松明を外すと、少し錆びた鉄の扉が現れた。

 

そしてまた奥へ、それを後二回合計四回隠し扉が現れた。

最後の扉は灰色というよりは錆びきっていてむしろ赤色の扉と言っても過言はないだろう。

 

そして大広間に出た。

ど真ん中には体に似合わない大きさの小さなハープを持ち、髪を後ろで束ね、サングラスをした大きないたずらもぐらが王座のようなイスに座っていた。

横には左右二匹づつ合計四匹の武装したいたずらもぐらが大きないたずらもぐらを護衛しているように見えた。

 

もぐりんがボスに近づいたため、反射的にアレンとアレフももぐりんの近くに配置についていた。

「ドン・モグーラ様、この人間の子どもたちに助けてもらいました。」

 

「はて?お前はなんという名前だったか。」

「おいらはもぐりんです。」

思い出したかのようにドン・モグーラは言った。

「そうか、行方不明であったもぐりんか。」

 

「はい、おいらこの人間がいなかったら泥沼でのたれ死ぬか、悪い人間にメラミで殺されてたかもしれません。」

するとドン・モグーラはイスから立ち上がった。

その時二人の視界が少し揺れた。

「わあ!」

二人はドン・モグーラの衝撃に初めて驚いた。

 

「よし、もぐりん今日は休んでまた明日から働け。」

「ありがたいです。あとどうかこの人間の少年たちに褒美を。」

そう言ってもぐりんは隠し扉から出て行った。

 

ドン・モグーラは再びイスに座り、

「人間の少年たちよ。名前を聞かせてくれぬか?」

二人はもぐりんがいなくなってから急に緊張が走り始めた。

 

「僕はアレンです。」

「俺はアレフだ。」

ドン・モグーラはハープを持ってないほうの手で頭を掻きながら、

「その名前どこかで聞いたことあるような・・・まあよい、もぐりんを助けてくれたお礼は何者であれせねばのう。」

 

その言葉を聞いたアレフは緊張していた顔が少しほぐれた。

「まあなんにせよ。今日は休んでいけ、褒美は明日ここで受け取るが良い。」

 

二人はドン・モグーラの部屋を出るともぐりんが待っていた。

「ボスはなんて言ってたんだ?」

「休ませてくれるそうだ。」

 

「じゃあおいらが休む部屋を案内するよ。ここにいる同僚(いたずらもぐら)たちはみんな良いやつだから怖がることないよ。」

もぐりんは二人部屋の部屋に案内してくれた。

 

二人は部屋に入り、

「ただ、広く掘った空間にドアがついてるだけじゃねーか。」

「アレフ、これが彼らの生活いや棲家なのだろう。」

「お!でもベッドは村長と町にいった宿屋のベッドくらいふかふかしてるぞ!」

アレフはベッドに横になり、アレンはベッドに座った。

「本当だ、ふかふかしてるな。」

「案外質はいいんだな。」

 

いきなりアレンは我に帰って考え始めた。

「どうしたんだ?アレン。」

「いや二つ疑問があるんだ。一つはなんで外に近い、いや近いほど隠し扉が新しい。普通なら俺達が入った入口から掘ってるなら扉の古さは逆なはずだ。もう一つはもぐりんがそんなに大切な仲間なのか。ということだ。村長が昔は草原にもスライムと同じくらいいたらしいが最近は穴掘りばかりしている種族だと言ってるのを聞いた。」

 

アレフはいつの間にか寝ていた。

「・・・アレフ、疲れていたのか。」

アレンも寝始めた。

 

翌日ドン・モグーラの部屋に行くと一匹だけいたずらもぐらがいてドン・モグーラのイスの隣にもぐりんがいた。

「あれ?」

部屋にはドン・モグーラも護衛のいたずらもぐらもいなかった。

「ボスは今休息をとっているんだ。だからおいらが代わりに頼まれたんだ。」

 

そう言ってもぐりんは宝箱をイスの後ろから引きずりながら持ってきた。

「ほら、ボスからの褒美だ。」

 

アレフは宝箱を見て満面の笑みで宝箱にかけよった。

もぐりんは盗賊の鍵を使った。

すると宝箱が開いた。

アレンとアレフは中を覗いてみると二本の銅の剣『どうのつるぎ』が入っていた。

 

「剣!」

アレンは驚きの声を発し、アレフはすぐに剣を取り振り回していた。

 

「そんでお前らは洞窟で何をしていたんだ?」

アレンは考えて嘘をついて、

「実はポートランドに向かう途中に迷ったんだ。洞窟を入ればポートランドに行けると思ってな。」

アレフは剣を無邪気に振り回していたがアレンの話を聞いて静止した。

 

アレンはアレフにアイコンタクトをした。

するとアレフはアレンにここまでのいきさつの話を任した。

「そうか、それならこの洞窟からポートランドまで行けばいいよ。」

 

「え!ポートランドまで続いているのか?」

「おいらたちは元々ポートランド近辺から掘り進んでこんな辺境の森の下にたどり着いたんだ。」

もぐりんはそう言って隠し扉の反対側に行き、松明を取った。

すると扉が出現した。

 

「ボスの部屋は四方八方にこうした隠し扉があるんだ。」

そう、それはまれでアリの巣のようにこの洞窟は入り組んでいのだ。

 

「なるほど、だから隠し扉が古くて錆びていたのか。」

アレンにとっての一つの謎が解けた。

 

「おいらはいけないからここからは二人でポートランドまで行ってくれ。一本道だから迷いはしないだろう。」

もぐりんは二人に松明を渡した。

 

アレンは質問した。

「最後にいいか?」

「なんだ?」

「なんでいたずらもぐらは地上から消えたんだ?」

その質問を聞いてもぐりんは図鑑みたいなものを渡してきた。

「そこにはあらゆるモンスターの歴史が載っているから読むといいよ。」

「くれるのか?」

「これはおいらを助けてくれた、おいらからのお礼だ。」

 

「ここからは人間を襲うドラキーやどろにんぎょうが出てくるから気を付けてね。」

「ありがとうな!」

アレフはそう言ってもぐりんと握手を交わした後右手には銅の剣左手には松明を持って出て行った。

 

「もぐりん、また遊びに来るよ。」

「ああ、おいらはいつでも歓迎だ。」

アレンもアレフの後に続いていたずらもぐらの棲家から去った。

 


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