Gantz-Y-   作:Dombom

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Talking in sleep ― ケロケロ星人編

「はぁ?超あり得ないんですケド?!」

「ああ?なんだここ」

「あーうぜー!なにこれうぜぇー!」

「ねーねーソークン帰ろーよー」

 

 カンサイが部屋に呼ばれた時、部屋には既に6名ほどのチンピラ風の男女が集まっていた。

 

ジジジジ・・・

 

 カンサイが呼び出された後も、転送は続く。次に現れたのはブザマだった。慌てて着替えたのか互い違いになったシャツの下から黒いスーツが覗いていた。

 

「ッくそ!仕事中だってのに。ってえーっと」

「カンサイ・・・」

「ああ。カンサイ・・・さん。先日は助けて頂きありがとうございました。」

「・・・」

「雰囲気変わりました?」

 

 ブザマがカンサイの変りように戸惑うが、気を取り直して新人グループに声をかける。カンサイにこの前の恩を感じてか、年下にも関わらず敬語を使っている。

 

「おい、お前ら」

「ああ?おっさん何よ?てかここどこよ」

「ああ。まあいいから話を聞け。命に関わるから」

「ぷっ!何このおじさんウケル―!」

「え?なになに?あほんとだー!ボタン間違ってるしぃー!」

 

 あっと自分の服を見てブザマは顔を赤くしたが、すぐに何か決意したように服を脱ぎ始めた。

 

「うわなになに~露出狂?」

「ンだオッサンやんのか?」

 

バッシィン!

 

「なっ?って!いって!」

 

 チンピラの男がいきなりブザマに殴り掛かったが、ズボンを脱いで片足立ちになっていたのにも拘らずブザマは微動だにしなかった。

 

「どうだ?これがスーツの力だ。お前たちは今からこれを着て、気味の悪い化け物どもを狩りに行くんだ」

 

・・・

 

 しばしの間沈黙が場を支配する。が・・・

 

プっ!

 

アハハハハハ!

 

「オッサン馬鹿じゃねーの?」

「ヤダー!きもーい!」

アハハハ!

 

「ちょ、ちょっと待てよ。ホントなんだって。ほら、今にその玉が開いて武器とか出てくるから!マジだから!」

 

ゴーンゴーンビヨンドゴーン・・・ゲートゲートパラゲート・・・

 

「何あの玉どうして鳴ってんの?」

「これあれじゃね?モンハンのパクリじゃね?」

「うーけーるー!」

 

 部屋には既にあの凸凹気狂い女コンビも含めて10人のメンバーが集まっていた。ブザマは新規の6人に必死に語りかけるが、6人はもうブザマのことはお構いなしに黒い玉、オデンを叩いたり触ったりして騒いでいる。

 

「(君たちはこいつらをしめやかにケジメして回ってください。 ケロケロ星人 特徴 おおい はねる 好きなもの とンぼ 口癖 ケロケロ ケロケロ星人?この絵、カエル型の星人?)」

 

 カンサイが少ない情報から敵のディテールを掴もうとしている時、オデンから出てきた武器を手にはしゃぐチンピラどもに手を出しあぐねていたブザマが助けを求めてきた。

 

「お前ら!騒ぐなって。ちょっと言うこと聞けよ。ねえ、あのカンサイさんからもお願いしますよ。」

「・・・なにが?」

 

 ブザマはカンサイの対応に戸惑った。少なくとも今目の前にいるカンサイからは二週前のあの夜、自分を助けてくれた情とかそういったものは感じられない。

 

「ほら、だって最低でもスーツを着せないと。また死者が!」

「・・・そんなん知らんし」

 

 おかしい、一体何があったのだと思いつつも、ブザマはイケメンと評された女性の後を追って奥の部屋に消えてゆくカンサイを見送るしかなかった。

 

「やあ、君もそれらしい顔つきになって来たじゃないか」

「それが新しい武器なんか?」

「うーん。ちょっと大きいかな。威力はどうだか・・・まずは試し打ちしてからだね」 

 

 真っ黒なコートの内に大量の武器を装備し、胸を強調するような漆黒のスーツに身を包んだ・・・オデンにイケメンと評された女性は、前回クリア時に支給された謎の大型銃を手に、ワンホイールマシンに乗り込んだ。

 

~~~

 

「いいか!俺たちはこれからあのオデン玉に書いてあったケロケロ星人を狩りに行く!この小さい銃はアタッカーと言って当たった敵を破裂させる!長い方のロングアタッカーも同じような効果だ!こっちの銃はバインダーだ。相手を拘束できる!どの銃も上トリガーがロックオンで下トリガーで発射だ!分からなかったら同時に引け!」

 

 不良6人分のケースを抱えたブザマが必死に説明するも、誰も聞こうとはしない。戦闘狂の二人はもう先へと進んでいた。どこかの商店街、人気は驚くほど少ない。

 

「こら!お前らスーツ着ろっつの!」

「ねーねーこれからどーする~」

「なんだかだりーわ。出られたし飯でも食おうぜ?」

「えー。あたしパフェがいい―!」

 

ヒュイイイイン! 

 

 カンサイがバイクを立ち上げていると、チンピラのカップルが近づいてきた。

 

「あのぅ。どいてくれません?じゃまなんですけど~」

「・・・」

「きいてますぅ?それわたしたちが使うからどいてほしいんですけどぉ」

「おい!俺らが使うって言ってんだよ。さっさと降りろ!」

「・・・(敵の数が多い。それに道も入り組んでて狭いな。礫殺狙う以外にはバイクはいらんな)」

 

 カンサイは起動が終わったバイクから降りた。チンピラの若者はぺっと道端に痰を吐いた。

 

ガシャッ!

 

 チンピラをよそに銃を構えたカンサイは見晴らしのいい場所に移動すべく商店のひさしから屋根へと飛び移った。

 

「ねーねーあの子ユウに似てない?」

「はぁ?似てるわけねぇだろあんなださいの」

 

 チンピラは彼女をバイクの背後に載せて走り出した。野生というべきかなんというべきか、彼らは自分の都合のいい部分しか見ないし、理解できないことは理解しようともしないのだ。だから、あの不可思議な部屋のことも、この寂れた商店街に送られてからは全く気にも留めなかったし、生き物が一瞬で遠隔地に飛ばされるような技術を見てもそういうものだと全く疑問にも思わないのだった。

 

「ちょっ!おい!お前ら!見ただろ?!マジなんだってこれ!」

 

 カンサイがチンピラどもを見捨てて去った一方で、ブザマはエリア内を自分勝手に闊歩し始めた不良たちを追いかける。だが、いい加減彼らもブザマのことが鬱陶しくなってきたらしい。

 

「な、いい加減いうことを聞いてくれ!」

「あ?さっきからごちゃごちゃとうっせーんだよ!おっさん!」

 

チャキッ!

 

「うわわ!」

 

 幾人かのうちの一人が痺れを切らして攻撃用の銃をブザマに向け、驚いたブザマはしりもちをついてこけてしまった。

 

「へっ!臭っせ!」

 

 歯噛みするブザマをよそに、不良どもは口々に悪言を吐いて去ろうとした。

 

ケロケロ

 

「あん?なんだこいつ」

「えー?なにー?きもーい」

 

ケロケロ

 

「うっせー!撃ち殺すぞはが!・・・」

「え?」

 

 ケロケロと鳴くどこかの企業のマスコットじみたケロケロ星人が現れた。ケロケロ星人の姿は戯画化されたカエルのようで、その体表には光沢があったが水にぬれているというよりは、プラスティックのようだった。チンピラの一人がケロケロ星人に長い攻撃用の銃を向けた時、ケロケロ星人はチンピラに飛び掛かった。

 

「ケロケロ星人!?逃げろ!」

 

ブッシャアア!!どさっ!

 

ケロケロ

 

 手に銃を持ったままの首なしの死体が道に倒れた。ケロケロ星人の緑の体は返り血で点々とまだら模様の赤に染まっている。

 

「きゃ!キャアァあんが!」

「う!ぶぇ!」

 

ケロロロ

カチン!カチン!カチン!

 

「どうして!どうして出ないのよおおおお!!」

 

 混乱するチンピラたちの間をケロケロ星人は跳び回り、瞬く間に死体に変えてゆく。生き残った女の最後の一人が勇敢にもアタッカーを構え、必死にトリガーを引くが、何も発射されない。ケロケロ星人はそんな女をあざ笑うかのように、血まみれで赤くなった体でペタリペタリと血の足跡をつけながら女の方へと歩いてくる。

 

「いや!いやあああ!!」

 

カチン!カチン!

 

「トリガーを二つ引け!下のトリガーを引くんだ!!」

「?!」

 

ググッ!ギョギョギョギョーン!!

 

ロケ

  ロ

バババン!!

 

 錯乱した中で、生存本能が理性を呼び戻したのか、慌てて体勢を立て直したブザマの呼びかけに女は応え、多重ロック状態にあったアタッカーは一気に火を噴いた。数秒の内に複数の人間の命を絶ったケロケロ星人はあっけなくもはじけ飛んだ。

 

「大丈夫か?」

 

 ついさっきまでしゃべっていた仲間が死体となって転がっている。女は仲間の死体を見ながら茫然と立ち尽くしていた。

 

「どうして・・・」

「え?」

 

 女を心配して近づいてきたブザマに女が尋ねる。

 

「どうして教えてくれなかったの?」

「え?」

 

 女の言葉が理解できずにブザマの思考が一時停止する。

 

「どうしてよ!どうしてこんなことになるって教えてくれなかったの!」

チャキ!

「答えてよ!」

「え?」

 

 何だ?一体どうなってるんだとブザマは自問自答するが、答えは全く浮かばない。そもそもブザマには質問の意味が分からなかった。

 

「教えてって・・・教えたじゃないか。何度も・・・何度も。」

「うっさい!そんなの聞いてない!こんなことになるなんて聞いてなかった!」

カチンカチン!

「こんなの!また邪魔して!」

ググッ!

「や、止めろ。止めてくれ」

 

 ブザマが理解できないのも無理はなかった。彼女やその仲間たちは初めからブザマの話などは聞いていなかった。理解もしていなかったし、しようともしていなかった。だが、いざ自分に責任が課せられたとき、自分に非があると感じた時、それを他人になすりつけずにはいられない。

 自分が話を聞いていなかったせいでこのような事態を招いたと理解しているわけではない。ただ本能的に自分が責められるような立場に居たくないのだ。彼女は自らが知恵足らずな行いをしているのだということに気付いていないし、親身になって危険を訴え続けたブザマに当たるのがどれほど恥知らずなことか知ることはないだろう。たとえ死んだとしても。

 

「撃ち方だって、後になってから教えて!どうせ私たちが馬鹿にしたことを根に持ってたんでしょ?!あのカエルに私たちを襲わせたんでしょ!」

「いや、それはなんでもおかしいだろ!俺は最初からずっと何度も説明したし、全員分のスーツも持ってきたし、それに!」

 

「うっさい!だまれ!お前がみんなを殺したんだ!この人殺し!!」

ギョギョーン!

「あ・・・」

「え?」

 

 被害者意識が過剰になり、感情的になった女にブザマがいくら正論を述べようと無駄だった。いやむしろ、彼女の理解できない言葉を紡いだのは逆効果だった。ブザマがすべきことは、彼女の足りない頭を察して慰めることだったのだった。感情的になった相手を論破したところでさらに激高するだけだった。

 そして引き金が引かれた。

 

「お、俺!死ぬのか?」

「い、嫌!私じゃない!」

 

 女はブザマがどうなるのか確認もせずに走り去った。

 

「え?」

 

 俺は死ぬのか?撃たれた?破裂する?いや、仲間には無効とか・・・でもこれはゲームじゃない現実・・・ヤバイ!死ぬ!やばいやばいやばい!!

 ブザマの頭の中を様々な思いが去来する。しかし、何時まで経ってもブザマが破裂することはなかった。

 

「あ、あれ・・・」

ヒュウウウウゥン・・・

 

 ブザマが混乱しつつもとにかく助かったことに安堵すると同時に、スーツから力が失われた。

 

「・・・そうか、スーツには耐久力が」

 

「人殺し・・・か。助けようとしたはずだったのに・・・」

 はぁ・・・と一息、本当に一息大きなため息をついて、ブザマは歩き出した。世の中思い通りにいかないし、ブザマ達はケロケロ星人を倒さなくてはならない。




黒玉=オデン(オーディン)=ガンツ
A=アタッカー=Xガン
B=バインダー=Yガン
C=コンプレッサー=Zガン
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