般若と龍と女神のドタバタ騒動記   作:アリアンキング

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サブストーリー022 勝負の行方は 開始

桐生「今日は穂乃果達とツバサ達の勝負の日だな。どうなるのか。今から楽しみだ」

大変お待たせしました。今回はμ'sとA-RISEの勝負回です。
今年最後のお話をどうぞ。


サブストーリー022 勝負の行方

日曜日。今日は穂乃果達とツバサ達が対決する日。その勝負に立ち合う桐生と真島は穂乃果達との待ち合わせ場所へ向かっていた。

 

 

「ついにこの日が来たのう。一体、どんな勝負になるか楽しみやな。なぁ、桐生ちゃん」

「ああ。だが、真島の兄さん。今回、俺達は立ち合うだけだ。余計な手出しは駄目だぜ」

「はっ、そないな事は言われんでも分かっとる。この勝負に水を差すなんぞする訳ないやろが」

「それもそうだな。さて、皆はもう来てるだろうか?」

「どうやろうなぁ~ まあ、今日は大事な日やから遅刻はせんやろ」

 

 

 何気ない会話をしてる内に二人は待ち合わせ場所に到着した。しかし、早く着き過ぎたのだろう。穂乃果達はまだ来てない様であった。

 

 

「流石にまだ来てないか。待ち合わせの時間まで余裕があるな。俺は何処かでコーヒーでも買ってくるとしよう。真島の兄さんはどうする?」

「そうやな。ほな、頼むわ」

「分かった。それじゃあ、行ってくる」

 

 

 

 待ち合わせまで時間がある為、飲み物を買いに桐生は近くの店へ向かって行った。

 

 

 

 

 桐生が立ち去って数分後。煙草を吸い待っていると道の先から歩いてくる穂乃果達が目に映る。向こうも真島の姿に気付いたのか、穂乃果が手を振りながら小走りで近寄ると笑顔で声をかける。

 

 

 

「あっ、真島さん。もう来てたんだ。随分と早いね」

「こんにちは 真島さん。それと穂乃果っ!! 先に挨拶をするべきですよ」

「まぁまぁ 海未ちゃん。今日は勘弁してあげようよ」

「相変わらず、仲がええな。ほんで今日は俺と桐生ちゃん以外に希ちゃん達も勝負に立ち合うとそうやが、一緒やないんか?」

 

 待ち合わせ場所へやって来たのは見た所、穂乃果達の三人だけである。大事な勝負の日に遅刻をする訳は無いと分かっているが、時間まであと10分を切っている。穂乃果達なら事情を知っているかもしれない。そう思って真島は事情を尋ねると、その問いに海未が反応して口を開く。

 

「希達も今向かってるそうです。先程、こちらに来る途中でメールが来ました。だから、時期に着くと思います」

「さよか。それなら残るはA-RISEの三人だけやな」

「ええ。その三人も時期に来ると思います。それと桐生さんはどうしました?」

「ん?桐生ちゃんなら今、飲み物を買いに行っとる。俺達が先に着いてのう…待ち合わせまで時間があるからとな。そろそろ戻って来る筈やで。お?噂をすれば影や」

 

 

 

 真島の言葉通り、遠くから袋を手にした桐生が歩いてくる姿が見えた。真島にやった様に穂乃果が桐生に手を振ると桐生も手を振り返した。

 

 

 

「こんにちは 桐生さん。お久しぶりですね」

「うん。今日は1日よろしくね」

「桐生さん こんにちは。そういえば、A-RISEの皆はまだ来てないの?」

「ああ。どうやら…まだ来てないようだな。ま、約束の時間までには来るだろう。まあ、これを飲んで待っていればいいさ」

「ありがとう。桐生さん」

「ありがとうございます。それでは頂きます」

「桐生さん どうもありがとう」

 

 

 

 会話の最中、桐生は袋からジュースを取り出すと三人へ渡した。三人もお礼を言って、それを受け取った。貰ったジュースを飲みながら海未はある事に気付き、それを口にする。

 

 

 

「ふと思ったのですが、どうして私達の分があるんです?桐生さんが買い物に行ったのは私達が来る前ですよね?」

「ああ。それは買い物の途中で真島の兄さんからメールが来たんだ。ついでだから人数分を買って来いとな」

「せや。穂乃果ちゃん達が来た時に俺達の分しか、無いというのもあれやからなぁ~ ま、ジュースを奢る事くらいやっても罰は当たらんからのう」

「フッ そういう事だ。だから遠慮はしないで飲んでくれ。と言っても穂乃果はそうしてるみたいだな」

「へ? …穂乃果っ!!貴女は少し遠慮しなさい。全く、そんな風にがっつくなんてみっともないですよ」

「な、そこまで言う事無いじゃん~ それに遠慮するなって桐生さんも言ってたよ」

「だからと言って、ガブ飲みする事は無いでしょう。本人がそう言ってたとしても多少の遠慮はするべきです」

「もう、いつも厳し過ぎだよ。海未ちゃんの鬼~」

「誰が鬼ですか。大体、厳しい事をいつも言わせてるのは貴女でしょう」

「まぁまぁ 海未ちゃん。他の人もいる事だし、そこまでにしておこうよ。それにほら…希ちゃん達とツバサさん達も来た様だよ」

 

 

 もはや恒例となっている二人の言い争いを仲裁した後、ことりはある方向を指差して希達が来たと告げた。皆がその方向を見ると六人の少女達が談笑して歩いていた。そして合流と同時にツバサが笑顔で話しかけて来た。

 

 

「お待たせ! 遅くなって悪かったわ」

「何を言ってるんだ。遅れたのはツバサが電車を間違えたからでしょ~」

「そうだな。まあ、肝心な所でドジをするのがツバサらしいが…」

「うるさいわね~ 何だかんだで到着したんだからいいじゃない。ね?絵里さん」

「え?え、ええ。確かに着いたけど…遅れない方が良いと思うわ」

「フフフ。そういうエリチも電車を間違えそうになったもんなぁ~」

「私がすぐに気付いて止めたからいいものの。てか、希も気付いてたなら止めなさいよ」

「皆、そこまでにしておけ。全員揃った事だし、そろそろ移動するとしよう」

「せやな。そんで最初の勝負は何をするんや?」

 

 

 妙な方向に話が進み、このままでは収拾が付かない。一早く桐生が止めに入り、真島も言葉を続ける。二人の言葉に一同も頷くと移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 街を移動して十数分後、一同は何故かボウリング場の裏口へ来ていた。その事を疑問に思ったのだろう。皆が思う事を穂乃果が真島と桐生に問い掛ける。

 

 

「ねえ、どうして裏口に来たの?普通は表から入るよね?」

「ああ。それは目立たない様にする為や。現役のスクールアイドルと元とはいえ、ツバサちゃん達と競り合ったスクールアイドルや。そないな人が表から入ったら、騒ぎになって勝負どころやないやろ。ま、店は貸し切りやから中に入れば問題ないけどな」

「そうなんだ。店を貸し‥切り…。 えぇぇぇぇっ!! それは本当なの?私は初めて聞いたわよ」

 

 

 話を聞いていたにこが驚き叫ぶ。声には出していないが他の皆も同じ気持ちだろう。そんな時、希がばつの悪い顔を浮かべ「ごめん。ウチ、その事を言い忘れてたわ」とか細い声で呟いた。「何よ。大事な事を言い忘れるなんて、希も人の事を言えないじゃない」と希に絵里はツッコミを入れた。その中で平然としているツバサ達を見て、絵里が問い掛ける。

 

「それとツバサさん達も驚いてないのね。もしかして…希と同じく知っていたの?」

「ええ。前日に真島さんからメールが来たからね。まあ、それはともかく。そろそろ中に入りましょ」

「せやな。ほな、ご一行様の入店や」

 

 

 真島は裏口のドアを開けて、穂乃果達に中へ入る様に促すと皆は静かな足取りで中へ入って行く。従業員用の通路を通り抜け、ホールに続くドアを開けると見慣れた場所へ出る。

 そこは普段と違って賑やかではなく、自分達の息遣いが聞こえるくらい静寂に包まれていた。

 

 

 

「うわぁ~ すごい静かだよ。こんな光景、初めてだよ」

「そうですね。どうやら、本当に貸し切りの様ですね」

「うん。だけど、こんなに静かだと…ちょっと、落ち着かないね」

「誰にも邪魔されずに勝負出来るとはいえ、流石にこれはやり過ぎの様な気がするけど…」

「まぁええやん。他の人には悪いけど、真島さんと桐生さんの好意なんやし」

「そうね。それにこういうのも結構好きよ。何か有名人になった気分を味わえるからね」

 

 

 貸し切り状態の店に穂乃果達は様々な反応を見せる。それとは別にA-RISEの三人はいつも通りの様子を見せていた。穂乃果達と違い、こういう雰囲気に慣れているのだろう。

 

 穂乃果達が落ち着いたのを見計らって、英玲奈がにこ達に話しかける。

 

「ところで…最初の勝負はどうするんだ?まだ詳しいルール等も聞いていないしな」

「そうやった。ほな、今から説明するよ。この勝負は3本勝負。そして対決は1対1でやるんや。お互いのメンバーから一人を選ぶ形やね」

「あら、それはいい提案ねぇ~ それじゃあ、一番手は私が行くわ」

「最初は私が行くね。二人もそれでいいかな?」

 

 希が提示したルールに賛同し、A-RISEからはあんじゅが一番手を打って出る。μ'sからはことりが一番手を申し出た。その事ににこが驚いた顔で言葉を発した。にこが驚くのも無理はない。普段は控えめなことりが進んで前に出る等、余り無いからであった。そしてにこが穂乃果達に視線を向けて、確認を取る。

 

 

「ことりが積極的になるのは珍しいわね。それで穂乃果と海未はそれでいいの?」

「ええ。私は構いません。ことりの意思を尊重します」

「うん。私も海未ちゃんに賛成だよ。ことりちゃん頑張ってね」

「ありがとう。私、頑張ってくるね」

「最初の対戦相手は決まったわね。それで希。ゲームは何セットやるのかは決めてるの?」

「勿論!今回はスプリッドゲームで対決や」

 

 絵里の問いに希は胸を張って答えた。希自身、普通のゲームでも良かったのだが、勝負を盛り上げるにはスプリッドが持って来いだと思っての事だ。

 

「成程。その方が手っ取り早いからのう。参加する二人もそれでええか?」

「私は構わないわよ~」

「私もそれでいいかな」

「決まりやな。そんじゃ、投げる順番をジャンケンで決めや」

「「最初はグー、ジャンケンポン」」

「あら、私の負けね。ジャンケンでは負けたけど、スプリッドでは負けないわよ」

「うん。私も負けないよ」

「ほな。勝負開始や」

 

 

 勝負に参加する二人の順番を決めたのち、真島の言葉で戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 1巡目 配置は右斜めに5ピンがT字形に並らんでいる。これは最初という事もあり、二人がスプリッドに慣れてもらう為に真島が簡単な配置に設定していた。そしてボールを手にしたことりがレーンの前に立ちながら、脳内でピンを倒す算段を考える。

 

(ピンの配置はT字形。一投目は真ん中を投げて三つ倒すとして、問題は残りの二つをどうするか。ううん。考えても仕方無い。今はピンを倒す事に集中しなきゃ。考えるのはそれからにしよう)

 

 意を決したことりは勢いよくボールを転がした。それは真っ直ぐに転がって行き、真ん中の3ピンを纏めて倒す。

 

「わぁ~ すごいことりちゃん。綺麗に倒したよ」

「確かに見事ですが、逆にことりが不利です。残りの2ピン…これを倒すのは難しいですよ」

海未の言う通り、真ん中のピンを全て倒す事が出来た。だが、左右に残った2ピンを次で倒せなければ、1巡目をことりは落とす事になる。そうなったら三本勝負とはいえ、きつい展開になるのは間違いありません」

「…全ては次の投球次第ってことね」

 

 

 海未の話を聞いていたにこが静かに言葉を紡ぐ。皆が固唾を飲んで見つめる中、ことりは2球目を投げる為にレーンへと再び歩んでいく。

 

 

(残るピンは2本。位置は左右に一本ずつ。そしてこの一球で決める事が出来なければ…1巡目は私の負け。だけど、一体どうしたら…そうだ。この手で行こう)

 

 初っ端から厳しい状況に追い詰められたことりだったが、ある作戦を思い付いた。ことりは左端に移動し、ボールを右斜めに転がした。ことりの予想通り、ボールは右のピンを弾き飛ばし、左に立っているピンに当たり倒れた。

 

「…やった。成功した」

 

 自分の狙いが上手く行き、ことりは安堵の息を吐く。その様子を見物していた穂乃果達もまた同じであった。

 

「すごいです。難しい位置にあるピンをあんな方法で倒すとは」

「うん。でも、ことりちゃんはああいうの意外と得意なんだよ」

「そうなの?もしかして裁縫とかやってるからってオチ?」

「流石にそれは無いと思うわよ」

「せやね。あっ、あんじゅちゃんの番が始まるで」

 

 ことりの番が終わり、あんじゅの番が始まった。先程と同じ位置に並べられたピンを見据えながらあんじゅがボールを手に取ると自信満々に言葉を呟く。

 

「さて、次は私ね。ことりちゃんのおかげで攻略法も思い付いたし、すぐ終わらせてもらうわよ」

 

 あんじゅはことりと同じく、左に移動すると右斜めにボールを転がす。そのボールは滑らかなスピンで真ん中を貫くと、その反動で全てのピンが綺麗に倒れた。思わぬ出来事に穂乃果達もことりも呆気に取られていた。無理も無い、まさか一球で全てのピンを倒すとは想像にしてなかったからだ。

 

 

「ほう。一発で倒すとは中々やるのう」

「ああ。あの方法もことりのやり方を見ていたからこそ、出来たんだろう」

「せやな。ま、勝負は寧ろこれからやろ。ことりちゃんの顔がそう言っとるで」

 

 

 真島の言葉通り、ことりの顔には闘争心が見て取れた。どうやら、先程のあんじゅのプレイがことりの心に火を付けた。その事に真島と桐生も勝負が盛り上がりそうだと楽しんでいた。

 

 

 

 二巡目 ピンは4本。前列真ん中に2本、後列は左右の角に2本配置されている。このゲームを攻略するには後列のピンを倒すかである。それは二人も理解しているのか。少しばかり難しい顔をしている。

 

 

 

「二人共。悩むんは分かるが、そろそろ開始してや」

 

 

 業を煮やしたのか真島が二人にそう声を掛けた。言われた二人も頷き、順番を決めるジャンケンの結果、順番はあんじゅが一番手に決まり、2ゲーム目が始まった。

 

 

「次はあんじゅが一番手ね。頑張れ~」

「しかし、あの配置はきついぞ。全て倒すには真ん中のピンをどう利用するかだな」

「真ん中のピンか。まあ、あんじゅの事だから大丈夫でしょ。信じて見てましょ」

「ツバサの楽観的な性格。こういう時は安心するよ」

「そうでしょ。あ、ゲームが始まるわよ」

 

 ツバサ達の会話が終わる頃、レーンに立ったあんじゅがボールを真ん中目掛けて勢いよく転がした。あんじゅの作戦では小細工するより、勢いに任せて吹き飛ばす方法を選んだ。

 

 そして目論見通り、勢いに任せたボールは見事に全てのピンを倒す事に成功した

 

 

「ほう。一発でクリアとは流石だな」

「本当ね。下手な小細工するよりも思いきった方が上手く行くのよね」

「そうだな。だが、2番手の南さんは諦めて無いみたいだぞ」

 

 思わぬ展開にも関わらず、ことりは焦る所か笑みを浮かべていた。それはこの展開を楽しんでいるかの様にも見える。いや、寧ろ楽しんでいた。あんじゅの番が終わり、入れ替わるようにことりはレーンに歩いて行く。

 

「ことり。一体、どうするのかしら?」

「それは解りません。ですが、あの様子だと秘策があるのかもしれません」

「ううん。多分、そういうのは無いと思うよ」

 

 絵里と海未の話に穂乃果が割って入る。悟った様に言葉を発する穂乃果に黙っていたにこが問い掛ける。

 

「どうして解るのよ?何か、根拠があるの?」

「うーん。特に根拠は無いけどね。強いて言うなら感かな。ほら、ことりちゃんの顔。とても楽しそうでしょ」

「そうやね。確かに楽しそうや。普通なら焦る所なのに」

「成程ね。案外、穂乃果の言う通りかも」

 

 穂乃果の言葉には何処か説得力があり、聞いていたにこや希もそう感じた。

 

「あ、ことりが投げるみたいですよ」

「ことりちゃ~ん。ファイトだよ」

 

 穂乃果の応援にことりは笑顔で頷くとボールを転がした。あんじゅの時と違い、ボールはゆっくりと左にカーブして前列のピンを弾き飛ばし、そのピンは後列にある左右のピンにぶつかって倒れた。ことりがやってみせたプレイに穂乃果達は歓声を上げて喜んだ。

 

「わぁ~ すごいよことりちゃん。まるでプロの選手みたい」

「ええ。本当に驚きです」

「だけど、未だに同点よ。次が最後だし、決着は付くのかしら?」

「どうやろな?まあ…真島さんに何か考えがあるようやで」

 

 二人に近づいていく真島を見て、希はそう言った。

 

「次で最後やし、俺から一つ提案があるんや」

「提案ねぇ。一体、どんな案なの?」

「ああ。単純な話やが、次は普通にやってもええ。ただし投げるのは一回だけで使うボールは一番重いやつや。二人の実力やと、次の勝負で決着が付きそうになさそうやしな。それで勝敗は運に任せるっちゅうわけや」

「運…ですか。確かに勝負は時の運というものね」

「せや。二人はどうなんや?」

 

 真島の提案に二人は考え込む。真島の言う通り、確かに次で決着が付かなかったら勝負が無駄に長引くだけである。対決はまだバッティングとカラオケが控えてる以上、此処で時間を食う訳にいかない。考えた結果、二人は真島の提案を飲む事にした。

 

「私はそれでいいわよ」

「私も同じく」

「分かった。この際、順番は決めんでええ。二人同時に投げてもらうで」

「「分かりました」」

「良い返事や。ほな3本目開始や」

 

 二人はレーンの前に立つと同時にボールを転がした。運に任せた勝負の結果はあんじゅが9本。ことりが5本。ボーリング対決はあんじゅに軍配が上がった。

 

 

「私の勝ちね。ことりさんとの対決、とても楽しかったわ」

「ありがとう。負けたのは残念だけど、私もあんじゅさんと勝負は楽しかったよ」

「ボーリング対決の勝者はあんじゅちゃんやな。まずはA-RISEが1点。まあ、まだ逆転もあるからμ'sの皆も頑張りや」

「それじゃ、次の対決場所に行くとするか」

 

 一同はボーリング場を後にして、次の対決場所であるバッティングセンターへと向かった。劇場広場を通り、ホテル街入り口にあるバッティングセンターに到着すると真島が次の対戦相手を決める為のくじを取り出した。

 

 

「バッティング対決を始める前に四人にはこのくじを引くんや。これはカラオケ対決のくじも兼ねとる。せやから引く時は慎重に選ぶんやで」

「成程。くじを引くまで誰と当たるのか分からない訳か。しかし、真島さん。私がツバサとぶつかった場合はどうするのだろうか?」

「そんなの引き直しに決まってるでしょう。私と英玲奈が対決してどうするのよ。私としてはそれも面白そうだけどね……。今回はμ'sとA-RISEの対決だもの」

「そうね。私達の勝負は今度やりましょ」

「話が纏ったな。ほな、くじを引きや。面倒やから全員一斉にな」

 

 

 真島に差し出されたくじを四人が引いた後、それを桐生が確認する。結果はバッティング対決は海未VS英玲奈。そしてカラオケ対決の相手は穂乃果VSツバサに決まった。

 

「予想はしてたが、結果はやはりこうなったな。何にせよ。私は全力でやらせてもらうよ」

「望む所です。私も全力でいきますよ」

「盛り上がってきたのう。ほんじゃ、バッティング対決のルールを説明するで。ルールは5球勝負。今回、利用するコースはハードコースや」

「ハードコースって、私はバットを持つの今日が初めてなんですが…」

「マジでか。ほんなら、穂乃果ちゃんと変わってもらうか?まだ対決は始まっとらんし、今なら可能やけど、どないする?」

 

 優しくも何処か焚き付けるよう真島は海未に話しかける。負けず嫌いの気がある海未なら確実に乗ってくるだろうと予想しての事だった。案の定、真島の言葉に火が点いたのだろう。海未は食い付いてきた。

 

「いいえ。私は勝負を受けて立ちます。ハードと言っても少し速いくらいでしょうし、初めてだろうと打てると思いますから」

「いや、ハードの投球はプロ…「ほうか。そんじゃ、予定通りにやるとしよか」おい、真島の兄さん」

 

 海未に忠告しようとする桐生の言葉を遮り、真島が開始を促した。その強引なやり口に顔を顰める桐生に真島が小声で呟く。

 

(まぁ、落ち着けや。あの二人、俺が見る限りでは運動能力高いと思うとる)

(だから黙ってるのか。もし飛んでくる球で怪我したら、どうするんだ?俺でも最初は面食らって何も出来なかったんだぞ。一瞬でも反応が遅れたら体や顔に当たる事だってあるんだぜ)

(大丈夫やって。改装時にバッターへ当たらない様、入念に整備したと聞いとる)

(そうなのか。…いや、待ってくれ。整備したという事は球が当たる事故があったんだろう。やはり言った方がいいと思うぜ)

(うーん。確かにそう言われると不安になってきたわ。しゃーないのう)

 

 

「あ~二人共。言い忘れてた事が一つあった。ハードコースの投球はプロ並や「知ってますよ」へ?」

「扉の前に書かれてるよ。投球速度:120~140とな。しかし、その事を敢えて黙っていたのは人が悪い」

「全くです」

「うっ すまんかった」

「もういいですよ。それより、順番はどうします?ボーリングの時みたいにジャンケンで決めるんですか?」

「それでもええけど、今回は英玲奈ちゃんが先や。最初はことりちゃんが一番手やったしな。二人の健闘を祈ってるで」

「ありがとう。それじゃあ、勝負開始といこう。よろしく園田さん」

「こちらこそ。それと私の事は名前で構いません」

「それなら私も名前で呼んでくれ。この勝負、私が勝たせてもらうぞ。海未さん」

「ええ 私も負けませんよ。英玲奈さん」

 

 お互いの名前を呼び、二人は握手を交わす。隠す事なく、闘争心を露わにする二人に触発されてか傍観者の絵里や桐生達も熱いものが込み上げてくるのを感じていた。きっと、ボーリング対決以上に白熱するであろう。誰もがそれを予想していた。

 

 

 一番手 藤堂英玲奈。

 1球目ストレート バットを構えてボールを見据えていたが、投球速度に反応出来ずに空振り。

 2球目スライダー 先程より速度に慣れたのか、ボールに反応していたが惜しくも空振り。

 3球目ストレート 速度に慣れ、同じ投球という事もあり、ボールを打ち返す事に成功。

 

(此処でまずは1点か。しかし、解っていたがこうも速いとは驚いた。だが、タイミングは掴んだ。このままリードさせて貰おう)

 

「おお~ あんな球を打ち返すなんてすごいわね。この調子なら勝てるかもね」

「英玲奈は運動が得意だからね。だけど、このまますんなりと行くとは思えないわね。真島さんの顔を見る限り、何か仕掛けがありそうよ」

「うん?ああ。確かに悪そうな顔してるね。一体、何を仕込んでるのやら」

 

 

 おそらく勝負を盛り上げる為の仕掛けがあるのだろう。それが何かは解らないけど、楽しくなりそうだと思う辺り、この二人も真島と通じる物があるのは言うまでもない。

 

 

 4球目カーブ 変化球であったが、タイミングを掴んだ英玲奈には何てことも無くあっさりと打ち返して成功。

 

 思いの外、順応力が高い英玲奈に桐生は驚きを隠せずにいた。自身がハードコースを遊んだ時は慣れるまでに相当時間を有した事もあり、。

 

「これは驚いたな。まさか、こうも早くタイミングを掴むとは…」

「ほんまや。元々、運動神経がええんやろうなぁ。英玲奈ちゃんが男やったら、確実に甲子園に行けるレベルなんは間違いないで」

「それ程か。しかし、運動神経と言えば海未も高そうだがな。何にせよ。勝負の行方は解らないな」

「そうやな。まあ、勝負はそうすんなりとはいかへんけど」

「ん?何か言ったか?」

「何でもあらへん。それより英玲奈ちゃんのラストプレイが始まるで」

 

 誤魔化す様に話を逸らす真島の様子は気になっていたが、桐生はそれを無視して目の前の勝負に目を向けた。

 

5球目 此処でヒットに成功させれば、次に控えてる海未にプレッシャーを与える事が出来る。その時、ピッチングマシーンからボールが発射された。だが、そのボールは回転しながら飛んできた。予想だにしない軌道に当然、反応など出来る筈もなく、英玲奈は打ち漏らしてしまった。

 

「……。なぁ。真島の兄さん。あれは…あんたの仕組みだろ?」

「ヒヒっ。そうや。数年前にあれを見てのう。久しぶりに復活させてみたんや」

「全く、あんたは相変わらず読めねえなぁ」

「フッ。まあ、これで勝負は盛り上がるやろ」

「それにしたって、最後の最後であれは酷いと思うのだが」

 

 自分の番を終えた英玲奈が桐生達の会話に入り込んできた。真島の悪戯に振り回され、疲れた表情を浮かべる英玲奈に桐生が労いの言葉をかける。

 

「最後は残念だったな。だが、初めてなのに2球も打てればいい方だと思うぞ」

「せや。桐生ちゃんも最初にやった時は全然、打てんかったと言っとったしの」

「そうなのか。でも、最後のあれは一体、どういう原理でやってるんだ?」

「あれか…。あれはな…俺もよう解らんのや。今回のあれは以前、置いてあったものを起動させただけやしな」

「「……」」

「ま、まあ。そないな事はええやろ。次は海未ちゃんの番やで」

「分かりました。それでは準備しますね」

 

 二人の視線から逃げる様に真島は海未に声をかけた。海未は待ってましたと気合が入った返事を返す。先程のプレイを見ていたにも関わらず、余裕がある海未に桐生が尋ねる。

 

「随分と余裕があるんだな。何か秘策があるのか?」

「それは見てのお楽しみです。まあ、皆を驚かせて見せますよ」

 

 一言だけ呟いて海未は部屋へ入って行った。ことりといい、海未といい。勝負になると人が変わるのかもしれない。普段と違う一面を見て、桐生はそう思った。

 

 

 二番手 園田海未。

 1球目ストレート 速くても真っ直ぐに飛んできた球を海未は打ち返す。英玲奈のプレイを見ていた事もあり、タイミングを合わせるのは容易だった。

 2球目スライダー この球も海未は容易く打ち返した。速度のある変化球を打つのは難しいがこれも容易くやってのける海未に穂乃果達は驚きの余り、声もなく見つめていた。

 

「う、嘘でしょ。あんな速い球を何で簡単に打てるのよ」

「意外な事に海未の隠れた才能かもしれないわね」

「海未ちゃん、ああ見えても運動が得意だからね」

「うん。本人は否定するけど、体を動かすのが好きなんだよ」

「そういや、以前も山登りした時は生き生きとしとったな」

「ハラショー 海未の知らない一面を見たわ」

 

 穂乃果達がそんな会話をしているとは知らず、海未は3球目、4球目とヒットさせていった。 この時点でバッティング対決は海未の勝利は確定しているが、海未が一番注目しているのは最後の5球目であった。

 

 そして5球目 英玲奈の時と同じく、球は縦にジグザク移動をしながら凄まじい速度で飛んできた。最早、物理法則を完全に無視したその投球を海未は思いっきり、バットを振り被って見事に打ち返して見せた。一方的な展開にA-RISEのメンバー達も空いた口が塞がらなかった。

 

 

 

「とんでもないわね。全球ヒットって、初めてとは思えないわねぇ」

「うん。でも、慣れてるというよりもさ。球の動きが見えてる感じだよね」

「多分、ツバサの言う通りだ。聞く話じゃ、海未さんは弓道を嗜んでるそうだ。何れにしても私の完敗だな」

 

 

 

 第2回戦 バッティング対決は海未の勝利で幕を閉じ、現在は同点。これで決着は穂乃果とツバサのカラオケ対決に委ねられる事となった。片づけを済ませ、バッティングセンターからカラオケ店に向かう道すがら、一同は誰も口を開かずに歩き続けていた。その雰囲気に耐えきれなくなった真島が口を開く。

 

 

 

「そ、そういや…海未ちゃんのプレイは凄かったのう。一体、どうしてあの球が打てたんや?」

「ああ。あれは真島さんのおかげです。以前の特訓で見せてくれた球に比べたら、あの球の方が遅かったですからね」

「ええ~ それはどういう事?」

「つまり、真島さんは事前に海未さんの特訓してたのか」

「正々堂々の勝負なのにずるいわね」

「真島の兄さん。流石に贔屓は拙いと思うぞ」

「な、何言うてんねん。そないな事はしとらんわ。第一、俺が海未ちゃんに特訓を付けたんは大分前やで。時効や、時効」

 

 海未の発言で白い目を向けられ、焦った真島は弁明をするが皆に何処吹く風で受け流されてしまう。藪蛇を突いたと真島はそれ以降、黙る事にした。

 

 

 目的のカラオケ店が見えた時、横から男が走ってくるや。ツバサの鞄を奪っていった。突然の事で一瞬、呆けていたツバサだったが我に返り「泥棒~」と大声で叫んだ。

 

「あのアホ。詰まらん事しよるのう」

「あいつは俺が追う。真島の兄さんはツバサ達を頼むぞ」

 

 それだけ言い残し、桐生は鞄を逃げた男を追いかけていく。泥棒男の逃げ足は速く、

 この手の犯罪に手慣れているだろう。何処となく余裕を見せる姿に桐生は追う足に力を入れる。普通なら適当に走り回って相手を撒くのだが、今回ばかりは泥棒男も相手が悪かった。

 

 走っても走っても、追ってくる桐生に泥棒男の体力が持たず、ついに捕まってしまう。

 

「…終わりだ。観念して盗んだ物を返しやがれっ!!」

「ひ、ひい。わ、悪かったよ。盗んだ物は返すから殴らないで」

 

 泥棒男は桐生の気迫に負け、ツバサの鞄を大人しく差し出した。それを受け取り、桐生は男を警察へ連れて行く為、男の腕を取り交番に向かって行った。

 

 男を警察に引き渡し、桐生はツバサ達の元へ戻ると姿を見つけた皆が駆け寄ってきた。

 

「桐生さん ツバサの鞄はどうなったの?それと怪我とかしてませんか?」

「落ち着け。俺は平気だし、ツバサの鞄も取り戻して来たぞ。ほら、これだ」

「あ、ありがとう。お手数かけました」

「いいんだ。それじゃあ、カラオケ店に行くか」

「あ~ 桐生ちゃん その事やが、今回はお流れになったで」

 

 場の空気を変えるべく、そう発言した桐生に真島が勝負が流れてしまったと告げた。

 

「どういう事だ?」

「桐生ちゃんがあいつを追っていった後に西田から電話があっての。時間が過ぎても、店に来いへんからカラオケ店から貸し切りを解除してくれとな。まあ、この時期は店側も忘年会やら色々あるからのう」

「そうだったのか。すまない。俺がもっと早く泥棒を捕まえていれば「それは違うわ」え?」

 

 事情を知り、己を責める桐生にツバサは優しく言葉をかける。

 

「確かに勝負はお流れにしまった。だけど、今回は勝負の勝ち負けに拘らず、私は前に進む事を決めていたのよ」

「……」

「実を言うとね。私は穂乃果さんが変わってしまっているんじゃないかと不安だったの。ほら、私は今でもアイドル活動をしてるけど…穂乃果さん達は辞めてしまった。それによって、私が穂乃果さんに見た輝きも消えてしまっているんじゃないかってね。でも、今日、穂乃果さんに会ってそれは杞憂だと分かった。あの時と変わらないでいてくれた。私。いえ、私達が前に進む事が出来る。だから、気にしないで」

 

 ツバサは自身の想いを隠す事無く打ち明けた。その言葉を聞いていた穂乃果がツバサに近寄ると手を差し出して言葉を紡ぐ。

 

「今日の勝負にはそんな想いが在ったんだね。だけど、大丈夫。穂乃果もμ'sの皆も変わる事はないよ。だって、A-RISEとラブライブで戦った事は私の大切な思い出だもん」

「…穂乃果さん。ありがとう。今回はこんな結果になったけど、決着はいつか付けましょう」

「うん。その時は負けないよ」

 

 二人は笑顔を浮かべて握手を交わした。そんな二人を他の皆も暖かい目で見つめていた。無論、それは桐生達もそうである。

 

「結局、勝負をしなくてあの子らは答えを出したやろな」

「ああ。俺にもツバサ達が見た穂乃果の輝きってのを改めて分かった気がするぜ」

「何や、今頃かい。俺はもっと先に気付いてたで」

「フッ あんたには敵わねえなぁ」

 

 桐生と真島も顔を見合わせて静かに笑う。災難もあったが、今日は最高の日でもあった。桐生は空を見上げてそう考えていた。

 

 

「ほな。今から焼肉でパーッとやるでぇ。全部、俺の奢りやから遠慮はいらん」

「「「「「「「「「ごちそうになります!!」」」」」」」」」

 

 真島の宣言に皆は嬉しそうに声を上げて喜んだ。それに乗っかる様に桐生も言葉を発する。

 

「今日は太っ腹だな。ご馳走になるぜ」

「アホ。桐生ちゃんは自腹や」

「ちっ、やっぱりケチだな」

「何やと?何や言うたか?」

「いや、何でもない」

「そうか。まあ、今回は特別や。桐生ちゃんもご馳走したる」

「ね~ 早く行こうよ」

「穂乃果ちゃんも痺れを切らしとるし、はよ行くで」

「そうだな」

 

 遠くで二人を呼ぶ穂乃果を見て、二人は足取り軽く穂乃果達の元へ歩いていった。この後、軽くなった財布を見て、嘆く真島の姿があった事は別の話。




サブストーリー022 勝負の行方は 完

真島「何だかんだでツバサちゃん達が前に進めてよかったわ。これで財布が軽くなったのも報われるな」

個人的な都合で投稿が遅れてしまい、大変申し訳ございません。
投稿ペースが遅い作品ですが、来年もどうか宜しくお願い致します。

皆様が来年も良い年を過ごせる事を祈っております。
それではまた
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