般若と龍と女神のドタバタ騒動記   作:アリアンキング

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今回は桐生さんとスピリチュアルガールである希のドタバタ劇です。

サブストーリー004 街案内をお願いします! 開始

桐生「いい天気だったから、街をぶらついていたら…ある女性に街の案内を頼まれた。断る理由もないし、俺はその女性の頼みを聞くことにした」

それではどうぞ。


サブストーリー004 街案内をお願いします!

ある日の午後 澄み渡る青空を見上げながら、桐生一馬は神室町を一人散策していた。

天気も快晴という事もあり、街は大勢の人で溢れている。

人ごみが流れる劇場広場を眺めて、桐生はポツリと言葉をもらした。

 

「今日の神室町はいつも以上に人が多いな。まあ、今日みたいな天気に出かけたくなるからなぁ」

 

人で活気がある街を見れるのが嬉しいと思う反面 このままでは行きたい所に行けないと思った桐生は散歩を諦める事にした。だけど、いい天気なのにホテルでダラダラと過ごすのは勿体無い。これから何をしようかと煙草を吸いながら考え始めた。

 

(うーむ いい天気だからと外に出てみたら、こんな事になるとはなぁ。この人ごみを見る限りでは何処の店も混んでそうだし、参ったな…考えてもいい案が浮かんでこない。どうしたものやら…仕方ないから適当に歩いて時間を潰すとするか)

 

考えに没頭しているうちに手に持つ煙草も短くなっていた。そんな時 ふと、視線を前にやると看板を持った一人の男が目に映った。男が持つ看板には「本日限り!アクセサリー大安売り」と大きな文字で書かれている。

 

しかし、自分には無縁の物だなと結論付けて吸殻を灰皿に入れた。桐生がその場を立ち去ろうとした時、女性の声が聞こえて足を止める。

 

「あの…すみません。少し、お時間宜しいですか?」

 

桐生は何だ?と周りを見渡すが、目に映るのは人ごみだけだった。おそらく、違う人にかけた声の間に自分がいたのだろう。そう思って、桐生が歩き出すと先程の女性の声が聞こえてきた。

 

「あの~ お願いですから…私の話を聞いてくれませんか?」

 

今度は勘違いではないと桐生が声の主の方に振り返ると、そこにいたのは紫の髪を二つに結んだ女性が立っていた。そして、桐生が女性に要件を尋ねる。

 

「…さっきも声をかけたようだが、俺に何か用か?」

「二度も足止めしてごめんなさい。貴方にお願いしたい事があるんです」

「その前にあんたの名前を聞かせてくれないか。流石に見ず知らずの人の頼みを聞く訳にはいかないからな」

「あっ ご、ごめんなさい。自己紹介が遅れましたね。私は東條希といいます」

「そうか 俺は桐生一馬だ。それで…俺にお願いとは何だ?」

 

お互いの自己紹介が終わり、桐生は希に要件を尋ねる。

 

「その前に‥場所を変えませんか?此処で話すのも何ですから‥」

 

ばつが悪そうな表情で希は場所を変える事を提案する。

周りは大勢の人で賑わっていて、ゆっくりと会話が出来る様な状況ではない。希の提案に桐生も頷いた。

 

「…そうだな。ここだと落ち着いて話も出来ないからな‥近くにある喫茶店でいいか?」

「はい 大丈夫です」

「じゃあ、行くとするか。人が多いから逸れない様にしてくれよ」

「解りました」

 

行く場所も決まり、桐生は希を連れて中道通りにある喫茶アルプスへ向かい歩き始めた。時折、後ろを振り返って希が逸れていないかを確認しながらも足を進める。そんな希も逸れないように必死に桐生の後をついて行った。

 

(やれやれ‥まさか、こんな事に巻き込まれるとは思って無かったぜ。それにしても、俺にお願いしたい事とは何だろうな?まあ、考えても解らないし、早いとこ喫茶アルプスに行くか。そして、さっさと用を済ませてホテルに帰ろう)

 

(ふぅ~ どうなるかと思ったけど、上手くいって良かったわ。以前、花陽ちゃんから聞いたけど‥桐生さんはいい人やな~ 時折、振り返ってウチが逸れてないか確認してくれるし、歩く速さもウチに合わせてくれるからなぁ。これなら、ウチのお願い事も何とかなりそうやな。引っ込み思案な花陽ちゃんが信頼するのも解る気がするよ)

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの事を考えながら、歩いている内に二人は喫茶アルプスに到着した。店内に入ると、多少混んでいたが座れる席は空いており、二人は近くの席に腰を下ろす。桐生はメニューを手に取ると希に話しかけた。

 

「何か飲むか?」

「いえ、流石に悪いですよ」

「遠慮はしなくていいぜ。それと折角、喫茶店に来たんだ。何も頼まない方が悪いだろ?」

「確かにそうですね。それじゃあ、私はミルクティーとショートケーキにします。あっ 代金は自分で出しますよ」

「いや、代金も俺が出すから気にしなくていいぜ。店に誘ったのは俺だからな」

「でも…」

「いいんだ。それに年上の言う事は聞くもんだぜ」

「そうですね。それでは…ご馳走になります」

 

希は桐生の好意に素直に甘える事にした。そして、桐生が手を上げて店員を呼ぶと注文を伝える。数分後、店員が注文の品を運んでやって来た。二人は注文の品に一口飲んでから、本題に入る事にした。

 

「それで俺に頼み事というは何だ?」

「はい 私のお願いというのはこの街を案内して欲しいんです」

「街を案内して欲しいか…それに答える前に一つ聞いていいか?どうして、俺なんだ?街の案内なら他にいくらでも方法があった筈だ」

「質問に質問を返して申し訳ないのですが、桐生さんは小泉花陽という子を知っていますか?」

 

希の話に出た名前を聞いて、桐生の脳裏にあの時の出来事が浮かんだ。気弱そうに見えて、自分の意思をしっかり持っている子という印象を桐生は抱いている。そして、ある疑問が桐生の中に生まれた。

 

「ああ 知ってるぜ。以前、その子に街を案内した事があるからな。それと東條は何故花陽の事を知っているんだ?」

「実は…その時、私は二人の後をつけていたんです。偶然、神室町に買い物に来た日に花陽ちゃんを見かけて声をかけようとしたら、桐生さんが花陽ちゃんを連れて走り出したから‥厄介な事に巻き込まれたんじゃないかと心配になったから‥」

「そうだったのか…それは心配をかけてしまったな。すまない事をした」

 

希の話を聞いて、桐生は頭を下げて謝った。その姿を見て、希は慌てて言葉を発する。

 

「頭を上げて下さい。あの時、何があったのかは花陽ちゃんから聞いてます。だから、謝らなくてもいいんです」

「そうか。そういえば、東條と花陽はどういった関係なんだ?姉妹にしては似てないようだが」

「私の事は希でいいですよ。桐生さんは年上ですし、苗字だと呼び辛いでしょうからね。花陽ちゃんは私の2年下の後輩です。それと、一年前はスクールアイドルをしてた仲間なんですよ」

「そうか。それなら希と呼ばせてもらうぜ…今、スクールアイドルと言ったな?もしかして、そのグループはμ'sという名前じゃないのか?」

「!?…桐生さんも知ってたんですね。確かに私がやっていたスクールアイドルの名前はμ'sです」

「花陽が教えてくれたんだ。それより、少し話が逸れてしまったな。知りたい事は大体解った。それで希は何処に行きたいんだ?」

「そうでしたね。私が行きたい所はアクセサリーを扱ってる店に案内して欲しいんです。何処か良い店を知りませんか?」

 

アクセサリー屋に行きたいという希の言葉に桐生は思案する。

 

(アクセサリーかぁ…俺はそういった物に疎いからなぁ。試しに思い付いた所から行ってみるとするかな)

 

「解った。それなら、行くとするか」

「はい。お願いします」

「それじゃあ、俺は会計をしてくるから外で待っててくれ」

「解りました。今日はご馳走になります」

「気にするなと言ったろ。大人しく俺に甘えておけ」

 

そう言い残し、桐生は伝票を掴むとレジに向かった。

その発言を聞いた希が目を潤ませ、赤面してる事に桐生は気付いていなかった。

 

 

 

 

 

そして、桐生は希をある店に案内した。そこは昭和通りにある”ル・マルシェ”というブランド物を専門に扱っている店であった。

 

「ル・マルシェ?ここがアクセサリー屋なんですか?」

 

希は店の看板を見つめて、桐生に尋ねる。

 

「いや、アクセサリー専門ではないが…この店ならそういった物を扱ってるからなぁ。まあ、ブランド品ばかりだから値が張るけどな」

「そうなんですね。確かにここならいい物が見つかりそう…桐生さん 今、何て言いました?その‥ブランド品がどうこうと‥」

「ああ この店はブランド物のバックやアクセサリーを扱ってるんだ。だから、いい物が揃ってるぜ」

「私は唯の大学生なんですよ!!そんな高い物を買えるお金なんて持ってませんよ~ 他の店は無いんですか?」

 

平然と答える桐生に対して、希は思わずツッコミをいれた。希の言葉を聞き、桐生は再び思案する。

 

(この店は駄目なのか…他にアクセサリーを扱ってる店となると、思い付くのは…そうだ!”えびすや”ならあるかもしれないな。よし、今度はそこに行ってみるか)

 

「そうか。考えてみれば、確かにブランド品は無理だよな。近くにえびすやという質屋があるんだが、そっちの方に行ってみるか?あそこは色んな物が置いてあるからな」

「質屋ですか…色んな物がありそうで面白そうですね」

「よし、それなら行くとするか」

 

 

 

 

 

 

次に行く店が決まり、桐生は希を質屋まで連れて行く事にした。その道中、桐生は希にある事を聞いた。

 

「そういえば、希がスクールアイドルをやろうと思ったのはどうしてなんだ?」

「…私がスクールアイドルをやろうと思ったのは…ある三人を見てからなんですよ。私が通っていた音ノ木坂学院は入学する生徒が少なくて、廃校の危機に陥っていたんです。私と友達の絢瀬絵里という子と一緒に生徒会で廃校を阻止しようとしたけれど、いい案が浮ばなくて悩んでいた時…ウチ、私はスクールアイドルを結成して、廃校を阻止しようとする子達に会ったんですよ。私がスクールアイドルをやろうと思った切欠はそれです」

「そうだったのか。それで希はスクールアイドルになったのか」

「はい。とは言っても、私がメンバーに加わったのは最後ですけどね。友達がスクールアイドルに反抗心を持っていましたからね。結局、その子もメンバーに加わりましたけど‥」

 

その当時を思い出しているのだろう。希は優しい笑みを浮かべる。それを見て、桐生はμ'sに対する興味が深くなっていくのを感じていた。そして、二人は次の目的地であるえびすやに辿り着く。

 

「ここがえびすやだ。気に入るものがあるといいな」

「そうですね。とりあえず、入りましょう」

「ああ そうだな」

 

店の扉をくぐると、狭い店内に置いてある様々な品物に希は目を奪われた。そして、奥のカウンターに立っている店主が客に気付くと、元気な声で挨拶をする。

 

「いらっしゃいませ!おや?桐生さんじゃないですか?神室町にいらしていたんですね」

「ああ ちょっとした小旅行でな。暫く、神室町にいる事になったんだ」

「そうでしたか。それと…後ろのお嬢さんはどちらさんで?桐生さんのお子さんかな?それとも嫁とか…」

 

店主の言葉を聞いて、希の顔が真っ赤に染まる。だが、それに気付いていない桐生は店主の言葉をやんわりと否定した。

 

「そんな関係じゃない…希とはついさっき会ったばかりだからな。ここに来たのは街の案内を頼まれただけだ」

「そうでしたか」

桐生の言葉を聞きながら、店主は希の方に目をやると、今度は何処か不満そうな表情を浮かべている。そんな希を店主は不憫に思っていた。

 

(頼りになるけど、こういう事に関しては頼りないお人だからなぁ。このままだと、可哀想だね。よし、私がお膳縦して彼女の機嫌を治さないと)

 

心の中で密かに決意した店主は希に話しかける。

 

「ところで今日は何をお探しで?うちは小さい店ですが、幅広い品ぞろえと質が自慢でしてな。もしかしたら、お嬢さんが欲しい物が見つかるかもしれませんよ」

「え?あ、ああ 私が探してる物ですね。今日はアクセサリーが欲しくて、それを扱ってる店を探していたんです。こちらにそういった物は置いてありますか?」

 

いきなり店主に話しかけられて、ムスっとしていた希は慌てて質問に答えた。

 

「アクセサリーですか…それなら丁度よかった。一つだけ、在庫があるんですよ。今、お持ちしますね」

 

そう言うと店主は奥へ引っ込んでいった。二人のやり取りを黙って見ていた桐生が希に言葉をかける。

 

「どうやら、探してる物は見つかったようだな」

「はい 唯、どんなアクセサリーなのか気になる所です」

「この店で扱ってる物の質は確かだ。まあ、見るだけは見てみるしか無いな」

 

二人の会話が終わった時、タイミングよく店主が品物を持って戻って来た。

 

「お待たせしました。これがうちにある最後の一つですよ」

 

店主がそう言って小さな箱の蓋を開ける。その中に入っていたのは、金色のネックレスだった。淡く輝くその品に希は完全に魅せられていた。数十秒程、経ってから希はおずおずと店主に尋ねる。

 

「あの、これなんですが、一体いくらなんですか?見た所、かなり高そうに見えるのですが…」

「値段ですか?ああ これは5000円で結構ですよ」

「5000円!?… こんなに綺麗なのに…」

 

店主が言った値段に希は驚きを隠せなかった。素人目で見ても、高価な物にしか見えないからだ。傍で見ていた桐生も希と同じ気持ちだった。

 

「ああ 確かにこれは普通ならもっと値が張ります。だけど、この品はアウトレットですからね。よく見て下さい。チェーンの一部分が欠けてるでしょ?これだけで商品価値なしとあぶれたんですよ。それをうちが引き取って安く売ってるというわけです」

「そうだったんですね。決めました。これを買います」

 

 店主の説明を聞いて、安い理由が分かった希は迷わず購入を決意する。

例え、一部が欠けてるとしても綺麗な品物である事は間違いないからだ。

希は財布から五千円札を取り出すと、店主に差し出した。

 

「お買い上げありがとうございます!それではお包み致しますので、少々お待ちください」

 

希から五千円を受け取ると、店主は丁寧にネックレスの包装を始めた。数分後、綺麗に包装されたネックレスを手にして希は嬉しそうな表情を浮かべる。その様子を店主と桐生は優しく見つめていた。

 

 

 

用事を済ませた二人は店をあとにして、タクシー乗り場にいた。そこで希は桐生に向けて、深々と頭を下げてお礼の言葉を述べた。

 

「桐生さん 今日はどうもありがとうございました。桐生さんの案内してくれたおかげで素晴らしい物も安く買えて良かったです」

「いや、俺はたいした事はしてない。まあ、希が気に入った物が見つかって良かったな」

「はい…そうだ。宜しければ、桐生さんの携帯のメールアドレスを教えてくれませんか?」

「俺のアドレスか。別にいいぜ」

 

ふと、思い付いた事を希は桐生に伝えた。それを聞いた桐生は快く了承すると、携帯を取り出して希に手渡す。

桐生から携帯を受け取った希は、慣れた様子で操作する。そして、登録が済んだ様で携帯を桐生に返した。

 

「これでよし。困った時はメールしていいですか?」

「ああ 俺で良ければいつでも力になるぜ」

「ええ その時はまたよろしくお願いしますね」

 

桐生の力強い言葉に希は満面の笑み見せると、最後に頭を下げてタクシーに乗り込みと神室町を去って行った。

それを見送ってるいると、ピピッと軽快な音が聞こえた。どうやら、自分の携帯からの様だ。桐生が携帯を見ると、希からのメールが届いていた。

 

【今日は本当にありがとう。桐生さんと会えたのはきっと、スピリチュアルのおかげやね】

メールの一文に桐生は頭を傾げるが気にしない事にした。

 

(スピリチュアルって、どういう事だ?まあ、いいか。何だかんだで暇を潰せたからな。感謝するのは俺も同じだぜ)

 

そして、快晴の空の下を街の中へ向かって桐生は歩いて行った。

 




サブストーリー004 街案内をお願いします! 完

桐生「どうやら、希が探していた物は手に入ったようだな。力になれて良かったぜ」

今回は希の口調を普通にしていますが、それは希が大学生になり口調を変えたからという理由です。

宜しければ、感想をどしどしと送って下さい。
それではまた
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