般若と龍と女神のドタバタ騒動記   作:アリアンキング

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サブストーリー 街がもたらす奇妙な縁 桐生編 開始


桐生「今朝の朝刊にあった広告を見て、ある店に行く事にした。一風変わった料里を食べるのが楽しみだな」

今回はいよいよ桐生さんがあの人と再開します。

それは誰なのか…ぜひ、読者様の目でお確かめ下さい。

それではどうぞ


サブストーリー009 街がもたらす奇妙な縁 桐生編

 日曜日の午後 桐生はある店に向かって歩いていた。その日の彼はいつもと違い、何処か浮ついてる様子で妙にそわそわしている。

普段は落ち着いている彼が何故、ここまで浮かれているのか それは今朝の朝刊について来た一枚のチラシから始まった。

 

 

朝の7時 いつもと同じ時間に起床した桐生は部屋に届けられた朝刊を読んでいた。

最初こそ、ニュースでやらない出来事の記事があり、また世間が注目しているものを知る事が出来る情報収集の一環として読んでいたが、今では楽しい日課の一つとなっている。

 

 

 

 

次に桐生は朝刊を読み終わると朝刊に挿められていた広告のチラシを手に取り見始めた。それらのチラシはスーパーのタイムセールや求人広告がほとんどであるが、ある広告が目に止まる。

 

(何々‥トマト料理専門店 ”トマト☆キング” 本日 新装開店かぁ。肉料理や魚料理専門の店なら知ってるが、トマト料理専門とは珍しいな。場所は千両通りで開店日は今日なのか。とくに予定もないし、興味もあるから行ってみるとするかな)

 

 

一風変わった料理を出す店に興味を抱いた桐生はその店に行ってみる事にした。

 

 

 

目的地を目指す道中、桐生の目の前を歩いていた中年男性のポケットから財布が落ちるのを目撃する。普通だったら、無視するかその財布を猫ババするだろう。だが、馬鹿と人から言われる程…お人好しな桐生が取る行動は決まっていた。

 

誰かに拾われる前にその財布を拾いあげると中年男性に向かって桐生は声をかける。

 

「おい 親父さん。ちょっと、止まってくれないか」

 

桐生の声に反応して、前を歩いていた中年男性が振り向くと桐生の姿を確認すると怯えた様子で言葉を返して来た。

 

「は、はい 何でしょうか?私が何か粗相をしましたか?」

 

 

その様子からして、桐生の事をその筋の人と思っている事は明らかだった。悲しい事だが、桐生もそういう誤解を受けるのは慣れているので落ち着いて対応する。

 

 

「そうじゃない。俺はあんたがこれを落としたのを見たから、声をかけたんだ。あんたには危害を加えたりはしないから安心してくれ」

 

その言葉と共に桐生は拾った財布を中年男性に手渡した。その事に怯えていた中年男性は驚きの表情を見せる。そして、財布を落とした事を親切に教えてくれた桐生に怯えていた自分が途端に恥ずかしくなり、中年男性はお礼の言葉を口にする。

 

「ど、どうもありがとうございます。そして、申し訳ありませんでした。親切にも財布を落とした事を教えてくれた貴方に不躾な事を言ってしまった」

「気にしないでくれ。俺は当たり前の事をしただけだ。礼を言われる程じゃない。それより、今度は落とさない様に気を付けてくれ。それじゃあ、俺はこれで失礼する」

 

中年男性にそう言うと、桐生はその場を後にした。その後ろ姿を見ていた中年男性は静かに頭を下げると自身もその場を後にする。

 

後にこの二人の出会いが奇妙な縁をもたらす事になるとは知らずに……

 

 

そして、千両通りを訪れた桐生はトマト料理専門店を探して歩いていると件の店はすぐに見つかった。何故なら、ある場所で大勢の人だかりを発見したからである。おそらく、オープンする店を訪れてきた人達だろう。

 

 

「今日、オープンした店はあそこか。思ったより、大勢の人が来ているようだな。午後なら人が少ないと思ったが見通しが甘かったみたいだな」

 

 

その為か、本来は休日であっても人が少ない千両通りも今日だけは人で溢れている。桐生が人だかりに近づくと店の前である光景が目に入った

 

 

「いらっしゃいませ~ トマト料理専門店 トマト☆キングは本日オープンしました。新鮮なトマトを使った様々な料理をぜひ、その舌でご賞味下さい」

 

 

制服を着た男性が大きい声で店の宣伝をする横でトマトの着ぐるみを着た人が右へ左へと体を揺らしながら踊っている。単調だが、リズミカルな動きは見るものを楽しい気持ちにさせる。

 

 

この人だかりは店を訪ねてきた人だけではなく、珍しい光景に通行人が足を止めて見物している人もいるのだろう。

 

 

そんな時、一人の店員が桐生に近寄って来ると声をかけてきた。

 

 

「あの、お客様。いきなりで申し訳ありません。お客様も当店にご来店の方でしょうか?」

「ああ 今朝、広告を見て店の事を知ってな。それで食べに来たんだ」

「そうでしたか。それはありがとうございます。ですが、少々問題がありまして…」

 

 

桐生も店を訪ねてきた客と知ると、店員は申し訳なさそうな表情を浮かべて言葉を濁す。

その様子を見て、桐生の脳裏に嫌な予感を感じていた。そして、その想像が外れている事を祈りながら店員に尋ねる。

 

「その問題と言うのは何だ? ……まさか、食材が切れて今日は営業終了とかじゃないだろうな?」

「いえ、そちらの方は問題ありません。ですが、予想以上の反響で店内が大変混雑していまして。それ故、ご来店のお客様には他の方との相席してもらう様に尋ねております。それで、お客様は相席でも宜しいでしょうか?」

「ああ 別に相席でも構わないぜ。それに知らない人と食べるのも面白そうだからな」

 

桐生は首を縦に振り、店員の言葉を受け入れると店員もホッとしたのか安堵の表情を浮かべる。

 

「理解して頂き、ありがとうございます。それと、こちらの番号札をお持ちください」

 

店員はそう言って、桐生に4の数字が記された番号札を手渡した。桐生はその札をまじまじと見つめながら、店員に言葉を返す。

 

「解った。これを中で見せるという事は相席する人はもう店の中にいるのか?」

「はい 相席する方達はもうご来店なさってます。それでは中へどうぞ。当店のトマト料理をご堪能下さい」

「ああ ありがとうな。あんたも頑張ってくれ」

 

桐生は店員に労いの言葉をかけると店の中へ足を踏み入れる。店の中は店員が言っていたように沢山の客で混雑していた。予想以上の混雑ぶりに桐生は言葉も無く、茫然としていると桐生に気付いた店員が営業スマイルを見せて話しかけてきた。

 

 

「いらっしゃいませ! お客様は1名様ですか?それと番号札はお持ちでしょうか」

「あ、ああ 俺は一人だ。あと、番号札はこれだ」

「1名様ですね。かしこまりました。ええと‥番号は4番ですから4番テーブルですね。そちらのお客様の席へ案内します」

 

店員の問いに答えると、桐生は先程渡された番号札を店員に見せた。それを確認した後、席に案内しようとする店員を桐生は呼び止める。

 

「ちょっと待ってくれ。俺は相席するのは構わないが、もし相手が相席を拒否したらどうするんだ?まさか、その時は帰れと言わないだろうな」

「その時は当方が別の席へ案内いたします。といっても、店内はご覧の通り混雑していますから同じく相席となりますが‥」

「そうか。とりあえず、相席する人の所に案内してくれ」

「かしこりまりました。それではこちらにどうぞ」

 

 

桐生の言葉に店員は笑顔を見せると件のテーブルへ案内する為、桐生を連れて歩き出した。

そして、店員に連れられて案内された席には高校と思われる3人の女の子が談笑しているのだろう。姿は見えないが楽しそうな声は桐生の耳にも届いていた。その中に一人の声に聞き覚えがあると桐生は感じたが、店内は大勢の客でざわついている事もあり、気のせいだと思う事にした。

 

「それでは今から相席の合意を確認してまいりますので、お客様は此処でお待ちください」

「ああ 解った。よろしく頼む」

 

桐生に待つように伝えると店員はその席に向かっていく。

 

「お客様 お楽しみの所を申し訳ありませんが、少々お話を聞いて貰って宜しいですか?」

 

楽しく談笑する3人に店員は声をかけると3人は会話を止めて、店員の方へ顔を向けると要件を尋ねた。

 

 

「はい 大丈夫ですよ。それで何の用ですか?」

「もしかして…まだ、料理を注文せず話をしてたから注意に来たのかもね」

「あっ… そういえば、まだ料理を注文してないね」

「いえ 話というのはその事ではありません。ただいま 店が大変混雑しておりまして、席が満席の状態なんです。それ故、お客様にはこちらのお客様と相席をしてもらう形になるのですが…構わないでしょうか?」

「相席ですか?私は構わないけど、二人はどうするの?」

 

 

店員の言葉を聞いて、一人の女の子が他の二人に顔を向けるとその二人は首を縦に振った。

 

 

「私もいいわよ。席が無いんじゃ仕方ないもの」

「私も大丈夫だよ。それに知らない人と食べるのも面白そうだしね」

「二人もこう言ってますし、私達は相席してもいいとその方にお伝え下さい」

「ご理解頂き、ありがとうございます。それでは失礼致します」

 

相席する事を了承した3人に深々と頭を下げて店員はその場を後にすると、足早に桐生の元へ向かった。

桐生も向かってくる店員に気付いて、近づいていく。

 

「大変 お待たせしました。先のお客様も相席しても構わないとの事です。それではこちらへ」

店員は桐生にそう伝えると件の席へと連れて行く。自分を案内する店員の後ろ姿を見て、桐生は漸く食事が出来ると一息吐く。この店で食事する為、昼を抜いていた桐生の腹も空腹を訴えていた。

 

案内していた店員が立ち止り、桐生へ向き直るとある席を手で指し示した。

 

「相席してもらうのはあちらの席に座っているお三方です。それと私は別のお客様を案内する仕事ありますので…これで失礼します。それではごゆっくりどうぞ」

 

その言葉を言った後、慌ただしく店員は去って行った。そして桐生は席に座っている三人に挨拶をする為に席へと向かって静かに歩いて行く。

 

「どうも 初めまして! 今日、一緒に相席をさせてもらう桐生という者だ」

「あ、こちらこそ。困っている時はお互い様ですからお気になさらず‥‥え?あ、貴方はあの時の…その節はお世話になりました」

「お前は…花陽か?こんな所で会うとは奇遇だな」

 

桐生は三人に挨拶を言うと、三人は顔を上げて桐生に視線を向けた。その内の一人が桐生の顔を見て、驚いた表情を浮かべると立ち上がり桐生へ深く頭を下げてお礼を言った。桐生の方も花陽に気付き、穏やかな表情で言葉を返した。

 

 

一方、事情を知らない残りの二人は花陽と桐生の事を不思議に思い、キョトンしてお互いの顔を見合わせると二人は一斉に口を開くと、気になっている事を訪ねてきた。

 

「あの~ 二人は知り合いみたいだけど、どういう関係なの?私達にも説明してくれないかしら…」

「そうだよ。それにかよちんがお世話になったってどういう事なの?しっかりと説明してよ」

 

赤毛でツリ目の少女は桐生を問い詰め、もう一人の爽やかな感じの少女は花陽を問い詰める。

 

「ああ そうだな。だが、立って話をするのも何だ。座ってから事情を話すとしよう」

「ええ 解ったわ。それと二人共、これ以上騒ぐと周りや店の迷惑になるわよ。落ち着きなさい」

 

桐生の言う通り、立って話す事ではない。そう判断して、桐生の意見に同意するとその少女は傍で押し問答を繰り返す二人に注意をした。

 

少女のおかげで落ち着きを取り戻した二人が席に着き、赤毛の少女が改まって口を開く。

 

「今すぐ、貴方と花陽の関係を聞きたい所だけど…まずは自己紹介をさせてもらうわね。私は西木野真姫よ。ほら、貴女も自己紹介しなさい」

「私の名前は星空凛です。それとおじさんの名前は何て言うのかにゃ?」

「星空凛に西木野真姫だな。改めて言うが、俺の名前は桐生一馬だ。よろしく頼む」

「花陽の事は知ってるようだから、紹介はいらないわよね?」

「ああ 名前は知ってるからな」

「それなら、早速本題に入らせてもらうけど…貴方と花陽はどういう関係なの?」

 

 

名前を名乗る二人に倣い、桐生も自分の名を告げる。お互いの自己紹介が終わると真姫が本題を切り出した。

 

自分の友達が心配なのだろう 真剣な表情の真姫からは不安の色が見て取れる。

 

「俺と花陽の関係と言っても別に大したものじゃないぜ。以前、神室町で迷ってる所に声をかけて道案内と悩みを聞いたくらいだな」

 

桐生はその時の事を思い返して、真姫の質問に答えた。だが、真姫は桐生の言葉が信用出来ないのか、視線を花陽に向けて真意を問いただす。

 

「この人の話は本当なの?こう言っては失礼だけど、弱みを握られてるとかじゃないわよね?」

「桐生さんの話は全部、本当の事だよ。それに桐生さんは見た目は怖いけど、そんな事をする人じゃないよ」

 

疑いの視線で花陽を見つめる真姫だったが、花陽の表情から嘘ではないと悟った真姫は安堵の溜息を吐く。

そして、桐生の方を向くと頭を下げて自分の非礼を詫びた。

 

 

「どうやら、桐生さんの話は本当だったようですね。先程は失礼な事を言ってごめんなさい」

「いいんだ。俺は別に気にしてないからな。それより、何か注文しないか?」

「そうだにゃ~ おじさんとかよちんの関係も解った事だし、安心したらお腹空いたよ」

「フフ そうね。私もお腹空いてるし、思う存分にトマト料理を堪能するわよ」

「真姫ちゃんはトマト大好きだもんね。今日だって、この店に来るのを楽しみにしてたもん」

「ほう そうなのか?だったら、今日は俺が奢るから遠慮なく食べるといい。」

  

花陽の言葉を聞いて、桐生はそう発言する。桐生の唐突な発言に三人は驚いた顔を見せる中、ハッと我に返った真姫が訝しげな様子で言葉を投げ掛けた。

 

「いいんですか?今日、会ったばかりの人に奢るなんて…ご機嫌取りのつもりなら悪いけど遠慮させて貰います」

「そんなつもりはない。今回、奢ると言った理由は相席をさせてくれたお礼と花陽達に会えた事の感謝といった所だな」

「意味わかんない。相席はともかく私達に会えた事の感謝って、どういう事なのよ?」

真姫は桐生の言葉の意味が理解出来ず、眉を寄せていた。そんな真姫に桐生は静かに語りかける。

 

「この街は見ての通り、大勢の人が集まる。だから、以前会った人とは二度と会う事はない。だけど、花陽達はこうやって再開する事が出来たのが嬉しくてな。ただ、それだけだよ。やましい気持ちは何もないから安心してくれ」

「そうですか。…‥解りました。それでは、今日はご馳走になりますね」

 

 

 

桐生の話を聞いて、真姫は素直にご馳走になる事にした。本来だったら、断固として断るのだが、何故か桐生の言葉には人を信用させる力がある事も真姫は感じていた。

 

(不思議な人 初めて会ったのに何処かで会った様な気がする。…一体、何処かしら?こんな存在感が強い人を忘れる事は無いものね。あ…そうだ、真島さんだわ。この人は真島さんに雰囲気が似てるんだ。思えば、この人の言葉にも真島さんと同じ重みがあるもの。もしかしたら、花陽もこの人に背中を押してもらったのかしらね。私みたいに… そう考えればお世話になったという言葉にも納得がいくわ)

 

(何だ?さっきから真姫という子は俺の顔をじーっと見てるが何かあるんだろうか?俺を見て目を細めたり、笑みを浮かべたりと掴めない子だなぁ。まるで猫みたいだ。うん?あ、そうか。彼女が見てたのは俺じゃなくて、傍にあるメニューを見て食べる料理の事を考えていたんだな。それなら、早く言ってくれたいいのに)

 

 

桐生は自分を見つめてくる真姫を不思議に思っていたが、傍にあるメニューに気付くとそれを真姫へ手渡した。

 

「ほら、これを見て、注文する料理を決めてくれ。他の二人はもう見てるし、真姫も見るといい」

「へ? え、ええ そうね。そうするわ。貴方は見なくていいの?」

「まあ、まだメニューはあるからな。それを見るさ」

「そう、解ったわ」

 

 

そう言って、真姫は桐生からメニューを受け取ると注文する料理の選別を開始した。そして桐生も自分の食べる料理を決めるべく、メニューに目を通す。

 

 

メニューを覗くと載っている品はトマトシチューやトマトフライ等の変わった料理もあれば、トマトのサラダやトマトソースのパスタといった見慣れた品もありトマト一色でメニューは埋められている。まあ、桐生がいる店はトマト料理専門店なのだから当然の事であるが、桐生は戸惑いを隠せないでいた。

 

 

他の三人はどう思ってるんだろうと、メニューから顔を上げて視線をやると花陽と凜は話しながら選んでいる。次に真姫に視線をやると、彼女は先程以上に真剣な表情でメニューを見つめている。そういえば、花陽は真姫がトマト好きだと言っていた事を思い出すと桐生はある提案を思い付いた。

 

 

そうだ 彼女に聞けばお薦めのトマト料理を教えてくれるかもしれないと桐生は真姫に話しかけた。

 

 

「一つ、聞いてもいいか?」

「何?今、料理を決めるので忙しいんだけど。 あっ… ご、ごめんなさい。聞きたい事は何かしら?」

「あ、ああ 実はだな。メニューを見たんだが、中々決められなくてな。さっき、花陽が真姫はトマト好きと言っていたし、良かったらお薦めを教えてくれないかと思ってな」

 

真姫の物を言わせぬ迫力に圧倒された桐生だが、素に戻った真姫に言われて気流は気を取り直して質問をした。

まさか、お薦めを聞かれると思ってなかった真姫は桐生の言葉を聞くや否や、満面の笑みで答え始める。

 

 

「そうね。私としては…お薦めするのはトマトソースのパスタかしらね。色んな料理があるから、変わった物を食べようと思うだろうけど、それは辞めるべきね。まずはシンプルにトマトそのものを味わえる料理を選ぶのがベストの選択よ。だから、私はトマトソースのパスタを選ぶつもりだけど、桐生さんも同じものを頼んで見たらどうかしら?」

「成程な。トマトそのものを味わうか…それは考えてなかったな。よし、それなら俺もトマトソースのパスタを注文するとしよう。ありがとうな 真姫」

「どういたしまして。所で二人はもう決まったの?そろそろ、頼もうと思ってるけど」

 

真姫は照れた様子でお礼を言う桐生に言葉を返すと未だにメニューを見ている二人に声をかけると二人は真姫の方を向き、それぞれが注文する料理を伝えた。

 

「あ、ごめんね。私は熱々チーズとフレッシュトマトのサンドイッチとオレンジジュースにするよ」

「凛は特製トマトケチャップのチキンライスとかよちんと同じくオレンジジュースにするにゃ」

「どうやら、皆決まったようだな。それじゃあ、注文するぞ」

 

桐生がテーブルに置いてあるボタンを押すと店員が足早にやって来ると、メモを片手に注文を聞いてきた。

 

「お待たせ致しました。ご注文をお伺いします」

「俺はトマトソースのパスタを頼む」

「私も同じく、トマトソースのパスタで」

「私は熱々チーズとフレッシュトマトのサンドイッチとオレンジジュースをお願いします」

「凛は特製トマトケチャップのチキンライスとオレンジジュース」

「かしこまりました。ご注文は以上で宜しいでしょうか?」

「ああ 以上だ」

 

店員は桐生の言葉を聞くと、一礼して去って行った。

 

 

注文した料理が届くまで時間がある為、桐生は気になっていた事を花陽に尋ねた。

 

「そういえば、以前に花陽をスクールアイドルを結成すると言っていたが…あれからどうなったんだ?」

「ああ あの事ですね。あの後、私はμ'sに変わるスクールアイドルを結成しました。メンバーは私とここにいる真姫ちゃんと凛ちゃんです」

「どうやら、悩みを吹っ切れたようだな。あの時と違って楽しそうで何よりだ」

「はい あの時、桐生さんに相談してなかったら、今の私は無かったと思ってます。μ'sを超えるスクールアイドルを作るなんて事は考えもしなかったですからね」

 

花陽は満面の笑顔で二人の肩に手をやって、そう答える。今の花陽は充実してる毎日を送っている事に桐生も嬉しく感じていた。

 

そんな二人を見て、凛と真姫も口を開く。

 

「へー かよちんと桐生さんの間にそんな事があったんだね。悩んでいたと思ったら、すっきりした顔でスクールアイドルをもう一度やろうと言われた時は吃驚したよ」

「そうね。私もいきなり言われた時は驚いたわよ」

「アハハ ごめんね。思い立ったら、居ても立っても居られなくなっちゃって…だけど、一緒にやると言ってくれた時は嬉しかったよ。ありがとう 二人共」

 

花陽はそう言って、真姫と凛に微笑んだ。二人も花陽に応えるかの様に微笑みを浮かべていた。そんな三人を見て、桐生は心が温かくなるのを感じていた。

 

そんな会話してる間に時間が経っていたのか、丁度よく、出来立ての料理が運ばれてきた。

 

テーブルに置かれた料理はどれも美味しそうであり、空腹だった四人は『いたたきます』と一言告げて、それぞれが頼んだ料理を食べ始める。余程、お腹が空いていたのか黙々と食べる三人を見て、話をしようと思って真姫の方を向くと彼女は目をギラギラさせながらパスタを咀嚼している様を見て、桐生は会話を諦めると自分の料理を食べる事に専念する事にした。

 

それから10分程してからだろうか。ドタドタと走る足音が店内に響き、桐生達がいる席の傍で接客している店員の元に駆け寄ると、慌てた様子で話しかける。その様子に桐生達は何事だと、そちらの方へ視線を向ける。

 

「チーフ 大変です。店の前で宣伝していたスタッフが急に体調を崩してしまいました」

「何だって!? それは本当かね?」

「はい 本当です。チーフ それでいかがしましょう。宣伝役の人がいなくなっては客足も減ってしまいます」

「ううむ 参ったなぁ。店内は未だに混雑してるし、人員を割いてしまうとオーダーを取る者や料理を運ぶ人が減ってしまう。どうしたものやら・・・」

 

店員の報告を聞いたチーフは発生した問題に頭を抱えてしまう。どうやら、話を聞く限りでは店前で呼び込みをしていたスタッフが体調を崩してしまったようだ。その話は当然、桐生達の耳にも届いていたが客である自分には関係ない事だと思っていた。

 

そう ある一人を除いては‥‥ そして、その一人が唐突にある提案を口にする。

 

「ねえ 花陽、凛。少し、私の話を聞いてくれない?」

「…それはいいけど、話って、一体何かな?」

「まさか、トマト料理をおかわりしたいだったりするのかにゃ」

「違うわよ。話というのはこの店の宣伝を私達でやらないかという事よ」

『ええぇぇぇぇ!!?』

「ちょ、大声出さないで!周りに迷惑になるでしょ」

 

真姫の提案に驚いた花陽と凛が叫び声を上げる。そんな二人に真姫は周りを気にして、静かにするよう促した。

その事で冷静さを取り戻した二人は改めて真姫に尋ねる。

 

「だ、だけどさ…宣伝と言っても何をするの?」

「かよちんの言う通りだにゃ。第一、私達はこの店の店員じゃないんだよ。お店の人に言った所で相手にしてもらえないよ」

「そ、そんなの解ってるわよ。だけど、ここで私達がお店の宣伝をする事で私達のグループの宣伝が出来ればと思ったのよ」

「言いたい事は解ったけど、凛達はラブライブに出場しないんだよ。それなのに宣伝する意味があるの?」

「私も今回は凛ちゃんに賛成かな… 真姫ちゃんが私達のグループを想ってくれるのは嬉しいよ。だけど、ちょっと無理があるよ」

「それも解ってるわよ。私だって、自分が無茶を言ってる事くらい…でも」

 

真姫も自分が言ってる事が無理難題だとは理解している。自分達はスクールアイドルをやっているが、ラブライブに出場する事は無い以上、宣伝しても意味が無い。だけど、真姫には引くに引けない理由があった。その理由を言うべきか迷っている真姫に向かって、今まで傍観していた桐生は口を開いて喋り出す。

 

 

「でも、何だ?言いたい事があるなら、はっきりと言った方がいいぜ。仲間を気遣う気持ちが逆に溝を作ったり、関係に亀裂が入る事になるからな」

 

相手を想って言わない事は優しさであるが、時には相手との関係を壊す事になる。桐生の言っている事は尤もであり、真姫は自分の本心を語り出した。

 

「…確かにそうね。私がこの提案をした理由はもう一つあるわ。それは…」

「それは?」

 

真姫の言葉に桐生が相槌を打ち、次の言葉を待った。そして、次の瞬間……真姫は顔を上げると目を爛々と輝かせながら本音をぶちまける。

 

 

「もし、このまま宣伝が出来なくなったら、この店が潰れるかもしれないじゃない。この店は今日開店したばかりなのよ?今は珍しさとお昼時だから、満席になってるけど…明日、明後日はどうなるか解らないじゃないの。さっき食べたトマトソースのパスタはとても美味しかったし、最高だったわ。きっと他のトマト料理も頬が落ちる程、美味しいに決まってる。だけど、潰れたら…それらの料理はもう食べれないのよ。そんなのは耐えられない。だから、花陽 凛!一生のお願いよ 私に協力して頂戴」

 

 

怒涛の勢いで言葉を発する真姫に桐生達は唖然とする。まさか、本当の理由がトマト料理を食べたいからとは誰も予想だにしていなかった。

 

「…本当の理由が、それとはなぁ」

「ま、真姫ちゃんはトマトが好きなのは知っていたけど…ここまでとは知らなかったよ」

「凛も驚いたよ。だけど、凛はこの真姫ちゃんも好きだにゃ」

 

桐生は呆れ、花陽は驚きの様子を見せる中、凛はずれた言葉を口にする。三者三様の様子に真姫は小さい声で呟いた。

 

「いいじゃない。好きな物を守る為に行動するのは駄目なの?」

「まあ、駄目とは言わない。だが、実際にどうするんだ?さっき、凛が言っていたように俺達は客であって、店員じゃない。手伝うと言った所で一蹴されると思うが…好きにしてみるといい」

「え?貴方は反対しないの?凛と花陽はしたのに…」

「反対した所で真姫はやるんだろ?会ってから、そう時間は経ってないがお前が突っ走る性格なのは解ったぜ」

「そう。それじゃあ、私は行ってくる」

「こうなったら、真姫ちゃんは止まらないよ。仕方ないから、凛達も行こうよ。かよちん」

「そうだね。それも私達らしいからね」

 

桐生の言葉を聞いて、真姫は立ち上がると店員に向かって歩いて行った。その後を凛と花陽も追いかけていく。

バタバタと突き進んでいく三人の後を、桐生も追いかけていく。

 

 

自分達の知らぬ所でそんな事が起きてるとは知らないチーフは未だに頭を抱えて悩んでいた。その様子をじれったく思った店員がチーフに向かって指示を催促する。

 

「チーフ 一体、どうするんです?そろそろ、何か指示を下さい。このままでは時間だけが過ぎるだけですよ。何らかの手を打たないと‥‥」

「解っているけど‥どういう采配するべきか、決まらなくてね。うーん こんな時に参ったなぁ」

そう言って、悩むチーフに店員が痺れを切らして口を開いた時、自分達に話しかけてくる者がいた。

 

「ちょっと、いいかしら?」

 

いきなりの事で内心、吃驚しながらも声の方に振り向くと一人の少女が立っていた。もしかして、オーダーをしている事を気付かない自分達に不満を言いに来たのかもしれない。そう思った店員は少女へ丁寧な態度で言葉を返す。

 

「はい 何でしょうか?お客様 オーダーでしたら、今すぐ承りますので「そうじゃないわ」え?」

 

真姫は店員の言葉を遮るように呟いたあとに言葉を続けた。

 

「実はね…貴方達の話を聞こえてきてね。そして、私…いえ 私達に出来る事があると思って声をかけたのよ。そこで何だけど、お店の宣伝を私達に任せてもらえないかしら?」

 

真姫は微笑んで店員にそう告げた。自分には、力を貸してくれる人達がいる。その内の一人は会ったばかりだけど、きっと手助けしてくれるだろうと真姫は確信していた。途中で言葉を言い直したのは自分の後ろにいる人の存在を感じ取ったからでもある。

 

「そうでしたか。しかし…お言葉は有難いのですが、お客様の手を煩わせる訳にはいきません」

 

真姫の真っ直ぐな言葉に飛びつきそうになるが、今回の事は店側の問題でもある。それ故、誘惑を断ち切るように店員はスッパリと断った。

 

店員の言葉を聞き、やはり駄目かと真姫が目を閉じて諦めた。それを見て、後ろにいた桐生が店員を説得する為に口を開いた。

 

「確かにそうかもしれない。だけど、手が足りないのも事実だろう?それに手伝いをする事はこっちから申し出たんだ。別に働いた分の金を払えなんて事は言わない。あんたにも店員としての意地やプライドがあるんだろうが、此処は真姫の提案に乗ってみたらどうだ?」

「そうだよ。困った時はお客とかなんて関係ないよ」

「私も桐生さんの言った様にお金なんていりません。手伝いたいと思ったのは真姫ちゃんの為でもあるから」

「桐生さん 凛 花陽… 三人共 どうもありがとう」

 

自分を後押しする三人に真姫は小さい声で感謝の気持ちを呟いた。一方、店員の方は困った様子でチーフに意見を求める。内心では、こうなったのは早く決断しないこの人の所為だと呪詛を吐いていた。

 

「チーフ どうしますか?お客様はこう仰っておりますし、手を借りるというのは…チーフ?話を聞いてますか?」

「一体。何かね?今、問題を解決する案を考えているのだから静かに…!? あ、貴方様はあの親切な人ではありませんか。いや~ こんな所で会えるなんて思っておりませんでしたよ」

「ああ あの時の親父さんか。あんたはこの店のお偉いさんだったんだな」

 

考え事をしてる時に店員に話しかけられ、チーフは苛立ちを露わにする。だが、桐生の姿が視界に入り驚きながら言葉をかけると桐生も言葉を返した。

 

そんな二人の関係を不思議に思った店員が小声でチーフに話しかける。

 

「チーフ この方とお知り合いなんですか?何だか目つきが怖いし、人相も悪くてまともな人に見えないのですが‥」

「何を言っとるのかね。人を見た目で判断してならんよ。彼は親切にも私が落とした財布を拾って届けてくれたんだ。そういえば、君はさっき何かを言おうとしていなかったか?」

「ああ そうでした。実はこちらのお客様がですね」

 

失礼な言動を言う店員をやんわりと注意するとチーフは店員に問いかけると店員はハッとして、先程の事をチーフに報告する。すると。その報告を聞いたチーフは満面の笑顔で真姫達に言葉をかけた。

 

「店の宣伝を手伝ってくれるというのは本当かね?それなら、ぜひともお願いしよう」

「はい 一所懸命やらせて頂きます」

「何だか、凛も燃えてきたよ。それに楽しそうだにゃ」

「うん 私も精一杯頑張ります」

「いや~ そう言ってくれて、助かるよ。それじゃあ、そこの君。この4人をスタッフルームに案内してあげなさい」

「…解りました。それではお客様方 こちらにどうぞ」

店員は諦めた表情を浮かべると真姫達の案内を始めた。店員に連れられてスタッフルームにやってくると4人は店員から指示が言い渡される。

 

「お嬢さん達はこちらの服に着替えて下さい。そして、一人が店の前で宣伝をしながらご来店のお客様にこの番号札を渡して店内で店員に見せるようにお伝えしてください。他のお二人は通りで宣伝をしてこのチラシの配布をお願いします」

 

店員は三人に着替えをするように言って真姫に番号札を渡し、花陽と凛にはチラシを手渡す。すると、今度は桐生の方に向くと別の指示を出した。

 

「貴方にはこの着ぐるみのキングとマトーン君を着て、店前で宣伝をお願いします。私からの指示は以上です。それでは私は仕事があるのでこれで失礼します。皆さんも準備が出来次第よろしくお願いします」

 

 

そうして、店員はバタバタと足音を立てスタッフルームを後にした。その最中、準備を黙々と行う三人の傍で桐生は茫然として着ぐるみを見つめていた。そう 桐生が着るように指示されたのは店前で踊っていたトマトの着ぐるみである。協力するつもりだったが、自分に課せられた役目がこれだとは予想だにしていなかった。

 

そんな桐生に準備を終えた真姫が声をかける。他の二人も既に準備を終えていて、残るは桐生のみであった

「私達の準備は終わったわよ。桐生さんも早く準備して頂戴」

「ああ そうだな…それじゃあ、着替えるから部屋の外で待っていてくれ」

「解ったわ。早くしてね」

 

桐生の方もこれ以上待たせる訳に行かないと覚悟を決めて着ぐるみを手に取ると着替え始めた。

 

 

 

 

数分後 スタッフルームから準備を終えた桐生が出てきて、外で待っている真姫達に声をかける。

 

 

「待たせたな。準備は終わったぜ」

 

準備に手間取る桐生に一言だけ不満を言ってやろうと真姫が振り向くと、そこにはキラキラと丸い目を輝かせ、愛嬌溢れる笑顔を浮かべる着ぐるみを着た桐生がいた。

 

「もう、遅いわよ。急がないとお客さんが減ってしまうじゃないの‥‥ブフゥ」

「き、桐生さん…ですよね?プッ フフフ」

「アハハハハハ! はぁ~おかしくて堪らないにゃ。だけど、桐生さん そ、その姿は…すごく似合ってるよ」

 

可愛らしい見た目から発せられる渋い声のギャップに三人は笑いを堪える事が出来なかった。未だに肩を震わせて笑う三人へ桐生はムスッとしながら言葉をかける。

 

「…まったく、いつまで笑ってるんだ。早く宣伝に行くぞ」

「そ、そうね。それじゃあ、行きましょうか」

「うん」

「張り切って、行くよ」

 

桐生の言葉で気持ちを切り替えた真姫達は宣伝を開始する。

 

指示通りに凛は左の通りへ、花陽は右の通りにチラシを持って向かって行くのを見届ける。そして、真姫は大きな声で千両通りを歩く通行人に向けて呼びかけた。

 

「いらっしゃいませ! トマト料理専門店 トマト☆キングは本日オープンしました。様々な美味しいトマト料理をぜひ、ご賞味下さい」

 

真姫の呼び掛けに合わせて着ぐるみを着た桐生が手を振ったり、店の中へ誘う様な仕草を見せる。だが、時間はお昼を過ぎている為か、通行人は足を止める事も無く無情にも通り過ぎていく。その後も数十分に渡って、宣伝を続けるが状況は変わらずだった。

 

その間にチラシを配りに行っていた花陽達も戻って来るが、彼女達の方も宣伝は上手く行ってない様だった。

 

「こっちは全然駄目だにゃ。チラシを配ろうにも受け取る所か、凛の方を見向きもしないよ」

「私の方も同じだよ。受け取る人もいたけど、目の前でチラシを捨てる人がほとんどだよ。真姫ちゃんの方はどう?店の前だし、入ってくれたお客はいたの?」

 

状況を尋ねる花陽に真姫は無言で首を横に降る。その様子から花陽と凛も状況を理解したのだろう。三人は言葉をも無く立ち尽くし、暗い雰囲気を漂わせていた。

 

 

だが、そんな暗い雰囲気を撥ね退けるかの様に桐生は道の真ん中に立つと、いきなり踊り始めた。

そんな桐生に真姫達は呆気に取られていたが、通行人が桐生の踊りに足を止めている事に気が付くと三人は再び宣伝を開始した。私達の為にチャンスを作ってくれた桐生の行動を無駄にはしない。この時 三人の気持ちは一つになっていた。

 

 

その後 先程とは打って変わって、店に入る客が次々と訪れていた。おそらく、花陽達が配ったチラシやコミカルに踊る桐生を見た人から大勢の人に伝わったのだろう。

 

 

その後、体調を崩していたスタッフも回復して現場復帰をする事になり、真姫達の仕事は無事終わりを迎えた。

 

 

 

「いや~ 今回は本当に助かりました。貴方達がいなかったら、今日の営業は失敗に終わっていた事でしょう。店の危機を救って頂きありがとうございました」

 

チーフは真姫達に深く頭を下げてお礼の言葉を述べる。

 

「いいえ お礼を言うのはこっちの方です。今回の事は私達にとって、いい経験になりました」

 

真姫はチーフに微笑みを見せて、そう告げる。そんな真姫を優しい目で見つめるとチーフは封筒を懐から取り出すと真姫達に手渡した。まさかと思った真姫達だったが、中には意外な物が入っていた。そう 中身はお金ではなく、この店の割引券50枚セットだった。

 

その中身に花陽と凛はがっかりした様子を見せるが、真姫だけはキラキラとした目で割引券を見つめていた。他の人は微妙な贈り物でもトマトが好きな真姫には何よりの褒美だろう。それは誰が見ても一目瞭然である。

 

「こんな素晴らしい物をありがとうございます」

「いやいや、喜んでくれて何よりだよ。これからもこの店をよろしくね」

「はい!また、食べに来ますね」

 

喜びはしゃぐ真姫を桐生達は生暖かい目で見つめていた。

 

こうして、奇妙な縁が結んだドタバタ騒動は幕を閉じたのである。

 

 

 

その後 店をあとにして桐生達はタクシー乗り場にいた。

 

「それじゃあ、此処でお別れだな。今日は楽しかったぜ」

「前回に続いて、今回もお世話になりました。私も楽しかったですよ」

「うん 可愛い服を着て、宣伝するのは面白かったにゃ」

「そうね。確かにいい経験だったわね。桐生さん 今回はありがとうございました。貴方の言葉や行動には勇気を貰ったわ。あれが無ければ、きっと 私は何も出来ずに終わってたから」

「いいんだ。それに勇気があるのは真姫も同じだぜ。結局、何かを思ったり、言ったとしても自分が行動しなければ意味が無い。お前があの時、動いてなければ俺達は何もしなかったぜ。お前の行動が俺達を動かしたのさ」

「桐生さん‥」

「そう しけた顔をするな。笑顔でいる事を忘れるな」

「ええ そうね」

「真姫ちゃん 早くして、そろそろ行くよ」

「解ったわ。それじゃあ、私はこれで」

 

桐生の言葉で真姫は笑顔で挨拶を交わしてタクシーに乗り込むと車は出発すると、あッという間に見えなくなってしまった。

 

 

それを見送った桐生が中道通りを歩いていると蛇の眼帯を付け、スーツを着た男と鉢合わせする。

 

「!!… あんたは…真島の兄さん」

「き、桐生ちゃん!?どうして、此処に…」

 

そう その男は真島吾郎その人である。 

今日この日 龍と般若がついに邂逅した。

 

 

 




サブストーリー 街がもたらす奇妙な縁 桐生編 完

桐生「まさか、訪れた店であんな騒動に巻き込まれるとはな… まあ、俺自身もいい経験になったな」

今回で桐生さんは真島さんと遭遇します。ですが、次の話は同じ日に神室町の違う場所で起きた真島さんのドタバタ騒動を予定しています。

真島さんと桐生さんが会った後の話はそれから書くつもりです。
出来るか解りませんが年内中に投稿出来る様に全力を尽くしますのでお楽しみに。

それと感想を待ってます。

サブタイトルを一部変更しました。
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