東方花虹伝   作:雛茄子

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純白なる高嶺の花には命を懸ける価値があるか?


第零章 エーデルワイス

 

 

今月ももう第三月曜日だと言うのにここ、八坂神社跡地に訪れたのは地元の女子高生が一人だけだった。それもそのはずで、まだ本殿が残っていた頃でも参拝に来る者はかなり減っていたし、本殿がなくなったとなればもはやこの地は用済みとなるだけではあったのが。

 

「こんにちは、文目」

 

「紫か。……まだ、約束の期日にはなってないぞ」

 

「いえいえ。私はただ、その約束の確認に来ただけですわ」

 

「……そうかい。茶を出そう、ちょっと待っていろ」

 

異国風の衣に見を包み、美しい金色の髪、すべてを見通すような奥深い瞳。そこそこ長い時を生きてきたとは思っているが、ここまで美しい人はこの5本の指に入るのではないかと文目は思う。ただそれと同時に、それだけならいいんだがなぁとも思うのであった。

 

「ほら、藍さんが淹れるお茶にはかなわないが、飲むなら文句言わず飲め」

 

「あらやだ、文目ってば恋を司る神様なんでしょう? 女性に優しくしなさいよ」

 

「お前がもう少し何考えてるのかわかるやつだったら、そうしてるよ」

 

「それは残念」

 

紫は扇子で口元を隠しお上品に笑ってみせる。胡散臭さが服を着て彷徨いてるみたいなこの妖怪には、こういう対応でいいのだと数回目の来訪時から対応を変えたのだった。

 

「紫もいたなら見ていただろう、先ほどの女の子。あの子が私の最後の仕事になりそうでね」

 

「あぁ、先程の子がそうなのね」

 

「彼女の気持ちの強さには問題は無いのだが、如何せん私ではどうとも出来ない問題があってな……」

 

「恋愛のスペシャリストが解決出来ない問題? なにかしら」

 

「いや何、学校が休校しているのさ。携帯電話でのやり取りだとほんの少し力が足りなそうでね、絶対に成功させたいなら実際にあって告白なさいと告げたのだが。いやまさかその翌週から休校に入ってしまい……と、泣きながらあの子が来た時は私もどうしようかと思ったよ」

 

「……存外どうでも良い理由ね」

 

「私もそう思ったさ。……だがな紫、ひとつ言わさせてもらうぞ」

 

「な、なにかしら?」

 

紫は若干背を後ろに引いたような気がしたが、文目は構わず続ける。

 

「朝、登校したとしよう」

 

「いきなりね」

 

「まぁ聞け。……それでだ、女の子は男の子に放課後時間をくれないですか? と聞く。勿論特に彼女がいない男の子は了承してくれるだろう。そして放課後、体育館裏で女の子は告白するのだ。なんとこの方法の成功率は85%もあり……」

 

「あーはいはい、わかったわかった。要は学校さえまた始まればあの子の告白も成功して、文目も幻想郷に移ってくれるって事ね」

 

がーっと捲し立てる文目を遮って紫が解決策を述べる。こういう時は不思議なもので、紫がいう案に従ってしまうのが正解なのだと何故か思えてしまうのだった。日常的に振り回されている藍さんが気の毒に思えてきた文目である。

 

 

そして一週間後。

 

あの女の子が跡地に来なくなって一週間が経った。学校が再開したのは跡地前の道路を通り過ぎる同じ制服の子たちを見たのでわかっているが、結末を未だ確認することは出来ていない。

 

だが今日が紫との約束の日だ。あの子が告白して結ばれていようがいるまいが、幻想郷に行かなくてはならない。日に日に自分の力が弱まっているのを痛感しているし、仕方のない事だと割り切るたかったが、しかもやもやした気持ちを晴らすことはできなかった文目である。

 

「文目、時間よ」

 

「……そうか。最後にあの子がどうなったかだけでも知りたかったが」

 

「そういうと思って、ほら」

 

紫が文目に1枚の写真を手渡した。そこに写っていたのは満面の笑みで男の子の腕を抱きしめるあの子の姿。男の子も少しまだ戸惑いが見えるが、それでも幸せそうに笑っている。

 

霊力の弱まりを感じていた文目は八坂神社跡地から出ることが出来ず、結果女の子が自分から来てくれる以外結末を知ることは出来なかったのだ。ただその事と、紫に素直に感謝の言葉を返すのはなんだか気恥ずかしい文目であった。

 

「……紫、妖怪だからと言って盗撮はどうなんだ」

 

「折角撮ってきてあげたのに何たる言い草!? もう怒った、今すぐ幻想郷に行くから!」

 

「なっ、ま、まて、まだ心の準備――――」

 

こうして八坂神社跡地に残されていた小さな社は、現代から姿を消したのだった。






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はじめまして、雛茄子(ひなかこ)と申す者です。

ゆっくりペースで投稿していきますので、お暇な時にでも付き合って頂ければと思います。

一応注意点としましては、文目のハーレムを目指すものではなくキャラクター同士のお話をメインで書いていきたいと思っています。

誤字などにも気をつけて行きますが、見つけてしまった際は教えて頂ければ幸いです。
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