軍団と邪神を宿した少年と少女   作:東海

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第四話

 

 

 

 ピッピッピッピっと規則正しい機械音のリズムを刻みながら、少しずつ、瞼がゆっくりと開いていき、一夏の視界がぼやけながらも広がっていくのを感じていった。

 

「あれ、ここ何処だろう、真っ白い部屋だな」

 

と声を漏らすが、酸素マスクをしているので、その声が外部に漏れることはなかったが、丁度、巡回に来ていた看護師は、検査チェック用の診察表とボールペンを床に落とした音が部屋に木霊したのを一夏は聞いた。

 

 

「せ、せ、先生!特別病棟室の患者が、患者が、目を覚ましました!」

 

と泡を食って、院長室に飛び込んだ。すると院長は、

 

「落ち着きたまえ、患者が目を覚ましたのかね?他に何か変わった様子とかは無いのかね?ちゃんとした報告がほしい。もう一度、最初から報告をしてくれたまえ」

 

と冷静に看護師に尋ねた。すると、気持ちが落ち着かせた看護師は、もう一度しっかりとした報告の後、各方面の先生方にも報告しますと言ってから院長室を退席した。

 

 

 部屋に残った院長は、部屋に備え付けの電話機ではなく、個人用のスマートフォンを取り出し、ある電話主に電話を掛けた。

 

 

  「もしもし、円谷さんですが、医学(医科大学病院)の院長です。お孫さんの事ですが、いえ、特に(体調)急変したと言う事では無いのですが...落ち着いてください。最後まで話をさせてください。はい、それでは、本題の方に、お孫さんが目を覚ましました。え、よく聞こえない、ですから、お孫さんの意識が戻り、目を覚ましました。はい、それでは、お待ちしています。はい、はい、では、失礼します。では後程」

 

と言って電話を切った。

 

 

 「さて、これからが大変だぞ」

 

と誰にも聞く人の居ない部屋で院長の呟きだけが静かに木霊した。

 

数日後

 

「さて、一夏君いくつか質問してもいいですか?」

 

「はい、良いですよ。」

 

一夏が病室から目を覚ましてから数日後、診察の為に診察室に呼ばれた。診察室には、一夏の他に姉の千冬と円谷家の面々も揃っていた。

 

 

「では、まず最初に今わかる範囲でいいので、どんな事があったかを教えて欲しいのですが、よろしいですか?」

 

「うん、分かったよ。ええっと、まずは...(この辺は、最初の出来事の方に書いてあるのでそちらの方を参照にしてください)っていう事があったんだけど...信じてもらえるかな?」

 

 

 一夏が、今まであった事を話し終えた後診察室には沈黙の空気が漂った。すると、千冬が、

 

「一夏、そんな出鱈目いうものじゃないぞ!」

 

と一夏に対して怒った。すると医師が、

 

「まあまあ、お姉さんそんなに怒るものじゃないよ」

 

と宥めた後に一夏に向かってこう言った。

 

「一夏君、すまないが君の言っている事について、いくつか疑問に思っている事があるんだよ」

 

と優しく諭すように言うと、一夏が

 

「分かったよ!証拠を見せるよ!」

 

と声を荒上げて叫んだ。すると、一夏の目の色彩と髪に変化が現れた。

 

 

 今まで、薄い茶色っぽい色彩だったものが、真紅に突然変わり、そして、髪の色も白銀色に近い色と髪の長さも長くなっていき、周囲を驚かせさらに、椅子を立ちあがった瞬間に倒した。

 

「一夏君、落ち着いて!」

 

「一夏、どうした!」

 

「一夏ちゃん、落ち着いて」

 

と医師、千冬、高嶺が一夏に語りかけた。茂は、すぐさま一夏に近寄り、

 

「大丈夫だ、心配しなくてもいいよ」

 

と優しく語りかけた。

 

 

 しばらくして、落ち着きを取り戻した一夏の目の色彩が碧く澄んだ色に変わった後、

 

「御免なさい」

 

と頭を下げて言った。そして、

 

「僕に何があって、どんな風になったかを教えるよ」

 

と言った。

 

 そういうと、一夏はおもむろに椅子から立ち上がり、上着を脱ぎ始めた。

 

「一夏、何をする気...」

 

と千冬が注意しようと言葉を発するが、途中でその次の言葉を失った。そして、一夏の素肌を見た一同が声を失った。なぜなら、一夏の上半身全体が著しく変わっていたのだから。

 

 

 一夏の上半身はまるで、堅い甲殻のような身体つきになり、前部は、胸から臍まで周りに赤い物が楕円を描くようにあった。また、肋骨を囲むように鋭い爪の様な物があり、後部にも著しい変化があり、脊髄に沿ったすぐ外側から巨大な鎌のような物が生えており、さらに、両腕手が太く巨大な堅く鋭い物に変化していった。しかもその変化は、頭部にも及んでいった。頭頂部からこれまた鋭く湾曲した角が生え、毛髪が一本、一本が鋭利な棘の様なの物に変化し、頭部側面に肋骨と同じように囲むような鋭い爪の様な物が生え、鼻部の辺りに巨大な角がそそり立った。

 

 

 その一夏の著しい変化を間近で見た,医師、千冬、円谷家の茂、高嶺は、言葉を失った。それはそうだろう、今まで殆んど変わらなかった身近な人が突然変わったのだから。

 

 

 「これが、今の僕だよ。千冬姉ちゃん、茂叔父ちゃん、高嶺叔母ちゃん」

 

と変化前の一夏の声が周囲に響いたが、なぜかその声は悲しそうな声だった。

 

 

 暫く、茫然としていた周りが、不意に声を発した。

 

「これは一体なんだ」

 

と著しく狼狽えた千冬の声が沈黙を破った。

 

 

 ついに運命の歯車がその秒針をゆっくりと進んでいく音がした。

 

 

 「一夏、一体何があってこんな姿に...」

 

と千冬は、言葉を詰まらせながら一夏に尋ねた。

 

 

「千冬お姉ちゃん、ついさっき言ったばかりだと思うけど、千冬お姉ちゃんと別れた時に大きな窪みの真ん中くらいの所に大きな石が刺さっていて、そこから変わった生き物が出て来たんだ。その生き物が弱っていて、助けようと思って近寄って、触れた時に、その生き物が光りになって、自分に触れた瞬間に気が遠くなって、夢を見たんだ。その生き物は、色々な経験を僕に教えてくれて、頼みごとをしたんだ。「自分の代わりに種を飛ばしてくれって、その代わりに、暫く自分の力をあげよう」って言われて、僕は、「いいよ」っていったんだ。」

 

と一夏は、千冬の他にも周囲の大人たちにも聞こえるように言った。すると、それまで黙っていた茂と高嶺は、

 

「一夏(一いっちゃん)、お前は偉いなあ(偉いわねえ)」

 

と言いながら姿の変わった一夏を二人は抱きしめた。

 

 

「話の途中でしたが、すみません」

 

と医師が言おうとするが、茂が、

 

「すまんが、先生。今は、そっとして欲しい。後で一夏の今後について話し合おう」

 

と言った。

 

 

 すると、一夏は思い出したよう、

 

「あ、そうだ、まだ言わないといけないことがあったんだ」

 

というと、皆を少し下がらせてから、腹部を撫でた。

 

 

 すると、腹部の赤い部分が発光し、そこから、およそ猫くらいの大きさの一夏が変化した後の特徴を残した、黒い身体と胴体中央に大きな1つの眼を持ち、その両端に小さい眼が2つずつ、計5つの眼を持つ生き物が多数現れ、一夏の周りを守るように陣形を作った。周囲を警戒するように、一匹、一匹の大きな目が盛んに動かし、頭部の鋭利な三本の角と四肢から延びる日本刀のような棘を前面に押し出し隙のないファランクス(密集陣形)を醸し出していた。

 

 

 「何なんだ、こいつ等は」

 

「大丈夫だよ。僕の友達だから」

 

と少し後ろに下がった千冬が言った後、一夏は、笑顔で解答した。

 

 「一夏、すまんがこいつ等を下がらせて欲しい」

 

と茂が言うと、一夏は、

 

「良いよ。みんな戻って」

 

と言うと小型の生き物は、一夏の赤い部分に戻っていった。

 

 

「そういえば、一ちゃんが出会った生き物って名前はなんていうの?」

 

とあまり動揺していない高嶺が聞いた。

 

「ええっと、その生き物は、名前が無いから僕に名付けて欲しいって言ったから、僕は、その生き物に『レギオン』って名付けたよ」

 

「レギオン?」

 

「うん、前にお祖父ちゃんの家にあった聖書の一節に書いてあって、それを思い出したんだ」

 

 

 そういうと、一夏は、

 

「少し、疲れちゃったから寝るね」

 

と言って、変化を解くのと同時に前に倒れるようになったが、千冬が抱え込むように抱き留め、

 

「お休み、一夏」

 

と言って、優しく長くなった一夏の髪を撫でた。

 

 

  眠った一夏がストレッチャーで個人用入院病棟に運ばれてから、茂、千冬と高嶺にこう言った。

 

 「では、私は、先生とお話があるから先に病室の方に行ってなさい。高嶺、ついて行ってくれ」

 

「分かりましたよ。では、千冬ちゃん一緒に行きましょうね」

 

と言ってから優しく千冬の手を握り、診察室から出ていった。

 

 

「さてと、今回の件については、一切の他言無用で頼む。」

 

と茂は改まった口調でそう告げると、医師は、

 

「それは、個人的な意見ですか?それとも、命令ですか?」

 

と少し困惑しながら答えた。

 

「君とは、個人的にも長い付き合いなのだからわかるだろう」

 

とおどけながら言いながらも、その顔は、真剣そのものだった。

 

「分かりましたよ。では、暫くは、検査入院と言う事にしましょう」

 

と言うと医師の方が折れた。

 

 

 そして、次の日

 

 

 「ねえ、一ちゃん、千冬ちゃん。一緒に暮らさない?」

 

と朝方は役に目覚めた一夏と千冬に高嶺が聞いた。

 

「高嶺叔母様、なぜ、一緒に暮らそうと言うのですか?」

 

と千冬が聞くと高嶺は、優しそうな顔をしながら、

 

「なぜって、二人だけだと、色々と大変でしょう?それに、今少し何かしら物騒でしょう、それに、一緒に暮らしても、家名は変わらないように茂ちゃんが如何にかするって言ってたわよ」

 

と言うと、それを聞いていた千冬は、一夏に相談した。

 

「一夏は、どうしたいんだ?私は、一夏に判断を任せたい」

 

と言うと、一夏は、少し考えるように目を瞑った。一夏は、レギオンとの融合後、物事を少し考える様になっていった。

 

 

「千冬お姉ちゃん、僕は,茂叔父ちゃんと高嶺叔母ちゃんと一緒に暮らそうと思うんだけど、どうかな?それなら、千冬お姉ちゃんも、もう少し楽になると思うよ」

 

と言うと、千冬は涙を瞳に浮かべながら、

 

「一夏….」

 

と言うと、高嶺の顔を向きながら、

 

「よろしくお願いします。高嶺叔母ちゃん」

 

と言うと一夏と一緒に頭を下げた。

 

 

 すると、高嶺は、

 

「こちらこそ、よろしくお願いね」

 

と言って頭を下げた。

 

 

 

  さて、織斑家と円谷家の運命が交じり合って進んでいこうとする中で、日本の西側でも一つの家族がその運命を大きく変えようとしていた。

 

 

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