不定期ではありますが、更新を再開します。
冥界の王
第2話
魔王領の都市ルシファード。
その都市一の大きさを誇る建物の中にリアス率いるグレモリー眷属はやってきていた。
レーティングゲームデビューを間近に控えた新鋭若手悪魔たちを見定めるべく行われる会合に出席するためである。
招かれた若手悪魔は六人。
『大王』バアル家次期当主サイラオーグ・バアル。
『大公』アガレス家次期当主シーグヴァイラ・アガレス。
『魔王輩出』シトリー家次期当主ソーナ・シトリー。
『魔王輩出』アスタロト家次期当主ディオドラ・アスタロト。
『魔王輩出』グラシャラボラス家次期当主ゼファードル・グラシャラボラス。
そして『魔王輩出』グレモリー家次期当主リアス・グレモリーの六人だ。
皆今日という日を待ちわびていたのか緊張と高揚が表情から見て取れる。
特に先日父から憧れの悪魔が来ると聞いているリアスの緊張度合いは他の5人とは段違いである。
なんとか表情には出さないように取り繕ってはいるがリアスと親しい者たちから見ればバレバレであった。
「……リアス、なにをそこまで緊張しているのです。多少の緊張感は必要ですが、かといってし過ぎもよくありません。もう少し肩の力を抜いたらどうです?」
「そうだぞリアス。これから始まる会合は上が俺たちを見定めるためのものだ。そんなに緊張していたら恥をかくかもしれんぞ」
内心ガチガチのリアスに話しかけてきたのは幼馴染みのソーナ・シトリーと従兄弟であるサイラオーグ・バアルの2人だ。
「だ、だってこの会合にはあのベルゼビュート卿が来られるのよ!普段通りになんて無理よ!」
「何?ベルゼビュート卿だと。誰がそんなことを?」
「お父さまよ。きっとお兄さまから聞いたのね。お兄さまは交流があるみたいだから」
「サーゼクスさまなら交流があるのも納得ですが……。この千年公の場に現れなかったあの方がまだ成人してもいない私たちの会合に来られるなんて俄かには信じられません」
「私もあなたたちの立場なら信じられないと思うわ。でも、あのときのお父さまの表情は冗談を言っているようには見えなかったのよ!」
リアスの発言にサイラオーグとソーナの2人は顔を見合わせて、吹き出すように笑った。
「ハハハハハッ!確かにグレモリー卿ならリアスの様々な表情を見るためにそのような冗談も言うだろうな!」
「そうですね。グレモリー卿もサーゼクスさまもリアスの事は大層溺愛なさってますから」
「だから冗談には見えなかったと言ってるでしょ!まったく人の話はちゃんと聞いてほしいわ」
2人の反応にリアスは腕を組んで拗ねたようにそっぽを向く。
「そう言うな、昔からリアスはからかい甲斐があるからな。ついやってしまう」
「ふふ。ええ、本当に」
「からかわれる側の気持ちも知らないでもう」
「だが、緊張は感じなくなっただろう」
「それはそうだけど。それでもからかわれるのはね」
「それでグレモリー卿はなんと?」
リアスをからかい終えるとソーナは話を戻すべく口を開く。
「彼が顔を出すらしいと。そういえばはっきりと名前を言ってはいなかったわね」
「ならベルゼビュート卿とは限らないわけだ」
「でも千年ぶりに公の場に出てくると言っていたからベルゼビュート卿で間違い無いと思うけど。
……それに『気を付けろ』とも」
あのときやいまソーナたちに話しかけられなければ思い出してはいなかったが、いまにして思えば普段おちゃらけている父が見せたいつにない真剣な表情と気を付けろという言葉に了解は先程までとは違った緊張が身体を支配した。
このタイミングでそんなことを言う意味はーー
「ーー『
「え?」
「何?」
「もしかしたら、ヴォルレイン・ベルゼビュートは……敵かもしれない」
リアスの言葉に2人に衝撃が走った。
そんなことはありえない、あの革命戦争のときだって、三つ巴の戦争のときだって不干渉を貫いたあのヴォルレイン・ベルゼビュートが
しかし、どこかで納得している自分たちがいることも確かだった。
駒王学園で開かれた三つ巴の会談。
そこに乱入してきたのはカテレア・レヴィアタン。
先代魔王レヴィアタンの娘である彼女は確かに言ったのだ、「我ら真の魔王の血族は
ヴォルレイン・ベルゼビュートは先代ベルゼブブの息子。
それならば所属していてもおかしいことはない。
何よりこの千年、公の場に出てくることのなかったあの
先日の旧魔王派のこととヴォルレインの参加表明のこと、考えてみればみるほどつながっているように3人には感じられた。
何か、恐ろしいことが起こるかもしれない、とそんな緊張の中、会場への扉が開かれ、扉から現れた使用人が告げた。
時間となりました。どうぞお入りくださいと。
緊張、不安と期待が入り混じった会合が始まる。
☆☆☆☆☆
いざ会合が始まってみれば、そこにヴォルレインの姿はなくあるのは4大魔王と現政権の大臣たちのみでサーゼクスの隣が空席となっていた。
リアスたち3人はそれに安心と少しの落胆のようなものに息を吐いた。
戦争を知らぬまだ若い悪魔たちにとってヴォルレインはお釈迦のような、本当に実在したのかすら怪しい存在。
そのお釈迦の存在が自分たちの前に現れるとあっては先ほど、脳裏によぎった最悪のことがあったとしても会ってみたいと思ってしまう。
けれど扉が開き中へと入ってみればヴォルレインが座るであろう席は空席で。
集まった若手悪魔の中でも最もヴォルレインに興味があったリアスとしてはやはり、会いたいという感情が優ってしまう。
それは兄である現魔王サーゼクス・ルシファーより度々聞かされていたからだった。
それはサーゼクスしか知らないヴォルレインの話で、リアスはいつも楽しみに聞いていた。
ヴォルレインは何が好きで、何が嫌いなのか。
どんな姿をしているのか。
普段はどんなことをしているのか。
友達の誰も知らないことをリアスだけは知っている。
それがたまらなく嬉しかった。
もし兄のように自分もヴォルレインに会うことができるなら何を話してみようかと、夜遅くまで考えて気がつけば眠っていた。
そして彼は──
『
──リアスたち悪魔が目指す頂点。
『冥王』
ヴォルレイン・ベルゼビュートが名乗ったのではない。
誰か彼をそう称し、讃えたのだ。
冥界を統べし王と。
リアスも王である。
眷属たち7人の王。
リアスとヴォルレイン、2人の王には明確な差があるのだ。
数世紀前に開発された
だから──
「──私はグレモリー家の次期当主として生き、やがてはこの冥界の民たちの理想の王になりますわ」
そのためにレーティングゲームの各大会で優勝することが近い将来の目標ですわ。
会場が静まった。
魔王さま方からの今後の目標についての問いかけに真っ先に答えたサイラオーグの時よりもずっと長い沈黙。
「──素晴らしい。流石はサーゼクスの妹君だ」
沈黙を破ったのは地の底から聞こえたかのような荘厳なる声だった。